【QAあり】TSIホールディングス、FY27までに約100億円の収益改善に挑む ポートフォリオ戦略や収益構造の改革を推進

投稿:2024/09/11 11:00

はじめに

下地毅氏(以下、下地):株式会社TSIホールディングス代表取締役社長の下地です。本日はよろしくお願いします。

私は沖縄県宮古島の出身で、高校卒業後に上京し、文化服装学院でデザインを学びました。その後、上野商会に入社し、デザイナーとしてモノづくりに携わってきました。

ご縁があってTSIホールディングスの経営の分野を担当することとなり、取締役を経て、2021年より代表を務めていますが、今ももの作りの精神は私の経営の根幹です。

「デザインは社会貢献である」という思いのもと、お客さまに「歓び」や「幸せ」をお届けすること、楽しくておもしろい上質な商品を作っていくこと、お客さまに居心地の良い時間を過ごしていただく店舗空間を作ることをモットーとし、お客さま第一の商売を実践しています。

会社概要

下地:まず、会社概要です。当社は2011年に東京スタイルとサンエー・インターナショナルという会社が経営統合して発足した、プライム上場企業です。

現在は50を超えるブランドを展開しています。単なるメンズ、レディースという枠を超え、ゴルフに代表されるスポーツや、キャリア、ストリートカジュアル、アウトドアなど、幅広いカテゴリのブランドを保有しています。

販売チャネルも、路面店、百貨店、駅ビル、ファッションビル、アウトレットなど幅広く、海外は主に米国と、英国のロンドンを中心とした欧州で展開しています。

店舗数は、会社発足当時は約2,700店舗でしたが、収益構造改革を経て、現在は国内外合わせて約800店舗となっています。

レディースブランド

下地:最初に、レディース事業についてご説明します。大きなブランドとして「NATURAL BEAUTY BASIC」があります。ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、オンでもオフでも着られる通勤服やお出掛け着を中心に、幅広い世代のお客さまに長年にわたり支持されています。売上高も前期末で111億円と、規模の大きなブランドです。

ルミネや丸井などに展開している「Apuweiser-riche」「JILL by JILL STUART」「PROPORTION BODY DRESSING」や、百貨店を中心に展開している「PINKY & DIANNE」「ADORE」など、女性のお客さまにとって比較的知名度の高いブランドを複数展開しています。

レディースブランドトピックス

下地:レディースブランドのトピックスです。2019年に立ち上げた「LE PHIL」は、エレガントな見た目と機能性を備えた「現代の大人の女性の日常に寄り添う服」をコンセプトにしています。昨年11月に、4店舗目が「麻布台ヒルズ」にオープンしました。店舗数は少ないですが、ハイクラスなお客さまにも好評を博しており、成長性の高いブランドです。

「ETRÉ TOKYO」は、ECをメインに販売するD2Cブランドとして、インスタグラマーやSNSを活用した訴求と、ポップアップやコラボなどにより知名度の拡大を図っています。

ゴルフブランド一覧

下地:ゴルフブランドのご紹介です。コロナ禍において、外出需要が打撃を受けました。そのような状況の中、密にならず遊べる需要として、ゴルフ市場は想定以上に大きく成長しました。

スライドに、当社が展開する「PEARLY GATES」を筆頭としたゴルフアパレルブランドを掲載しています。

ゴルフがお好きな方はご存じかもしれませんが、男性プロゴルファーでは芹澤信雄さん、藤田寛之さん、最近優勝された岩田寛さん、女子プロゴルファーでは原英莉花さん、上田桃子さん、岩井明愛さん・千怜さんの姉妹など、そうそうたるプロゴルファーの方々と契約しています。

「次世代を育てる」「ゴルフの楽しさを広める」取り組みとして、小学生、中高生の若い世代を対象としたゴルフコンペを毎年開催しています。

プロゴルファーの原英莉花さんは、学生時代にこの大会に参加していたことからご縁があり、プロとなった今、「PEARLY GATES」や「MASTER BUNNY EDITION」など、当社ブランドのゴルフウェアを着ていただいています。

ゴルフウェア市場の国内マーケットとして、全体の約2割をTSIグループが占めており、一企業としてのマーケットシェアは1位です。コロナ禍が明けた前期は勢いが若干落ち着いてきましたが、リピーター顧客が非常に多いという特徴があり、今後もTSIグループに貢献してくれる領域と捉えています。

