資源・新興国通貨の2020年6月までの展望

著者:八代 和也
投稿:2019/12/27 13:32

豪ドル/円

RBA(豪中銀)は2019年に3回の利下げを実施しました(12/26時点の政策金利は0.75%)。市場では、政策金利は2020年末までに0.25%へと下がるとの観測だけでなく、最終的にはQE(量的緩和)に迫られるとの観測もあります。こうした観測が豪ドルの重石となりそうです。

米中貿易協議の行方も豪ドル/円の動向に影響を与えるとみられます。貿易協議にさらなる進展がみられるなどしてリスクオンが進めば、豪ドル/円を下支え材料となりそうです。

<注目点・イベントなど>
・RBAの金融政策。利下げ継続か。
・米中貿易協議の行方。

NZドル/円

RBNZ(NZ中銀)は2019年に2回の利下げを実施し、12/26時点の政策金利は1.00%です。市場では、さらに1回の利下げが行われるとの観測が根強くあり、その観測はNZドルにとってマイナス材料です。ただ、NZの企業景況感が持ち直しつつあることから、利下げが行われたとしても1回限りになる可能性があります。利下げ打ち止め観測が浮上した場合、NZドルにとってプラス材料になりそうです。

豪ドル/円と同様に米中貿易協議の行方もNZドル/円の動向に影響を与えるとみられます。貿易協議にさらなる進展がみられるなどしてリスクオンが進めば、NZドル/円は底堅さを増すかもしれません。

<注目点・イベントなど>
・RBNZの金融政策。利下げ打ち止め観測が浮上するか否か。
・米中貿易協議の行方。

カナダドル/円

2019年に入り、米FRBやECB(欧州中銀)などが金融緩和へと動くなか、BOC(カナダ中銀)はそれらに追随することなく、政策金利の据え置きを継続。その結果、BOCの政策金利(12/26時点で1.75%)は主要国の中でFRBと並ぶ高い水準となりました。そのことがカナダドルを下支えするとみられるほか、“BOCは2020年も政策を変更しない”と市場は予想しています。市場のBOCに対する金融政策見通しを背景に、カナダドル/円は堅調に推移しそうです。

<注目点・イベントなど>
・BOCの金融政策。
・原油価格の動向。

トルコリラ/円

トルコは2020年4月までにS400(ロシア製地対空ミサイルシステム)を全面稼働する計画です。一方、米国はS400を破棄しなければ制裁を科すとトルコに警告しており、米国が実際にトルコ制裁を発動すればトルコリラは下落しそうです。シリアやリビアの情勢にも注意が必要です。両国の情勢をめぐり他国との関係が悪化した場合、それもリラの下押し要因となる可能性があります。

TCMB(トルコ中銀)は2019年に大幅な利下げ(合計12%)を行いましたが、今後は難しい政策運営を迫られそうです。トルコのCPI(消費者物価指数)上昇率は、比較対象である前年の水準が高かったことによるベース効果が薄れるにつれて再び加速する可能性があります。エルドアン大統領が利下げ圧力を加えるなかで、TCMBは対応(利上げなど)が後手に回るおそれがあります。TCMBの政策対応次第では、TCMBの独立性をめぐる懸念が再燃しかねません。

<注目点・イベントなど>
・TCMBの金融政策。CPI上昇率が加速した場合、TCMBは対応できるどうか。
・トルコと他国との関係。

南アフリカランド/円

2020年3月、米格付け会社ムーディーズが南アフリカの格付けを発表する予定です。南アフリカの格付け(外貨建て長期債務)は投資適格級最低の“Baa3”であり、格付け見通しは“ネガティブ(弱含み)”です。ムーディーズが格下げすれば、3大格付け会社すべてで南アフリカの格付けはジャンク(投機的等級)となります。南アフリカランドに対して強い下押し圧力が加わるおそれがあります。

また、南アフリカの低成長や経営危機にあるエスコム(国営電力会社)への懸念も市場では強く、それらも南アフリカランドの重石となりそうです。

<注目点・イベントなど>
・南アフリカの格下げの有無。
・南アフリカの低成長やエスコム問題。

メキシコペソ/円

米国、メキシコ、カナダは2019年12月10日、NAFTA(北米自由貿易協定)に代わる新協定“USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)修正案に署名しました。USMCAの発効には、3カ国議会すべてで承認される必要があり、メキシコ議会は12月12日に承認。米下院は19日に可決し、上院の採決時期は未定ですが、トランプ大統領の弾劾裁判終了後になる可能性があります。カナダ議会の承認は、2020年1月27日以降の見通しです(1/26まで閉会のため)。

USMCA発効のメドがたたないことが、メキシコの景気低迷の一因となり、メキシコペソの重石となっていました。今後、米上院とカナダ議会が承認してUSMCAの発効時期が明確になれば、ペソの上昇要因となり得ます。

BOM(メキシコ中銀)は、2019年12月まで4会合連続で利下げを行いました。メキシコの景気低迷やCPI(消費者物価指数)上昇率がBOMの目標近辺で推移していることを踏まえると、利下げは継続されそうです。ただし、メキシコでは最低賃金が2020年1月から引き上げられることや米FRBが政策金利を当面据え置くとみられることから、利下げのペースはこれまでよりも緩やかになるとみられます。利下げベースが緩やかならば、米FRBなど主要国中銀との政策金利の差はそれほど縮小しないと考えられるため、メキシコペソが大きく下落する可能性は低そうです。

<注目点・イベントなど>
・BOMの利下げペース。
・USMCAの発効時期。

豪ドル/米ドル

市場では、RBA(豪中銀の)政策金利(12/26時点で0.75%)は2020年末までに0.25%へと下がるとの観測だけでなく、最終的にはQE(量的緩和)に迫られるとの観測もあります。一方で、米FRBは政策金利を当面据え置くとみられます。こうしたRBAとFRBの金融政策見通しの差を背景に、豪ドル/米ドルは上値が重い展開になりそうです。

<注目点・イベントなど>
・RBAと米FRBの金融政策。
・米中貿易協議の行方。

NZドル/米ドル

市場では、RBNZ(NZ中銀)がさらに1回の利下げを行うとの観測が根強くあります。ただ、NZの企業景況感が持ち直しつつあることから、利下げはその1回限りになるかもしれません。RBNZの利下げ打ち止め観測が浮上すれば、NZドル/米ドルは底堅く推移する可能性があります。

<注目点・イベントなど>
・RBNZと米FRBの金融政策。
・米中貿易協議の行方。
八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想