満月の雇用統計が分水嶺

著者:菊川弘之
投稿:2014/12/05 14:12

暫定予算案・債務上限問題にも注意

95年円高時との比較
 ドル円は12月4日海外時間で、7年4ヶ月ぶりの120円台乗せとなった。ADP雇用時計は、事前予想を下回ったものの、将来的な日米金融政策の見通しの差や、衆院選での与党大勝予想に加えて、「ECBが1月会合に向けて広範なQE準備」との報道も円安ドル高の流れに拍車をかけた。11月の石油輸出国機構(OPEC)総会では減産合意に至らず、OPECは価格維持に動かないことを強調。これを受けてNY原油は急落、ノルウェークローネ、カナダドル、メキシコペソ、英ポンドといった「原油銘柄」が売られ、米ドルが買われている流れも継続だ。原油安が進めば、ECBと日銀は追加緩和に傾斜しやすいとの見方もある。
 ただし、昨晩はNY引けにかけて利食いの動きから120円は維持できず、十字線で引けた。早々に十字線高値を更新できないと、修正が予感される形状だ。

 テクニカル面からは、52週移動平均線との乖離率が120円を超えてくると、2013年5月の修正局面時との乖離率に接近する。また、上値抵抗として意識されるのが、1998年8月高値~2011年10月安値までの下げ幅に対する61.8%戻し(120.10円)~207年6月高値の124.15円。
 今回の相場を、同じように歴史的なスピード感を伴って円高に進んだ95年相場と比較(軸は反対)してみると、自己相関の強いフラクタルな状況となっている。120円水準を超えてくると、一旦は黄色信号~赤信号が点滅する可能性にも注意したい。ただし、フラクタルは、その自己相関が崩れた場合、崩れた方向に大きく動意付く傾向があるため、120円での達成感で修正が入らず、自己相関が崩れた場合は、円安がさらに加速するリスクも高い。
 
 本日は満月であり、相場が荒れやすい時間帯だ。

 本日発表の11月雇用統計が、トレンド反転となるのか、それとも加速となるのかの分水嶺となりそうだ。事前予想は、非農業部門雇用者数を前月比+23.0万人、失業率を同5.8%と予想されている。予想との乖離が材料視される。また、賃金、経済的理由パートタイム、長期失業問題といった労働市場の供給余力に関する指標も合わせて注目されよう。

 なお、米暫定予算は12月11日に期限を迎える。米議会は政府機関の閉鎖回避に向け、新たな予算案を承認する必要がある。政府機関の閉鎖を回避したい米共和党のベイナー下院議長ら党指導部に対し、党内保守派は予算案を利用して移民改革に関する大統領令の資金手当てを断ち切ることを望んでおり、党内の足並みは揃っていない。ベイナー議長は、国土安全保障省を除く全政府機関の資金を2015年9月末まで手当てする暫定予算案を来週下院で承認する見込みと述べているが、国土安保省は、オバマ米大統領が署名した移民改革に関する大統領令の実施を担う機関で、予算案では来年2月頃までのつなぎ資金を手当てする内容。共和党はこの大統領令に猛反発しており、国土安保省向け予算を短期だけ延長することで、新議会が始まる来年初めに攻勢を強めると思われ、3月15日で期限が切れる米債務上限問題と合わせて、雇用統計後にドル売り材料視される可能性にも注意したい。
菊川弘之
日産証券調査部 主席アナリスト
配信元: 達人の予想