■今後の見通し
1. 2022年3月期の業績見通し
TOKAIホールディングス<3167>の2022年3月期の連結業績は、売上高で前期比5.2%増の207,000百万円、営業利益で同0.1%増の15,240百万円、経常利益で同0.1%増の15,320百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同0.2%増の8,830百万円と期初計画を据え置いている。売上高は継続取引顧客件数の積み上げや法人向け情報通信事業の拡大、建築設備不動産事業におけるM&A効果等により増収を見込む。利益面では、今後の成長を見据えて継続取引顧客基盤の拡大に注力していくことや、ワークスタイル改革のための環境整備費用(約5億円)、設備投資拡大に伴う減価償却費の増加(約5億円)などを見込んでいるため、若干の増益にとどまる見通し。第2四半期までの通期計画に対する進捗率は売上高で46.4%、営業利益で34.3%となっており、直近3年間の平均進捗率はほぼ同様のペースとなっている。親会社株主に帰属する当期純利益は、前述のとおり第2四半期に特別損失を計上したため進捗率が25.8%と低くなっているが、下期に特別利益を計上することも視野に入れており、最終的には計画どおり微増益を確保するものと予想される。
社内計画比では第2四半期累計で、売上高は約10億円、営業利益は数億円程度上回る進捗となっている。売上高についてはエネルギー事業において期初に想定していなかった家庭用LPガスや都市ガスの値上げを下期に実施する見込みとなっているため、通期でも上振れする可能性が高いと弊社では見ている。一方、営業利益に関しては下期に顧客獲得コストを積み増して、継続取引顧客件数で期初計画の3,195千件の達成を目指していることから、ほぼ計画並みに着地する見通しだ。なお会計方針の変更による業績への影響額は、CATV事業やエネルギー事業を中心に売上高で30億円強の減収要因となるものの、営業利益への影響に関しては軽微となっている。
(1) エネルギー事業
エネルギー事業の売上高は前期比4.0%増、営業利益は5.6%減と増収減益を見込む。前提となる家庭用LPガスの販売単価は前期比横ばい、年平均気温については0.1℃の低下を想定していたため、下期以降の値上げは計画の上振れ要因となる。仕入価格が高騰しているが、家庭用についてはすでに前期までに予約を終えており、値上げは利益増要因となる。ただ、上振れた利益については顧客獲得コストに充当していく方針としており、その規模によって営業利益は計画を下回る可能性もある。一方、業務用や工業用については仕入価格と販売価格が連動するため、利益面での影響はない。
当面の課題はLPガスの顧客件数拡大にある。LPガスの顧客件数は前期末比57千件増加の738千件を計画していたが、第2四半期までの実績は15千件の増加にとどまっており、下期に獲得ペースを加速していく必要がある。通期計画の増減内訳を見ると、新規獲得で43千件増、解約で23千件、M&A・アライアンスで36.8千件となっているのに対して、第2四半期までの実績は新規獲得で18千件、解約で13千件、M&A・アライアンスで10千件となっており、新規獲得とM&Aアライアンスによる顧客取り込みを強化していく必要がある。新規獲得については既存エリアでの獲得に加えて、2021年10月より新たに熊本市に営業拠点を開設したほか、2022年1月を目途に広島県への進出も検討している。これら新規進出エリアでの顧客獲得を見込んでおり、顧客獲得コストも増加する見通しだ。一方、都市ガス事業については顧客件数に大きな変化はないものの、下期に料金値上げが見込まれているため通期売上高は2期ぶりに増収に転じる見通しとなっている。
(2) 情報通信事業
情報通信事業の売上高は前期比3.2%増、営業利益は横ばい水準を見込んでいる。第2四半期累計の営業利益は社内計画を数億円程度上回ったが、コンシューマー向けサービスで顧客獲得コストを積み増すことから、ほぼ計画どおりに着地するものと予想される。コンシューマー向けの顧客件数は、ISPサービス(光コラボ含む)で前期末比横ばい水準の732千件、LIBMOで同8千件増加の61千件を計画していたが、第2四半期までの実績はISPサービスで同6千件の減少、LIBMOで同1千件の増加にとどまるなど進捗が遅れている。
同社は顧客獲得コストの積み増し以外にも、ISPサービスでは大手携帯キャリアとの提携によるサービスメニューの拡充を図ったほか、LIBMOについても下期から(株)NTTドコモの「ドコモ光」とセットにしたサービスの提供をNTTドコモ系列の販売代理店でも一部開始しており、これら施策による顧客件数の増加が期待される。一方、法人向け事業についてはシステム受託開発やクラウド構築支援案件の需要が引き続き旺盛で、通期業績も増収増益となる見通しだ。
(3) CATV事業
