再浮上近づく「農業関連」

著者:冨田康夫
投稿:2014/08/12 21:24

成長戦略、特区構想で脚光

 農業改革が市場の関心を集めている。政府の新成長戦略では、農業を成長産業とすることを掲げた。大規模化を進めるほか、閉鎖的とされた農業への新規参入などを促す方針だ。特に、「農協改革」にも踏み出す姿勢を示しており、日本農業の構造改革を進める姿勢をみせている。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉も秋口にかけ、協議が本格化する見込みであり、今後、農業関連株は再浮上する可能性が高い。

 安倍政権による6月の成長戦略の発表では「攻めの農林水産業への転換」が掲げられた。具体的には、農業生産法人や農業協同組合の一体的改革を進めるほか、2018年からをメドに米の生産調整(減反)を中止する。

 また、「官民ファンド活用による農業の活性化」を進めるほか、酪農の流通チャネルの多様化などを促進する。

 政府は、農業を生産(第1次産業)としてだけでなく、食品加工(2次産業)や観光・小売などのサービス業(3次産業)までを融合した「6次産業化」させることを推進する方針だ。

 農家の大規模化や減反の見直しによる遊休農地の再活用、それに「農協改革」などにより、農業関連の市場規模の拡大が見込め、農業機械や農薬、肥料といった農業関連企業は追い風が期待できる情勢だ。

 この流れは、農業に参入しているイオン<8267>ワタミ<7522>などの企業にも事業規模拡大のチャンスとなりそうだ。

農業IT化の注目銘柄

 成長戦略では、現在約4500億円規模の日本の農林水産物の輸出額を2020年に1兆円に乗せ、30年までに5兆円を目指すことを目標にしている。

 さらに新潟市などを国家戦略特区に指定し、農業の国際競争力強化のための拠点を形成する。九州と同程度の国土面積しかないオランダが、米国に次ぐ農産物の輸出高を誇っており、ICT(情報通信技術)を活用した“オランダ型農業”を進める姿勢を強めている。

 こうしたなか井関農機<6310>クボタ<6326>などを含む農業関連銘柄の株価は、TPP交渉が9月以降、協議が本格化する見込みで、今後見直し機運の台頭で再動意の可能性が高い。

 具体的には、「農協改革関連」では、農林中金や全国農業協同連合会(全農)が大株主に名前を出している日本農薬<4997.T>クミアイ化学工業<4996>北興化学工業<4992>などの農薬メーカーが注目される。また、農機具や肥料販売などの市場開拓でコメリ<8218>や農業資材の販売に参入したMonotaRo<3064>、野菜苗生産のベルグアース<1383>など。

 企業の農業への参入では、サイゼリヤ<7581>やバロー<9956>などの展開も関心を集めている。

 農業のIT化ではセンサーから作物の生育状態を観測し適切な収穫時期を予測する事業を展開するNEC<6701>や、植物工場関連の富士通<6702>などが注目されている。

 また、海外の和食ブームや円安が追い風となり国産農産物の輸出化への期待も膨らんでいる。米の輸出が増加傾向にあり、国産米の輸出増を進める木徳神糧<2700>や日本から有機農産物を輸出するサービスを香港で展開するオイシックス<3182>、それに和食のレシピなどで海外展開を進めるクックパッド<2193>なども農業改革の恩恵が期待できる。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想