今後の遊技機事業からデジタルゲーム・パッケージゲーム分野まで 社長・開発責任者が語ったセガサミーHDが描くビジョンとは

投稿:2019/12/19 18:00

遊技機事業の今後(里見治紀氏)

里見治紀氏(以下、里見):本日は、遊技機事業から説明したいと思います。

これまでの振り返り

これまでの振り返りとなりますが、昨年遊技機の規則改正があり、それ以降は自主規制の変更が行われてきています。

今回何が変わったというとパチスロ6号機では短時間での遊技性が向上しています。以前の5号機に比べて、今の機械性能であれば、1~2時間の短時間で遊技を楽しむことができるのが6号機の大きな特徴です。

そして、パチンコにおいては継続率65パーセント規制がありましたが、今は確変継続率の上限が撤廃されて、大当り が継続しやすい機種が作りやすくなりました。

今後も、パチンコ、パチスロともに業界団体においてさらなる自主規制の見直しが検討されております。

今回の規則改正により、遊技機全体での射幸性は抑制されていることから、自主規制部分においては緩和をしてほしいということで、そのあたりが徐々に認められてきているというのが現状かと思っています。

そして、遊技機事業として取り組んでいるのが、リユースによる利益率の改善施策です。また、ZEEGの設立により、業界プラットフォーム戦略を構築してきました。さらに、BtoC施策ということで、一昨日(12月3日)に「P-SPORTS」というものを発表させていただきました。

現在、ゲーム業界では、eスポーツが非常に流行していますが、パチスロも競技化していこうというものです。実際、技術介入に特化した「ディスクアップ」という機種が市場でかなり人気を集めていますが、今回の大会ではその機種を使います。かなり技術介入度が高い機種ですので、それを使って賞金が出る大会を「P-SPORTS」と銘打って仕掛けていきます。

今後は、そのような技術介入度が高い機種もさらに開発を進めていきます。パチンコホールで練習していただき、大会に出たら賞金が稼げるというイベントを行おうと考えています。

市場環境︓パチンコホール店舗数と1店舗当たりの設置台数推移

パチンコホール店舗数はこの15年間で3分の2に減ってきています。1万5,000店を超えるところから1万店強となり、さらに少なくなっていくだろうという予想が出ています。

一方で、スライドのとおり、1店舗あたりの台数はこれだけ伸びています。つまり、店舗が大手中心に変わってきているということです。現在は1店舗しかなく150台しか設置していない小規模店舗は閉店していますが、郊外の大型店舗が増えています。

店舗の中心が大手に変わり、店舗の売買はよく行われていますが、より財務余力のあるところに変わってきているということです。

市場環境︓パチスロ販売台数と年間回転率の推移

こちらがパチスロの販売台数と年間の回転率の推移ですが、この1年間でどれぐらい遊技機が買われているか、ホール全体の遊技機がどれくらい入替で回転しているかを示しています。4号機から5号機に変わった節目の2007年から2008年にかけて、回転率が低下したのですが、5号機でもヒット機種が徐々に生まれてきたことにより、市場は回復に向かいました。それが、2009年から2011年あたりですが、我々としてはこの6号機時代に入っていくにあたり、稼働のよい タイトルが出てくれば、また年間回転率が上がってくると想定しています。

今期の市場回転率の予想値ですが、パチスロに関しては、すでに去年よりは高いだろうと思っています。これからどんどん5号機の撤去が進んで、来年中にはほぼなくなっていくなかでは、この回転率が上がってくるのではないかと予想しています。

市場環境︓パチンコ販売台数と年間回転率の推移

パチンコに関しては、回転率が長期的に停滞しているのですが、これ以上回転率が下がっていくというよりは、このぐらいの推移でとどまるのではないかと予想しています。

新規則機販売台数(推計)︓2019年12⽉末時点

このスライドが、現在市場に設置している台数と、新規則機の累計販売台数のデータです。このギャップのところで、今後入替需要が起こるだろうということです。

IP戦略︓アニメ・映画出資案件の拡⼤

IP戦略に関して、サミーとして、積極的にアニメや映画等への出資を行っております。まだまだ発表していない機種もあるのですが、特に『七つの大罪』は、台数的にはそこまで大きな成功は収めていないものの、「少年漫画誌に連載中の漫画やアニメは、遊技機にできない」という業界の常識を覆して、『週刊少年マガジン』で連載中にもかかわらず、最初からアニメ化するにあたって出資等を行ってきたことにより、遊技機化を実現したという実績があります。現在、こういうことを積極的に進めています。

