■今後の方向性
1. 今後の方向性
SFPホールディングス<3198>は、2020年2月期までは毎年、向こう3ヶ年の中期経営計画を公表してきたが、2021年2月期以降はコロナ禍の影響により先行き不透明な状況にあることから公表を見送っている。ただ、2022年4月にウィズコロナの定着やアフターコロナを見据え、短・中期的な方向性を明示した。具体的な取り組みとして、(1) 地方都市への新規出店、(2) 注力業態「ネオ大衆酒場」の拡大、(3) 物価上昇への対応、(4) キャッシュレス・省人化を掲げている。
(1) 地方都市への新規出店
主力業態「磯丸水産」の展開は1都3県が中心となっているが、コロナ禍前から地方都市への進出を模索してきた。2022年2月期までの実績を振り返ると、京都・大阪・兵庫(3エリア合計15店舗)に加え、仙台(1店舗)、長野(1店舗)、熊本(2店舗)への出店※に成功したほか、FC展開により、愛知(8店舗)、福岡(5店舗)をカバーしてきた。同社では、未開拓の中核都市への出店機会に改めて目を向けており、中期的な成長ドライバーのひとつとして位置付けている。2023年2月期上期は、仙台(町鮨とろたく/2022年9月開業)、静岡(磯丸水産/2022年11月下旬オープン予定)、札幌(FC磯丸水産/2022年12月オープン予定)への出店に向けて着実な成果を上げることができた。
※このうち、長野、熊本への出店は「アライアンス構想」によるもの
(2) 注力業態「ネオ大衆酒場」の拡大
コロナ禍をきっかけとした環境変化へ機動的に対応するため、これまでの主力業態の強みを生かしながら、低投資で安定的に稼げる「ネオ大衆酒場」業態に注力していく方針である。「ネオ大衆酒場」は、1) 住宅/商店街、2) 路面、3) 小型、4) 17時から29時(翌朝5時)までの営業、5) 少人数/高回転などに特長を持つ業態(収益モデル)であり、現在は「ホームべース」「五の五」「浜焼ドラゴン」「鳥平ちゃん」の4ブランドを展開している。「ネオ大衆酒場」のジャンルのなかでも複数の業態を有していることから、市場の立地や客層、競合他社の状況と照らし合わせて最もマッチングする業態を選んで出店することが可能となっており、この点も強みとなっている。すなわち、主力業態における路面立地や昼~夜までの営業(利用シーンに応じた幅広い需要の取り込み)、高回転などの優位性を残しつつ、住宅/商店街を中心として低投資で安定的に稼げる業態と定義することができる。今後は、既存店の業態転換を含め、1都3県を中心に出店を増やす考えだ。2023年2月期上期は、業態転換により2店舗(浜焼ドラゴン、鳥平ちゃん)を出店し、合計10店舗となった。
(3) 物価上昇への対応
外部環境要因として、原材料費や物流費などの上昇が、原価率の悪化を招くリスクが高まっている。同社では、産地や商品規格の見直し、一部価格改定により原価率の上昇を抑制するとともに、クリエイト・レストランツグループ全体の食材購買・物流マネジメントを推進するCMD社(2021年9月に合弁にて設立)を通じた共同購買等※によるコスト削減にも取り組んでいる。
※クリエイト・レストランツグループ1,000店超の規模を背景とした交渉力の確保や、各社の物流や倉庫の一元化などによるコスト削減などに取り組む。
(4) キャッシュレス・省人化
2021年8月よりクリエイト・レストランツ・ホールディングスのDX推進プロジェクトに参画し、販売データや顧客DBの活用、バックオフィス省人化を推進中である。また、キャッシュレス化についてもモバイルオーダー※を8店舗で試験導入するなど、中期的な視点から、業務効率化や人材の最適配置(省人化)、顧客サービス向上などを実現し、コスト抑制と顧客満足(利便性向上)の両立を図っていく考えである。
※スマートフォン端末を通じて注文・決済までワンストップで行える仕組み
2. 弊社の注目点
弊社でも、地方都市への進出は、成長余地として捉えるだけでなく、新たな変異株などの懸念があるなかで、リスク分散を図るうえでも、合理的な戦略であると見ている。これまで実験的に運営してきた地方店舗(磯丸水産) も総じて堅調に推移しており、コロナ禍の収束とともに、いよいよ本格的な展開が開始されることになるだろう。また、その際、直営店なのか、FCなのか、M&A(アライアンス構想)なのか、展開方式が気になるが、低投資で出店スピードが早いFC展開が現実的な選択肢となる可能性も十分に考えられる。一方、「ネオ大衆酒場」については、まさに「磯丸水産」の収益モデルを環境変化に合わせてチューニングしたものと捉えることができるが、今後、「磯丸水産」とは違うどのような進化を遂げていくのか、新たな成長の軸となるのか、これからの動向を見守りたい。さらに物価上昇への対応やDX推進については、クリエイト・レストランツ・ホールディング(グループ各社)との連携が大きなアドバンテージとなるだろう。いずれもスケールメリットがポイントとなる分野であり、こういった動きのなかから業界の再編が進む可能性も高いと見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<NS>
1. 今後の方向性
