雇用統計を受けたNY株価の反応が注目

著者:菊川弘之
投稿:2014/09/05 14:42

勝負はFOMCへ持越しも

雇用統計発表に先んじてドル円は、年初来高値を更新した。日米欧の三極の中では、日欧が追加緩和の動きが継続しそうな中、米国は10月にテーパリング終了、来年早々にも出口への舵取りが行われるのではないかとの思惑が材料視された週であった。

 今週末~来週初にかけては、一目均衡表で雲のねじれの時間帯に当たっており、トレンドが加速する可能性と同時に、トレンドが反転するリスクも内包している。オシレーター系の一部指標では、逆行現象も観測される。

 今晩の雇用統計では、非農業部門雇用者数や失業率に加えて、イエレン体制になってから注目度合いが高まっている、いわゆるイエレン・ダッシュボード(労働参加率や長期失業者の割合など9項目)の数値にも注目が集まりそうだが、弱気の数字が出た時よりも、強気の数字が出て、QE政策の終了から一気に引き締め観測が高まった場合の方が波乱含みになりそうだ。

 強気雇用統計を受けてドル買いが一時的に強まっても、史上最高値近辺で今週は保合いを続け、7月高値と9月高値でダブルトップ形成にも見えるNYダウが高値更新できずに反落するようなら、一目均衡表の雲の切り下がりに沿うような恰好で下落する可能性も考えられ、この場合は、リスクオフでドル高から調整含みの円高ドル安へ転じるような上下に荒い動きも想定される。

 秋のNY株式市場は、あまり分の良い時間帯ではない。特に中間選挙年の第3四半期は反落傾向が過去確認される。また、過去のQE終了時には、15~20%程度の調整が起きている。来週には9.11記念日を控えており、2人の米国人殺害映像公開で腰の重かったオバマ米大統領も3日、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」が中東地域で勢力を失うまで戦い続ける決意を表明した。中間選挙対策の側面もあろうが、レイムダッグ化したオバマ政権が泥沼に再び落ち込む可能性もあろう。

 エリオット波動からは、NYダウは第5波形成とカウントする事も可能で、17361.40ドル前後がザラバでのターゲットで、現在の値位置からはほぼ達成(もしくは失敗)と見る事も可能であろう。一目均衡表では長期波動でのY字型の上限を突破しており、いつ落ちてもおかしくない黄色信号が点滅中だ。

 NY株価の天井打ちは、今晩の雇用統計ではなく、今月のFOMCまで勝負持越しの可能性もあるが、夏までの夏枯れ相場と異なり、秋は金融市場で波乱相場の匂いがしている。

 ドルと逆相関のNY金も、1250ドル近辺の支持線が意識されているような動き。金の持つ「通貨」としての顔では上値が抑えられやすいものの、「モノ」としての顔からは生産コスト水準が支持要因として働いている。ドルと金の逆相関もこの値位置からは薄れてくるかもしれない。ドル高にも関わらず下げ渋っているNY金の動きは、世界各所で燻っている地政学リスクの火種の匂いを、金が嗅ぎ始めているためかもしれない。
菊川弘之
日産証券調査部 主席アナリスト
配信元: 達人の予想