実際は、アニメに出資して遊技機化しなかったものも多数あるのですが、いままで複数の製作委員会に投資しており、例えば2,000万円を投資しても、プラスアルファで戻ってくるなど、遊技機化はしなくてもアニメの投資として、ほとんど損をしていないという状況です。

本社移転後の取り組み︓グループ内コミュニケーションの拡⼤

本社移転後の取り組みとして、セガをはじめ、グループ会社との交流も積極的に行っています。セガ主催で「セガ デベロッパーズカンファレンス」という技術カンファレンスを社内で行っているのですが、サミーが実施したセッションが実は一番評判がよかったということも起きています。

また、アーケード部隊が実施している「GITEN」と呼ばれる社内のみの技術基礎研究発表会も行っていますが、このようなところでサミーのメンバーとも交流していますし、AI共有会、自動化共有会、Game Jamといったことも、グループを挙げて実施しています。

本社移転後の取り組み

そして、人財の流動化です。オフィスにはアルバイトも含めて6,500名がおりますので、サミーとセガ、そしてその他のグループ会社と人財の交流を積極的に進めて、これからますます総合力を発揮していこうということです。

それでは、開発戦略に関して、星野から説明させていただきます。

開発戦略(星野歩氏)

星野歩氏(以下、星野):では、私から開発全体の方針説明をさせていただきます。

開発体制

まず、開発の組織がどのようなかたちになっているかについてですが、開発に従事している人間は400名ほどで、パチンコ、パチスロを手掛けています。PS研究開発本部とPC研究開発本部では、主に液晶演出の企画や出玉のスペック等に関わる部分を担当しています。

技術研究開発本部では、筐体や盤面の設計を行っています。最近ではコストダウンおよび技術の蓄積を目的として、協力会社にお願いしていたパチンコの役物の部分を内製化して、コストダウン等を行っています。

開発政策室では、統括本部全体の運営およびマーケティング部隊ということで、ホールの細かいデータを吸い上げて、開発現場にフィードバックするというかたちで行っています。

管理部門に関しては、間接部門ではあるのですが、各プロジェクトの進捗管理、予算管理、デバッグ業務等を行っています。

開発の管理も入れると約500名という大きな所帯ですが、年間でパチンコ7タイトル、パチスロ10タイトルをリリースするにあたり、これぐらいのメンバーが必要だと思っています。

また、2年ぐらい前に開発効率検討委員会を設立しまして、いったん開発業務を棚卸しました。そして、どこがボトルネックになっているのか、どこが足りていないのかというところを洗い出して、洗い出した問題点を昨年あたりから改善するかたちでスケジュールを組みました。

それにより、やはり効率が上がってきて、開発期間が短縮できています。ただし、その短縮した期間をそのまま(前倒して)世に出すのではなく、打ち込み、試射等のデバッグを行って、クオリティアップに時間を使うようにしています。

利益率改善の取り組み

利益改善の取り組みについてです。今回リリースした『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』に関しては、パチンコもパチスロも同じコンテンツを使っており、映像や液晶裏の画像ボードも共通化しています。共通化によってコストも下げられますし、開発期間の短縮も実現できています。

利益率改善の取り組み︓グループ内

サミー単体だけではなく、グループ横断で、同じコンテンツを使っているものに関しては共有化を図り、コストおよび開発期間短縮を狙っています。

具体的に言いますと、パチスロ『北斗の拳』の映像をパチンコでも使っていますし、最近ではスマホゲーム『北斗の拳 LEGENDS ReVIVE』にも、パチンコ、パチスロで使った映像を共有しています。

業界プラットフォームの構築

11月からZEEGの代表取締役も兼務しているのですが、2年前にユニバーサルエンターテイメントと一緒にZEEGという会社を立ち上げまして、ようやく(ZEEG筐体を使用した遊技台を)世に出せるかたちになってきています。

例えば、ユニバーサルの『まどマギ2』と『北斗の拳 天昇』の筐体は、表は異なるのですが中身の部材などは同じものを使用しています。部品、部材の共通化および設計も、お互いにノウハウを共通化することによって、よりよい筐体を出していきたいと思っています。

