豪ドル
RBA(豪中銀)は2月5-6日の政策会合で政策金利を4.35%に据え置きました。据え置きは2回連続です。
RBAは2月の会合時の声明で、「最近のデータはインフレが緩和していることを示しているものの、依然として高い」と指摘し、「インフレ率が持続的に目標レンジ内に戻るまでには、まだしばらく時間がかかる」と分析。「さらなる金利の上昇を排除できない」と表明し、追加利上げに含みを持たせました。
豪州の失業率は上昇傾向にあることや、豪州にとって最大の輸出先である中国景気の先行き不透明感が強いことなどから、市場は“RBAの次の一手は利下げになる”と予想しています。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、利下げは8月に行われて、その後年末まで政策金利は据え置かれるとの見方が有力です。
RBAの利下げ観測は豪ドルにとってマイナスと考えられます。ただし、FRBも24年中に利下げを行うとみられます。RBAよりもFRBの利下げ幅の方が大きくなるようなら、米ドル安圧力の方が強くなって、豪ドル/米ドルはそれほど下がらない可能性があります。
豪ドル/円については、日銀の金融政策も重要です。日銀がマイナス金利を解除するとしても、“さらに政策金利を引き上げる(追加利上げを行う)”との観測が市場で強まらなければ、豪ドル/円はそれほど下落しないと考えられます。
豪ドルは投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴もあります。主要国の株価が堅調に推移するなどしてリスクオン(リスク選好)の動きが強まる場合、豪ドル/米ドルや豪ドル/円の支援材料になりそうです。
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【豪ドル/NZドル】
豪ドル/NZドルは2月22日に一時1.05655NZドルへと下落し、22年12月以来1年2カ月ぶりの安値をつけました。RBNZ(NZ中銀)の利上げ観測が浮上したことが、豪ドル/NZドル下落の要因です。
RBNZは2月28日に政策会合を開きます。その結果が豪ドル/NZドルに大きな影響を与えそうです。会合で政策金利が据え置かれれば、NZドルが売られて、豪ドル/NZドルは目先上昇すると考えられます。ただし、RBNZの声明がタカ派的な内容になるなどして先行きの利上げ観測が市場に残る場合、豪ドル/NZドルは上値が重くなる可能性があります。
<注目点・イベントなど>
・RBA(豪中銀)の利下げのタイミングとペース。
・米FRBと日銀の金融政策。
・投資家のリスク意識の変化。リスクオンは豪ドルの上昇要因。
・資源(主に鉄鉱石)価格の動向(資源価格の下落は豪ドルの下落要因)。
・中国経済の動向。中国経済の減速は豪ドルにとってマイナス材料。
NZドル
NZドル/円は2月23日に一時93.393円へと上昇し、15年1月以来9年1カ月ぶりの高値を記録。NZドル/米ドルは22日に0.62122米ドルへと上昇して、1月15日以来およそ1カ月ぶりの高値をつける場面がありました。
NZドル上昇の主な要因として、RBNZ(NZ中銀)の利上げ観測の浮上が挙げられます。2月28日のRBNZの政策会合の結果がNZドル/円やNZドル/米ドルの動向に影響を与えそうです。政策金利が据え置かれれば、NZドルが売られて、NZドル/円やNZドル/米ドルは軟調に推移すると考えられます。ただし、RBNZの声明やオア総裁の会見、四半期に1度公表されるRBNZの政策金利見通しによって、先行きの利上げ観測が残れば、NZドル/円やNZドル/米ドルは持ち直す可能性があります。
NZドル/円については、日銀の金融政策にも注目です。日銀が今後マイナス金利を解除したとしても、NZドル/円はそれほど下落しないかもしれません。マイナス金利の解除は市場にすでに織り込まれていると考えられるからです。
豪ドルと同様にNZドルは、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。主要国の株価が堅調に推移するなどしてリスクオンが強まることはNZドルにとってプラスです。
<注目点・イベントなど>
・RBNZ(NZ中銀)は利上げするか。
・米FRBと日銀の金融政策。
・投資家のリスク意識の変化。リスクオンはNZドルの上昇要因。
・中国経済の動向。中国経済の減速はNZドルにとってマイナス材料。
・乳製品(NZ最大の輸出品)価格の動向(乳製品価格の上昇はNZドルの上昇要因)。
カナダドル
BOC(カナダ中銀)は1月24日の政策会合時の声明で「必要なら政策金利をさらに引き上げる用意がある」を削除し、マックレムBOC総裁は会合後の会見で「今後の議論は政策金利をどれくらいの期間、(現在の)5%に維持するかになる」と発言。利上げサイクルの終了とともに、次の一手が利下げになる可能性を示しました。
カナダの1月CPI(消費者物価指数)は前年比2.9%と、BOCのインフレ目標(2%)を引き続き上回ったものの、上昇率は前月の3.4%から鈍化しました。また、BOCがコアインフレ指標として注視する、CPIのトリム平均値は前年比3.4%、加重中央値は同3.3%と、上昇率はいずれも前月(3.7%と3.5%)から鈍化し、トリム平均値は21年8月以来、加重中央値は21年11月以来の低い伸びとなりました。
市場では、BOCが6月に利下げを行うとの観測があります(3月と4月の会合は政策金利の据え置きを予想)。CPIなど今後発表されるカナダの経済指標で利下げ観測が強まれば、カナダドル安材料になりそうです。
米ドル/カナダドルについては、FRBの金融政策にも注目です。FRBの利下げ観測が後退する場合、米ドル/カナダドルには上昇圧力が加わりやすくなりそうです。日銀がマイナス金利を解除する可能性がありますが、それは市場にすでに織り込まれていると考えられます。日銀はさらに利上げするとの観測が強まらなければ、マイナス金利の解除を材料にカナダドル/円が大きく下落する状況ではなさそうです。
