*14:48JST プロパスト Research Memo(8):保守的な前提に基づき、2025年5月期は増収減益を予想(2)
■今後の見通し
2. 2026年5月期以降の業績見通し
プロパスト<3236>が属する不動産業界では、マンション価格の上昇に伴う契約率低下が懸念されるものの、低水準で推移する住宅ローン金利が下支え要因として期待される。国土交通省「建築着工統計調査報告」によると、業界の先行指標となるマンションの新設住宅着工戸数は、2023年3月期には4年振りに増加したものの、2024年3月期には前期比12.0%減の100,241戸となり、2000年代初頭の200,000戸を上回る水準から大きく減少している。特に近年は都心部におけるマンション価格の高騰に伴い、契約率が低下して販売戸数が減少している。
こうした経済環境下において、同社では強みである創造デザイン力やプレゼンデザイン力を生かせる分譲開発物件の取得を進める。ただ、分譲マンションの1戸当たり販売価格は、都内23区平均では1億円超に上昇し、一次取得者が買い難い水準に達するなど、価格高騰の影響から同社の取扱件数は少ないと予想される。しかし、分譲開発事業におけるクレーム処理などに関するノウハウは、賃貸開発事業やバリューアップ事業にも活用できることから、引き続き重要な事業として推進する。ただ、今後、借入金利が上昇に転じる状況となった場合には、分譲マンションの購入需要にも影響が大きいことも懸念される。一方、賃貸開発事業に投資する裕福な個人投資家は、元々自己資金の割合が高いことから、影響は限定的であると見られる。建築費の上昇については、建築費を固定して工事を開始するなど慎重に対応しており、コストや建築期間等を抑制した賃貸開発物件に取り組むことで事業拡大を図る。さらに、バリューアップ事業では、割安な収益不動産を精査して購入し、効率的に改修工事を行うことで、既存建物の付加価値を高めたバリューアップ物件の売却を展開する方針である。賃貸開発事業やバリューアップ事業では投資ファンドが売却先に加わるなど購買層が広がっており、同社では今後の業績に貢献するように、駅近の好物件を中心に仕入れる計画だ。
現在のところ、不動産業界各社の業績は総じて好調である。大手不動産会社では、新築マンションの区分での販売においては富裕層向けの200百万円以上の高額物件を取り扱っているが、同社の新築マンションは、販売価格50~100百万円の物件が中心で大手とは住み分けをしている。同社では、分譲開発物件以外の賃貸開発物件やバリューアップ物件においても今後も事業エリアを厳選することで、高収益の物件を確保する計画だ。都心部で駅から徒歩5~10分程度の好立地物件にターゲットを絞り、買い付けの意思決定を迅速に行うことで他社に先駆けて好物件の仕入が可能になる。同社のこうした物件の仕入力に、定評のある企画力・デザイン力を加えることで、3事業がうまく補完し合いながら、2025年5月期以降も堅調な業績を維持できると弊社では見ている。ただ、地価及び建築費の高騰が長期化し、分譲開発事業にとって厳しい状況が続くことも想定されることから、新規の事業を検討することも必要であると弊社では考える。また、同社では、サステナビリティ(Sustainability、環境や経済等に配慮した事業活動を行うこと)への取り組みを課題と考えている。投資家が銘柄選択をする際の判断基準としての重要性が増しており、サステナビリティへの取り組みを明確に示すことも重要と言えよう。
一方、同社では、対外的に中期経営計画を発表していない。同社の事業規模では業績が振れる可能性が大きいため、計画を発表すると投資家をミスリードする可能性があるとの経営判断によるものである。また、引き続きウクライナ情勢など外部環境の不透明感が強い中、同社としては計画にとらわれず柔軟に経営したいとの考えもあるようだ。ただ同社の経営方針を明確化し、投資家や従業員が同社の将来像を共有するためにも、中期経営計画の正式発表は有意義であると弊社は考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<SO>
2. 2026年5月期以降の業績見通し
プロパスト<3236>が属する不動産業界では、マンション価格の上昇に伴う契約率低下が懸念されるものの、低水準で推移する住宅ローン金利が下支え要因として期待される。国土交通省「建築着工統計調査報告」によると、業界の先行指標となるマンションの新設住宅着工戸数は、2023年3月期には4年振りに増加したものの、2024年3月期には前期比12.0%減の100,241戸となり、2000年代初頭の200,000戸を上回る水準から大きく減少している。特に近年は都心部におけるマンション価格の高騰に伴い、契約率が低下して販売戸数が減少している。
こうした経済環境下において、同社では強みである創造デザイン力やプレゼンデザイン力を生かせる分譲開発物件の取得を進める。ただ、分譲マンションの1戸当たり販売価格は、都内23区平均では1億円超に上昇し、一次取得者が買い難い水準に達するなど、価格高騰の影響から同社の取扱件数は少ないと予想される。しかし、分譲開発事業におけるクレーム処理などに関するノウハウは、賃貸開発事業やバリューアップ事業にも活用できることから、引き続き重要な事業として推進する。ただ、今後、借入金利が上昇に転じる状況となった場合には、分譲マンションの購入需要にも影響が大きいことも懸念される。一方、賃貸開発事業に投資する裕福な個人投資家は、元々自己資金の割合が高いことから、影響は限定的であると見られる。建築費の上昇については、建築費を固定して工事を開始するなど慎重に対応しており、コストや建築期間等を抑制した賃貸開発物件に取り組むことで事業拡大を図る。さらに、バリューアップ事業では、割安な収益不動産を精査して購入し、効率的に改修工事を行うことで、既存建物の付加価値を高めたバリューアップ物件の売却を展開する方針である。賃貸開発事業やバリューアップ事業では投資ファンドが売却先に加わるなど購買層が広がっており、同社では今後の業績に貢献するように、駅近の好物件を中心に仕入れる計画だ。
現在のところ、不動産業界各社の業績は総じて好調である。大手不動産会社では、新築マンションの区分での販売においては富裕層向けの200百万円以上の高額物件を取り扱っているが、同社の新築マンションは、販売価格50~100百万円の物件が中心で大手とは住み分けをしている。同社では、分譲開発物件以外の賃貸開発物件やバリューアップ物件においても今後も事業エリアを厳選することで、高収益の物件を確保する計画だ。都心部で駅から徒歩5~10分程度の好立地物件にターゲットを絞り、買い付けの意思決定を迅速に行うことで他社に先駆けて好物件の仕入が可能になる。同社のこうした物件の仕入力に、定評のある企画力・デザイン力を加えることで、3事業がうまく補完し合いながら、2025年5月期以降も堅調な業績を維持できると弊社では見ている。ただ、地価及び建築費の高騰が長期化し、分譲開発事業にとって厳しい状況が続くことも想定されることから、新規の事業を検討することも必要であると弊社では考える。また、同社では、サステナビリティ(Sustainability、環境や経済等に配慮した事業活動を行うこと)への取り組みを課題と考えている。投資家が銘柄選択をする際の判断基準としての重要性が増しており、サステナビリティへの取り組みを明確に示すことも重要と言えよう。
一方、同社では、対外的に中期経営計画を発表していない。同社の事業規模では業績が振れる可能性が大きいため、計画を発表すると投資家をミスリードする可能性があるとの経営判断によるものである。また、引き続きウクライナ情勢など外部環境の不透明感が強い中、同社としては計画にとらわれず柔軟に経営したいとの考えもあるようだ。ただ同社の経営方針を明確化し、投資家や従業員が同社の将来像を共有するためにも、中期経営計画の正式発表は有意義であると弊社は考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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