[資源・新興国通貨11/2~6の展望] 3日、豪中銀政策会合。豪ドルに影響しそう

著者:八代和也
投稿:2020/10/30 13:58

豪ドル

11月3日、RBA(豪中銀)の政策会合が開かれます。その結果が豪ドルの動向に影響を与えそうです。

市場は、政策金利と3年物豪国債の利回り目標のいずれも現行の0.25%から0.10%へ引き下げられると予想。また、5~10年債を買い入れ対象に加え、1000億豪ドル規模の新たな量的緩和策も発表するとの観測があります。

市場は追加緩和をほぼ織り込んでいるとみられ、市場予想どおりの結果になれば、追加緩和はそれほど材料視されないかもしれません。

焦点は、マイナス金利の導入など12月以降のさらなる緩和が声明で示唆されるかになりそう。示唆がなければ、豪ドルは上昇する可能性があります。

米大統領選の結果にも注目です。豪ドルは投資家のリスク意識の変化を反映しやすいという特徴があります。選挙結果を受けてリスクオフが進む場合には豪ドルには下押し圧力が加わりやすいとみられる一方、リスクオンの流れになれば豪ドルは堅調に推移しそうです。

NZドル

NZの7-9月期雇用統計が11月4日に発表されます。RBNZ(NZ中銀)は「物価の安定」と「持続可能な雇用の最大化」を責務としているため、雇用情勢は金融政策判断において重要な材料です。

RBNZの現在の政策金利は0.25%。市場では、政策金利は2021年前半にマイナスになるとの観測があります。雇用統計(とりわけ失業率)が弱い結果になれば、マイナス金利導入観測が一段と強まり、NZドルが下押す可能性があります。4-6月期の失業率は4.0%。7-9月期の失業率の市場予想は本稿執筆時点で5.0%です。

まt、豪ドルと同様にNZドルは、投資家のリスク意識の変化を反映しやすいという特徴があります。米大統領選の結果にも注目。NZドルにとってリスクオンはプラス材料、リスクオフはマイナス材料です。

カナダドル

BOC(カナダ中銀)は10月28日、政策金利を0.25%に据え置くことを決定。また、政策金利の先行きについては、「2023年まで現行水準にとどまる」との見方を示しました。一方で、量的緩和プログラムは、週間で少なくとも40億カナダドル買い入れるとし、従来の50億カナダドルから規模を縮小しました。

ECB(欧州中銀)やRBA(豪中銀)、RBNZ(NZ中銀)など主要国の中銀が追加緩和を示唆するなか、BOCが政策金利を2023年まで据え置く姿勢を示したことは、カナダドルにとってプラス材料と考えられます。

一方で、欧米でのコロナの感染再拡大を受け、原油の需要が落ち込むとの懸念から原油価格が足もとで軟調に推移しています。米WTI原油先物の12月物は、10月29日に一時36.17ドルへと下落。期近物としては、4カ月半ぶりの安値を記録しました。

市場はBOCの金融政策以上に原油安を材料視しています。WTI原油先物が一段と下落した場合、カナダドルは軟調に推移する可能性があります。

米大統領選の結果もカナダドルの動向に影響を与えそうです。米政局の安定はカナダドルにとってプラス材料と考えられる一方、米政局の不透明感が高まる場合にはカナダドルの下押し材料になるかもしれません。

トルコリラ

トルコリラは今週(10/26- )、対米ドルや対円で過去最安値を更新。TCMB(トルコ中銀)が10月22日の会合で政策金利を据え置いたことや地政学リスクがリラに対する下押し圧力となりました。後者については、「トルコとフランスの関係悪化」や「アゼルバイジャンとアルメニアの紛争」があります。

シリア情勢にも注意が必要かもしれません。シリア北西部のイドリブ県で10月26日、反体制派に対して空爆があり、反体制派はアサド政権軍に対して報復を実施。停戦合意は崩壊の危機に瀕しています。トルコがシリア内戦において反体制派を支援する一方、ロシアはアサド政権を支援。反体制派への空爆をロシア軍によるものとトルコは主張しています。

足もとのトルコリラ安が一服するためには、TCMBの大幅な利上げが必要と考えられます。少なくとも利上げ観測が浮上しない限り、リラは対米ドルや対円で一段と下落する可能性があります。

南アフリカランド

ムボウェニ南アフリカ財務相は10月28日、中期予算方針を発表。2020年の南アフリカのGDP(国内総生産)はマイナス7.8%との見通しを示しました。2020/21年度の財政赤字は対GDP比15.7%とし、赤字は前年度の6.4%から大幅に拡大すると予想。また、2019/2020年度に対GDP比63%だった公的債務は、2025/26年度には95%に達するとの見通しを示しました。

中期予算方針の内容は南アフリカランドにとってマイナス材料と考えられ、ランドの重石となりそうです。一方でランドは、投資家のリスク意識の変化を反映しやすいという特徴があります。米大統領選の結果もランドの動向に影響を与えそうです。リスクオンはランドの支援材料とみられる一方、リスクオフはランドの下押し要因と考えられます。

メキシコペソ

BOM(メキシコ中銀)は9月の前回会合まで11会合連続で利下げを実施。今後に関する市場の見方は、「9月で利下げ休止」と「利下げ継続」で分かれています。BOMの次回会合は11月12日です。

メキシコの7-9月期GDP速報値が10月30日に発表されます。本稿執筆時点でまだ発表されていませんが、GDPの結果を受けてBOMの金融政策の先行きについて市場の見方が変化する可能性があります。GDPが市場予想の前期比11.9%、前年比マイナス8.9%よりも良好な結果になれば、利下げ休止観測が強まり、メキシコペソの支援材料になりそうです。

米大統領選の結果もペソの動向に影響を与える可能性があります。バイデン氏が大統領に就任して米国とメキシコの関係が改善へと向かえば、ペソにとってプラス材料と考えられます。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想