内需株牽引し続伸、“米株離れ”が鮮明に

著者:冨田康夫
投稿:2015/03/11 20:18

明日の東京株式市場見通し

 12日の東京株式市場は買い意欲が持続することが予想され、建設、不動産など内需セクターを牽引役として日経平均株価は続伸となりそうだ。

 11日の東京株式市場は、10日の米株式市場でNYダウ平均株価が前日比332ドル安と今年最大の下げとなったことを嫌気して、売り先行でスタートした。ただ、大幅な下落とはならずに、まもなく下げ渋る動きが鮮明化し、売りが手控えられるなかジリ高歩調となり、日経平均株価は一時、170円を超える上昇幅となった。

 市場関係者からは「前日のNYダウ急落にもかかわらず日経平均が前日比プラスで引けたことで、最近の“米株離れ”の傾向が一段と鮮明になった」との声があがっていた。前日のNYダウ大幅下落の要因は、主要通貨に対するドル高加速による米企業業績の先行き懸念にあることを考えると、中期で円安進行中の日本の株価が上昇するとの見立ても成り立つ。ただ、米国株の下落が続けば、世界的にリスク回避の動きが顕在化して、日本株にもマイナス影響を及ぼす可能性は高い。

11日の動意株

 ITbook<3742>=ストップ高。
前週末以降、社会保障と税の共通番号(マイナンバー)に関する話題が相次いでいることで、関連銘柄の代表格ともいえる同社に関心が高まっているが、この日は政府が10日、マイナンバーの利用範囲を広げる「マイナンバー法改正案」を国会に提出したと伝えられたことから、物色人気を集めている。日本経済新聞などによると、資産を把握するため預金口座への適用を18年から任意で始め、医療情報への活用も一部で認めるという。利用範囲が拡大すれば関連銘柄のビジネスチャンスも拡大することになり、事業規模拡大への期待も高まっている。

 ケーズホールディングス<8282>=大幅続伸。
10日の取引終了後に発表した2月の月次速報で、既存店売上高は前年同月比18.6%減となったが、前年に消費増税前の駆け込み需要があったことを考慮すると健闘したとの見方が広がっているようだ。音響商品やテレビ、ブルーレイ・DVD、理美容・健康器具などは伸長したものの、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電やエアコンが落ち込み、既存店売上高の足を引っ張った。

 共英製鋼<5440>=続伸。
SMBC日興証券は10日、同社の投資評価の「1」を継続するとともに目標株価を2500円から2600円に引き上げた。同証券では、15年3月期の連結営業利益の予想を93億円から前期比4.6倍の130億円(会社予想120億円)に増額修正している。主な要因はメタルスプレッド(製品出荷単価-鉄くず消費単価)の拡大。直近の鋼材出荷単価は下落しているものの鉄くず消費単価の下落は一段と大きく、同スプレッドの拡大が収益増につながると予想している。

 新田ゼラチン<4977>=急騰。
いちよし経済研究所は10日、同社のレーティングを新規「A」としフェアバリューを1200円に設定した。国内トップのゼラチンメーカーの同社の業績は「16年3月期には4期ぶりに回復する可能性が高い」と指摘。「北米および国内市場の回復」や「国内値上げの浸透効果」「原材料費の低減」などが寄与するとみている。15年3月期の連結営業利益は前期比47.6%減の5億円(会社予想は6億円)の見込みだが、16年3月期には14億円へ急回復すると予想している。

 ニッピ<7932>=ストップ高。
10日の取引終了後、大阪大学蛋白質研究所と共同で再生医療用iPS細胞の培養に適した「ラミニン511E8フラグメント」の製造方法を確立した、と発表。この日はiPS細胞関連の材料を好感した買いが流入している。また、この成果を踏まえ、生物由来原料基準に適合した製品「iMatrix-511MG」を15年6月ごろから販売する予定であることも明らかにした。同製品は、臨床用途での利用が可能であり、移植医療用iPS細胞の製造など、iPS細胞を利用した再生医療の研究開発への活用が見込まれている。

 丸千代山岡家<3399>=ストップ高。
1月23日につけた昨年来高値1980円を上回った。同社は10日取引終了後に、株主優待制度を導入すると発表。1月末および7月末時点で100株以上を保有する株主が対象で、保有株数に応じてラーメン無料券を贈呈する。また、同日には2月度の既存店売上高(速報値)が前年同月比7.3%増になったことを公表。20カ月連続で前年実績を上回っており、株主優待制度導入をあわせて好感されているようだ。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想