原油価格(米WTI原油先物が代表的な指標)に大きく変動する場合、原油価格の動向も材料になるかもしれません。カナダは原油を主力輸出品とするため、原油価格の上昇はカナダドルにとってプラスであり、米ドル/カナダドルの上値を抑える要因になりそうです。
<注目点・イベントなど>
・BOC(カナダ中銀)の利下げのタイミングとペース。
・米FRBと日銀の金融政策。
・資源(特に原油)価格の動向(資源価格の上昇はカナダドル高要因)。
トルコリラ
トルコリラは対米ドルで2月21日に史上最安値を更新。対円(トルコリラ/円)についても4円台で推移しており、史上最安値圏にあります。トルコリラ安の主な要因として、トルコの実質金利(政策金利からCPI上昇率を引いたもの)が大幅なマイナスであることが挙げられます(2/23時点でマイナス19.86%)。また、トルコ当局がKKM(為替保護預金制度)などのトルコリラ支援策を解除したことも、トルコリラの重石となっていると考えられます。
TCMB(トルコ中銀)は2月22日の政策会合で政策金利を45.00%に据え置くことを決定。声明では、「月次のインフレ率の基調が大幅かつ持続的に鈍化し、またインフレ期待が予測範囲に収束するまで、政策金利は現行水準(45.00%)に維持する」と表明しました。ただし、「インフレ見通しの顕著かつ持続的な悪化が予想される場合には、金融政策スタンスを引き締める(=利上げを行う)」ともしました。トルコの1月CPI(消費者物価指数)は前年比64.86%でした。インフレ率が依然として高いにも関わらず、TCMBが政策金利を据え置く方針を示したことは、トルコリラにとってマイナスになると考えられます。トルコリラ/円には下押し圧力が加わりやすい地合いが続きそうです。
トルコでは、3月31日に統一地方選が行われる予定です。エルドアン大統領はこのところTCMBの金融政策について言及していないものの、エルドアン大統領はかつて「金利が下がれば、インフレ率は下がる」と主張していました。地方選が近づくなか、エルドアン大統領の言動には注意が必要かもしれません。
<注目点・イベントなど>
・トルコの実質金利のマイナス幅が縮小するか。
・エルドアン大統領は金融政策に干渉しないか。
南アフリカランド
SARB(南アフリカ中銀)は1月の政策会合まで4回連続で政策金利を8.25%に据え置きました。クガニャゴSARB総裁は1月の会合後の会見で、「インフレ率がSARBの目標レンジの中間値に向けて鈍化していることを示す明確なトレンドは見られていない」「インフレ率が目標(レンジの中間値)に向けて持続的に鈍化しない限り、政策変更(利下げ)は予想していない」などと述べ、市場の利下げ観測をけん制しました。
南アフリカの1月CPI(消費者物価指数)は前年比5.3%と、上昇率は前月の5.1%から加速。SARBのインフレ目標レンジ(3~6%)に収まったものの、目標の中間値である4.5%から遠ざかりました。CPIの動向をみれば、SARBが近く利下げを行う可能性は低下したと考えられます。南アフリカランドは底堅く推移する可能性があります。
南アフリカでは発電設備の老朽化などによって計画停電が頻発しています。停電は経済活動を阻害するため、計画停電が長引く場合には同国景気をめぐる懸念が市場で強まるとともに、南アフリカランドには下押し圧力が加わるかもしれません。
南アフリカの総選挙が5月29日に行われます。与党のANC(アフリカ民族会議)が過半数を維持できるかどうかが選挙の焦点になりそうです。
<注目点・イベントなど>
・SARB(南アフリカ中銀)の利下げのタイミングとペース。
・日銀の金融政策。
・南アフリカでは5月29日に総選挙。ANCは過半数を維持できるか。
・計画停電が続く場合、南アフリカランド/円の下押し要因になる可能性あり。
メキシコペソ
BOM(メキシコ中銀)は2月8日の政策会合で政策金利を11.25%に据え置きました。据え置きは7会合連続です。
BOMの声明では、金融政策の先行きに関する文言が変更されました。22年12月会合時の「政策金利はしばらくの間、現在の水準に維持する必要がある」が削除され、「次回以降の会合では、入手可能な情報次第で政策金利を調整する可能性を検討する」と表明されました。「調整」は利下げを示唆していると解釈できます。
メキシコの2月前半のCPI(消費者物価指数)は、総合指数が前年比4.45%、変動の大きい食品やエネルギーを除いたコア指数が同4.63%と、上昇率はいずれも前月前半の4.90%と4.78%から鈍化しました。BOMは次回3月21日の政策会合で利下げを行う可能性があります。
BOMの利下げはメキシコペソにとってマイナスです。ただし、CPI上昇率はBOMのインフレ目標(3%。2~4%が許容レンジ)を引き続き上回っており、BOMは利下げを慎重に行いそうです。利下げが行われるとしても小幅ならメキシコペソにとってそれほどマイナスにならないとみられます。主要国と比較してBOMの政策金利がかなり高い状況に大きな変化はないと考えられるからです。
メキシコペソ/円については、日銀の金融政策も重要です。日銀がマイナス金利を解除するとしても、さらに利上げするとの観測が市場で強まらなければ、メキシコペソ/円の下落は限定的になる可能性があります。
原油価格(米WTI原油先物)が大きく変動する場合、原油価格の動向も材料になりそうです。原油価格の上昇は、メキシコペソにとってプラスです。
<注目点・イベントなど>
・BOM(メキシコ中銀)の利下げのタイミングとペース。
・主要国と比べて高いメキシコ中銀の政策金利。
・資源(特に原油)価格の動向(資源価格の上昇はメキシコペソ高要因)。
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