―NEXT GAFAMを担う日本企業のビジネスモデルに注目せよ―
2021年もハイテク敗戦、グリーン敗戦、金融敗戦、コロナ敗戦と自虐思考のオンパレードであった。ここまでくれば悲観も陰の極ではないか。敗戦はすべて過去に起こったこと、あるいは過去に蒔かれたマイナスの種が影響を残したことにすぎず、将来も敗け続けるということでは全くない。
過去を振り返ると、日本の最悪期はだいぶ前であったことがわかる。日本株(日経平均株価)のバブル後最安値は2009年3月10日の7054円、直近の高値は2021年9月14日の3万0795円、この12年間で日本の株価は4.37倍(年率13.1%)になった。
このパフォーマンスは、米国を除けば世界の優等生。日本が本当に世界に劣後していたのはアベノミクスが始まる8年前までで、以降は着実なキャッチアップの過程に入っている。それは日本企業のビジネスモデルの大いなる変革と企業収益の飛躍的向上に支えられている。企業における価値創造こそが将来を形作る最も重要な要素であるから、このペースの株価成長が維持される可能性は大きい。となれば、10年後の2031年には日経平均は10万円になる。
なぜ日本において、企業による価値創造が期待できるのか、以下で考えてみる。
悲観論者と楽観論者で財産形成に極端な格差ができている。格差を非難する株式投資批判者は、政治や体制を糾弾するのではなく、自らの不明を反省するべきである。
(1) 2022年の市場展望を楽観するべき理由
2022年、経済と市場は引き続き明るい年になるだろう。第1に、グローバル投資環境は良好である。第2に、日本株の再評価が始まり、バリュエーションが向上するかもしれない。
市場を巡る不確実性が大方消えてきた。米中対立は依然として熾烈だが、経済面では持久戦の様相が強まり不透明感は消えつつある。また、コロナパンデミックも、オミクロンなど変異種の相次ぐ誕生から制圧には至らないが、経済への悪影響は減衰している。イノベーションの加速と市場フレンドリーな金融政策の下で、積極的な投資姿勢を堅持するべきである。米国中間選挙、フランス、韓国の大統領選挙などの政治的イベントも大きな攪乱要因にはなりにくい。中国での政変(?)、韓国大統領選での保守党候補勝利による日韓宥和などのサプライズがあればむしろポジティブなものになる可能性が強い。日経平均2万8500~3万5000円、NYダウ工業株3万5000~4万ドル、米長期金利1.25~1.90%、ドル円113~123円、と見ている。
個人資金のETF(上場投資信託)を通した市場流入が増加しており、インデックス主導、先物主導の市場構造は一段と強まっている。そのため、ボラティリティの高まりには注意が必要であろう。年央のどこかで一定の株価調整を想定するべきかもしれない。
米国金融引き締めの悪影響は心配するに及ばず
米国の金融引き締めに過度の心配は不要であろう。市場ではいつになく警戒感が強いので、意外に底堅い展開の年になるかもしれない。(1)インフレが一時的であること、(2)長期的金利低下の趨勢が続くことが要因。自然利子率低下はさらなる株高、バリュエーションの上昇余地があることを示唆する。「TINA(There is no alternative:株以外に投資対象がない)」という状況は2022年も続く。市場フレンドリーな金融政策不変・マイルドインフレ・マイルド金利上昇の下で、リスクテイクが報われる環境が続くと考えられる。
日本株式、2021年は年初に3万円を付けた後もしっかり
2021年の日本株式は意外にしっかりしていた。これまでの日本株の2大買い主体であった日銀と外国人の支援が全く止まったにもかかわらず、前年比でプラスが維持された。(A) 日銀がETF購入をほぼ停止したこと、(B)MSCI日本株採用銘柄減の影響もあり、外国人が日本株を売り越したこと、(C)指数に影響力が大きいソフトバンクグループ <9984> (7%の影響力)の大幅減益(アリババの株価急落により2020年度の5兆円から3兆円以下に)などの悪材料にもかかわらず、バブル後最高値3万0795円からの調整は小幅であった。底流に相場体温の上昇があったことをうかがわせる。2022年はこれらの悪材料が一巡する。
新プレイヤーと新投資主体(個人の積立投資)が日本株の魅力度を高める
2022年に日本株式が相対的に魅力度を高めるとしたら、その理由として以下4点ほどが指摘できる。
(a)景気拡大上方修正幅大→コロナでは健康被害最小の日本が、先進国最大の経済被害(経済成長の落ち込み)を被った。コロナ終息による景気のリバウンドは日本が一番大きくなるだろう。IMF(国際通貨基金)などは日本の経済見通しを大幅に上方修正してくるのではないか。
(b)地政学の順風……円安容認、日本へのハイテククラスター回帰、運命の神が日本に微笑む。
(c)個人投資家資金の流入などにより株式需給が改善、バリュートラップ脱却(=日本株の割安感是正)が進展していくだろう。
(d)日本の潜在的優良ビジネスモデルを再評価へ。
ここで特に説明が必要なのは、(c)と(d)である。
潜在的な株式投資の待機資金は世界最大級、証券投資口座が着実に増加
日本の家計は全く金利が付かない現預金を1072兆円も保有している。この株式投資の待機資金の大きさは世界最大級である。この資金の一部でも配当だけで2%のリターンがある株式市場に回れば、株価は大きく上昇する。その萌芽は見えつつある。真剣に自分の将来を考えなければならない若者を中心にして、つみたてNISAやiDeCoなどで資産形成を行う動きが、このコロナ禍において目立つようになってきた。証券口座数の増加ペースは速まっている。早晩、個人の株式積立資金が最大の株式買い主体に育っていくだろう。
関連銘柄
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