ゴルフブランドトピックス

下地:「New Balance Golf」では、プロも認める上級者向けのシューズを展開しました。稲見萌寧プロとの共同開発モデルも支持されています。

「PEARLY GATES」は今年で35周年を迎え、オリジナルキャラクターや「PEARLY GATES」らしいカラフルなロゴデザインでコレクションを展開しました。モデルの山田優さんをWebコンテンツに迎え、ゴルフウェア市場を盛り上げています。

「PING APPAREL」では、ウエア契約している鈴木愛プロが優勝しました。さらに、蟬川泰果プロ監修のもと、オリジナルモデルのシャツもこの夏に販売していますので、ぜひチェックしていただければと思います。

ライフスタイルブランド

下地:ライフスタイルとしてご紹介するブランドは、カジュアルなものから、アウトドア、コスメなど、幅広くあります。

英国のデザイナーブランドである「MARGARET HOWELL」は、着心地や機能性にこだわり、非常に考え抜かれたデザインでのスタイリング提案を行っています。国内外に多くのファンを持ち、商品だけでなく、マーガレット・ハウエルさんのライフスタイル自体への共感もあって、たくさんの顧客のみなさまに支えられ、50年の歴史が経ちました。

「and wander」は、「ISSEY MIYAKE」にいたデザイナーの2人が独立し、アウトドアをコンセプトにしたブランドとして立ち上げました。自分たちが活動するにあたり、「着たい」という思いの強いデザインが特徴です。国内だけでなく、欧州を中心に海外でも好調に推移しています。

ライフスタイルブランドトピックス

下地:「and wander」は、デザインはもちろん、機能性も非常に支持されており、売上は大きく成長しています。3月にオープンした「GINZA SIX店」は、インバウンドのお客さまも多く、今後さらなる拡大が望める期待のブランドです。

50周年を迎えた「MARGARET HOWELL」は、売上規模が150億円と、当社を支えるブランドの1つとなっています。2017年からスタートしている「MIZUNO」とのコラボが拡大しており、高いストレッチ性や撥水機能を備えたテクニカルウェアとして好評をいただいています。

ストリートカジュアルブランド

下地:ストリートカジュアルなどのブランド群です。「AVIREX」は、1986年に世界中で大ヒットしたトム・クルーズ主演の映画『トップガン』で、フライトジャケットの監修を手がけました。私も長らく、このブランドのデザインやマネジメントに関わっていました。

一昨年の2022年、34年ぶりに続編の『トップガン マーヴェリック』が公開され大ヒットし、その反響からフライトジャケットの人気も復活しています。新しい世代にも訴求した結果、大きな売上となりました。

「STUSSY」や「HUF」は米国発祥のブランドで、スケートボードなどのストリートカルチャーを背景に持つカジュアルブランドです。現在はアジア圏でも非常に高い人気を博しています。

ストリートカジュアルブランドトピックス

下地:「STUSSY」はインバウンド需要が非常に高く、渋谷の神南地区の店舗には多くのお客さまが常に並んでいます。米国のグローバル戦略により店舗数は絞っていますが、希少性が高まることにより、売上規模は拡大しています。こちらも、当社の売上トップテンを支える規模の大きなブランドです。

「Schott」は、革ジャンをはじめとする、100年を超える歴史を持つニューヨークのレザーブランドです。レザーがトレンドとなっている中、定番のライダースジャケットが売上を牽引しています。

110周年を迎えた2023年の秋冬には、日本国内のブランドである「NEIGHBORHOOD」とのコラボ・コレクションを発表しました。111周年の今年は、タレントのケンドーコバヤシさんをイメージキャラクターとし、ブランドのもう1つの主力商品であるシャツ・コレクションのキャンペーンを展開しています。

「HUF」は、カリフォルニアの伝説のスケーター、キース・ハフナゲルが立ち上げたストリートカルチャーを核とするブランドです。オリジナル商品のほか、アーティストや、車のTOYOTAなどの企業と異業種コラボを展開し、若年層からも大きな注目を集めています。

セレクトブランド

下地:当社は、SPA業態のほかにセレクトブランドもいくつかあります。「NANO universe」は売上高の規模が非常に大きく、次世代セレクトショップブランドとして、カジュアルファッションを牽引しています。有力な商業施設においても、良いポジションで展開しています。

