■主要開発パイプラインの動向
2. FPP003(乾癬、強直性脊椎炎)
「FPP003」は、大阪大学大学院医学系研究科及び大日本住友製薬との共同研究のもとでファンペップ<4881>が創製した開発化合物で、IL-17Aを標的タンパク質とする抗体誘導ペプチドとなる。IL-17Aは免疫反応に関するサイトカインの一つであり、幅広い免疫性疾患に関与しており、主なところでは乾癬や強直脊椎炎、乾癬性関節炎などの疾患原因となっており、同社でもオーストラリアで乾癬を対象疾患とする第1/2a臨床試験を実施しており、国内では強直性脊椎炎を対象とした前臨床試験を進めている。
乾癬とは慢性の炎症性皮膚疾患のことで、その多くは尋常性乾癬と呼ばれる疾患となる。表皮細胞が異常増殖し、紅斑が現れて表面に鱗屑が付着して剥がれ落ちるなどの症状となる。患者数は国内で約43万人、米国で約800万人いると言われている。治療法としては、軽症から中等症患者に対しては塗り薬などの局所療法が行われ、中等症から重症患者に対しては光線療法(紫外線照射)や内服療法(メトトレキサート、経口低分子医薬品等)が、また、これらの治療法が効かない患者には、抗体医薬品が使用されている。同社の開発する「FPP003」は、長期間にわたり治療効果が持続することが特徴で、内服療法や抗体医薬品の患者層をターゲットとして「有効性」「安全性」「投与回数」により優位性を示すことによって上市を目指している。作用メカニズムは抗体医薬品と同様のため、体内で十分な活性を持つ抗体産生を得ることができれば上市まで進む可能性が高く、また、価格面での優位性があるだけに抗体医薬品等の代替医薬品として市場に浸透していくものと予想される。抗IL-17A抗体医薬品としては「コセンティクス®」「トルツ®」などが販売されている。そのほか乾癬治療用抗体医薬品としては、抗TNFα抗体医薬品の「ヒュミラ®」や「レミケード®」なども使用されている。
前臨床試験における乾癬モデルマウスの薬効試験では、発赤や肥厚など皮膚炎症状で有意な改善効果が確認されている。開発状況について見ると、2019年4月よりオーストラリアにて安全性と忍容性を確認する第1/2a相臨床試験を開始したが、2020年に新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって治験の被験者登録が中断したものの、現在は被験者登録が再開している。このため、試験終了時期については流動的だが、同社では2021年内に試験を終了して、試験結果についても2018年にオプション契約を締結した大日本住友製薬と協議したうえで発表したい考えだ。同試験では乾癬患者を被験者としているため、薬効についてもある程度確認できると見られ、今後の発表が注目される。
強直性脊椎炎とは、青年期に発症する脊椎と仙腸関節を主な病変部位とする全身性の慢性炎症性疾患となる。病変部位では靭帯と骨との付着部位に炎症・骨化が起こり、疼痛、膨張、運動制限等がみられる。症状が進むにつれて、次第に脊椎や関節の動きが悪くなり、脊椎が強直(骨性に固まりに動かなくなる)して日常生活能力が著しく低下するケースもある。原因は不明で国の指定難病にもなっている。治療法としては、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)が使用されているが、効果が不十分な場合や副作用の問題がある場合には、「コセンティクス®」や「ヒュミラ®」などの抗体医薬品が使用されている。
同社は2018年度よりAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」に採択され、助成金(3年間で150百万円)により前臨床試験を進めてきた。2021年度については、同支援事業の延長申請を行って、大阪大学で医師主導の第1相臨床試験を開始したい考えだ。
なお、乾癬等の治療薬となる抗IL-17A抗体医薬品の市場規模については、2019年の4,969百万米ドルから2023年に8,102百万米ドルと大きく成長することが調査会社で予測※1されており、経口低分子医薬品「Otezla」も含めて考えると1兆円の市場規模となる。開発に成功すれば高額な抗体医薬品の代替として市場に浸透する可能性が高い。第1/2a相臨床試験の結果が良好であれば、共同開発先の大日本住友製薬※2と協議のうえ、米国等で次の臨床試験を進めていくことになる。なお、「FPP003」については2016年の開発当初から大日本住友製薬とも共同研究を進めてきた経緯から、マイルストーン総額の金額は一般的な水準よりも低く設定されているようであるが、販売ロイヤリティ料率は一般的な水準を確保しており、潜在市場規模が大きいだけに、今後の開発動向が注目される。