また、この筐体は他社にも販売しています。具体的な社名は言えないのですが、来年の春ぐらいに3社程度、サミー、ユニバーサルではない他社から出てきます。現在も営業をかけており、まだ決まっていない会社はありますが、ここからだんだん営業を行って、ZEEGの筐体を使ってくれる会社を増やしていきたいと考えています。

余談ではあるのですが、筐体を新設計するときに、他社の筐体でスタートレバーや停止ボタンなどのユーザーインターフェースの位置関係を調査したところ、当社と同じレイアウトが多くみられ、ZEEG筐体が業界スタンダードになりつつあることを実感しました。

管理遊技機(パチンコ)、メダルレス遊技機(パチスロ)

管理遊技機とメダルレス遊技機については、時期などの詳細はまだ決まっておりませんが、メリットとしては、単体、スタンドアローンで動きますので、パチンコホールに設置する際のレイアウトが比較的自由になると考えています。現在は、パチンコ島はパチンコ島でまとまっていますが、パチンコの隣にパチスロを置いたり、また休憩室のようなところに置くなど、いろいろレイアウトできるようになります。

メダルレスに関しては、メダルを貯めておくタンク等がなくなりますので、その分、各パーツのレイアウトが自由になります。

BtoC施策①

社長の里見からもお伝えしましたが、BtoC施策についてです。

来年になりますが、2月22日に「ユニバカ×サミフェス2020」を開催するということで、現在開発で準備をしています。また新しいタイプの機械を、みなさまにお披露目できると思っています。

また、夏にはお台場でも、フジテレビと協力して、今年は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のブースを出展しました。

BtoC施策②

ケツメイシなど、各種アーティストとも協力して、ブースを出すなど地道な活動を行うことにより、ユーザーの裾野を広げ、パチンコ、パチスロへの参入障壁を取り払って、パチンコ、パチスロのイメージを向上していきたいと考えています。

パチスロ遊技機(德村憲⼀氏)

德村憲⼀氏(以下、德村):パチスロ部門の責任者を担当しています、德村と申します。よろしくお願いします。この4月から、サミーネットワークスの社長も兼任しており、両社を兼任しているからこそできる施策も複数進めております。

パチスロ販売シェア︓ランキングの推移

これまでのパチスロのシェアの推移です。年によって波はありますが、トップ3のシェアは堅持しています。『北斗の拳』だけではなく、意識的にさまざまなタイトルを投入して、とくにゲーム性、IPにおいては若者および新規ユーザーを呼び込めるラインナップ構成になるよう心がけています。

今期も適合、販売が順調であれば、20パーセント以上のシェアは獲得できる予定で動いています。

パチスロ撤去期限スケジュール

撤去スケジュールになりますが、今年の年末だけでも約13万台の旧規則機が撤去されます。すでに12月に入り、順次人気タイトルの撤去が開始されつつありまして、市場的にも今までに経験したことがない大きな変革を迎えようとしています。

一部、岡山県等で、先行して5号機が外され始めていますが、『北斗の拳 天昇』を含めて、6号機に稼働が移っているという情報もありますので、今後は首都圏を含め、大きな市場で変化が見られたときに、注視しながら対応していきたいと思っています。

また来期には、上期で15万台、第3四半期で28万台の撤去という、6号機にとっては大きなチャンスを控えています。そして、2021年1月には、いよいよすべての5号機の撤去を迎え、撤去台数は70万台という規模になる予定です。撤去時期に合わせて戦略タイトルを随時投入して、サミーとして市場シェアをしっかり獲得していきたいと考えています。

比較論として、旧規則機が残っていると、稼働的にどうしてもホールもユーザーもネガティブになりがちですが、いよいよ6号機のみの市場形成となっていきますので、そのなかでしっかり勝っていけるように、スペックやクオリティを堅持し、6号機市場全体を盛り上げていく責任がサミーにはあると考えています。

直近の販売タイトル①

6号機での販売実績になります。今年12月の旧規則撤去の最初の大型需要としては、『パチスロ北斗の拳 天昇』『パチスロ交響詩篇エウレカセブン3 HI-EVOLUTION ZERO』という大型タイトルをしっかり投入して、シェアを奪取しつつあると考えています。