個性的なアイテムを独自の感性でバイイングしているセレクトショップ「ROYAL FLASH」や「LHP」は、昨今のインバウンド需要で売上が大きく成長しています。

セレクトブランドトピックス

下地:「NANO universe」は、「ZOZOTOWN」のサイトができた当初から参入しているブランドです。「ZOZOTOWN」のみで展開する「Apo(s)ture」というブランドをリリースし、新しい取り組みをスタートしています。先日、自社サイトやアプリのリニューアルも実施しましたので、ぜひみなさまもご利用ください。

「ROYAL FLASH」は、「Guernika」「St. Michael」などをはじめとする独自の世界観を持つブランドを集めたセレクトショップです。「神宮前店」は明治通り沿いという好立地から、海外のお客さまが非常に多く来店され、1店舗としてはグループナンバーワンの売上を誇っています。

中期経営計画の骨子と策定の背景

kenmo氏(以下、kenmo):現在、利益率が低い状況が続いていると思います。この要因と改善策について教えてください。

下地:現状の利益構造として、利益率の低さが課題であると非常に強く認識しています。直近の市場環境や経営状態を踏まえ、以前発表していた中期経営計画である「TSI Innovation Program 2025」を「TSI Innovation Program 2027」としてローリングしました。ここからは、「TIP27」としてご説明します。

まず収益の部分ですが、これまでブランドの個性を強め、成長を図るために個別最適を優先し、会社運営を行ってきました。

私が社長に就任した2021年3月に、1社化統合に舵を切り、各子会社の本社を1つに集約するなどの効率化を図ってきました。それにより、基礎的な販管費の削減を図ったということです。しかし、事業運営の中身の部分は、まだできていない状況でした。

今回の「TIP27」では、その踏み込めていなかった事業運営の部分についても、全社最適に切り替え、抜本的な収益構造の改革を推進するものとなっています。

連結業績概況

下地:2014年からになりますが、過去10年の売上高と営業利益率の推移を記載しています。業績の同業他社比較は補足資料にありますので、後ほどご覧ください。

10年前は店舗数も多かったため、売上高は1,800億円規模でしたが、コロナ禍で一時、売上高が大きく低迷しました。ただし、コロナ禍が明けてからは徐々に回復基調にあります。

しかし、営業利益率で見るとおおむね横ばいとなっており、ここが当社の厳しい課題であると認識しています。次のページ以降で、収益性を改善するための施策についてご説明します。

収益構造改革|全社を挙げた“稼ぐ力” の追求

下地:先ほどお話しした効率化のイメージです。上段はこれまでの体制を示しています。デザインはブランドの個性に直結しますので、統一化というよりは、育成の仕組みを作り、より個性的で強みを活かせる体制を作っていきます。

生産・調達については、これまでそれぞれのブランド事業部がハンドリングしており、全体で見ると仕入れ先が膨大に増えていました。セレクトショップの業態もありますので、一概に集約はできないのですが、親和性のあるブランド群でスケールメリットを活かせるよう、仕入れ先の集約を図っていきます。

価格設定・需給管理についても、各ブランド事業部で独自のルールに基づいて値付けしていました。今後は一定のルールやインフラを整えて、品質やデザインに見合う価格と価値の提供を目指していきます。

販売については、今まではブランドの訴求力を上げるために、ブランドごとにECサイトを設けていました。コロナ禍前はこの戦略が功を奏し、EC成長率に貢献し、同業他社の中でも優位性を保って進めてきました。

しかし、コロナ禍を経て、お客さまの購買行動や市場環境が変わってきています。それに加え、当社が保有するブランドのポジショニングを鑑みると、1人の方のライフスタイルの多様性に寄り添い、1回のお買い物で幅広く当社の商品を購入していただきたいという思いも込め、効率化を図ることからもECサイトの集約を進めていきます。

収益構造改革|27/2期に約100億円の収益改善をやり遂げる

kenmo:収益性改善のため、仕入れ先の集約化を始めていると思いますが、これまでの進捗について教えてください。また、仕入れ先はどのあたりの地域が多いのでしょうか?

下地:収益性改善のため、構造改革として5つの施策を掲げています。仕入原価低減はその施策の1つです。

これまでブランドの個性を活かすため、仕入れ先の選定についてはブランド主体で行ってきました。その結果、ブランドの個性を打ち出せるモノづくりができましたが、仕入れ先の数が増えています。

セレクト業態のブランドを集約してしまうとおもしろみがなくなってしまいますので、主に自社で製造するSPA業態のブランドによる仕入れ先の集約を進めています。集約することで、スケールメリットを活かし、上がり続けている原価を抑制する仕組みです。

今期から来期までに集約を進め、「TIP27」の最終年度である2027年までに30億円の改善を見込んでいます。すでに各仕入れ先との面談を進めており、今期の下期から少しずつ効果が出てくるものと予想されます。

仕入れ先については、海外が約8割あり、そのうち6割強が中国です。

kenmo:スライドに「販促・セール施策の見直し」との記載がありますが、具体的にどのようなことを行っていますか? また、「予測需要による生産型数・数量の最適化」とありますが、これはITベンダー等と協力して需要予測の仕組みを新たに導入しているのでしょうか?

