―キャリア各社の3Gサービス終了発表、ここからメリットを享受する銘柄は―
2020年は次世代通信規格「5G」(第5世代移動通信システム)の導入が世界的に本格化する。既に、米国や韓国では商用サービスが始まり、19年は「5G元年」ともいわれたが、日本でも東京オリンピック・パラリンピック開催を控えて、首都圏を中心に5Gの環境整備に向けた動きが活発化するとみられている。
その一方で、大手通信キャリアは相次いで3Gサービスの終了を発表している。NTTドコモ <9437> は26年3月、KDDI <9433> のauは22年3月、ソフトバンク <9434> は24年1月とサービス終了期限はまちまちだが、最も期限が近いauでは2年後にサービスが終了することになる。既に各社とも3Gサービスの終了を契約者に通知しているが、3G利用者の多くは今後も携帯端末の保有を続けるとみられることから、買い替え需要が発生することになる。携帯販売会社や周辺商品を手掛ける企業には商機の拡大が期待されている。
●3G人口は3000万人
携帯電話は1980年代の第1世代(アナログ方式)を皮切りに進化を重ね、概ね10年ごとに世代交代してきた。3Gは2001年から順次サービスがスタートし、デジタル第1世代である2Gよりも高速であることから普及が加速したが、07年に発表された初代iPhoneから始まった スマートフォンの台頭と共に加入契約数は減少してきた。
ただし、3Gが完全に現在主流の4Gにシフトしたわけではない。最も3G契約数の多いNTTドコモでは19年9月末時点で2066万もの契約数があり、大手キャリア3社合計ではその数は3000万に上るといわれている。
●3G終了で5Gへ経営資源を集中
キャリア各社が相次いで3Gサービスを終了するのは、現行の4Gサービスに加えて、5Gに経営資源を集中させるためだ。基地局の保守や運用に必要な経営資源を少しでも5Gに振り向けるのはもちろん、3G向けの周波数帯を4Gや5Gに転用することで通信速度の高速化を図る狙いもある。
また、3Gで大部分を占めるガラケーに比べて、データ通信量が多いスマホへの移行が進むことにより、契約者1人あたりの収入増が見込めるという思惑もある。収入が増えればキャリアは金融サービスなど周辺事業を強化できるようになり、この点からもキャリアではスマホへの移行を進めたいところだろう。
足もとでは、3G終了まで最も期限が近いauでも2年後と時間があるため「長期的な3Gから4Gへの移行のトレンドはあるが、3G終了に伴う買い替えの直接的な動きは見られない」(キャリア広報)としているが、今後、期限が迫るにつれ、買い替え需要が本格化する可能性は十分にある。
●割引に対する規制強化も買い替えを促進
また、昨年10月からの規制強化もキャリアの買い替え需要促進への注力を強めることにつながるとみられている。規制の強化により、スマートフォン購入の割引の上限が2万円に抑えられるようになったが、通信方式の変更で端末が使えなくなる場合は「0円未満とならない範囲」で値引きが認められており、実質、規制の治外法権にある。規制の強化により、「スマホの新規購入は以前より減っている」(大手家電量販店)との声も聞かれるなか、3Gからの移行をいかに取り込めるかが、各社にとって成長の重要なカギとなる。
既にキャリア各社では、新料金プランの訴求や、NTTドコモの「はじめてスマホ割」、auの「ケータイ→auスマホ割」、ソフトバンクの「スマホデビュープラン」などの買い替えに伴う割引を提供し、ガラケーからスマホへの移行を促している。ガラケーの利用者はシニア層が多いといわれていることから、販売店ではシニア向けのスマホ教室なども開催しており、これらも買い替えを後押ししよう。
●携帯電話販売会社に注目
関連銘柄は前述の大手キャリア3社が代表的な銘柄になるが、より恩恵が大きいのは携帯電話の販売会社だろう。
ティーガイア <3738> は、通信事業者の一次代理店国内最大手で、キャリア大手3社のほか、「楽天モバイル」「Y!モバイル」なども展開している。近年はモバイル機器のライフサイクル支援などのソリューション事業が成長。中核であるモバイル事業も足もとで携帯電話の販売台数こそ減少しているが、1台あたりの収益向上で引き続き業績を牽引する。2月6日発表予定の第3四半期決算も注目されている。
コネクシオ <9422> は、ティーガイアと同じく一次代理店大手だが、ドコモショップでは国内最大クラスで、ヨドバシカメラなど家電量販店にも出店している。ここ近年、法人向けモバイルBPOサービスなどが業績を牽引。足もとの販売台数は減少しているものの、「従来型の携帯電話からスマートフォンへの買い替え需要は今後も拡大が見込まれる」とコメントしている。
光通信 <9435> は、商品やサービスの販売後に使用料などに応じた継続的な収入が見込まれるストック事業が主力となり、以前に比べて業績に占めるウエートこそ縮小したが、auやソフトバンクの携帯電話販売も引き続き展開。足もとでは法人向け自社開発商材が堅調で上期は48%営業増益だっただけに、2月14日に発表予定の第3四半期決算も注目されている。
●格安スマホに流入も
また、ガラケーからスマホへ買い替える際、移行先として 格安スマホに利用者が流れるケースも増えているという。国民生活センターによると、17年度以降、全国の消費生活センターなどに寄せられる「格安スマホ」に関する相談は2000件を超える水準で推移。特に、60歳以上の割合が増加しているとされるが、これも逆説的にガラケーから格安スマホへの流入を表している。
楽天 <4755> グループの楽天モバイルは、17年のFREETEL承継、昨年9月のDMM mobileの承継でユーザー数を増やし、19年9月末時点でユーザー数220万を抱えるまでに成長した。直近では「楽天市場」における送料無料問題が起こっているほか、5G展開におけるコスト負担などが指摘されているが、その5G展開も含めて同社には要注目だろう。
このほか、ガラケーからスマホに移行する初心者向けに、スマホの操作方法などを教える「スマホ教室」にも各社は力を入れており、携帯販売店などが開く教室への参加者が最近急増している。販売店では販売スタッフに加えて、アドバイザーなどの人員も確保しなければならないことから、パソナグループ <2168> やパーソルホールディングス <2181> 、リクルートホールディングス <6098> など人材サービス会社のビジネスチャンス拡大にもつながりそうだ。
株探ニュース
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