もみ合いスタート後は、しっかりとした値動きか

著者:黒岩泰
投稿:2015/03/25 08:59

市場に“恐怖の足音”が近づいている

 昨日の米国株式相場は下落。ダウ工業株30種平均は104.9ドル安の18011.14、ナスダック総合指数は16.25ポイント安の4994.73となった。また、時間外取引の日経平均先物(円建て)は19620円付近での推移。したがって本日の東京株式相場はもみ合い相場からのスタートを想定。前日終値近辺で寄り付くと思われる。

 ただ、昨日もそうであったが、安値圏では根強い押し目買いが優勢。3月末の配当・優待取り狙いの買いが期待できるほか、株価が下落すれば、日銀がすかさずETFを買ってくる。そういった安心感が市場には漂っており、簡単に下落する環境にはない。3月末を意識したドレッシング買いも期待でき、もみ合いスタート後は相変わらずしっかりとした値動きとなるだろう。場合によっては昨年来高値を更新するかもしれない。

 そのようななか、本日の日経新聞では「日銀保有の株式時価が10兆円を超えた」と報じられた。いわゆる買い付け単価である「簿価」は5.7兆円ということだから、この株高で実に4.3兆円も儲かっていることになる。一見、このニュースは「日銀が儲かっているのだから、いいことじゃないか」と思われがちだが、「そもそも論」で考えてほしい。日銀は「日本円」の通貨発行権を有しており、その円の裏側にあるのが、この株式(主にETF)ということになるわけだ。本来ならば円という我々日本人にとって交換・貯蓄などに使われる“絶対的な存在”が、「株価の値動きに影響を受けている」ということであり、これが健全であるわけがない。にもかかわらず、日銀は株価が下落すると、毎日のようにせっせせっせとETFを買っている。日銀が国債を年80兆円のペースで買っていることと比較すれば“微々たる額”だが、日銀の執拗な資産購入は着実に自身の健全性・信頼性を損ねている。秋には日本郵政が上場すると言われており、国債を保有するいわゆる「国のオーナー」の環境が変化する。上場を機に国債保有比率が低下すれば、国債下落を引き起こし、日銀の財務体質にも少なからずとも影響を与えることになる。今のアベノミクスが“日銀頼み”となっているなか、その日銀へ信頼が徐々に揺らいでいるのだ。市場に“恐怖の足音”が近づいていると言えよう。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想