下地:販促の施策に関する課題点をご説明します。今、円安や原材料の高騰に対し、適切な値上げができていない状況です。商品をたくさん作ることでコストを下げてきましたが、過剰在庫のセール施策を見直すことで、売上高や総利益の改善を図っていきます。

過去、業界全体の反省材料として、多くの商品を作り、セールで売上を作る慣習がありました。商品を作りすぎてしまい、余った在庫をセールで販売する流れができてしまったということです。

セールはある意味、お客さまにとっては良いことかもしれませんが、その背景では通常の価格でお買い上げいただいたお客さまを裏切ってしまうことになりますし、サステナビリティの観点からも問題視されています。したがって、適切な価格で適切な量を販売していきたいと考えています。

価格については、単純に値上げするということではなく、独自のデザイン性や機能性など、品質に見合った価値を提供する必要があります。これまではブランド側の経験に基づいて価格設定を行っていましたが、競合とのポジショニング、消費者の感度を踏まえ、価格の幅を持たせた設定の仕組みを作っていきます。

消化率100パーセントは現実的ではありませんが、売れ行きに応じて、迅速かつ柔軟な値引きで消化を促進する仕組みもあわせて策定していきます。

需要予測においては、AIもある程度使える部分はありますが、現時点ではあくまで補助的なものです。価格設定や消化促進のための値引きタイミングなどは、外部パートナーの知見を借りながら仕組み作りを図っていきます。

次に、店舗改革以降についてもお話しします。店舗改革は、店舗や人員の効率性・生産性の向上です。イメージとしては、現状、1つの百貨店やファッションビルにTSIグループの店舗が複数出店しています。

もちろん、それらすべてを集約するわけではありませんが、親和性の高いブランドを1つの大型店として複合店舗化することで、買い回りしやすくする施策です。

また、アパレル業界は販売員の人手不足が深刻な問題となっています。店舗を複合店舗化することで、人員のバランスも取りやすくなり、現場としてもシフトが組みやすくなるため、働きやすい経営環境を整えることが可能となります。

不採算店舗の統廃合を含め、固定費を圧縮しつつ、現場の人手不足も解消する施策を想定しており、最終年度までに15億円の効果を見込んでいます。

EC統合に関しては、グループ全体のEC売上高の約7割を占める子会社である株式会社TSIの各ブランドECサイトを今期中に統合します。44ブランド、13サイトが1つのサイトとして生まれ変わることで、来期以降、ランニングコストで5億円の削減効果を見込んでいます。

ここでの一番の効果は、サイト統合に伴い、顧客情報やポイント施策を一本化でき、買い回りの向上や一人ひとりのお客さまに沿ったご提案をメルマガやアプリで行えることです。

さらに、1つのブランドしか知らなかったお客さまに当社の保有するブランドを訴求することで、当社の認知度アップも見込めます。統合によって、より良い顧客体験と付加価値の向上を目指していきます。

販管費削減は、費用対効果を厳密に図っていく施策です。一般的な経費削減はもちろん、広告宣伝費の見直しや組織・人員体制の見直しにより、販管費の効率化を図っていきます。

3月からコストコントロールのため、一定の金額以上の案件については、審議を図るプロジェクトを設けています。今期から効果が一部発現しますが、最終年度までに25億円の効果を見込んでいます。

強化ブランドの選定|ブランドポートフォリオの明確化

kenmo:これだけ多くのブランドがあると、ポートフォリオ戦略が重要になってくると思います。流行り廃り等もあるアパレル業界の中で、今後、御社が注力していきたいブランドや、撤退基準について教えてください。

下地:スライドの図は、成長戦略を示しています。おっしゃるとおり、当社は小規模のブランドを含め、57のブランドを運営しています。これらのブランドポートフォリオを、成長性・収益性で4つの役割に分けました。一部、同業他社には公開できない情報もあるため、内訳についてはご容赦ください。

