[資源・新興国通貨12/7~11の展望] 豪ドルは一段高の可能性も!?

著者:八代和也
投稿:2020/12/04 17:27

豪ドル

豪ドルは今週(11/30- )、対米ドルで約2年5カ月ぶり、対円で約3カ月ぶりの高値を記録しました。

足もとの豪ドル上昇の背景として、コロナワクチンの普及への期待などからリスクオンの動きが強まっていることが挙げられます。投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすい豪ドルにとって、リスクオンはプラス材料です。

ロウRBA(豪中銀)総裁が2日に議会経済委員会で、「(RBAが)マイナス金利を導入する可能性は非常に低い」と改めて表明したことも、豪ドルにとってプラス材料と考えられます。

来週(12/7- )は豪州の11月NAB企業景況感指数(8日)や12月ウエストパック消費者信頼感指数(9日)が発表されるものの、いずれも材料としては力不足の感があります。

豪ドルは引き続き、投資家のリスク意識の変化に影響を受ける展開が想定されます。リスクオンが一段と強まれば、豪ドル/米ドルや豪ドル/円は上値を試すとみられます。豪ドル/米ドルは0.76740米ドル(2018/6高値)、豪ドル/円は78.394円(2020/8/31高値)が目先の上値メドになりそうです。

NZドル

NZドルは今週(11/30- )、対米ドルで約2年8カ月ぶり、対円で約1年7カ月ぶりの高値を記録しました。

豪ドルと同様にリスクオンの動きが足もとのNZドル上昇の要因です。また、RBNZ(NZ中銀)のマイナス金利導入観測が市場で後退しており、それもNZドルを押し上げていると考えられます。

来週(12/7- )はNZの主要経済指標の発表がありません。投資家のリスク意識の変化にNZドルは反応しやすいとみられ、リスクオンが一段と強まる場合には、NZドルはさらに上昇しそうです。目先の上値メドとして、NZドル/米ドルは0.73900米ドル(2018/4高値)、NZドル/円は74.390円(2019/5高値)が挙げられます。

カナダドル

カナダドルは引き続き、原油価格(米WTI原油先物など)の動向に影響を受けやすいとみられます。

米WTI原油先物は当面、足もとの45ドル前後で推移しそうです(*メキシコペソの項をご参照)。4日のカナダの11月雇用統計(本稿執筆時点で未発表)や9日のBOC(カナダ中銀)会合が短期的に材料になる可能性はあるものの、原油価格が安定した値動きになれば、カナダドルは方向感が出にくいかもしれません。カナダドル/円は目先、上値が81.520円(8/28高値)、下値は79.193円(11/23安値)が上下のメドになりそうです。なお、BOCは金融政策の現状維持を決定するとみられます。

トルコリラ

10-11日にEUサミット(首脳会議)が開催されます。その結果がトルコリラの動向に影響を与えそうです。

トルコとギリシャは東地中海の海底資源をめぐり対立しており、EUはトルコに対して制裁を科す可能性に言及。EUサミットでは、対トルコ制裁について協議されるとみられます。ギリシャやキプロス、フランスが制裁を求める一方、多くの国は制裁に消極的です。EUが制裁を見送れば、トルコリラの支援材料となりそうです。

市場はTCMB(トルコ中銀)の金融政策も意識する可能性があります。トルコの11月CPI(消費者物価指数)は前年比14.03%と、10月の11.89%から上昇率が加速。2019年8月以来、1年3カ月ぶりの強い伸びを示しました。TCMBは11月19日の前回会合で政策金利を4.75%の利上げを行った(現在の政策金利は15.00%)ばかりですが、追加利上げが必要かもしれません。追加利上げ観測が市場で高まる場合、リラのサポート要因になりそうです。TCMBの次回会合は12月24日です。

南アフリカランド

コロナワクチンの普及への期待や米国の追加経済対策への期待から、市場はリスクオンの動きが強まっており、それが南アフリカランドを支援しています。

ランド自体には、プラス材料が乏しい状況。南アフリカ景気は依然として弱く、また財政赤字や公的債務は今後増加するとみられます。ムボウェニ財務相は10月28日の中期予算方針で、2020/21年度の財政赤字は対GDP比15.7%と、赤字は前年度の6.4%から大幅に拡大すると予想。2019/2020年度に対GDP比63%だった公的債務は、2025/26年度には95%に達するとの見通しを示しました。

8日に南アフリカの7-9月期GDP(国内総生産)が発表されます。GDPは4-6月期に前期比年率マイナス51.0%と大きく落ち込んだため、その反動で7-9月期はプラス成長になるとみられます。また、9日には10月小売売上高、10日には10月金生産と鉱業生産が発表されます。それらで南アフリカ経済の弱さが再確認されれば、市場の関心は同国景気にも向く可能性があります。その場合、ランドは上値が重い展開になりそうです。

メキシコペソ

OPEC(石油輸出国機構)加盟国と非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」は3日、協調減産の規模について協議。現在日量770万バレルの減産規模を2021年1月から50万バレル縮小し、720万バレルとすることで合意しました。

1月以降も現在の減産規模を維持するとの見方も市場にはあったため、規模が縮小されたことは原油価格(米WTI原油先物など)にとってマイナス材料です。

一方でコロナワクチンの普及や米追加経済対策への期待が、原油価格を下支えしそうです。ワクチンの普及などによって世界景気が持ち直せば、原油需要が増加するとみられるためです。

好悪材料が混在しており、米WTI原油先物は足もとの45ドル前後で当面推移する可能性があります。WTI原油先物に大きな動きがみられなければ、メキシコペソは方向感が出にくいかもしれません。

メキシコの11月CPI(消費者物価指数)が9日に発表されます。BOM(メキシコ中銀)の利下げは9月で終了したとの見方も市場にはあるなか、CPIがその見方を一段と強める結果になれば、ペソは底堅さを増しそうです。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想