※1 出所:Informa「Datamonitor Healthcare」(May 2020)
※2 2018年3月に北米での全疾患に対する独占的開発・商業化権の取得に関するオプション契約を大日本住友製薬と締結している。
花粉症を対象とした「FPP004」は投与間隔が長く、長期的に抗アレルギー作用を示すことが期待される
3. FPP004(花粉症)
「FPP004」は大阪大学大学院医学系研究科との共同研究のもとで同社が創製した開発化合物で、IgEを標的タンパク質とする抗体誘導ペプチドとなる。IgEはアレルギー性疾患の発症・進展に関与する重要な因子となっており、花粉症(季節性アレルギー鼻炎)が代表的な疾患として知られており、そのほか喘息や慢性蕁麻疹などが挙げられる。
花粉症の患者数は国内で約4~5千万人と多い一方で、すでに多くの抗ヒスタミン薬が開発、販売されている。効果が不十分または重症例では抗IgE抗体医薬品の「ゾレア®」※が処方されており、2週又は4週間に1回の投与によって治療している。しかし、「FPP004」では抗体医薬品よりも投与間隔を長くすることが可能で、花粉シーズンの前に2回注射することで、シーズン中は投与しなくても効果が持続することが期待されている。価格面でも抗体医薬品よりも安価に提供できるため、開発に成功すれば抗体医薬品を代替できる可能性がある。同社では2021年も前臨床試験を実施していく方針だ。
※2019年12月にノバルティス ファーマの抗IgE抗体「ゾレア®」が抗体医薬品として初めて花粉症への適応拡大の承認を取得した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<NB>
2. FPP003(乾癬、強直性脊椎炎)
「FPP003」は、大阪大学大学院医学系研究科及び大日本住友製薬との共同研究のもとでファンペップ<4881>が創製した開発化合物で、IL-17Aを標的タンパク質とする抗体誘導ペプチドとなる。IL-17Aは免疫反応に関するサイトカインの一つであり、幅広い免疫性疾患に関与しており、主なところでは乾癬や強直脊椎炎、乾癬性関節炎などの疾患原因となっており、同社でもオーストラリアで乾癬を対象疾患とする第1/2a臨床試験を実施しており、国内では強直性脊椎炎を対象とした前臨床試験を進めている。
乾癬とは慢性の炎症性皮膚疾患のことで、その多くは尋常性乾癬と呼ばれる疾患となる。表皮細胞が異常増殖し、紅斑が現れて表面に鱗屑が付着して剥がれ落ちるなどの症状となる。患者数は国内で約43万人、米国で約800万人いると言われている。治療法としては、軽症から中等症患者に対しては塗り薬などの局所療法が行われ、中等症から重症患者に対しては光線療法(紫外線照射)や内服療法(メトトレキサート、経口低分子医薬品等)が、また、これらの治療法が効かない患者には、抗体医薬品が使用されている。同社の開発する「FPP003」は、長期間にわたり治療効果が持続することが特徴で、内服療法や抗体医薬品の患者層をターゲットとして「有効性」「安全性」「投与回数」により優位性を示すことによって上市を目指している。作用メカニズムは抗体医薬品と同様のため、体内で十分な活性を持つ抗体産生を得ることができれば上市まで進む可能性が高く、また、価格面での優位性があるだけに抗体医薬品等の代替医薬品として市場に浸透していくものと予想される。抗IL-17A抗体医薬品としては「コセンティクス®」「トルツ®」などが販売されている。そのほか乾癬治療用抗体医薬品としては、抗TNFα抗体医薬品の「ヒュミラ®」や「レミケード®」なども使用されている。