また、先ほど星野からもお話がありましたが、『蒼天の拳』『北斗の拳』『交響詩篇エウレカセブン』ともにZEEG筐体での投入となっています。リユース効果であったり、サミーだけではなくユニバーサルも含めた部材の共通化による利益率向上の効果が、徐々に表れ始めています。

今後も『北斗の拳』のみに頼らない、バラエティに富んだプロジェクトを立ち上げて、積極的に若者や新規ユーザーを獲得できるラインナップを心がけていきたいと思っています。また、『ディスクアップ』のようなコアなタイトルも準備して、開発段階から「P-SPORTS」との連動施策も進めていきます。

そして、懸案事項の適合率に関してですが、業界全体としては相変わらず低水準で推移しています。ただし、サミーとしては、6号機当初から低ベースの機械を含めて、さまざまなタイプの機械を申請、適合して、ノウハウはかなり溜まっていますので、今後も攻めの姿勢を守りつつ、適合率をしっかりカバーしながら、魅力的な機械のラインナップを提供できるよう心がけています。

スマートフォン、モバイル向けコンテンツの活⽤

先ほど、少しサミーネットワークスのお話もしましたが、現在は私が兼任することによって、直接連動した施策や仕込みが可能になってきています。

「ぱちガブッ!」に関しては、メディアとして順調に成長しており、月間のユニークユーザーは400万人、月間の総ページビューは約2億PVまで成長しています。

また、メーカー系で直接メディアを持っていること自体が稀有だと思っていますので、今後は最大限それを活用して、シリーズ機の開発中のプロジェクトの進捗報告やアンケート実施による機械へのフィードバックなど、より開発と連動した企画をし始めています。

「マイスロ、マイパチ」に関しても、パチンコで設定の搭載が可能になったことで、パチンコ、パチスロ間での同一IPの連動や、よりユーザーが欲しがる情報を閲覧できるように、実機開発からの連動も深めています。

「カチナビ」に関しては、「マイスロ」のデータを使ったホットスポットの表示サービスになるのですが、すでにユニバーサル、山佐にも参画いただき、膨大なビッグデータが溜まりつつありますので、今後はさらなる精度向上および新企画の始動に向けて動いていきたいと思っています。

「777CON-PASS」に関しては、ユーザー間のクチコミ情報をもとにホールの予約抽選ができる新機軸のサービスになっており、こちらは今、オープンベータ中です。来春にも本格稼働するのですが、こちらもサミーの人間がアイデアを出して進めている新規事業になりますので、ぜひ今後に期待していただきたいと思っています。

IP戦略

IPに関してですが、先ほどもお話ししましたとおり、若年層をターゲットとしたユーザーの獲得を目指しています。具体的には、現在の中高生が、将来遊ぶことができる年齢になったときに、商品としてきっちり提供できるところを、各関係会社と連携を密にすることによって実現していきたいと思っています。

新しいIPを一緒に生み出していくにあたり、映像コンテンツ制作会社を2社、共同出資で立ち上げました。私自身も、両方の会社に役員として参加させていただいています。

ギャラクシーグラフィックスに関しては、サンジゲンやトリガーを擁するウルトラスーパーピクチャーズと組み、ENGIに関しては、KADOKAWAと組んで、ともに映像スタジオを作っています。各々、これから作っていくIPを、遊技機化まで見据えて共同で制作して、映像アセットもアニメと共有することによって、スピードアップ化、効率化へ向けて進めています。

よりタイムリーなかたちで、若年層向けの遊技機の実現を進めていきます。これからますます日本の人口全体が減っていくなかで、若年層や新規層を取り込むことは大きな課題だと考えています。この取り組みのなかから、第二の『北斗の拳』のような大型看板タイトルを生み出すべく進めています。

今後の開発戦略①

今後の開発戦略になります。市場トレンドに関しては、旧規則機があるなかで、どうしても高ベース、高純増がトレンドになっています。ただし、先ほどお伝えしたように、旧規則機がどんどん外されているなかでは、低ベースの機械も必須になってくると思いますので、そのなかで新しい遊びを実現できたメーカーが勝者となっていくと予想しています。

そうした状況もありますので、10月から出玉部門を分割させて、今まで独自に低ベース化に挑んだノウハウも含めて、さらに活かして、より機動的にスペックトレンドに対応できる組織を構築しています。

また、メダルレスの準備も着々と進めており、すでにテスト機も何機種か作成済みとなっています。メダルレス機に関しては、トレンドも予測しつつ、「業界初投入はサミーで」という状態を狙って進めています。