SFPホールディングス<3198>は、2020年2月期までは毎年、向こう3ヶ年の中期経営計画を公表してきたが、2021年2月期以降はコロナ禍の影響により先行き不透明な状況にあることから公表を見送っている。ただ、2022年4月にウィズコロナの定着やアフターコロナを見据え、短・中期的な方向性を明示した。具体的な取り組みとして、(1) 地方都市への新規出店、(2) 注力業態「ネオ大衆酒場」の拡大、(3) 物価上昇への対応、(4) キャッシュレス・省人化を掲げている。
(1) 地方都市への新規出店
主力業態「磯丸水産」の展開は1都3県が中心となっているが、コロナ禍前から地方都市への進出を模索してきた。2022年2月期までの実績を振り返ると、京都・大阪・兵庫(3エリア合計15店舗)に加え、仙台(1店舗)、長野(1店舗)、熊本(2店舗)への出店※に成功したほか、FC展開により、愛知(8店舗)、福岡(5店舗)をカバーしてきた。同社では、未開拓の中核都市への出店機会に改めて目を向けており、中期的な成長ドライバーのひとつとして位置付けている。2023年2月期上期は、仙台(町鮨とろたく/2022年9月開業)、静岡(磯丸水産/2022年11月下旬オープン予定)、札幌(FC磯丸水産/2022年12月オープン予定)への出店に向けて着実な成果を上げることができた。
※このうち、長野、熊本への出店は「アライアンス構想」によるもの
(2) 注力業態「ネオ大衆酒場」の拡大
コロナ禍をきっかけとした環境変化へ機動的に対応するため、これまでの主力業態の強みを生かしながら、低投資で安定的に稼げる「ネオ大衆酒場」業態に注力していく方針である。「ネオ大衆酒場」は、1) 住宅/商店街、2) 路面、3) 小型、4) 17時から29時(翌朝5時)までの営業、5) 少人数/高回転などに特長を持つ業態(収益モデル)であり、現在は「ホームべース」「五の五」「浜焼ドラゴン」「鳥平ちゃん」の4ブランドを展開している。「ネオ大衆酒場」のジャンルのなかでも複数の業態を有していることから、市場の立地や客層、競合他社の状況と照らし合わせて最もマッチングする業態を選んで出店することが可能となっており、この点も強みとなっている。すなわち、主力業態における路面立地や昼~夜までの営業(利用シーンに応じた幅広い需要の取り込み)、高回転などの優位性を残しつつ、住宅/商店街を中心として低投資で安定的に稼げる業態と定義することができる。今後は、既存店の業態転換を含め、1都3県を中心に出店を増やす考えだ。2023年2月期上期は、業態転換により2店舗(浜焼ドラゴン、鳥平ちゃん)を出店し、合計10店舗となった。
(3) 物価上昇への対応
外部環境要因として、原材料費や物流費などの上昇が、原価率の悪化を招くリスクが高まっている。同社では、産地や商品規格の見直し、一部価格改定により原価率の上昇を抑制するとともに、クリエイト・レストランツグループ全体の食材購買・物流マネジメントを推進するCMD社(2021年9月に合弁にて設立)を通じた共同購買等※によるコスト削減にも取り組んでいる。
※クリエイト・レストランツグループ1,000店超の規模を背景とした交渉力の確保や、各社の物流や倉庫の一元化などによるコスト削減などに取り組む。
(4) キャッシュレス・省人化
2021年8月よりクリエイト・レストランツ・ホールディングスのDX推進プロジェクトに参画し、販売データや顧客DBの活用、バックオフィス省人化を推進中である。また、キャッシュレス化についてもモバイルオーダー※を8店舗で試験導入するなど、中期的な視点から、業務効率化や人材の最適配置(省人化)、顧客サービス向上などを実現し、コスト抑制と顧客満足(利便性向上)の両立を図っていく考えである。
※スマートフォン端末を通じて注文・決済までワンストップで行える仕組み
2. 弊社の注目点
弊社でも、地方都市への進出は、成長余地として捉えるだけでなく、新たな変異株などの懸念があるなかで、リスク分散を図るうえでも、合理的な戦略であると見ている。これまで実験的に運営してきた地方店舗(磯丸水産) も総じて堅調に推移しており、コロナ禍の収束とともに、いよいよ本格的な展開が開始されることになるだろう。また、その際、直営店なのか、FCなのか、M&A(アライアンス構想)なのか、展開方式が気になるが、低投資で出店スピードが早いFC展開が現実的な選択肢となる可能性も十分に考えられる。一方、「ネオ大衆酒場」については、まさに「磯丸水産」の収益モデルを環境変化に合わせてチューニングしたものと捉えることができるが、今後、「磯丸水産」とは違うどのような進化を遂げていくのか、新たな成長の軸となるのか、これからの動向を見守りたい。さらに物価上昇への対応やDX推進については、クリエイト・レストランツ・ホールディング(グループ各社)との連携が大きなアドバンテージとなるだろう。いずれもスケールメリットがポイントとなる分野であり、こういった動きのなかから業界の再編が進む可能性も高いと見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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