ヤマタネ Research Memo(1):2024年3月期はショクカイの寄与で大幅増収

配信元:フィスコ
投稿:2024/08/15 16:01
*16:01JST ヤマタネ Research Memo(1):2024年3月期はショクカイの寄与で大幅増収 ■要約

ヤマタネ<9305>は1924年7月3日(大正13年)に山崎種二が廻米問屋として創業し、2024年7月にグループ創業100周年を迎えた。コメ卸売販売の食品事業を祖業に、大きく変動する社会情勢、市場のニーズに応え、事業領域を拡大しており、現在は「物流(国内物流・国際業務)」「食品(コメ卸売販売・加工食品卸売販売)」「情報(メインフレームの技術支援やソフトウェアの開発・販売・サポート)」「不動産(オフィスビル賃貸)」と4つの事業を展開する総合サービス企業である。

1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の連結業績は、売上高64,512百万円(前期比26.3%増)、営業利益3,489百万円(同2.8%減)、経常利益3,184百万円(同9.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,442百万円(同13.6%増)と大幅な増収を達成し、営業利益は若干の減益ながら最終利益は増益で着地した。大幅増収の主因は、2023年10月に実施した大型M&Aにより100%連結子会社となった(株)ショクカイの寄与である。一方、利益面ではショクカイの連結効果に加え、2022年2月に新設した印西精米センター関連では減価償却費の減少等の押し上げ要因があったものの、2023年4月にDXとITインフラまわりを担うデジタル推進本部と、M&Aやアライアンスまわりを担う事業戦略部の新設などにより、人件費が増加した。他にも、物流の「2024年問題」への対応に伴う物流事業における外注コスト増や、のれんを含めショクカイのM&Aに伴うコスト計上等が減益の主な要因となった。親会社株主に帰属する当期純利益については、固定資産除却損等の計上はあったが、国内最大級かつ最新鋭となる印西精米センターの稼働により、遊休不動産化していた埼玉県さいたま市の旧岩槻精米工場跡地を譲渡したことで固定資産売却益を計上したほか、投資有価証券売却益等が増加し、最終増益を確保した。

2. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の連結業績は、売上高76,500百万円(前期比18.6%増)、営業利益3,500百万円(同0.3%増)、経常利益3,310百万円(同3.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,640百万円(同8.1%増)と大幅な増収、増益を見込む。2024年3月期にグループ入りしたショクカイの通期寄与を主因に増収となる公算だ。一方、利益面ではショクカイののれん代、現在検討を加速している越中島不動産開発プロジェクトに絡んだコンサルティング費用、IR強化に伴うコスト増などが重しとなる。加えて、物価上昇の影響による諸経費の増加、人的資本投資の拡充に向けた研修費用等のほか、2024年4月に越中島開発推進室、サプライチェーンマネジメント推進部(以下、SCM推進部)を新設したこともあり人件費が増加する。また、DX推進及び情報セキュリティ対応等のIT投資の拡充等による費用の増加も織り込んだことで、営業利益は微増となる。ただし、2024年3月期に発生したM&Aに伴うシンジケートローン手数料等が剥落するほか、引き続き投資有価証券売却等を加速することにより、親会社株主に帰属する当期純利益ベースではやや増益率が拡大すると見込む。

3. 長期ビジョンと中期経営計画
同社グループは2022年5月、変貌する外部環境の中でサステナビリティ経営の高度化を目指し、目指すべき企業像を描いた長期ビジョン「ヤマタネ2031ビジョン」(2023年3月期〜2031年3月期)を策定した。最も重要な同社のパーパス(存在意義)は「多様な人財が集い、社会に貢献する力を生み出す」と定めた。これは、同社の創業者である山崎種二氏が15歳で上京して、丁稚奉公から身を起こし、事業だけでなく学術文化を通じて社会に貢献した志と精神を大切にすること、そして、社員に果敢な行動を起こす勇気を与え、多様な人財が手と手を取り合い、一体となってステークホルダーの期待に応え、価値を提供し、ひいては豊かな社会の実現に貢献することを表している。そのうえで、9ヶ年を通じて目指す姿(ビジョン)として、「物流と食の流通を通じ、より豊かな社会づくりにチャレンジしていく」を設定した。この長期ビジョンにおいて着実に前進するため、同社はさらに3ヶ年の中期経営計画「ヤマタネ2025プラン」(2023年3月期〜2025年3月期)も策定している。同計画のスローガンは、「創業100周年に向けて、豊かな社会づくりにチャレンジしていく」である。同計画は、部門ごとにチャレンジ領域とコア事業領域に分け、それぞれの成長施策を定めている。チャレンジ領域の中では、本社等が所在する江東区越中島の敷地面積約11,000坪の所有地開発の方向性を検討することとしており、2025年5月に開発グランドビジョンの公表を予定している。コア事業領域では、物流事業で、収益力向上施策として、横浜市本牧埠頭に2024年7月に新倉庫を稼働させた。また、人的資本投資の拡充策の一環として、2025年3月期より全てのグループ役職員に対し、譲渡制限付株式(RS)報酬制度を導入し、役職員が株主と同じ視点を持ち、経営参画意識を醸成する施策にも取り組んでいる。2025年3月期は、「ヤマタネ2025プラン」の総仕上げ期間にあたる。

■Key Points
・大型M&Aにより100%連結子会社となったショクカイが業績に大幅に寄与
・物流事業での収益力向上施策としての、本牧埠頭新倉庫の建設
・本社所在地である江東区越中島の開発計画の始動
・譲渡制限付株式(RS)報酬制度の導入等の人的資本投資の拡充
・2025年3月期の配当性向は35%以上を計画

(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)

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配信元: フィスコ

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