サミーのパチスロ部隊としては、業界シェアの堅持はもちろん、6号機全体を活性化させ、メダルレス数も含めた将来を提示していく責任もあると思っていますので、それを肝に銘じ、これからも開発一同、業務を進めていきたいと思っています。

パチンコ遊技機(田中宏孝氏)

田中宏孝氏(以下、田中):パチンコ開発部門の責任者の田中と申します。よろしくお願いします。

パチンコ販売シェア︓ランキングの推移

パチンコの販売シェアのお話になります。みなさまのイメージもそうだと思うのですが、サミーと言えば「パチスロが強い会社」といったイメージがずっと続いていました。2008年まではパチンコのシェアも非常に低く、苦戦していた時代が続いていました。しかし、2009年の『北斗の拳』を皮切りに、一気に市場シェアを11パーセント超えまで持っていくことができました。

その後、業界シェアは3位から5位の間を行ったり来たりといった状況が続いています。今年度も、このまま進めば10パーセントのシェアは十分獲得できるかなと思っていますが、まだ1位にたどり着いていないというところで、今後、いろいろな施策を重ねてシェア1位を奪取していきたいと思っています。

パチンコ撤去期限スケジュール

パチンコの撤去に関してですが、2021年1月に認定切れの機械が一気に出てくるため、パチスロ以上に一極集中するかたちとなっています。当然、我々としてもここに特需があると見込んでおり、『北斗の拳』や『北斗無双』といったキラータイトルを中心に、複数機種の投下を考えています。

ただし、ここで100万台や200万台の機種が一気に入れ替わるかと言うと、やはりホールのお財布事情もあるため(難しいと思っています)。また現実的に、ハードの入れ替えを一気にできるかと言うと、非常に大きな問題があります。

来年1年間で、順次、新規則機への入替が進んでいくだろうという見方もしており、機種数をいつもよりも少し多めに用意して開発を進めている段階です。

直近の販売タイトル②

直近の販売タイトルになりますが、新規則機になってから、甘デジも含めて7機種ほどリリースさせていただきました。旧規則の低ベース、高射幸性といった機械が残る市場のなかでは、我々だけでなく各社も非常に苦戦している状況です。

そのなかに、なんとか一石を投じたいという考えで、9月に『北斗の拳8覇王』をリリースさせていただきました。これまでの(主流であった)バトルスペックではないため、『北斗の拳』らしくはないですが、新しいスペックにチャレンジして、小当りRUSHを積んだものをリリースさせていただきました。

他社も含めて、小当り RUSHはあまり実績がないスペックでしたので、引き合い的には3万台強という販売台数でスタートしたのですが、その後の稼働は比較的順調で、10週超えという実績も残したなかで、2,000台くらいの追加受注もいただきました。

時にはこのようなチャレンジも必要かなと思いながらも、王道のタイプもしっかりと用意し、ラインナップを取り揃えていきたいと考えています。

今後の開発戦略②

今後の開発戦略になるのですが、安定した業績を残すために、まずは実績を重視したラインナップを考えています。『北斗の拳』『北斗無双』『蒼天の拳』『モンスターハンター』『物語シリーズ』といった、過去に実績を残したIPタイトルを散りばめつつ、さらに、そこに王道のスペック、王道のゲーム性を加えて、ユーザーに安心して打ってもらい、ホールにも安心して買ってもらえるようなラインナップを取り揃えながら、チャレンジスペックも入れ込んでいきたいと考えています。

映像素材、ハードの流用で、短期開発が可能になってきますので、とくに『北斗の拳』『北斗無双』のキラータイトルのバージョン機を積極的に開発して、そこに一風変わったスペックを乗せていくかたちで、それを半年から10ヶ月くらいの短期開発で進めていきたいと思っています。

また、「市場のトレンドに対応した先回り体制」と記載していますが、こちらは内規・自主規制の緩和や解釈基準の変更がある際に、短期的に開発を行っていかなければいけないときがあります。

これを、市場が変わったときにいきなり変えるのではなく、ある程度想定しながら、しかも短期的に開発して、他のメーカーのどこよりも先に、そのスペック、ゲーム性のものを市場にリリースしていくことが可能になるように、いろいろと準備しながら進めています。

