米PPIは利上げ継続を正当化 来週のイベント待ちの雰囲気は続く=NY為替概況

著者:MINKABU PRESS
投稿:2022/12/10 06:48
 きょうのNY為替市場、この日発表の米生産者物価指数(PPI)やミシガン大消費者信頼感指数を経て、ドルの買い戻しが優勢となった。ドル円は135円台半ばに下落してNY市場に帰って来たものの、両指標を受けて136円台後半まで一時買い戻されている。米国債利回りが上昇していることもドル円の上げをフォローしたようだ。

 米PPIについては、サービス業が牽引し予想以上の上昇となった。インフレ圧力の根強さが示され、FRBの利上げ継続を正当化する内容ではあった。ただ、国内外における需要の冷え込みがサプライチェーンを圧迫し、前年比の伸びは鈍化が続いている。一方、12月調査分のミシガン大消費者信頼感指数は59.1と予想を上回った。センチメント指数も去ることながら、このところはインフレ期待の数値も注目されている。1年先のインフレ期待は4.6%と鈍化傾向が続いていることが示された。

 いずれにしろ市場は、来週の米消費者物価指数(CPI)とFOMCを待っている状況に変化はない。市場からは、来週のFOMCでの委員の金利見通し、いわゆるドットプロットがターミナルレート(最終到達点)の上昇を示唆した場合、ドルは上昇する可能性があるとの指摘も出ている。23年末時点の予想で5.00%以上を示唆すれば、ドルは短期的に強含む可能性があるという。

 委員が来年のターミナルレート到達後に23年内の利下げシナリオまで織り込めば若干違うのかもしれないが、委員が現時点で来年の利下げシナリオまで反映させることはないと見られている。ドットプロットはあくまで年末時点での予想。なお、9月のドットプロットは23年のピークを4.50-4.75%としていた。

 ユーロドルは戻り売りが優勢となり、1.05ドル台前半まで下落する場面も見られた。ただ、リバウンド相場の流れは堅持している状況。

 ユーロドルは短期的に買われ過ぎの雰囲気も出ているが、この時期の投資家はトレンドと戦う意欲に乏しく、過熱感を材料にした戻り売りは限定的との指摘も聞かれる。そのため、目先は5月高値の1.0780ドル付近を目指す展開が続くという。

 来週のECB理事会では、利上げ幅を0.50%ポイントに縮小するとの見方が有力だが、ECBはタカ派姿勢は堅持すると見られている。ただ、ラガルド総裁は年末にボラティリティが高まることを避けようとしている気配もあることから、もうしばらくユーロドルはリバウンド相場を継続するという。

 年末ということもあり、節目でのオプション勢の防戦売りもさほど多くは観測されておらず、上値の抵抗感も限定的だとしている。また、年初に向けたドルへの資金需要も大半が終了しており、フロー面でもユーロドルの逆風は小さいという。5月高値付近で今年を終えれば、ロング勢が勢いづくとの指摘もあるが、いずれにしろ、リバウンド相場はもうしばらく続く可能性があると指摘している。

 ポンドドルは一時1.23ドル台まで上昇。英中銀は来週15日に金融政策委員会(MPC)を予定している。0.50%ポイントの利上げが有力視されているが、政策委員の投票行動に全会一致はないとの見方が出ている。1名ないしは2名は0.25%もしくは据え置きを主張するとの観測も出ているようだ。

 政策委員は基本的にインフレ対策に傾斜しているが、どの程度の引き締めが必要なのかについては意見が分かれているという。一部の委員は、大き過ぎる利上げは不必要に景気後退を深刻化させると懸念しており、他の委員はインフレ期待が固定化されなくなるリスクを警戒しているという。

 ただ、引き締め過ぎのリスクはあるものの、根底にあるインフレへの力学は、恐らくMPCに今後数カ月間の追加利上げを強いることになるだろうとも指摘した。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

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