豪ドル
RBA(豪中銀)は10月4日の政策会合で利上げを行うことを決定したものの、利上げ幅を6月~9月の0.50%から0.25%へと縮小しました。RBAは利上げ幅を縮小した理由を「政策金利は短期間で大幅に引き上げられたため」と説明し、豪インフレと経済成長の見通しを評価するとしました。
RBAは11月1日に会合を開きます。本稿執筆時点で会合の結果は判明していないものの、市場では0.25%利上げするとの見方が有力ですが、0.50%の利上げ観測もあります。利上げ幅が0.25%ならば、目先の豪ドル安材料になる可能性があります。
ただし、RBAは12月以降も利上げを続けるとみられます。RBAの政策金利は23年半ばまでに3.85%か4.10%へと上昇するとの見方が市場では有力です(10/31時点の政策金利は2.60%)。日銀は金融緩和策を続けると考えられるため、RBAと日銀の金融政策面からみれば、豪ドル/円は底固く推移しそうです。
豪ドル/米ドルは、米FRBの金融政策にも注目です。FRBが積極的な利上げを続けるとの観測が強まる場合には米ドルが堅調に推移し、豪ドル/米ドルには下落圧力が加わるかもしれません。
豪ドル/円と豪ドル/米ドルのいずれも、米国など主要国の株価動向には注意が必要です。豪ドルは、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があるからです。米国など主要国の株価が下落を続けるなどしてリスクオフ(リスク回避)の動きが強まれば、豪ドルの下落要因になる可能性があります。
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【豪ドル/NZドル】
RBAは10月4日の政策会合で利上げすることを決定したものの、利上げ幅をこれまでの0.50%から0.25%へと縮小しました。一方、RBNZ(NZ中銀)は5日の政策会合で0.50%利上げすることを決定し、会合では0.75%の利上げを行うことも検討されました。RBAの利上げはハト派的、RBNZの利上げはタカ派的と言えそうです。
市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によれば、市場では政策金利のピーク水準はRBNZが5.00%、RBAは3.85%か4.10%との見方が有力です。市場の見方通りなら、政策金利は引き続きRBNZの方が高く、またRBNZとRBAの政策金利の差は10月31日時点の0.90%(RBNZ:3.50%、RBA:2.60%)からあまり変わらないことになります。
RBAとRBNZの金融政策スタンスや市場の金融政策見通し、最近の相場状況を踏まえると、豪ドル/NZドルが1.15NZドルを超える可能性は低下したと考えられます。
<注目点・イベントなど>
・RBA(豪中銀)の利上げペース。RBAはどこまで政策金利を引き上げるのか。
・主要国の株価動向には注意が必要か。リスクオフは豪ドルにとってマイナス材料。
・資源(主に鉄鉱石)価格は上昇するか。資源価格の上昇は豪ドルの上昇要因。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)は10月5日の政策会合で0.50%の利上げを行うことを決定。政策金利を3.00%から3.50%へと引き上げました。利上げは8会合連続で、0.50%幅の利上げは5会合連続。10月の会合では0.75%利上げすることも検討されました。こうしたRBNZのタカ派的な姿勢はNZドルの支援材料となりそうです。
RBNZはインフレの抑制に向けて今後も利上げを続けるとみられます。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、市場ではRBNZの政策金利は23年4月までに5.00%へと上昇するとの見方が有力です。RBNZと日銀との金融政策面からみれば、NZドル/円は堅調に推移しそうです。
NZドル/米ドルについては、米FRBの利上げペースにも注目です。FRBが積極的な利上げを続けるとの観測が強まる場合、NZドル/米ドルには下押し圧力が加わりやすくなると考えられます。NZドル/米ドルが下落を続ける場合、NZドル/円は伸び悩む可能性があります。
NZドルは豪ドルと同様に、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)にも影響を受けやすいという特徴があります。主要国の株価が下落を続けるなどしてリスクオフ(リスク回避)の動きが強まる場合、NZドルの下落要因になる可能性があります。
<注目点・イベントなど>
・RBNZ(NZ中銀)は政策金利をどこまで引き上げるか。
・米FRBの金融政策。今後の利上げペース、どこまで利上げするのか。
・主要国の株価動向には注意が必要。リスクオフはNZドルにとってマイナス材料。
・乳製品価格の動向。乳製品価格の上昇はNZドルにとってプラス材料。
カナダドル
BOC(カナダ中銀)は10月26日の政策会合で0.50%の利上げを行うことを決定。政策金利を3.25%から3.75%へと引き上げました。利上げは6会合連続。BOCは7月に1.00%、9月に0.75%の利上げを行っており、利上げ幅はさらに縮小されました。
マックレムBOC総裁は10月会合後の会見で、「現在の引き締め(利上げ)局面は終了に近づきつつあるが、まだ終了には至っていない」と強調し、「政策金利はさらに引き上げる必要があると予想している」と発言。さらに利上げする意向を表明しました。
