【兜町スクランブル】「日経平均6万円」の虚像と実像、モメンタム投資の熱狂は続くか
日経平均株価が取引時間中として初めて6万円台に乗せた。とはいえ一部銘柄に資金が集中した結果の節目到達である。緊迫化したイラン情勢により経済・物価の不確実性が高まり、TOPIXは足踏みを続けている。値動きのいい銘柄のトレンドに追従するモメンタム投資が席巻するなか、米国では主要ハイテク企業の決算発表を控えており、今後の相場の方向性を占う試金石となる。
●「テンバガー」実現へ8合目通過
日経平均は23日、一時6万0013円98銭まで上昇した。5万円の節目を突破したのが昨年10月27日。半年足らずでおよそ1万円上昇したこととなる。ザラ場ベースでみると、リーマン・ショック時の2008年10月につけた安値が6994円90銭だ。10倍すると6万9949円である。きょうつけた新高値は、テンバガーの水準に対して8合目を超えて9合目に向かう過程となるといえる。
日本株の流れを大きく変えたのが、12年11月14日。党首討論の場で当時の野田佳彦首相が衆院解散・総選挙を表明した日を転換点とするアベノミクス相場である。同日の安値は8653円49銭。安倍政権下での高値は18年10月2日の2万4448円07銭で、この間の上昇率は約2.8倍だ。
今回の上昇相場の起点をどこにとるかは議論が分かれるところではあるが、米オープンAIが「チャットGPT」を公開したのが22年11月30日で、同日の日経平均終値は2万7968円99銭だ。これを起点としてAI相場が続いているとするならば、日経平均の上昇率は2.1倍となる。単純にアベノミクス相場の上昇率を掛け合わせると、日経平均は7万8000円台まで上昇余地が広がる。すでに外資系証券では今年末の日経平均が7万円となる予想を示しているところがある。ザラ場ベースでの日経平均の「テンバガー」の年内達成が実現するか注目されそうだ。
半面、TOPIXは3日続落し、イランでの軍事衝突前につけた史上最高値を下回って推移している。日経平均とTOPIXを割ったNT倍率は15.91倍と過去最高の水準だ。4月に入りキオクシアホールディングス<285A.T>やソフトバンクグループ<9984.T>、アドバンテスト<6857.T>といった値がさの半導体株が買われ、日経平均を押し上げている。
ホルムズ海峡の事実上の封鎖を受けたインフレと消費低迷リスクへの警戒感が消えたわけではないものの、米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は22日まで16連騰と異彩高を演じている。AI・半導体関連企業に関しては「業績面でのビジビリティーが高く、ガイダンスリスクが少ない」(アイザワ証券の三井郁男投資顧問部ファンドマネージャー)という。
●「下がれば買い」の集団心理
日米株式市場ともにモメンタム投資が活発化し、ハイテク株への一極集中を促す要因となっている。高い価格モメンタムを持つ銘柄を重視し設計された「MSCIワールド・モメンタム指数」の3月末比の上昇率は22日時点で14.4%。同期間のMSCIオール・カントリー・ワールド指数の上昇率(9.5%)をアウトパフォームしている。
トランプ大統領が市場に対し口先介入を繰り返し、相場のトレンド形成の決定力を持つ局面が長く続いたことが、モメンタム投資への傾斜を後押しする一因となったとみられている。加えて、「下がれば買い」が有効な投資戦略として強く認識されていることも大きい。過去10年間でナスダック総合株価指数が押し目らしい押し目を形成したのは、コロナ禍の初期と、インフレへの対応のために米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを続けた22年ぐらいである。23年以降、クレディ・スイスの「AT1債」問題を受けた金融不安や、日銀利上げ後の円キャリー取引の逆回転によるショックがあり、25年4月には相互関税ショックが到来したが、いずれも短期間で収束した。
指数連動型のパッシブ系ETF(上場投資信託)の存在感の拡大も、株式相場の下値を支えるうえで大きな役割を担っていると考えられている。英調査会社ETFGIによると、世界全体のETFの運用残高は26年3月末時点で約20兆780億ドル。コロナ禍前の19年末との比較で約3.2倍に膨らんだ。過剰流動性に支えられた相場環境において、スマートフォンで売買する個人投資家だけでなく、多くの機関投資家も、調整局面で米株をはじめとした指数連動型ETFを購入し続けてきた構図が透けてみえる。