ポートフォリオ戦略では、成長性や収益性の高いブランドに集中投資し、再生見極めブランドについては撤退も視野に改革を遂行します。早ければ今期の上期、遅くとも今期中にスピード感を持って意思決定していきます。

撤退については、内部的な基準はあるものの、ブランドの個性や規模が多岐にわたるため、一律の基準というのは難しいと考えています。不採算事業の撤退はこれまでにおおむね完了しており、今後は一律の基準ではなく、収益性や将来性を統合的に勘案して優先度を検討していきます。

注力ブランドもいくつかあります。収益を強化していくブランドとして、「Apuweiser-riche」や「HUMAN WOMAN」など、安定的な顧客層を抱えるレディースブランドが挙げられます。

成長性に期待できるブランドとしては、アウトドアブランドの「and wander」、洗練された大人の女性に向けたレディースブランドの「LE PHIL」などがあります。歴史は浅いのですが、この数年で大きく成長しているブランドです。

kenmo:今後、ブランド数は徐々に減っていくのでしょうか? 今後のブランド戦略や主なターゲット層を教えてください。

下地:今後のブランド数については現時点では明確にお伝えできませんが、ポートフォリオ戦略の一環で、撤退や統廃合はあると思っています。一方で、新規事業やM&Aの可能性もあるため、一概に減っていくということではありません。

ターゲット層はブランドによって異なりますが、年齢としては20代から60代以上の方もいらっしゃいますし、価格帯も幅広いです。売上の割合としては、メンズ・レディースは半々くらいです。

ブランド戦略においては、当社が展開するブランドは趣味嗜好、おしゃれ着や個性が強いものが中心となっています。新規事業はもちろん、既存のブランドにおいても、より個性的でストーリー性を重視したブランドを設計していくことが重要だと考えています。

そのため、現在進行中のポートフォリオの戦略の中で、それぞれのブランドの立ち位置や存在意義などのブランディングについて、ブランド責任者としっかりと協議しています。

顧客接点の強化|お客様に合ったブランド横断での新たな価値の提案

kenmo:ECサイトの集約により、顧客情報の集約化もできてくるのでしょうか? スライドに記載の「ブランド横断」というキーワードについても教えてください。

下地:ECサイトの集約や顧客情報の集約化をあわせて進めています。これまではECサイトもお客さま情報もブランドごとで管理し、販売やマーケティングに活かしてきました。

今回の改革でこれらの統合を進めており、統合が図れることで、これまでよりも横断的な顧客接点が増えていきます。そのため、よりパーソナライズされた、お客さまにとって良いご提案が可能となると考えています。

1つのブランドしか知らなかったお客さまが、統合サイトにおけるブランド横断で買い回りが可能になります。また、顧客情報の集約により、ECサイトだけでなく、店舗施策やイベントなどに活かすことができ、当社のスケールを幅広く活かせる施策となります。

さらに、ブランド横断という意味では、店舗の複合店も検討して作っていきます。同じ百貨店やファッションビルにグループ内のブランドが複数出店していますが、これらを親和性の高いブランドで集約し、買い回りや、1店舗あたりの収益の効率性を上げることを想定し、実施していきます。

kenmo:先ほど、コミュニティやイベントの取り組みについてのお話がありました。直近の取り組みの具体例を教えてください。

下地:例えばゴルフ系のブランドでは、お客さまを招いたゴルフコンペを定期的に開催しています。コンペにいらっしゃるお客さまは、ブランドロイヤリティが非常に高いです。

コンペの中でも、コーディネート表彰ではコンペの前半と後半とでユニフォームを着替えるお客さまもいらっしゃいます。また、景品の商品についても非常に好評です。今後も、より多くのお客さまに楽しんでいただけるような環境を作っていきます。

ジャンルは異なりますが、ストリートカジュアルでは、スケートボードなどのカルチャーを持つ「HUF」というブランドがあります。新しい商品やコラボ商材の販売イベント等ではお客さまと一緒に連携し、大変盛況です。このことからも、お客さまとの接点を作っていくことは大事だと思っています。

また、「HUF」は昨年、一昨年と「X Games」というイベントに参加して人気を得ています。

中期経営計画の定量目標

下地:中期経営計画の定量目標と資本政策についてご説明します。まずは定量目標についてです。3年後の売上高は1,650億円、営業利益は100億円以上を目指します。営業利益率は6パーセント以上、ROEは8パーセント以上、DOEは4パーセント以上を目指すことを主要KPIとしてスタートしています。

