スパークス G Research Memo(4):複数の競争優位を併せ持つアクティブ運用会社のパイオニア(3)

配信元:フィスコ
投稿:2024/07/19 13:44
*13:44JST スパークス G Research Memo(4):複数の競争優位を併せ持つアクティブ運用会社のパイオニア(3) ■スパークス・グループ<8739>の会社概要

3. 同社グループの強み
同社グループの強みとしては、(1) ボトムアップ型企業調査・優れた仮説構築能力、(2) 優れた質問力、(3) 高い収益率、(4) オープンな企業風土による人材育成、(5) 長期的視点での運用、の5点が挙げられる。

(1) ボトムアップ型企業調査・優れた仮説構築能力
「マクロはミクロの集積である」という全社に浸透した投資哲学に基づいた、「ボトムアップ型の徹底した企業調査」と「優れた仮説構築能力」がある。「マクロはミクロの集積である」とは、既述のとおり「徹底した企業調査の集積によって、大きな潮流が見えてくる」という考え方である。数多くの企業を精緻に分析しているからこそ、適切な仮説を組み立てることができ、その仮説を基に、社会から必要とされる企業、すなわち成長性の高い企業を見つけ出せると言える。また、新ファンドの組成や新しい投資信託の開発という観点からは、投資家自身も気付いていない投資価値のある領域を見つけ出せる。投資運用会社ではアナリストが企業調査を担当し、ファンドマネージャーが運用を担当するというように分業型が敷かれていることが多いが、同社グループでは「ボトムアップ型企業調査」を重視し、ファンドマネージャーも自身の仮説を基に企業調査を行う。

(2) 優れた質問力
徹底した企業調査が「優れた質問力」に結び付き、強みとなっている。徹底した企業調査によって、短期的な株価の変動や来期の業績といった表層的な議論に留まらず、より本質的な質問を投資対象企業に投げかけ、深い議論が可能となる。本質的な質問によって、より重要な情報を獲得し、投資対象企業の業績向上に向けた適切な議論を行えるため、優れたエンゲージメント戦略にもつながると弊社では見ている。

(3) 高い収益率
同社グループの強みである「高い収益率」としては、残高報酬料率と成功報酬の対運用資産残高付帯比率が挙げられる。残高報酬料率や成功報酬をファンドに付帯するかどうかは顧客との折衝で決まるが、投資信託の場合は証券会社や銀行などの販売会社との折衝で決まる。同社グループのファンドは、徹底した企業調査によって投資対象企業が優れたリターンを上げることで、高い残高報酬料率(2020年3月期は0.75%、2021年3月期は0.69%、2022年3月期は0.69%、2023年3月期は0.73%、2024年3月期は0.71%)が設定できる。成功報酬の対運用資産残高比率についても、優れたリターンでの運用により成功報酬付きのファンドを設定できるため、35.3%(2024年3月期)と高い。これらの結果、営業利益率も45.3%(同)と高くなっている。

(4) オープンな企業風土による人材育成
同社グループの日本株式の運用調査部門では、企業調査の進捗状況を共有するミーティングを毎朝行っている。またこれとは別に毎週ミーティングがあり、仮説、投資行動の共有、議論がなされる。これは人材育成として非常に大きな意味を持っていると弊社では考えている。経験豊富な運用担当者からの鋭い指摘によって、自分自身に足りていない部分や調査する際の切り口などを学べるからだ。調査の手法や仮説構築の仕方など、マニュアル化が難しく、ともすると属人的なものになってしまいがちな能力を議論によって共有する。これによって運用担当者のレベルを引き上げることができ、優秀な人材を蓄積できる。同社グループは人材育成を非常に重視しており、時間をかけて人材を育てることを信条としているため、勤続年数が長いことも特徴だ。運用担当者の能力が会社の収益を左右する資産運用業界において、オープンな企業風土と情報共有を通じた人材育成は強みとなり、好業績につながっていると弊社では見ている。

(5) 長期的視点での運用
同社グループは、長期的な視点による運用で、投資対象企業と信頼関係を構築し、企業価値を高められると考えている。一時的なイベントによる株式相場の下落などの影響についても、長期運用によって緩和できるため、結果として投資家にリターンを提供できる。また、運用期間が20年と長期のファンドでは運用資産残高と残高報酬が安定的に増加するため、収益の安定性にもつながる。

4. 同社グループの市場での立ち位置
上記の強みに加えて、上場している独立系アクティブ運用会社のなかで同社の特徴として、日本国内株式から太陽光発電などの実物資産や未公開株式まで投資対象が多岐にわたっていることが挙げられる。1つのグループのなかで、株式への厳選投資と長期保有といった伝統的投資戦略から再生可能エネルギーやエンゲージメント戦略といったオルタナティブ投資に至るまで幅広く戦略を推進している企業は珍しい。伝統的戦略に加えて、オルタナティブ投資も手掛けることにより、安定して運用資産残高を増加させることができるのと同時に、高い収益性を実現できると弊社は見ている。再生可能エネルギー発電事業など大規模インフラを投資対象とする実物資産の投資戦略は投資額が大きく、その分運用資産残高の増加に寄与するためだ。実際、2014年3月期に382億円だった運用資産残高(12ヶ月平均)は、2024年3月期には2,774億円7.2倍に急伸し、運用資産残高全体に占める割合も16.6%まで高まっている。資産運用は分散投資によるリスク分散が基本原則である。その点、同社は自社グループのなかで相対的にボラティリティが高い上場・未上場株式から安定性の高い実物資産まで手掛けることによって、運用資産残高が過度に変動するリスクを平準化している。同社の運用資産残高と運用資産残高増加率の推移を見てみると、安定して推移していることがわかる。

ベンチャー企業投資を対象としたプライベート・エクイティは、同社投資戦略のなかでも相対的に残高報酬料率が高く設定されているため、その分収益性も高いと言う。ビジネスモデル上の違いや主要顧客層の違いなどから一概には比較できないものの、同社の収益性の高さは伝統的投資戦略に加えて、オルタナティブ資産を投資対象ポートフォリオに組み込んでいることも一因であると弊社は考えている。利益は株価算出の根拠かつ配当原資になる。その意味で、投資家にとって非常に重要なものであり、効率的かつ安定的に利益を創出できる同社の投資戦略ポートフォリオ・ビジネスモデルは魅力的だと言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)

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