物色意欲強く切り返し、買わざるリスクが台頭

著者:冨田康夫
投稿:2015/03/03 19:58

明日の東京株式市場見通し

 4日の東京株式市場は再び上値を指向する展開となりそうだ。目先、日経平均は騰落レシオや25日移動平均線とのカイ離などから依然として過熱警戒領域にあるが、個別銘柄に対する物色意欲は根強く、“押さば買い”の投資家心理が全体相場に反映される公算が大きい。

 今の東京市場をひとことで言い表すなら「売りの手が引っ込む」相場。外国人の売りが枯れ、唯一の売り主体である個人もキャッシュポジションが高まり買い直しを促される展開。下値では日銀のETF買いやGPIFの買いがセーフティネットの役割を果たすとの思惑が強い。しかし、実際はその機能を発揮するまでもなく、買わざるリスクに背中を押され、内外の機関投資家が飛びついている構図だ。

 こういう時は得てして危うさも内包するが、現状は世界的な過剰流動性がベースにあり、売り方が暗躍する余地が少ない。目先は主力株に買い疲れ感が垣間見えるものの循環物色が利いており、日経平均1万9000円をメルクマールに上値追いの勢いはしばらく維持される可能性が高そうだ。

3日の動意株

 江守グループホールディングス<9963>=続急伸。
同社株は、中国連結子会社の売掛金の回収可能性に疑義が生じたことで予定していた第3四半期の決算発表を延期する事態に陥り、2月9日に急落した経緯がある。その後は800円台で売り買いを交錯させもみ合っていたが、目先は買い資金の流入が加速しリバウンドが鮮明となった。信用取組は大幅に売り長で信用倍率は0.5倍台、日証金では逆日歩が付く状況。

 ルネサスエレクトロニクス<6723>=後場一段高。
自動車向けを主軸とする半導体大手で北米を中心とする自動車生産の拡大やエレクトロニクス化の進展で需要回復の追い風を受けている。経営再建途上にあるが構造改革効果の浸透に伴い固定費削減も進捗、収益体質は大きく向上している。15年3月期業績は連結最終損益が740億円の黒字予想と前期の52億9100万円の赤字から脱却する見込みだ。信用取組は買い長ながら売り残も積み上がっており、株価が上値指向の局面では手仕舞いの買い戻しを誘発して上げ足が加速する株価習性がある。

 サイゼリヤ<7581>=急反発。
2日に発表した2月既存店売上高は前年同月比7.2%増と大幅な伸びとなったことが好感された。同社の既存店売上高は、14年8月期は全ての月が前年比マイナスだったが、昨年11月に1.8%増とプラス圏に浮上。今年1月の0.4%増に続き、2月は大幅増となった。ゴールドマン・サックス証券は2日、同社株の目標株価を2300円から2500円に引き上げた。投資判断は「買い」を継続した。2月の既存店売上高の伸びを受け、「国内事業の底打ちから回復の兆し」と評価している。

 ピジョン<7956>=急反発。
2日取引終了後、16年1月期の連結業績を発表。売上高920億円(前期比9.4%増)、営業利益139億円(同8.8%増)、最終利益89億円(同5.3%増)と増収増益を予想した。中国、北米などを中心とした海外既存市場を深耕するとともに、新規市場に積極参入することで、一段の業績拡大を見込む。なお、15年1月期連結決算は、売上高841億1300万円(前の期比8.6%増)、営業利益127億8000万円(同23.3%増)、最終利益84億5100万円(同21.0%増)と増収大幅増益を達成。

 ワイエスフード<3358>=一時ストップ高。
同社は2日の取引終了後、アスラポート・ダイニング<3069>と資本業務提携し、アスラポートを割当先とする第三者割当による自己株式処分を実施すると発表、これを好感している。今回の提携により、ワイエスフードは普通株式28万7300株を1株につき297円でアスラポートへ割り当てる。これによりアスラポートはワイエスフード株式の発行済み株式総数の7.42%を保有することになる。

 アエリア<3758>=大幅高で5日続伸。
2日の取引終了後、オンライン電子出版に特化したアフィリエイト事業を展開するインフォトップ(東京都渋谷区)の持ち株会社であるインフォトップキャピタル(ITC)を株式交換で完全子会社化すると発表しており、これを好感した買いが入っている。ITC株1株に対して、アエリア株4417株を割り当てる予定で、交付する新株式数は88万3400株。これにより、インフォトップはアエリアの孫会社となり、将来的には合併なども検討するとしている。なお、株式交換の効力発生日は4月24日を予定している。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想