収益性の低さが大きな課題であることは我々も認識しています。「TIP27」で収益性の構造改革と成長戦略を推進します。100億円の営業利益と6パーセント以上の営業利益率を目指すことが大前提です。

中計3ヶ年における資源配分の方針

下地:財務戦略・資本政策について、まずは資源の配分についてご説明します。3ヶ年の構造改革で、営業キャッシュフローを300億円創出します。

非事業資産は、主に投資有価証券や投資不動産です。これらの縮減を進め、100億円以上のキャッシュを創出し、成長投資や構造改革、株主還元に振り分けます。成長投資においてはM&Aも想定していますので、借入として資金調達する可能性もあります。

現在、自己資本比率は70パーセントを超え、財務基盤は盤石です。企業運営上は非常にポジティブではありますが、資産効率という意味では投資に活かせていない面もあります。したがって、今後は非事業資産のキャッシュ化と成長戦略への投資で効率を高めていきます。

財務戦略・資本政策|資源配分

下地:成長投資は、新規事業の立ち上げ、店舗・サイトの収益に伴う投資が中心です。M&Aの規模によって増減する可能性もありますが、3ヶ年で200億円の投資を想定しています。改革による効率化への投資は、主にインフラ関係や既存店舗の改装などです。

株主還元については、TSIホールディングス発足以来、初めて定量的な方針を掲げました。稼ぐ力を高めることに加え、非事業資産を縮減してキャッシュを創出し、投資と株主還元をバランスよく強化していく考えをご理解いただければと思います。

株主還元方針

下地:この中期経営計画期間における還元方針をご説明します。配当性向は最低でも30パーセント以上、3ヶ年における自己株式の買い付けは100億円を想定しています。現在、30億円を上限とした買い付けを実施中です。

DOEについては、最終年度に営業利益で100億円以上を見込んでいます。それだけの利益水準であればDOEも4パーセント以上になると思いますので、目指すべき水準として挙げました。

株価推移と配当利回り

下地:直近2年間の株価推移と利回りの比較です。株価はコロナ禍で300円前後まで落とすことになりましたが、その後は回復し、継続的な自己株式の取得により、6月27日には今年の最高値である987円まで上がりました。直近は、日経平均の大幅な下落で800円台となっていますが、昨日の段階では900円に戻しています。

配当について、前期・前々期と増配しましたが、配当利回りは業界平均をまだ下回っています。この3ヶ年でみなさまにしっかり還元できるように、体制を整えていきます。

配当実績と今後の配当計画

下地:これまでの配当実績と今後の計画です。コロナ禍において初めて無配とした配当金ですが、前期に続いて今期も増配しています。

コロナ禍前は1株あたり17円5銭でしたので、1月あたりの配当額としては、TSI発足以来、過去最高額となっています。来期は1株19円を予定していますが、より大きな配当を生み出せるようにがんばっていきます。

自己株式の取得について

下地:自己株式の取得についてです。コロナ禍を除き、自己株式の取得を毎年実施しています。前期は66億円相当を取得しましたが、その全数を今年4月までに消却しています。

また、資本効率の見直しとして、今期を含めた3ヶ年で100億円以上の取得を掲げていますが、今年の4月から9月にかけて、すでに30億円を上限とする取得を実施中です。

株主優待について①

下地:当社では株主優待も実施しており、すべての株主のみなさまに当社のECサイトで利用できる優待券を進呈しています。年2回進呈しており、保有年数や保有株数によって冊数が増加しますので、ぜひご利用ください。

株主優待について②

下地:前期より株主優待制度を拡充しました。1,000株以上を保有の株主のみなさまには、「えらべる株主優待」の冊子を進呈しています。昨年2月の段階で適用しており、楽しめるということで大変好評です。

当社では、包括提携協定を結んでいる北海道上川町の特産品などもご用意しています。また、限定品として「PEARLY GATES」でオリジナルバッグを作り、こちらも非常に好評で、みなさまに大変喜んでいただきました。今後もこのようなことを積極的に実施していきたいと考えていますので、ぜひホームページをご覧ください。

これまでの主な取り組み

下地:直近のサステナビリティに関するトピックスです。当社が定めた温室効果ガス排出量の削減目標において、国際的な団体からSBT認定を取得しました。当社の削減目標が、パリ協定で定められた科学的根拠に基づいていることを認めるものです。

