[資源・新興国通貨1/20~24の展望] USMCAは発効に向けてさらに前進し、メキシコペソは堅調に推移か
豪ドル
23日、豪州の12月雇用統計が発表されます。大規模な森林火災が豪景気を下押すとの見方から、市場ではRBA(豪中銀)が2月4日の次回会合で利下げに踏み切るとの観測があります。雇用統計が軟調な結果になれば、利下げ観測は一段と高まり、豪ドルが下押ししそうです。RBAが2019年に実施した3回の利下げは、失業率の低下を促すことが主な狙いだったため、雇用統計では失業率の結果に特に注目です。なお、市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、市場が織り込む2月の利下げの確率は約40%です(据え置きは約60%)。
一方で、米中が貿易協議の“第1段階”の合意文書に署名したことや堅調な米株価を背景に、足もとでリスクオンが進んでいます。その動きが継続すれば、投資家のリスク意識を反映しやすい豪ドルを下支えする可能性があります。
NZドル
足もとのリスクオンの動きは、豪ドルと同様に投資家のリスク意識の変化を反映しやすいNZドルにとってプラス材料です。米国株が一段と上昇するなどしてリスクオンの流れが継続すれば、NZドルは底堅く推移しそうです。
経済指標では、24日のNZの2019年10-12月期CPI(消費者物価指数)に注目です。市場では“RBNZ(NZ中銀)は政策金利を当面据え置く”との見方が有力であり、CPIが市場予想を上回る結果になれば、政策金利の据え置き観測は一段と高まり、NZドルは上値を試す可能性があります。
カナダドル
BOC(カナダ中銀)が政策金利を22日に発表します。ポロズ総裁は雇用情勢次第で利下げもあり得るとの姿勢を示していますが、カナダの12月の雇用統計(1/10発表)では、失業率が前月から改善(5.9%→5.6%へ)し、雇用者数は3カ月ぶりに増加しました。CPI(消費者物価指数)上昇率がBOCの目標近辺で安定していることも踏まえると、政策金利は現行の1.75%に据え置かれそうです。今回は声明やポロズ総裁の会見で“金融政策の先行きについて新たな手掛かりが提供されるのかどうか”が焦点になりそうです。
米FRBが2019年に3回の利下げを行う一方で、BOCは政策金利を据え置き続け、その結果としてBOCの政策金利は主要国の中でFRBと並ぶ高水準となりました。“BOCは政策金利を当面据え置く”と市場が予想するなか、声明やポロズ総裁の会見がその見方を補強する内容になれば、カナダドルが上昇する可能性があります。
トルコリラ
TCMB(トルコ中銀)は16日、0.75%の利下げを決定。政策金利を12.00%から11.25%へ引き下げました。利下げは5会合連続です。
声明は、「インフレ見通しは引き続き改善しており、インフレ期待は広範に低下し続けている」と指摘。「インフレの道筋は(TCMBの)見通しとおおむね一致している」との見方を示したうえで、「インフレ見通しに影響を与えるすべての要因を考慮し、TCMBは抑制された利下げを決定した」と説明。「現時点で、現在の金融政策スタンスは予想されるインフレの道筋から逸脱していない」としました。
トルコの2019年12月CPI(消費者物価指数)は前年比+11.84%。今回の利下げによってトルコの実質金利(政策金利から前年比のCPI上昇率を引いたもの)はマイナスとなりました(11.25%-11.84%=マイナス0.59%)。CPI上昇率は12月まで2カ月連続で加速しました。前年比の水準が高いことによるベース効果が一段と剥落するにつれて、上昇率は引き続き高止まりするとみられ、あるいはさらに加速するかもしれません。トルコの実質金利は今後、マイナス幅が拡大する可能性があります。
トルコの実質金利がプラスからマイナスに転落したにも関わらず、TCMBの政策金利発表後にトルコリラは上昇しました。ただ、トルコの実質金利がマイナスとなったことは本来、リラ安要因と考えられます。今後、市場でそのことが意識されれば、リラは軟調に推移するとみられます。なお、メキシコの実質金利は+4.42%、南アフリカの実質金利は16日のSARB(南アフリカ中銀)の利下げ後も+2.65%です。
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19日にベルリンでリビア問題に関する国際会議が行われる予定です。リビアでは西部の暫定政権と東部のLNA(リビア国民軍)の内戦状態にあり、1月上旬にリビアへの派兵を開始するなどトルコはリビア内戦に関与しています。そのため、国際会議の結果がトルコリラの動向に影響を与えるかもしれません。会議にはシラージュ暫定首相やハフタルLNA司令官が参加する意思を示しており、そこで両者が停戦合意できるかどうかが焦点になりそうです。両者が停戦で合意できなかった場合にはリビア情勢をめぐる懸念が高まり、トルコリラが下押す可能性があります。
南アフリカランド
SARB(南アフリカ中銀)は16日、0.25%の利下げを決定。政策金利を6.50%から6.25%へと引き下げました。利下げは2019年7月以来で、5人の政策メンバー全員が0.25%の利下げを支持しました。
SARBは南アフリカのGDP成長率やCPI(消費者物価指数)上昇率の見通しを2019年11月時点から下方修正。声明では「国内経済は依然として脆弱だ」と指摘し、また「SARBは(足もとの)インフレ率やインフレ期待の低下を歓迎しており、それによって経済にさらなる緩和政策を加える余地がいくぶんできた」と利下げの理由を説明しました。
SARBの見通し。( )は11月時点
<GDP成長率>
・2020年:+1.2%(+1.4%)
・2021年:+1.6%(+1.7%)
・2022年:+1.9%(+2.3%)
<CPI上昇率>
・2020年:+4.7%(+5.1%)
・2021年:+4.6%(+4.7%)
・2022年:+4.5%(+4.5%)
南アフリカの2020/21年度の予算案の発表が2月、ムーディーズ(米格付け会社)による南アフリカの格付け発表が3月に控えていることから、市場は“据え置き”を予想していました。そのため、SARBが利下げに踏み切ったことはサプライズとなり、政策金利発表後に南アフリカランドは弱含みました。
SARBの利下げが引き続き、南アフリカランドの上値を抑えそうです。一方で南アフリカが抱える問題のひとつに景気の低迷があります。SARBの利下げが景気に与えるプラス効果の方が市場でより強く意識されれば、ランドに対する下押し圧力はそれほど強くならないかもしれません。
メキシコペソ
米上院は16日、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)を可決。トランプ米大統領は近く署名する見通しで、それをもって米国におけるUSMCAの批准手続きは完了します。メキシコはすでに批准手続きを終えており、カナダ議会は現在閉会中で1月27日に再開する予定です。USMCAは3カ国すべての批准手続きが完了してから約3カ月後に発効します。米上院が可決してUSMCAが発効に向けてさらに前進したことは、メキシコペソにとってプラス材料と考えられ、ペソは堅調に推移しそうです。
来週(1/20- )は、23日にメキシコの1月前半のCPI(消費者物価指数)が発表されます。前回12月前半の前年比+2.63%から上昇率が鈍化した場合、BOM(メキシコ中銀)の利下げ観測が高まりそうです。ただし、メキシコの実質金利(政策金利から前年比のCPI上昇率を引いたもの)は足もとで4%以上あり、BOMが若干利下げしたとしても、実質金利が高い状況は変わらないと考えられます。1月前半のCPI上昇率が鈍化したとしても、メキシコペソはそれほど下がらないかもしれません。
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