過剰流動性相場は緩和的な金融政策の産物と言える。米連邦準備制度理事会(FRB)はQT(量的引き締め)を昨年12月に終了し、22年以降のバランスシート縮小局面はいったん終止符が打たれることになった。バランスシートは今年に入り緩やかに拡大している。次期FRB議長候補のケビン・ウォーシュ元理事は膨張したFRBのバランスシートの縮小を持論としているものの、マーケットは額面通りには受け止めていないもようだ。ウォーシュ氏が次期FRB議長になったとしても、バランスシートの縮小はマーケットにショックを及ぼしかねないだけに、容易ではない──。そんな見方も、過剰流動性相場の継続への期待感を高める方向に作用していると言い切れなくはない。
●TOPIX高値奪還に注目
マーケットの調整が短期で収束するパターンを繰り返すのならば、調整一服後の「買い遅れ」は投資リターンの低下に直結することにつながる。米国では4月23日にインテル<INTC>が決算を発表するほか、月末までにクアルコム<QCOM>、メタ・プラットフォームズ<META>やアルファベット<GOOG>、アマゾン・ドット・コム<AMZN>といったハイテク企業の開示が相次ぐ。好決算を先取りする形ともいえるハイテク株高は「乗り遅れる恐怖」をもたらし、モメンタム相場の色彩をより際立たせている。
日本国内では安川電機<6506.T>が今期増益計画を示し、市場参加者に少なからず驚きと安心感を与えた。3月期企業の決算発表はこれから本格化し、月内では半導体関連では27日にアドテスト、30日に東京エレクトロン<8035.T>が決算を開示する予定だ。内需系企業を中心に保守的な今期予想を打ち出すところが相次ぐとみられているものの、上場企業全体では増益計画が示されるとの見方が広がっている。「全体的に業績予想が慎重なものになる可能性については、マーケットの織り込みが進んだ。中東情勢と原油相場が落ち着きをみせるようになれば、上方修正期待が高まることも見込まれる」(三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジスト)との声もある。
上場企業全体の増益計画をよりどころとし、一部銘柄に集中する資金が他銘柄にシフトするかどうか。TOPIXの高値奪還に市場参加者の注目が集まっている。(長田 善行)
出所:MINKABU PRESS
●「テンバガー」実現へ8合目通過
日経平均は23日、一時6万0013円98銭まで上昇した。5万円の節目を突破したのが昨年10月27日。半年足らずでおよそ1万円上昇したこととなる。ザラ場ベースでみると、リーマン・ショック時の2008年10月につけた安値が6994円90銭だ。10倍すると6万9949円である。きょうつけた新高値は、テンバガーの水準に対して8合目を超えて9合目に向かう過程となるといえる。
日本株の流れを大きく変えたのが、12年11月14日。党首討論の場で当時の野田佳彦首相が衆院解散・総選挙を表明した日を転換点とするアベノミクス相場である。同日の安値は8653円49銭。安倍政権下での高値は18年10月2日の2万4448円07銭で、この間の上昇率は約2.8倍だ。
今回の上昇相場の起点をどこにとるかは議論が分かれるところではあるが、米オープンAIが「チャットGPT」を公開したのが22年11月30日で、同日の日経平均終値は2万7968円99銭だ。これを起点としてAI相場が続いているとするならば、日経平均の上昇率は2.1倍となる。単純にアベノミクス相場の上昇率を掛け合わせると、日経平均は7万8000円台まで上昇余地が広がる。すでに外資系証券では今年末の日経平均が7万円となる予想を示しているところがある。ザラ場ベースでの日経平均の「テンバガー」の年内達成が実現するか注目されそうだ。
半面、TOPIXは3日続落し、イランでの軍事衝突前につけた史上最高値を下回って推移している。日経平均とTOPIXを割ったNT倍率は15.91倍と過去最高の水準だ。4月に入りキオクシアホールディングス<285A.T>やソフトバンクグループ<9984.T>、アドバンテスト<6857.T>といった値がさの半導体株が買われ、日経平均を押し上げている。
ホルムズ海峡の事実上の封鎖を受けたインフレと消費低迷リスクへの警戒感が消えたわけではないものの、米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は22日まで16連騰と異彩高を演じている。AI・半導体関連企業に関しては「業績面でのビジビリティーが高く、ガイダンスリスクが少ない」(アイザワ証券の三井郁男投資顧問部ファンドマネージャー)という。