前臨床試験における乾癬モデルマウスの薬効試験では、発赤や肥厚など皮膚炎症状で有意な改善効果が確認されている。開発状況について見ると、2019年4月よりオーストラリアにて安全性と忍容性を確認する第1/2a相臨床試験を開始したが、2020年に新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって治験の被験者登録が中断したものの、現在は被験者登録が再開している。このため、試験終了時期については流動的だが、同社では2021年内に試験を終了して、試験結果についても2018年にオプション契約を締結した大日本住友製薬と協議したうえで発表したい考えだ。同試験では乾癬患者を被験者としているため、薬効についてもある程度確認できると見られ、今後の発表が注目される。
強直性脊椎炎とは、青年期に発症する脊椎と仙腸関節を主な病変部位とする全身性の慢性炎症性疾患となる。病変部位では靭帯と骨との付着部位に炎症・骨化が起こり、疼痛、膨張、運動制限等がみられる。症状が進むにつれて、次第に脊椎や関節の動きが悪くなり、脊椎が強直(骨性に固まりに動かなくなる)して日常生活能力が著しく低下するケースもある。原因は不明で国の指定難病にもなっている。治療法としては、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)が使用されているが、効果が不十分な場合や副作用の問題がある場合には、「コセンティクス®」や「ヒュミラ®」などの抗体医薬品が使用されている。
同社は2018年度よりAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」に採択され、助成金(3年間で150百万円)により前臨床試験を進めてきた。2021年度については、同支援事業の延長申請を行って、大阪大学で医師主導の第1相臨床試験を開始したい考えだ。
なお、乾癬等の治療薬となる抗IL-17A抗体医薬品の市場規模については、2019年の4,969百万米ドルから2023年に8,102百万米ドルと大きく成長することが調査会社で予測※1されており、経口低分子医薬品「Otezla」も含めて考えると1兆円の市場規模となる。開発に成功すれば高額な抗体医薬品の代替として市場に浸透する可能性が高い。第1/2a相臨床試験の結果が良好であれば、共同開発先の大日本住友製薬※2と協議のうえ、米国等で次の臨床試験を進めていくことになる。なお、「FPP003」については2016年の開発当初から大日本住友製薬とも共同研究を進めてきた経緯から、マイルストーン総額の金額は一般的な水準よりも低く設定されているようであるが、販売ロイヤリティ料率は一般的な水準を確保しており、潜在市場規模が大きいだけに、今後の開発動向が注目される。
※1 出所:Informa「Datamonitor Healthcare」(May 2020)
※2 2018年3月に北米での全疾患に対する独占的開発・商業化権の取得に関するオプション契約を大日本住友製薬と締結している。
花粉症を対象とした「FPP004」は投与間隔が長く、長期的に抗アレルギー作用を示すことが期待される
3. FPP004(花粉症)
「FPP004」は大阪大学大学院医学系研究科との共同研究のもとで同社が創製した開発化合物で、IgEを標的タンパク質とする抗体誘導ペプチドとなる。IgEはアレルギー性疾患の発症・進展に関与する重要な因子となっており、花粉症(季節性アレルギー鼻炎)が代表的な疾患として知られており、そのほか喘息や慢性蕁麻疹などが挙げられる。
花粉症の患者数は国内で約4~5千万人と多い一方で、すでに多くの抗ヒスタミン薬が開発、販売されている。効果が不十分または重症例では抗IgE抗体医薬品の「ゾレア®」※が処方されており、2週又は4週間に1回の投与によって治療している。しかし、「FPP004」では抗体医薬品よりも投与間隔を長くすることが可能で、花粉シーズンの前に2回注射することで、シーズン中は投与しなくても効果が持続することが期待されている。価格面でも抗体医薬品よりも安価に提供できるため、開発に成功すれば抗体医薬品を代替できる可能性がある。同社では2021年も前臨床試験を実施していく方針だ。
※2019年12月にノバルティス ファーマの抗IgE抗体「ゾレア®」が抗体医薬品として初めて花粉症への適応拡大の承認を取得した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<NB>
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