また、CDPの気候変動における評価では、上位から3番目のBスコアを取得しました。

従前より、二酸化炭素の排出における目標を掲げていましたが、今期、水や廃棄物、原材料に関するKPI・KGIも設定しています。

環境負荷の高い業界と言われていることは、我々もあらためて認識する必要があります。環境における負荷を軽減させ、持続可能な社会の実現に向けて会社として取り組んでいきます。これらの取り組みは、サステナビリティサイトで随時更新予定です。

2025年2月期第1四半期 業績ハイライト

下地:直近の業績・決算についてお話しします。まずは第1四半期の決算です。売上高はほぼ前年並みですが、円安や原材料の高騰、在庫増加による評価損の影響で、営業利益は前年比55.5パーセント、8億円の減益となりました。

しかし、今期は構造改革を実施し、一過性費用として構造改革費用が先行して発生しています。これらは計画に織り込んでおり、加えて想定以上の販管費を抑制しているため、第1四半期の営業利益としては社内計画を上回っています。

2025年2月期第1四半期 業績推移

下地:売上総利益は前年比97.7パーセント、売上総利益率も1.2ポイントの減少となりました。こちらは、円安や原材料の高騰による原価の上昇や、過年度在庫が増えたことによる影響です。一部上代に転嫁していますが、すべてをカバーするまでには至りませんでした。

販管費については、人件費の増加や構造改革費用により、前年比では悪化しています。ただし、計画比としては抑制を強めていますので、営業利益の社内計画は上回っている状況です。

貸借対照表について

下地:5月末時点でのB/S状況です。足元では在庫が増えており、目下、早期適正化に向けて取り組んでいます。

現預金の減少については、自己株式取得を継続していることと、在庫の増加が影響しています。こちらはしっかり売れてきているため、修正が利くと考えています。

B/Sの構成として、有利子負債の比率が低く、自己資本比率が高い水準にあります。体質としては優れていると捉えられますが、一方で非事業資産が多いという課題感もあります。

投資有価証券や投資不動産については、中期経営計画でお伝えしたとおり、縮減を図っていく方針です。

TSIのパーパス/目指す姿

荒井沙織氏(以下、荒井):今後の方向性を教えてください。

下地:当社は「ファッションエンターテインメントの力で、世界の共感と社会的価値を生み出す。」というパーパスを掲げています。より発信力のある会社となり、よりお客さまに楽しんでいただけるアパレルビジネスを展開していきます。

アパレルビジネスの従来の概念を改めて、人と環境のために真の価値を提供する企業として、国内だけではなく世界へと広げ、誰もが夢を描ける企業へと進化・醸成していく考えです。

ファッションがもたらすエンターテインメントの楽しさを作ると同時に、大きな収益も上げていきます。そのような企業を目指し、改革も確実に進めていきます。

質疑応答:社名の認知度向上について

荒井:「恥ずかしながら、御社の名前を今回初めて知りました。知名度の高いブランドを抱えていますが、企業名の知名度向上はあまり考えていないのでしょうか?」というご質問です。

下地:当社とお客さまとの接点はあくまでブランドが軸になると考えており、広告・販売促進も含めて、ブランドを前面に打ち出しています。

一方で、「ブランドは知っているが、TSIホールディングスという会社は知らない」という方がいらっしゃることも認識しています。お客さまに向けたブランドアピールと同時に、投資家に向けた会社のアピールも必要だと考えているところです。

今回の個人投資家のみなさまに向けた説明会も、そのような観点で行っています。今後も、企業価値向上に向けたIR活動を強化していきます。

また、先ほど構造改革の説明の中でECサイトの統一についてお話ししました。サイトの統一により、ブランドと企業イメージの融合を含めてしっかり進めていきますので、ぜひご注目いただければと思います。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:「流行り」で稼ぐアパレル産業は、サステナビリティとは対極にあるような気がしてしまいますが、どのように考えていますか?

回答:ファッションは短期の流行を追うものですが、サステナビリティの取り組みは持続可能性のとおり、長期で取り組むことです。繊維産業は石油産業の次に環境に与える影響が高い産業といわれています。

これまで、原材料を作る過程で二酸化炭素や水を多量に使うことや、服を作りすぎること、また、作った服を廃棄することで環境に多大な影響を与えてきました。

そのため、適量生産と低炭素素材への切り替えが重要であると考えています。

適量生産については、構造改革でも取り組んでいますが、低炭素素材への切り替えはブランドごとに取り組むこともできますし、ブランド横断でできることでもあります。

生地の表側の素材やデザインはブランドの個性に直結しますが、生地の裏地やタグの素材などは共有化できる部分があります。これらを共有化できれば、非常に大きいインパクトを生み出せると思います。

