目先は下値試す展開に、海外市場の動向も注視

著者:冨田康夫
投稿:2014/12/09 19:27

明日の東京株式市場見通し

 10日の東京株式市場は、きょうの地合い悪化を引き継いで売り優勢の展開が想定される。

 ここ日経平均株価は過熱警戒感が意識されながらも、押し目買いに押し目なしの強調相場を続けてきたが、前日の1万8000円台へのワンタッチで振り子は振れ幅限界、揺り戻し局面に移行しそうだ。9日大引け時点で東証1部の騰落レシオ(25日移動平均)は119%と過熱警戒ゾーンとされる120%をわずかに下回ってきたが、過去の経験則でもいったんトレンドが変わると80%割れ水準まで調整するケースが多い。

 9日前場は日銀のETF買いに対する期待から下値抵抗力をみせたものの、後場は為替の円高とアジア株安でこれが剥落した。特に中国・上海総合指数の下げがきつく、連鎖して欧米株安につながるようだと、10日の東京市場の下げもきつくなる可能性がある。週末はメジャーSQ、14日の日曜日には衆院選挙を控え、様子見ムードが強まりそうだが、選挙後は政策期待から切り返してくる可能性があり、中期視野で調整局面は買い場探しと前向きにとらえる必要がある。

9日の動意株

 ジェクシード<3719>=一時ストップ高。
同社はきょう、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)と販売代理店契約を結んだと発表。これが買い手掛かりとなっているようだ。この契約で、同社はNTT comクラウド上に仮想PCを作成するデスクトップ仮想化サービス「BizデスクトップPro」の販売と、導入支援サービス「GX_SmadesX」の提供をきょうから開始する。

 東京製綱<5981>=6日続伸。
同社が手掛けるワイヤロープは国土強靭化をテーマとする国策を背景に、橋梁の補修需要などで今後も中期的に高い需要が見込まれる。また、海外でもアジア新興国などで社会インフラ整備需要が漸次拡大する方向にあり活躍余地が広がっている。15年3月期の連結最終利益予想を26億円から37億円に上方修正していることが買いの根拠となっているが、注目されるのはむしろ同社株特有の人気性だ。数量商いをこなしつつ値刻みを利かせながら買い進まれる展開は過去に何度も経験があり、全員参加型材料株としての資質が市場の間でも意識されているようだ。

 松風<7979>=反発。
歯科材料・機器の大手で人口歯では高い実績、また研削材料にも展開している。奥歯の被せ物材料のハイブリッドレジンブロックが保険収載されたことに伴い収益が押し上げられ、15年3月期の連結営業利益を従来予想の10億4800万円から14億1000万円(前期比43%増)に上方修正しているが、下期見通しが保守的で市場筋の間では一段の上振れ余地が指摘されている。

 図研<6947>=大幅反発。
この日は、SMBC日興証券が8日付で投資判断を新規に「A」でカレバレッジを開始したことが観測されている。同証券では、同社は現在、転換点にあると指摘。成長戦略として掲げている、オートモーティブ分野への拡販や、北米市場におけるマーケティング強化などにより、中期的に利益の拡大が見込まれ、利益成長を考慮すると現状の株価は割安であるとしている。

 合同製鉄<5410>=大幅高。
H形鋼を主力とする新日鉄住金<5401>系の電炉メーカーだが、スクラップ価格の下落と前期の減損処理の一巡で損益が急速に改善している。14年4~9月期の粗鋼生産量は、消費増税による反動減が懸念される中で、前年同期比横ばいの5556万トンと健闘、下期も自動車向け鉄鋼需要が一巡するものの、造船向けや建設向けが引き続き好調でこれを補う見通し。鉄鋼業界にとって収益環境面では為替の円安進行に伴い海外での競争力が高まっていることもポイントだ。そのなか、同社の15年3月期最終損益は26億円の黒字(前期は25億2800万円の赤字)を見込んでいる。

 パナソニック デバイスSUNX<6860>=続騰。
急拡大途上にある中国スマートフォン市場は現地メーカーの生産設備増強の動きを加速させ、主力の光電センサーや、レーザーマーカーなどが好調に推移、足もとの収益を押し上げている。会社側は下期に慎重な見方を示しているが、一方で自動車設備関連向けも高水準で収益に寄与しており、為替の円安効果も考慮して15年3月期通期の経常利益38億円(前期比5.5%増)は上方修正される公算が大きい。ここ証券系調査機関でも同社株に対して強気な見方が相次いでおり、上値期待が増幅されているようだ。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想