明日の株式相場に向けて=パウエル発言で流れは変わるか
きょう(12日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比543円高の2万8765円と4日ぶりに大幅反発。前日の欧米株高で市場のセンチメントが弱気から強気に入れ替わり、540円あまりの上昇で一気に2万8000円台後半へ歩を進める展開となった。
寅年相場は大発会の大幅高を除けば、かなり重苦しいムードで、特に個人投資家の参戦比率が高いマザーズ市場などの評価損益率は悪化の一途となり、どこかで堰を切るように投げ売りが出てくるのではないかという状態にあった。しかし過去を振り返っても、これまでかと思うところで暗雲が晴れ、いきなり日が差し込んでくるケースは多い。結果として空売りの買い戻しを絡め、相場は上昇トレンドに切り替わるパターンである。
もっとも日経平均株価について言えば、少し立ち位置を引いて眺めてみると、結局のところ昨年の年初から今現在に至るまでボックス圏での往来を繰り返しているに過ぎない。若干のイレギュラーはあっても、基本は2万7000円台半ばから3万円トビ台のゾーンでのもみ合いを続けている。上がる時は強気の声が響き渡り、下がる時は悲観ムード一色に染まるが、それは波の浮き沈みであって潮の流れではない。株価はそのどちらにも誘引されることなく彷徨を続けている、というのが直近1年を振り返っての相場の軌跡である。TOPIXの方は日経平均よりもやや強めのチャートで下値切り上げ波動をかろうじて維持しているともいえるが、8月末から10月初旬にかけての急騰急落後は疑心暗鬼に駆られたどっちつかずの値運びで、やはり上値の重い動きを強いられている。
きょうの東京市場における日経平均の急上昇は、前日の欧米株高を引き継いだものであることは間違いがない。とりわけ米国株市場では、パウエルFRB議長の米上院銀行委員会での発言が好感され、リスクオフの巻き戻しを引き起こす背景となった。パウエル氏はタカ派の姿勢を崩すことはなかったが、「利上げや量的引き締めについて年後半もしくは年央からのスタートを示唆したことで、一部で広がっていた量的緩和終了後に間髪入れず3月から引き締め政策に転換するという見方は後退した」(ネット証券マーケットアナリスト)という。これがポジティブ視されたものの、裏返せば、おそらくこれは6月からは躊躇することなく金融の蛇口を締めますよと宣言しているに等しい。同アナリストも「株式市場にとっては超緩和策の出口が提示された状態に変わりなく、3月利上げの線が後退したからといって、じゃあ株を買い直しましょうということにはなりにくい」(同)と指摘している。
いずれにせよ、過剰流動性相場はすぐに終了形になるわけではないが、外堀は埋められた状態だ。中期的な株高シナリオを描くうえで必要なのは企業ファンダメンタルズのレベルアップ、即ち業績相場の切符を手にしなければならない。金融引き締め局面と株高局面の同時進行は十分可能だが、それは企業の利益成長が株価上昇を後押しするという構図である。その意味で来期の企業業績予想は、グローバルベースで大きな意味を持つことになる。
なお、昨日東証が4月4日に実施する市場再編後の上場企業の所属先を公表したが、実質最上位市場となる「プライム」には現在の東証1部企業の8割にあたる1841社が移行することが分かった。もっとも、上場基準を満たさなくてもプライムに上場できる例外規定、いわゆる経過措置が適用されている企業は296社にのぼる。こうした銘柄群は、むしろ今後の企業努力により株価上昇余地が大きいため、投資対象として有力という見方もできる。今回公表された「スタンダード」「グロース」企業のなかでプライム市場への昇格に向けた準備を進めている企業も合わせ、思惑買いの流れが形成されそうだ。
きょうは東証1部では全体の9割近い銘柄が上昇したが、ハイテク株が買い戻される一方、バリュー株物色の流れも根強く続いている。カギを握るのは“成長性”である。万年割安株のレッテルを貼られないような銘柄を選ぶ必要がある。低PER・PBR銘柄のなかで業績変化率や今後の成長性を考慮して、北川精機<6327.T>、ヒーハイスト<6433.T>、エノモト<6928.T>などをマークしてみたい。
あすのスケジュールでは、12月のマネーストックが朝方取引開始前に日銀から開示される。このほか12月のオフィス空室率、11月の特定サービス産業動態統計、12月の工作機械受注などが発表される。海外では、米卸売物価異数(PPI)が注目される。また、ブレイナードFRB理事が米上院で証言を行う。(銀)