●「下がれば買い」の集団心理
日米株式市場ともにモメンタム投資が活発化し、ハイテク株への一極集中を促す要因となっている。高い価格モメンタムを持つ銘柄を重視し設計された「MSCIワールド・モメンタム指数」の3月末比の上昇率は22日時点で14.4%。同期間のMSCIオール・カントリー・ワールド指数の上昇率(9.5%)をアウトパフォームしている。
トランプ大統領が市場に対し口先介入を繰り返し、相場のトレンド形成の決定力を持つ局面が長く続いたことが、モメンタム投資への傾斜を後押しする一因となったとみられている。加えて、「下がれば買い」が有効な投資戦略として強く認識されていることも大きい。過去10年間でナスダック総合株価指数が押し目らしい押し目を形成したのは、コロナ禍の初期と、インフレへの対応のために米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを続けた22年ぐらいである。23年以降、クレディ・スイスの「AT1債」問題を受けた金融不安や、日銀利上げ後の円キャリー取引の逆回転によるショックがあり、25年4月には相互関税ショックが到来したが、いずれも短期間で収束した。
指数連動型のパッシブ系ETF(上場投資信託)の存在感の拡大も、株式相場の下値を支えるうえで大きな役割を担っていると考えられている。英調査会社ETFGIによると、世界全体のETFの運用残高は26年3月末時点で約20兆780億ドル。コロナ禍前の19年末との比較で約3.2倍に膨らんだ。過剰流動性に支えられた相場環境において、スマートフォンで売買する個人投資家だけでなく、多くの機関投資家も、調整局面で米株をはじめとした指数連動型ETFを購入し続けてきた構図が透けてみえる。
過剰流動性相場は緩和的な金融政策の産物と言える。米連邦準備制度理事会(FRB)はQT(量的引き締め)を昨年12月に終了し、22年以降のバランスシート縮小局面はいったん終止符が打たれることになった。バランスシートは今年に入り緩やかに拡大している。次期FRB議長候補のケビン・ウォーシュ元理事は膨張したFRBのバランスシートの縮小を持論としているものの、マーケットは額面通りには受け止めていないもようだ。ウォーシュ氏が次期FRB議長になったとしても、バランスシートの縮小はマーケットにショックを及ぼしかねないだけに、容易ではない──。そんな見方も、過剰流動性相場の継続への期待感を高める方向に作用していると言い切れなくはない。
●TOPIX高値奪還に注目
マーケットの調整が短期で収束するパターンを繰り返すのならば、調整一服後の「買い遅れ」は投資リターンの低下に直結することにつながる。米国では4月23日にインテル<INTC>が決算を発表するほか、月末までにクアルコム<QCOM>、メタ・プラットフォームズ<META>やアルファベット<GOOG>、アマゾン・ドット・コム<AMZN>といったハイテク企業の開示が相次ぐ。好決算を先取りする形ともいえるハイテク株高は「乗り遅れる恐怖」をもたらし、モメンタム相場の色彩をより際立たせている。
日本国内では安川電機<6506.T>が今期増益計画を示し、市場参加者に少なからず驚きと安心感を与えた。3月期企業の決算発表はこれから本格化し、月内では半導体関連では27日にアドテスト、30日に東京エレクトロン<8035.T>が決算を開示する予定だ。内需系企業を中心に保守的な今期予想を打ち出すところが相次ぐとみられているものの、上場企業全体では増益計画が示されるとの見方が広がっている。「全体的に業績予想が慎重なものになる可能性については、マーケットの織り込みが進んだ。中東情勢と原油相場が落ち着きをみせるようになれば、上方修正期待が高まることも見込まれる」(三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジスト)との声もある。
上場企業全体の増益計画をよりどころとし、一部銘柄に集中する資金が他銘柄にシフトするかどうか。TOPIXの高値奪還に市場参加者の注目が集まっている。(長田 善行)
出所:MINKABU PRESS
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