窪田製薬HD Research Memo(5):スターガルト病治療薬は1,000億円超の売上ポテンシャル。開発成功目指す

配信元:フィスコ
投稿:2022/04/06 16:05
■主要開発パイプラインの概要と進捗状況

3. エミクススタト塩酸塩
(1) スターガルト病の概要
スターガルト病とは、網膜の遺伝性疾患で若年性黄斑変性と呼ばれる。8千人から1万人に1人の割合で発症し、患者数は日米欧で15万人弱、米国だけで見ると3.2~4万人と推計されている※。小児期から青年期における視力低下や色覚障害などが主な症状として挙げられ、大半の患者が視力0.1以下に低下すると言われており、有効な治療法がいまだ確立していないアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患の1つである。

※Market Scope,「Retinal Pharma & Biologics Market」「UN World Population Prospects 2015」をもとに、窪田製薬ホールディングス<4596>が推計。


発症原因は、網膜内にあるABCA4遺伝子の突然変異によるものと考えられている。ABCA4遺伝子は光を感じる働きを司る「視覚サイクル」によって生じる有害なリポフスチン(以下、A2E)を処理する役割を果たすが、同遺伝子が突然変異により本来の役割を果たさなくなることで網膜内にA2Eが過剰に蓄積し、視細胞が損傷を受けることで視機能障害が徐々に進行していくメカニズムとなる。

エミクススタト塩酸塩は動物モデルを用いた前臨床試験において、このA2Eの蓄積を抑制する効果が確認されている。エミクススタト塩酸塩が「視覚サイクル」において重要な役割を果たすRPE65と呼ばれる酵素を選択的に阻害し、視覚サイクルによって生じる老廃物の蓄積を軽減する薬理作用があるためと考えられる。このため、エミクススタト塩酸塩の投与によりスターガルト病の症状の進行を抑制する効果が期待される。

(2) 今後のスケジュール
スターガルト病を適応症とした第3相臨床試験(2018年11月開始、被験者登録数194名、世界11ヶ国の医療施設で実施)は、2020年5月1日付で被験者登録が完了している※。順調に進めば2022年12月期第3四半期に試験結果のデータベースロックが完了する見込みで、結果が良好であれば欧米の規制当局に製造販売承認申請を行うことになる。また、大手製薬企業など10社以上と販売パートナー契約の交渉を進めており、第3相臨床試験の結果が良好であれば、契約締結に向けて大きく前進することになる。なお、試験結果の内容によっては追加試験を要求される可能性もあるが、その際にはパートナー契約を締結して進めていくことを同社では想定している。

※2020年8月に第3相臨床試験がFDAの助成金プログラムに採択されており、治験費用の一部を助成金で賄っている。


(3) 市場規模と競合について
同社資料によれば、スターガルト病治療薬の世界市場規模は2016年の780百万ドルから2027年に1,593百万ドルと2倍に増加すると予測されている※1。遺伝性疾患で患者数が少ない反面、有効な治療薬が未だなく(進行抑制のためのレーザー光による網膜凝固術のみ)、今後有効性の高い新薬が開発されることによって高い薬価が期待されているためだ。「エミクススタト塩酸塩」はスターガルト病を適応症として、米国と欧州でオーファンドラッグ指定※2を受けており、開発に成功すれば大きく収益に貢献することが期待される。

※1 WISEGUY RESEARCH CONSULTANTS PVT LTD Global Juvenile Degeneration (Stargardt Diseas) Market Research Report
※2 2019年6月に欧州でオーファンドラッグ指定を受けた。欧州では、生命を脅かすような疾患や重篤で慢性的な衰弱状態の疾患で、1万人当たり5人未満の発症率である疾患の診断や治療のための医薬品が指定対象となる。上市後10年間の市場独占販売権、医薬品の製造販売承認申請費用の減額、優先承認審査等のインセンティブ、税制優遇などを受けられることになる。米国では2017年1月にオーファンドラッグ指定(上市後7年間の独占販売権)を受けている。


なお、スターガルト病を適応症とした新薬候補品は、探索段階も含めて約30件あるが、そのうち臨床試験に入っているのは10品目で、第3相臨床試験まで進んでいるものは同社の「エミクススタト塩酸塩」を含めて2品目(他社品は第3相臨床試験を開始した段階)、第2相臨床試験中のものが6品目となっている。同社ではこれら他社品に先行して「エミクススタト塩酸塩」の第3相臨床試験を終了する可能性が高いことから、そのアドバンテージを生かして、パートナー契約締結及びその後の上市による収益獲得を目指していく。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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