出所:MINKABU PRESS
寅年相場は大発会の大幅高を除けば、かなり重苦しいムードで、特に個人投資家の参戦比率が高いマザーズ市場などの評価損益率は悪化の一途となり、どこかで堰を切るように投げ売りが出てくるのではないかという状態にあった。しかし過去を振り返っても、これまでかと思うところで暗雲が晴れ、いきなり日が差し込んでくるケースは多い。結果として空売りの買い戻しを絡め、相場は上昇トレンドに切り替わるパターンである。
もっとも日経平均株価について言えば、少し立ち位置を引いて眺めてみると、結局のところ昨年の年初から今現在に至るまでボックス圏での往来を繰り返しているに過ぎない。若干のイレギュラーはあっても、基本は2万7000円台半ばから3万円トビ台のゾーンでのもみ合いを続けている。上がる時は強気の声が響き渡り、下がる時は悲観ムード一色に染まるが、それは波の浮き沈みであって潮の流れではない。株価はそのどちらにも誘引されることなく彷徨を続けている、というのが直近1年を振り返っての相場の軌跡である。TOPIXの方は日経平均よりもやや強めのチャートで下値切り上げ波動をかろうじて維持しているともいえるが、8月末から10月初旬にかけての急騰急落後は疑心暗鬼に駆られたどっちつかずの値運びで、やはり上値の重い動きを強いられている。
きょうの東京市場における日経平均の急上昇は、前日の欧米株高を引き継いだものであることは間違いがない。とりわけ米国株市場では、パウエルFRB議長の米上院銀行委員会での発言が好感され、リスクオフの巻き戻しを引き起こす背景となった。パウエル氏はタカ派の姿勢を崩すことはなかったが、「利上げや量的引き締めについて年後半もしくは年央からのスタートを示唆したことで、一部で広がっていた量的緩和終了後に間髪入れず3月から引き締め政策に転換するという見方は後退した」(ネット証券マーケットアナリスト)という。これがポジティブ視されたものの、裏返せば、おそらくこれは6月からは躊躇することなく金融の蛇口を締めますよと宣言しているに等しい。同アナリストも「株式市場にとっては超緩和策の出口が提示された状態に変わりなく、3月利上げの線が後退したからといって、じゃあ株を買い直しましょうということにはなりにくい」(同)と指摘している。
いずれにせよ、過剰流動性相場はすぐに終了形になるわけではないが、外堀は埋められた状態だ。中期的な株高シナリオを描くうえで必要なのは企業ファンダメンタルズのレベルアップ、即ち業績相場の切符を手にしなければならない。金融引き締め局面と株高局面の同時進行は十分可能だが、それは企業の利益成長が株価上昇を後押しするという構図である。その意味で来期の企業業績予想は、グローバルベースで大きな意味を持つことになる。
なお、昨日東証が4月4日に実施する市場再編後の上場企業の所属先を公表したが、実質最上位市場となる「プライム」には現在の東証1部企業の8割にあたる1841社が移行することが分かった。もっとも、上場基準を満たさなくてもプライムに上場できる例外規定、いわゆる経過措置が適用されている企業は296社にのぼる。こうした銘柄群は、むしろ今後の企業努力により株価上昇余地が大きいため、投資対象として有力という見方もできる。今回公表された「スタンダード」「グロース」企業のなかでプライム市場への昇格に向けた準備を進めている企業も合わせ、思惑買いの流れが形成されそうだ。
きょうは東証1部では全体の9割近い銘柄が上昇したが、ハイテク株が買い戻される一方、バリュー株物色の流れも根強く続いている。カギを握るのは“成長性”である。万年割安株のレッテルを貼られないような銘柄を選ぶ必要がある。低PER・PBR銘柄のなかで業績変化率や今後の成長性を考慮して、北川精機<6327.T>、ヒーハイスト<6433.T>、エノモト<6928.T>などをマークしてみたい。
あすのスケジュールでは、12月のマネーストックが朝方取引開始前に日銀から開示される。このほか12月のオフィス空室率、11月の特定サービス産業動態統計、12月の工作機械受注などが発表される。海外では、米卸売物価異数(PPI)が注目される。また、ブレイナードFRB理事が米上院で証言を行う。(銀)
出所:MINKABU PRESS
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