とれんど捕物帳 ドル円は堅調だが上値にも限界がありそう

著者:MINKABU PRESS
投稿:2020/01/18 08:55
 イラン情勢の迷走もあったが、年初のドル円は上値追いで始まっている。イラン情勢で一旦107円台半ばまで急速に落ち、その課程である種、ロングポジションが整理され上値が軽くなったのであろうか、一気に110円台に上昇している。1月はまだ2週間ほど残っているが、月足陽線となるか注目の動きだ。直近の月足陽線は、トランプ大統領が就任した2016年と、第2次安倍政権が誕生し、アベノミクスに沸いた2013年に見られている。

 年初にドル円が上昇というのもあまり見られないことから、めでたいスタートだが、上記のような特筆すべき材料もないことから、逆に不吉な予感もする。今年も景気拡大は維持されるとの期待感と、それに伴う米株高が円安を誘発し、新規マネーを呼び込んでいるものと思われる。ただ、その一方で留意されるのが、ドル安が進んでいるのと、ドル円との連動性が強い米国債利回りは年初から下げの傾向を見せている点だ。

 FRBは利下げを一旦打ち止めし、様子見姿勢を決め込んでいる。FRB幹部はインフレ(PCEデフレータ)は目標である2%に接近すると繰り返し述べているが、足元ではその傾向はまだ見られていない。イラン情勢が小康状態に入り、原油高も落ち着いている。米個人消費と雇用は力強さを堅持しているが、かなり上限に接近していることも事実で、目先はインフレが急速に進む要素はあまり見当たらない。市場は、「今年のFRBは据え置きか、あっても1回の利下げ」という見方を有力視しており、少なくとも利上げの選択視はハードルが高いと見ているようだ。その一方で、ECBや日銀など他の主要国の金融緩和が限界に来ている中、現状のドルのバリュエーションは高いとの指摘も少なくない。

 ドル円がここから更に上値を伸ばすにはドル高の支援が必要と思われるが、それが期待できない状況下では上値にも限界がありそうだ。少なくともこの先、115円を試すような展開は期待しづらい。

 そのほか今週のトピックと言えば、米中が台段階の合意に署名し、詳細が伝わったことであろう。中国が2年間で2000億ドルの農産物を含む米製品の輸入を増やすほか、知的財産保護強化や為替の透明性、金融サービスの開放なども盛り込まれた。米製品の輸入については事前に伝わっていた内容の通り。また、知的財産保護などについては、コミットメントと言うよりも野心的目標に近いとの指摘も出ていた。全体的には目新しい内容もなく、市場の反応も限定的に留まっている。

 市場では、今回の合意で貿易問題の緩和が期待されている。しかし、その一方で中国経済への圧迫はさほど変わらないとの指摘も聞かれる。米国は12月に追加予定だった関税を見送っただけ。一部関税については、2月中旬から半分に引き下げられる予定だが、既存の関税自体は残っている。関税については第2段階以降の交渉次第で、トランプ大統領は、第2段階の合意は11月の米大統領選挙以降と述べていた。

 補助金や国有企業改革など中国の国家資本主義モデルの中心にある多くの問題が第2段階の交渉内容になるものと思われる。それらは中国政府にとっては根幹にかかわる課題でもあり、交渉は難航も予想され、その間に両国が再びエスカレートする可能性も否定できない。更に、もし、補助金や国有企業改革などが米国の思惑通りに進んだとしても、長期的には別にして、短期的には中国経済は圧迫されることが予想される。イラン情勢と伴に、こちらもあまり楽観視しないほうが得策かもしれない。

 さて来週だが、ドル円は110円付近の高値圏でのもみ合いとなっており、もう一段上値を試しそうな気配もある。しかし、そこは絶好の利益確定売りの場にもなりやすい状況もある。次第に過熱感も高まりつつあることから、調整の動きも警戒されるが、決算を受けた米株が底堅さを堅持していれば下値はサポートされる可能性もありそうだ。ただ、米株も既に決算をポジティブに織り込んで節もあり、高値警戒感も次第に高まっている。ドル円の想定レンジとしては、109.00~110.70円、スタンスは「やや強気」から「中立」に変更。

()は前週
◆ドル円(USD/JPY) 
中期 中立継続
短期 ↑↑(↓↓)

◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 →(→)

◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 中立継続
短期 →(→)

◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↓↓(↓↓)

◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 上から中立へトレンド変化
短期 ↓↓(↓↓)

◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 中立継続
短期 ↓↓(↓)
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MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

このニュースはみんかぶ(FX/為替)から転載しています。

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