当社としては、まずは二酸化炭素の削減が急務ですが、今期は水や廃棄物のKPIも設定し、取り組みを加速させていきます。

<質問2>

質問:PBR1倍割れ対策についての施策と、アパレル業界の動向と御社のポジショニングについて教えてください。

回答:4月に発表した中期経営計画がPBR1倍割れの対策となります。

アパレル業界の動向ですが、景気回復は追い風となっており、インバウンド需要もしばらく続くとみています。

当社の強みは、メンズ、レディース、ゴルフなどのスポーツ、アウトドア、ストリート、仕事着など、幅広いジャンルの個性の強いブランドを保有していることです。多様なお客さまのニーズにお応えできることで、他社との差別化を図っています。 今後も収益性や効率性は高めつつ、ファッション企業としての生命線であるブランドの個性を磨いていきます。

<質問3>

質問:御社の株主です。アフターコロナで業績が回復したかと思いましたが、最近は減益が続き、自社株買いで株価を支えている印象です。業績が苦戦している理由を教えてください。

回答:前期においては、当社を大きくけん引していた、ゴルフスポーツやストリートカジュアルが、アフターコロナの反動や市場の落ち着きにより停滞したことが大きな要因です。

加えてライセンスブランドの契約終了に伴い、TOP10にあったブランドが撤退したため、売上・利益ともにボリュームダウンしています。

4月に発表した中期経営計画で、収益性改善の構造改革が始まっています。

1年目の今期はコストが先行しますが、下期あたりから来期以降にかけて、効果を生み出せるよう取り組み中です。

今回の中期経営計画では、改革の実効性を高めるために、実行フェーズに関しても外部パートナーにもしっかり入り込んでいただき、進捗管理やサポートをしていただきながら、今後は我々自身でもハンドリングできるようコーチングもしていただいています。

まずは今期計画をしっかり達成し、開示した計画の信頼性が得られるよう、進捗のご報告もしていきたいと思います。

<質問4>

質問:配当利回りが低く、期末一括配当ですが、配当性向についての考え方をお聞かせください。

回答:4月に発表した中期経営計画にて、定量的な目標をお示ししました。

配当性向30パーセントは最低限という認識です。

最終年度に営業利益100億円以上を目指すとなると、DOEは4パーセント以上になろうかと思いますが、逆算すると、最終年度の配当性向は50パーセント以上になります。

また、配当に加えて株主優待も割引券だけでなく、昨年から選べる優待も追加し、強化しています。

今回の構造改革で、利益率を高め、安定的に収益を生み出す体質に変革していきます。

中期経営計画が終わった後も、株主のみなさまのご期待にお応えできるよう、邁進していきます。

<質問5>

質問:貴社のブランドは、富裕層がメインターゲットという認識で良いのでしょうか?

回答:富裕層向けブランドはありますが、当社ブランド共通の考え方としては、ファッション感度の高いお客さまを幅広くターゲットとしています。顧客層としては30代から40代、価格帯としては中間価格よりやや高いポジションが多い傾向です。

<質問6>

質問:複数の貴社ブランドから商品を購入する方はどのくらいいるのでしょうか?

回答:2023年の年間アクティブ会員数のうち、約2割が複数の当社ブランド会員に登録されています(会員数は非開示のためご容赦ください)。

説明会で触れたとおり、今期中を目途にECサイトと顧客情報の統一化を図っていますので、来期以降は、お客さまにパーソナライズされたご紹介やご提案を強化していきます。

<質問7>

質問:各SNSのインフルエンサーとのコラボ商品や完全受注生産商品などの機会をこれまでよりも増やしていくことは考えていらっしゃいますか?

回答:インフルエンサーを使ったプロモーションやコラボ商材などは、これまでも複数展開しています。また、試験的に「ZOZOTOWN」にて「NANO universe」が完全受注生産の取り組みを開始しています。

常に結果を検証してブラッシュアップを図り、引き続きお客さまに楽しんでいただけるファッションをお届けしていきます。

<質問8>

質問:新規展開など、D2Cブランドを強化していく予定はありますか?

回答:ポートフォリオ戦略におけるブランドの立ち位置にもよりますが、D2Cブランドは今後の強化ポイントの1つです。すでに数ブランド展開していますがまだ規模が小さく、新たなブランド立ち上げやM&Aも視野に検討を進めています。

配信元: ログミーファイナンス

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