[資源・新興国通貨9/14~18の展望] トルコリラが最安値。一段安の可能性も!?

著者:八代和也
投稿:2020/09/11 13:49

豪ドル

来週(9/14- )の豪ドルは、主要国の株価動向や米FOMCの結果に影響を受けやすいとみられます。このところ軟調な米国株が一段と下落した場合には、豪ドル/米ドルや豪ドル/円には下押し圧力が加わりやすいと考えられます。一方、FOMCの声明などを受けて米FRBの金融緩和が長期化するとの観測がさらに高まれば、豪ドル/米ドルの支援材料となりそうです。米ドル中心の相場展開になれば、豪ドル/円は方向感が生まれにくいかもしれません。

豪ドルの独自材料としては、15日のRBA(豪中銀)議事録や17日の豪雇用統計(8月分)が挙げられます。それらが「RBAの金融政策は当面据え置き」との観測を補強する内容になれば、豪ドル/米ドルや豪ドル/円は底堅く推移する可能性があります。

NZドル

NZドル/米ドルやNZドル/円は今週(9/7- )、軟調に推移しています。その主な要因として、米国株価の下落が挙げられます。豪ドルと同様、NZドルには投資家のリスク意識の変化を反映しやすいという特徴があり、主要国の株安はNZドルにとってマイナス材料です。

来週(9/14- )は、NZの4-6月期GDP(国内総生産)が発表されます(17日)。ただ、それ以上に16日の米FOMCの結果を受けた米ドルの動向がNZドルにとって重要と考えられます。米ドルが全般的に下落すれば、NZドルは対米ドルで堅調に推移しそうです。一方、NZドル/円は“NZドル/米ドルと米ドル/円の綱引き”となり、明確な方向感は生まれにくいとみられます。

カナダドル

BOC(カナダ中銀)は9日、金融政策の現状維持を決定。政策金利(0.25%)とQE(量的緩和)の規模(カナダ国債を週間で少なくとも50億カナダドル購入)のいずれも据え置きました。

声明では、「7-9月期の(カナダの)経済活動の回復は、7月に予想していたよりも速い」との見方を示しつつも、「回復の局面は緩慢で不安定になる」との見方を示しました。

マックレムBOC総裁は翌10日、「BOCは必要に応じてQEを調整する」と表明する一方、「(QEの規模は)増えることも減ることもある」と強調。カナダドルについては「他の一部通貨に比べて(カナダドルは)対米ドルでの上昇幅は小さい」と語りました。

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「7-9月期の(カナダの)経済活動の回復は、7月に予想していたよりも速い」との見方が声明で示されたことや、マックレム総裁がカナダドル高に対して懸念を示さなかったことは、カナダドルにとってプラス材料と考えられます。

一方で、米景気回復をめぐる不透明感から米WTI原油先物(原油価格の代表的な指標)が足もとで軟調に推移しています。カナダは産油国のため、原油価格の下落はカナダドルにとってマイナス材料です。WTI原油先物が一段と下落する場合、カナダドルの上値は重いかもしれません。

トルコリラ

トルコリラは今週(9/7- )、対米ドルや対円で過去最安値を記録しました。「トルコの外貨準備をめぐる懸念」や「トルコとギリシャの関係悪化」、「EUがトルコに制裁を課すとの懸念」が引き続き、リラに対する下押し圧力となりました。

TCMB(トルコ中銀)は政策金利(現行8.25%)を据え置いたまま、「流動性措置(資金供給を絞る)」でリラ安に対応。ただ、リラ安に歯止めをかけるには、利上げが必要と考えられます。TCMBが利上げしない限り(少なくとも利上げする素振りを見せない限り)、リラは一段と下落する可能性があります。

南アフリカランド

17日、SARB(南アフリカ中銀)が政策金利を発表します。SARBは前回7月の会合で0.25%の利下げを決定したものの、5人の政策メンバーのうち2人が「据え置き」を主張。利下げは3対2の僅差で決まりました。また、SARBは今年に入ってから合計3.00%の利下げを行ったこともあり、17日の会合では政策金利を据え置くことも考えられます。

ただ、南アフリカの4-6月期GDPは前期比年率マイナス51.0%。また、7月のCPI(消費者物価指数)は前年比3.2%と、SARBのインフレ目標(3~6%)の下限近辺でした。それらは利下げを促す要因となり得ます。

市場の見方は“据え置き”と“0.25%の利下げ”で分かれているものの、後者の可能性の方が高そうです。追加利下げが決定された場合、南アフリカランドは上値が重い展開になりそうです。

メキシコペソ

メキシコの8月CPI(消費者物価指数)は前年比4.05%と、上昇率は7月の3.62%から加速。2019年5月以来の高い伸びとなり、BOM(メキシコ中銀)のインフレ目標である3%を一段と上回りました。

BOMは8月の前回会合まで10回連続で利下げを実施。メキシコ景気の低迷を考えると、9月24日の次回会合で追加利下げに踏み切りそうです。ただ、インフレ圧力の高まりを受け、利下げ幅はこれまで(0.50%)と比べて小幅になる可能性があり、また11月以降の利下げペースは鈍化するかもしれません。BOMの9月の利下げ観測はメキシコペソにとってマイナス材料です。ただ、先行きの利下げペース鈍化観測が市場で高まれば、ペソは堅調に推移する可能性があります。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想