23日の金曜日に向けて火種多し

著者:菊川弘之
投稿:2014/05/21 19:41

ドル円は、200日移動平均線割れ

 今週末は、13日の金曜日ならぬ23日の金曜日。そう、歴史的な株急落を見せた2013年5月23日から1年目を迎える。昨年5月はザラバで1万5942.60円の高値をつけた日経平均株価は1万4483.98円(前日比1143.28円安)まで急落。長大陰線を付けて、6月13日安値(12415.85円)までの大幅続落となった。ドル円も同じような足取りで、昨年は5月22日の103円台から6月13日の93円台までの急反落となった。

 「5.23」株急落の背景となったのは、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)前議長が量的緩和縮小を示唆した事に加えて、中国の5月の製造業PMI(購買担当者景気指数)が、景況感の境目となる50を割り込んだショックだったが、今週も22日(木)に5月の中国PMIが発表される。昨年と異なり、既に4ヶ月連続で50を下回っている状況で、シャドーバンキング問題に伴うデフォルト懸念も燻ったままだ。各国との海洋領有権紛争において、強引で一方的な動きを進めているのも、国内問題を外部問題にすり返るためかもしれないが、「米、中国軍5人をサイバー攻撃スパイ容疑で刑事訴追」という新たな火種も出て来るなど、中国経済への不安感からのリスクオフが、いつ噴出してもおかしくない状況だ。

 本日は、日銀金融政策決定会合後の黒田日銀総裁会見に合わせるかのように、ドル円が200日移動平均線を割り込み、追加緩和催促相場のようになった。既に101円台を割り込み、年初来安値の攻防に差し掛かっている。今晩は、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録に加えて、イエレンFRB議長を始め、ダドリー・ニューヨーク連銀総裁、ジョージ・カンザスシティー連銀総裁、コチャラコタ・ミネアポリス連銀総裁などの講演が予定されており、量的緩和を粛々と縮小・終了させるが、引き締めへの転換は急がないとのハト派色が再確認されると、米ドル金利低下からの円高ドル安圧力が強まりやすい。ドル円が年初来安値更新となって、明朝、東京市場がオープンすると、株価下落圧力も高まるだろう。そこに追い打ちをかけるように中国PMIの数字が悪くなると、1年前の再来のような値動きも想定される。日経平均を見る上で、まずはドル円が200日移動平均線を割り込んで下げ加速となるのか、それとも、押し目が買われて、200日移動平均線の下値支持が確認されるのか否かに注目したい。

25日(日)には、ウクライナ大統領選挙が控え、来週にはメモリアルデー(戦没者追悼記念日)に伴う休場が控えており、週末にかけては、ポジション調整が進みやすい地合いでもある。薄商いの中、投げが投げを呼んで値段が飛んでしまうリスクにも注意したい。

 ドル円が下に放れた場合、一目均衡表からは、N=100.19円、V=99.59円、E=98.48円などがカウントできる。

 ただし、米通商代表部(USTR)のフロマン代表の最近の言動を見ると、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉について、「明確に最終段階を迎えている」「日本は最近、これまでより有意義な交渉をするようになった」と述べるなど、日本側の妥協による決着が近づいている事を示唆している可能性もあり、大統領選挙後のウクライナ新政権との話し合いをロシアが示すなどした場合、今週から月末にかけてリスクオフが高まっても、5月29日からのワシントンで日米実務者協議、6月4日~5日のブリュッセルでのG7サミット辺りで、リスクオンに突然変わってしまうと言うシナリオもあるかもしれない。この場合は、円安・株高のスタートとなるだろう。
 反対に、6月に入っても地政学リスク・金融リスク共に混迷が続くようなら、昨年の5.23ショック時の値幅と調整の日柄が意識される展開となろう。
菊川弘之
日産証券調査部 主席アナリスト
配信元: 達人の予想