市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、市場では次回12月とその次の23年1月の会合でいずれも0.25%の利上げを行い、それをもって利上げはいったん休止との見方が有力です。CPI(消費者物価指数)など今後発表されるカナダの経済指標によってBOCの利上げ休止観測が後退すれば、カナダドル/円は堅調に推移しそうです。
原油価格や主要国の株価動向には注意が必要かもしれません。世界的な景気減速への懸念が強まれば、原油価格(米WTI原油先物が代表的な指標)には下押し圧力が加わりやすいと考えられ、また主要国の株価が下落を続ければ、リスクオフ(リスク回避)の動きが強まる可能性があります。原油価格が下落を続ける、あるいはリスクオフの動きが強まる場合、カナダドル/円は上値が重くなりそうです。
米ドル/カナダドルについては、米FRBの金融政策にも注目です。FRBが積極的な利上げを続けるとの観測が強まる場合、米ドル/カナダドルには上昇圧力が加わりやすくなると考えられます。
<注目点・イベントなど>
・BOC(カナダ中銀)の政策金利はどこまで上昇するか。
・米FRBの金融政策。今後の利上げペース、どこまで利上げするのか。
・資源(主に原油)価格の動向。資源価格の下落はカナダドルにとってマイナス材料。
・主要国株価の動向。リスクオフが強まれば、カナダドルは軟調に推移か。
トルコリラ
TCMB(トルコ中銀)は8月と9月にいずれも1.00%、10月に1.50%の「利下げ」を行いました。トルコの9月CPI(消費者物価指数)は前年比83.45%と、上昇率は前月の80.21%から加速し、98年7月以来、24年2カ月ぶりの高い伸びとなりました。高インフレにもかかわらず、TCMBは利下げを行っており、そのことはトルコリラにとってマイナス材料です。
TCMBは10月会合時の声明で、「(今回の会合では)次回会合で同様の措置を講じ、利下げサイクルを終了することを検討した」と表明。次回11月24日の会合でさらに1.50%の利下げを実施し、それをもっていったん利下げを打ち止めにする可能性を示しました。
しかし、TCMBは低金利を志向するエルドアン大統領の影響下にあると考えられます。トルコでは23年6月に大統領選が行われる予定であり、景気の浮揚に向けてエルドアン大統領は23年にも利下げを求める可能性があります。TCMBが利下げを続ける場合、トルコリラには下押し圧力が加わりやすい地合いになりそうです。トルコリラ/円については、米ドル/円の動向にも影響を受けるものの、6.087円(21年12月につけた過去最安値)にいずれ近づく可能性があります。
<注目点・イベントなど>
・TCMB(トルコ中銀)が利下げを続ける場合、トルコリラには下押し圧力が加わりやすいとみられる。
・金融政策をめぐるエルドアン大統領の言動には要注意。
・トルコと米国やEUとの関係は改善するか。
・シリア情勢などトルコの地政学リスク。
南アフリカランド
SARB(南アフリカ中銀)は21年11月に利上げを開始し、前回9月の会合まで6会合連続で利上げを実施。現在の政策金利は6.25%です。
南アフリカの9月CPI(消費者物価指数)は前年比7.5%と、上昇率は8月の7.6%から鈍化したものの、SARBのインフレ目標である3~6%を引き続き上回りました。SARBはインフレの抑制に向けて政策金利をさらに引き上げると考えられます。SARBと日銀の金融政策の方向性の違いをみれば、南アフリカランド/円は底固く推移しそうです。
一方で、南アフリカでは発電設備の老朽化などによって慢性的な電力不足に陥っています。今後、計画停電が長期間行われるような状況になれば、南アフリカ景気をめぐる懸念が強まる可能性があります。その場合、南アフリカランドに対して下押し圧力が加わるかもしれません。
<注目点・イベントなど>
・SARB(南アフリカ中銀)の政策金利はどこまで上昇するか。
・米FRBの金融政策。今後の利上げペース、どこまで利上げするのか。
・南アフリカで計画停電が長期間行われる場合、南アフリカランド安材料になる可能性も。
・金など商品価格の動向。商品価格の上昇は南アフリカランドにとってプラス材料。
メキシコペソ
BOM(メキシコ中銀)は21年6月に利上げを開始し、前回9月まで11会合連続で利上げを実施。現在の政策金利は9.25%です。
BOMが利上げを続けているにもかかわらず、メキシコのインフレ圧力は依然として強く、10月前半のCPI(消費者物価指数)は、総合指数が前年比8.53%、変動の大きい食品やエネルギーを除いたコア指数は同8.39%でした。総合指数の上昇率は9月前半の8.76%から鈍化したものの、BOM(メキシコ中銀)のインフレ目標(3%。2~4%が許容レンジ)を引き続き大きく上回っており、またコア指数の上昇率は9月前半の8.27%から加速しました。BOMは今後も積極的な利上げを続ける可能性があります。
一方で日銀は現在の金融緩和策を当面続けると考えられます。BOMと日銀の金融政策面をみれば、メキシコペソ/円は底固く推移しそうです。
原油価格や主要国の株価動向には要注意です。カナダドルと同様、原油価格が下落を続ける、あるいはリスクオフの動きが強まる場合にはメキシコペソ/円は上値が重くなりそうです。
<注目点・イベントなど>
・BOM(メキシコ中銀)は利上げを継続するとみられる。メキシコペソを支援しそう。
・米FRBの金融政策。今後の利上げペース、どこまで利上げするのか。
・資源(主に原油)価格の動向。資源価格の下落はメキシコペソにとってマイナス材料。
・主要国株価の動向。リスクオフは円にとってプラス材料。
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