買いエネルギーを持続、個別銘柄物色が牽引

著者:冨田康夫
投稿:2015/05/12 19:22

明日の東京株式市場見通し

 13日の東京株式市場は、12日の大引けにかけての強調展開を引き継ぐかたちで続伸となりそうだ。12日の日経平均株価終値は、前日比3円93銭高の1万9624円84銭と小幅上昇にとどまったものの、東証1部の値上がり銘柄数は1017と値下がりの731を大きく上回っており、地合いの強さを示している。さらに、決算発表に伴う好業績企業を対象とした個別銘柄物色の流れも継続し、全般の売買代金が高水準を保っていることも買い支援材料となりそうだ。

 12日の東京株式市場は、ギリシャ債務問題や中国の景気鈍化をめぐる懸念に加え、米10年国債の利回りが約4カ月ぶりの高水準まで上昇するなど世界的な金利上昇といった外部要因の不透明感を警戒して、売り先行のスタートとなり、一時1万9500円台を割り込む場面もあった。しかし、外国為替市場での円安・ドル高進行や、日銀による上場投資信託(ETF)購入思惑などから、大引けにかけて急速に切り返した。

12日の動意株

 HOYA<7741>=後場一段高。
午後1時30分に発表した15年3月期の連結決算は売上高が4899億6100万円(前の期比14.6%増)、最終利益は928億400万円(同58.9%増)と大幅な伸びを示した。スマートフォン向け液晶や半導体関連製品が伸長し収益を押し上げたほか為替の円安メリットも発現している。また、発行済み株式総数の2.36%に相当する1000万株、450億円を上限に自社株取得枠の設定も発表、5月13日から9月30日の期間内に取得する方針で、取得予定の自社株は、株主還元を目的に消却を予定している。

 ニチレイ<2871>=後場一段高。
午後2時に決算を発表。16年3月期連結業績について、売上高5290億円(前期比3.0%減)、営業利益187億円(同6.2%増)、純利益113億円(同16.5%増)と15期ぶりに営業最高益更新を見込んでいることが好感された。主力の加工食品で国内生産体制強化の効果が本格化し利益率が大きく改善するほか、海外はアジアンフーズの販売が好調な米イノバジアン・クイジーンと、欧州向けチキン加工品の販売が拡大するタイのGFPTニチレイが寄与する見通し。また、12月1日に創立70周年を迎えることから2円の記念配当を行い、年間配当を前期の10円から12円に増配することも好材料視されているようだ。

 日清オイリオグループ<2602>=大幅高。
前日発表した16年3月期の連結業績予想は売上高が前期比3.3%増の3400億円、営業利益が25.6%増の70億円と好調。原料価格上昇の逆風も販売価格への転嫁でこなし、生産や物流コストの低減効果で今期は利益の伸び率が加速する見通し。これを好感するかたちで買いが流入している。きょうは478円まで上値を伸ばし3月25日の年初来高値480円の更新を目前にとらえている。

 カルナバイオサイエンス<4572>=ストップ高。
11日の取引終了後、国立がん研究センター(東京都中央区)と11年5月20日付で締結したキナーゼタンパク質を標的とした新規がん治療薬の創製を目的とする共同研究契約について、延長契約の締結を決めたと発表しており、これを好感した買いが集中している。延長する期間は、15年4月1日から17年3月31日までの2年間。なお、業績に与える影響は軽微としている。

 エスケーアイ<9446>=一時ストップ高。
東海エリアを地盤とする携帯電話販売大手だが、足もとの業績は好調。11日取引終了後に発表した15年9月期第2四半期(14年10月~15年3月)決算は本業の儲けを示す営業利益が前年同期比34.5%増の3億9800万円と高変化を示した。これが株価を強く刺激している。一方、筆頭株主の光通信<9435>がここ同社の保有株を買い増す動きを見せるなど、株式需給面の思惑も内包している。

 CSSホールディングス<2304>=急伸。
11日の取引終了後、15年9月期第2四半期(14年10月~15年3月)連結業績予想の増額修正を発表した。売上高は84億1400万円から87億7700万円(前年同期比31.3%増)へ見直したほか、営業利益は2億1100万円から2億6400万円(同15.8%増)へ修正した。同社はホテルやレストランのスチュワード事業(食器洗浄・衛生管理など)や映像・音響事業などを手掛けている。食材販売事業や音響・放送機器販売事業が好調なほか、シンジケートローンの運用による営業外収益の増加などが業績を押し上げている。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想