CATV事業の売上高は前期比3.5%減、営業利益は同7.7%増と減収増益を見込む。会計方針変更の影響で20億円の減収要因となるが、実質的には2%程度の増収となる。また、顧客件数は前期末比25千件増の1,223千件(うち放送サービスで同8千件増の883千件、通信サービスで同18千件増の340千件)を計画している。第2四半期末で同16千件の増加(うち放送サービスで同5千件増、通信サービスで同11千件増)と計画をやや上回る進捗となっており、今後も同様のペースで顧客獲得が進めば、売上高、営業利益ともに計画を上振れする可能性がある。またインフラの光化対応を進めてきたことで放送サービスと同時に通信サービスを契約する顧客が増加する傾向にあり、1顧客当たり売上単価の上昇に伴う収益性向上も見込まれる。
(4) 建築設備不動産事業
建築設備不動産事業の売上高は前期比25.2%増、営業利益は同14.5%増と2ケタ増収増益を見込んでいる。コロナ禍で2021年3月期に落ち込んだ反動でリフォーム工事など既存事業の売上が回復するほか、2021年3月期に子会社化した2社(中央電機工事、イノウエテクニカ)が通年で寄与すること、2021年4月に子会社化したマルコオ・ポーロ化工の業績が上乗せされることなどが増収増益要因となる。
(5) アクア事業
アクア事業の売上高は前期比4.3%増、営業利益は横ばいとなる見通し。顧客件数は前期末比9千件増加の171千件を計画し、顧客当たり平均売上高は、巣ごもり需要の反動で若干低下する前提となっている。ただ、第2四半期までの顧客件数が前期末比3千件の増加と計画を下回っており、下期に顧客獲得コストを積み増す予定にしていることから、売上高、営業利益ともに計画を下回る可能性がある。
(6) その他・調整額
その他事業の売上高は前期比14.6%増となる見通し。コロナ禍のマイナス影響が一巡し、介護事業が堅調に推移するほか、婚礼催事事業についても回復を見込んでいる。一方、社内調整額も含めた損失額は3億円前後拡大する見込みとなっている。ワークスタイルの改革に伴って、テレワーク環境に対応したシンクライアント端末の購入費やオフィスの見直しに伴う関連費用の計上で4億円程度を計画している。なお、同社並びに東京本社では出社率を5割程度としており、オフィススペースの縮小を段階的に進めている。第2四半期末でフロア面積を20%削減し、最終的には前期末比40%程度を削減する計画となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2022年3月期の業績見通し
TOKAIホールディングス<3167>の2022年3月期の連結業績は、売上高で前期比5.2%増の207,000百万円、営業利益で同0.1%増の15,240百万円、経常利益で同0.1%増の15,320百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同0.2%増の8,830百万円と期初計画を据え置いている。売上高は継続取引顧客件数の積み上げや法人向け情報通信事業の拡大、建築設備不動産事業におけるM&A効果等により増収を見込む。利益面では、今後の成長を見据えて継続取引顧客基盤の拡大に注力していくことや、ワークスタイル改革のための環境整備費用(約5億円)、設備投資拡大に伴う減価償却費の増加(約5億円)などを見込んでいるため、若干の増益にとどまる見通し。第2四半期までの通期計画に対する進捗率は売上高で46.4%、営業利益で34.3%となっており、直近3年間の平均進捗率はほぼ同様のペースとなっている。親会社株主に帰属する当期純利益は、前述のとおり第2四半期に特別損失を計上したため進捗率が25.8%と低くなっているが、下期に特別利益を計上することも視野に入れており、最終的には計画どおり微増益を確保するものと予想される。
社内計画比では第2四半期累計で、売上高は約10億円、営業利益は数億円程度上回る進捗となっている。売上高についてはエネルギー事業において期初に想定していなかった家庭用LPガスや都市ガスの値上げを下期に実施する見込みとなっているため、通期でも上振れする可能性が高いと弊社では見ている。一方、営業利益に関しては下期に顧客獲得コストを積み増して、継続取引顧客件数で期初計画の3,195千件の達成を目指していることから、ほぼ計画並みに着地する見通しだ。なお会計方針の変更による業績への影響額は、CATV事業やエネルギー事業を中心に売上高で30億円強の減収要因となるものの、営業利益への影響に関しては軽微となっている。
(1) エネルギー事業
エネルギー事業の売上高は前期比4.0%増、営業利益は5.6%減と増収減益を見込む。前提となる家庭用LPガスの販売単価は前期比横ばい、年平均気温については0.1℃の低下を想定していたため、下期以降の値上げは計画の上振れ要因となる。仕入価格が高騰しているが、家庭用についてはすでに前期までに予約を終えており、値上げは利益増要因となる。ただ、上振れた利益については顧客獲得コストに充当していく方針としており、その規模によって営業利益は計画を下回る可能性もある。一方、業務用や工業用については仕入価格と販売価格が連動するため、利益面での影響はない。
