今年のドル円は複雑な動きに

著者:菊川弘之
投稿:2015/01/09 13:48

金の下値がしっかりしてきた

 2015年の幕開けは、リスク回避で始まった。原油価格下落に伴う新興国リスクや、ギリシャの選挙を受けたEU離脱懸念などが嫌気され、昨年12月には121円台であったドル円も118円台までの修正となった。

 その後、12月ADP雇用報告では、民間雇用者数が前月比+24.1万人と市場予想(同+22.5万人)を上回った事もあり下げ一服、今晩の雇用統計待ちとなっている。 12月8日高値を起点とした下降トレンドと12月16日安値を起点とした三角保合いを形成中で、放れ待ちの様相だ。

 雇用統計の事前予想は、非農業部門雇用者数が前月比+24.0万人、失業率は同-0.1ppの5.7%予想。賃金動向や経済的理由のパートタイムといった労働市場指標が引き続き焦点に。
 
 12月分のFOMC議事録で示されたように、「フォワード・ガイダンスの「辛抱強く」への変更について、大半の参加者は政策変更の柔軟性を高めるために有用とし、「少なくとも今後2回の会合では正常化のプロセスを始める可能性が低い」としたイエレン議長の見方がメンバー内でも共通認識となっている事で、雇用統計でよほど事前予想と大きな乖離がなければ、ギリシャ選挙(1/25)やECB理事会(1/22)を控えて、様子見ムードが継続する可能性もあろう。

 今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)投票権を持つメンバーは、昨年のタカ派巨頭のフィラデルフィア連銀プロッサー総裁とダラス連銀フィッシャー総裁が外れた。新たに入ったのがハト派のシカゴ連銀のエバンス総裁だが、8日シカゴ大学での講演で「利上げを早めるリスクについて、壊滅的」と直近に警戒を示していることもあり、ドル円は雇用統計で強気の数字が出て発表直後は買われても、戻り売り圧力も高いだろう。
 
 市場コンセンサスは2015年の年央利上げ開始であり、それも小幅な利上げに留まりそうで、一気に12月高値を上抜いて、市場が期待している124円台へのトライと言う流れにはならないと見る。124円台は過去何度となく、チャート上の節目となった水準だ。

2012年末からスタートした円安ドル高も3年目に入り、強弱思惑が交錯しやすく、日欧によるジャブ付き相場の中、これまでのような上げ一辺倒ではない複雑な動きが、今年のドル円には見られそうだ。

また、ドルと逆相関のNY金は、1200ドル以下は買われて底堅くなっている。英情報局保安部(MI5)は8日、シリアのイスラム過激派組織が、欧米で「大量の犠牲者を出す攻撃」を計画しており、情報機関にも阻止できない恐れがあると警告している。今年も地政学リスクが波乱となりそうである。
菊川弘之
日産証券調査部 主席アナリスト
配信元: 達人の予想