パウエル証言でドル円は一時161円台半ばに上昇 ハト派に傾斜した印象なく=NY為替概況

著者:MINKABU PRESS
投稿:2024/07/10 05:50
パウエル証言でドル円は一時161円台半ばに上昇 ハト派に傾斜した印象なく=NY為替概況

 きょうのNY為替市場はドル買いが優勢となり、ドル円は一時161円台半ばまで上げ幅を伸ばした。本日はパウエルFRB議長の議会証言が行われたが 議長は「もっと良いデータがあればインフレへの信頼高まる」と述べ、更にデータを確認したい姿勢を強調。「緩和が早過ぎたり、多過ぎたりすると、インフレの進展に悪影響を及ぼす可能性がある」とも述べていた。

 このところの指標がインフレの落ち着きや景気減速の兆候を示していることから、一部にはハト派に傾斜するのではとの見方も出ていたが、その印象はなかった。ドル円は上値追いの動きを続けているが、目先は7月3日の高値161.95円を突破して162円台を試しに行くか注目される。

 一方、根強い円安がドル円を下支えしているが、円相場は当面円安が続く可能性こそあるが、実質賃金と共に年内に円安は解消されるとの見方が出ている。ストラテジストはレポートで、日本の実質賃金が5月に26カ月連続で減少したことから、日銀の利上げは難しい可能性がある。しかし、賃上げが浸透するにつれて、実質賃金は7-9月期または10-12月期にプラスに転じる可能性があり、それは年内には日銀が追加利上げをするという期待を裏付けるものだという。

 向こう1カ月は現在の160円近辺での水準が続くが、その後年末までに152円まで上昇すると予想しているようだ。

 ユーロドルはやや売り優勢の展開となった。ただ、1.08ドル台は維持しており、買い戻しの流れは維持している。フランスの選挙が終了し、右派政権の誕生が回避されたことから、市場には安心感が広がっている。しかし、フランスの政治的な不透明感がユーロの上値を抑える可能性があるとの指摘も聞かれる。選挙で議会が空転したため、フランスとドイツ債の利回り格差が再び拡大するリスクは依然として顕在化しており、ユーロが短期的に上昇する余地は限られているという。

 フランスにとって最も市場に優しいシナリオは、テクノクラートの首相を含む連立政権だが、市場にあまり優しくない選択肢のスペクトルがかなり広く入り組んでおり、いまのところマクロン大統領にとって交渉は簡単なものではなさそうだという。

 ポンドドルは戻り売りが優勢となり、1.27ドル台に下落。ただ、下押す動きまでは見られておらず、リバウンド相場は継続。先週の総選挙で政権交代が行われ、スターマー政権が誕生したが、一部からは英財政リスクでポンドは下落の可能性があるとの指摘が出ている。英中銀が利下げに慎重姿勢を示したとしても、財政リスクでポンドは下落する可能性があるという。

 英中銀は24年と25年の両方で計0.50%ポイントの利下げを実施する可能性があり、それでも英国はG10で最も高い金利水準に留まるだろうが、ポンドは上昇リスクよりも下降リスクの方が大きい。英国は財政に制約があり、柔軟性を高める余地があまりなく、財政政策の信頼性が低下すれば、ポンドは脆弱になるとしている。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

このニュースはみんかぶ(FX/為替)から転載しています。

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