当面の課題はLPガスの顧客件数拡大にある。LPガスの顧客件数は前期末比57千件増加の738千件を計画していたが、第2四半期までの実績は15千件の増加にとどまっており、下期に獲得ペースを加速していく必要がある。通期計画の増減内訳を見ると、新規獲得で43千件増、解約で23千件、M&A・アライアンスで36.8千件となっているのに対して、第2四半期までの実績は新規獲得で18千件、解約で13千件、M&A・アライアンスで10千件となっており、新規獲得とM&Aアライアンスによる顧客取り込みを強化していく必要がある。新規獲得については既存エリアでの獲得に加えて、2021年10月より新たに熊本市に営業拠点を開設したほか、2022年1月を目途に広島県への進出も検討している。これら新規進出エリアでの顧客獲得を見込んでおり、顧客獲得コストも増加する見通しだ。一方、都市ガス事業については顧客件数に大きな変化はないものの、下期に料金値上げが見込まれているため通期売上高は2期ぶりに増収に転じる見通しとなっている。
(2) 情報通信事業
情報通信事業の売上高は前期比3.2%増、営業利益は横ばい水準を見込んでいる。第2四半期累計の営業利益は社内計画を数億円程度上回ったが、コンシューマー向けサービスで顧客獲得コストを積み増すことから、ほぼ計画どおりに着地するものと予想される。コンシューマー向けの顧客件数は、ISPサービス(光コラボ含む)で前期末比横ばい水準の732千件、LIBMOで同8千件増加の61千件を計画していたが、第2四半期までの実績はISPサービスで同6千件の減少、LIBMOで同1千件の増加にとどまるなど進捗が遅れている。
同社は顧客獲得コストの積み増し以外にも、ISPサービスでは大手携帯キャリアとの提携によるサービスメニューの拡充を図ったほか、LIBMOについても下期から(株)NTTドコモの「ドコモ光」とセットにしたサービスの提供をNTTドコモ系列の販売代理店でも一部開始しており、これら施策による顧客件数の増加が期待される。一方、法人向け事業についてはシステム受託開発やクラウド構築支援案件の需要が引き続き旺盛で、通期業績も増収増益となる見通しだ。
(3) CATV事業
CATV事業の売上高は前期比3.5%減、営業利益は同7.7%増と減収増益を見込む。会計方針変更の影響で20億円の減収要因となるが、実質的には2%程度の増収となる。また、顧客件数は前期末比25千件増の1,223千件(うち放送サービスで同8千件増の883千件、通信サービスで同18千件増の340千件)を計画している。第2四半期末で同16千件の増加(うち放送サービスで同5千件増、通信サービスで同11千件増)と計画をやや上回る進捗となっており、今後も同様のペースで顧客獲得が進めば、売上高、営業利益ともに計画を上振れする可能性がある。またインフラの光化対応を進めてきたことで放送サービスと同時に通信サービスを契約する顧客が増加する傾向にあり、1顧客当たり売上単価の上昇に伴う収益性向上も見込まれる。
(4) 建築設備不動産事業
建築設備不動産事業の売上高は前期比25.2%増、営業利益は同14.5%増と2ケタ増収増益を見込んでいる。コロナ禍で2021年3月期に落ち込んだ反動でリフォーム工事など既存事業の売上が回復するほか、2021年3月期に子会社化した2社(中央電機工事、イノウエテクニカ)が通年で寄与すること、2021年4月に子会社化したマルコオ・ポーロ化工の業績が上乗せされることなどが増収増益要因となる。
(5) アクア事業
アクア事業の売上高は前期比4.3%増、営業利益は横ばいとなる見通し。顧客件数は前期末比9千件増加の171千件を計画し、顧客当たり平均売上高は、巣ごもり需要の反動で若干低下する前提となっている。ただ、第2四半期までの顧客件数が前期末比3千件の増加と計画を下回っており、下期に顧客獲得コストを積み増す予定にしていることから、売上高、営業利益ともに計画を下回る可能性がある。
(6) その他・調整額
その他事業の売上高は前期比14.6%増となる見通し。コロナ禍のマイナス影響が一巡し、介護事業が堅調に推移するほか、婚礼催事事業についても回復を見込んでいる。一方、社内調整額も含めた損失額は3億円前後拡大する見込みとなっている。ワークスタイルの改革に伴って、テレワーク環境に対応したシンクライアント端末の購入費やオフィスの見直しに伴う関連費用の計上で4億円程度を計画している。なお、同社並びに東京本社では出社率を5割程度としており、オフィススペースの縮小を段階的に進めている。第2四半期末でフロア面積を20%削減し、最終的には前期末比40%程度を削減する計画となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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