[資源・新興国通貨8/22~26のポイント&注目通貨]メキシコペソ:BOMの利上げ観測は強まるか

著者:八代和也
投稿:2022/08/22 13:56

今週のポイント

米国の長期金利(10年物国債利回り)は8月19日に一時2.99%台後半へと上昇し、約1カ月ぶりの高い水準をつけました。米長期金利が一段と上昇すれば、豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルには下押し圧力が加わりやすくなり、一方で米ドル/カナダドルには上昇圧力が加わりやすくなりそうです。

今週(8/22- )は、メキシコの8月前半CPIと南アフリカの7月CPIが発表されます(いずれも24日)。CPIが強い結果になれば、BOM(メキシコ中銀)やSARB(南アフリカ中銀)の利上げ観測が強まる可能性があります。

原油価格(米WTI原油先物)や主要国株価の動向にも注目です。原油価格が下落を続ける場合にはカナダドルやメキシコペソの上値を抑える要因となりそう。株安が進めば、リスクオフ(リスク回避)の動きが強まる可能性があります。リスクオフは、円高材料や米ドル高材料です。
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TCMB(トルコ中銀)は8月18日の政策会合で1.00%の「利下げ」を行うことを決定。政策金利を14.00%から13.00%へと引き下げました。

トルコの7月CPI(消費者物価指数)は前年比79.60%と、上昇率は78.62%から加速し、98年9月以来約24年ぶりの高い伸びとなりました。インフレが加速しているにもかかわらず、TCMBは利下げを行いました。また、エルドアン大統領は以前から低金利を志向しており、今回の利下げによって金融政策におけるエルドアン大統領の影響力の大きさが改めて浮き彫りになったと言えそうです。トルコリラには下押し圧力が加わりやすいとみられます。

今週の注目通貨ペア(1):<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.09500NZドル~1.12000NZドル>

RBNZ(NZ中銀)は8月17日の政策会合で0.50%の利上げを行うことを決定。政策金利を2.50%から3.00%へと引き上げました。利上げは、7会合連続です。

声明は「インフレ率(CPI上昇率)を目標レンジ内に戻すために、消費が十分に抑制されていると確信できるまで、金融引き締めを続ける必要がある」と表明し、「金融政策の使命を達成することを固く決心している」と強調。利上げを続ける意向を示しました。

RBNZはまた、四半期に一度の金融政策報告を公表。政策金利は23年4-6月期に4.10%でピークに達するとの見通しを示し、ピークの水準を5月時点の3.95%から上方修正しました。

これらはNZドルにとってプラス材料です。一方で、RBA(豪中銀)も利上げを続けるとみられ、豪ドルにもプラス材料があります。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、22年末までにRBNZの政策金利は3.75%へ、RBAの政策金利は3.35%へと上昇するとの見方が有力です(RBAの現在の政策金利は1.85%)。

豪ドル/NZドルは、2カ月半にわたって1.09500NZドル~1.12000NZドルのレンジで推移しています。RBAとRBNZの金融政策面からみれば、豪ドル/NZドルには方向感が出にくいとみられ、引き続きこのレンジで上下動する可能性があります。

今週の注目通貨ペア(2):<メキシコペソ/円 予想レンジ:6.600円~6.900円>

メキシコの8月前半のCPI(消費者物価指数)が24日に発表されます。CPIの市場予想は、総合指数が前年比8.51%、変動の大きい食品やエネルギーを除いたコア指数は同7.80%。上昇率はいずれも前月(8.16%、7.56%)から加速し、BOM(メキシコ中銀)のインフレ目標(3%。2~4%が許容レンジ)からさらにかけ離れるとみられています。

BOMは前回8月11日の政策会合で0.75%の利上げを行うことを決定しました(現在の政策金利は8.50%)。CPIが市場予想を上回る結果になれば、次回9月29日の会合での大幅な利上げ観測が市場で強まるかもしれません。その場合には、BOMと日銀との金融政策の方向性の違いが改めて意識されて、メキシコペソ/円は上値を試す展開になりそうです。

原油価格(米WTI原油先物)や主要国株価の動向には注意が必要です。原油価格や主要国の株価が下落を続ける場合、メキシコペソ/円は上値が重くなる可能性もあります。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想