また、プロジェクト体制といったところでは、企画セクションが2つあるのですが、その2つに社内競争させ、社内でもいろいろな個性を引き出せるような体制で進めています。

開発戦略︓チャレンジタイトルの投⼊①

こちらのスライドは、先ほどお話ししましたチャレンジタイトルの一例になります。通常、例えば初代の『北斗無双』であれば、ライトミドルバージョン1機種を開発して終わりになりますが、ここの映像素材を利用して、65パーセント規制という制約のなかでも、高継続率ループできるという新しいスペックの機種をリリースして、成功を収めています。

開発戦略︓チャレンジタイトルの投⼊②

『蒼天の拳』も同じように、これは高継続率ループを実現した機械です。このようなチャレンジをしながらも実績を着実に積み上げて、最終的には、業界No.1のシェアを勝ち取りたいという思いで、今後も進めさせていただきたいと思っています。以上となります。

里見:Q&Aに進む前に、一言だけお伝えします。今、かなり短・中期的なお話が多かったため、長期的なお話をさせていただきます。先ほどお伝えしたとおり、店舗の減少は引き続き続くと思います。「では、この業界は今後どうなっていくのか?」というところで、一番の問題は、世の中で起きている変化を取り込むスピードがまったくないことです。

行政の指導の下、非常にアナログな店舗運営スタイルとなっているところがあります。このような状況のなか、業界を挙げて、規則ではなく運用ルールを変えていこうと考えています。規則が変わったため、スペックはもうよいとして、今後は運用ルールをどんどん改めて、ホールの運営コストを下げていき、経営を安定させていく努力が求められるだろうと思っています。

今、各ホールでATMの撤去が進んでいますが、これからはキャッシュレス社会になるのですから、そういったことはもういいのです。「では、キャッシュレスを導入しますか?」と言うと、今は使えません。

スマホ決済業者と組むのかどうかはわかりませんが、流通総額で言うと20兆円を超えているわけですから、例えばそれをどこかスマホ決済業者の独占でとなれば、手数料は0.数パーセントでもいいくらいの話ができるかもしれません。規制緩和というよりは、運用ルールということで認めていってもらうなどが重要です。

また、詳細はまだ決まっておりませんが、メダルレス、管理遊技機の導入が始まると、島設計の自由度もどんどん増すわけです。今は、島にものすごく投資しているわけですが、島を設置するための投資もいりません。パチンコでヒット作がでれば、簡単にスロットの島を減らしたり、逆も然りで、そうしたことがすぐにできるような将来も目指したいです。また、コンビニエンスストアサイズの小規模のお店を駅前や繁華街に設置することも将来的には可能だと思っています。

島設備が非常に簡素になり、玉の循環器も不要、メダルも不要となれば、そのようなことも考えられると思っていますし、ホールのコストも劇的に減らせます。メーカーとしても、そのような努力をしていけば、まだこの業界の余力が出てくると思います。

また、最近では等価交換をやめている店が増えてきていますが、交換時に手数料を取ることでパチンコホールの経営を安定させることができると考えております。逆を言うとお客さまにもっと出してもらっても、ホールの粗利率、粗利額はトータルでは変わらないのです。「出玉があった」「当たった」という体験を多くしてもらい、もっともっとパチンコホールに足を運んでもらえる機会を増やすことが重要だと考えています。

こういったさまざまな取り組みによって、この業界をもう一度活性化していきたい。それをサミーがリードしていこうと思っているところです。

質疑応答(遊技機事業)

質疑応答:入替需要後の施策や、中長期的なシナリオについて

質問者1:2点、質問をお願いします。先ほどのご説明で、2021年3月期に入替需要が相当あるという点は理解したのですが、それ以降、新機種のなかで、パチンコとパチスロの双方でシェアを上げるための施策は、どこが一番目玉になるのでしょうか?

もう1点は、先ほど里見様からご説明いただいたところで、中長期的に遊技市場を盛り上げていく施策は非常におもしろいと思うのですが、一方で、現実としてはここ10年間、市場が徐々に縮小を続けています。

仮にこの市場の活性化ができなかった場合についてです。何らかの新規事業であったり、もしくはカジノのゲーミング機器にリソースを割くなど、サミーの中期的な経営のリソース配分について、もし活性化がうまくいかなかった場合のシナリオを教えていただけますでしょうか?

星野:まず、最初の質問にお答えします。2021年3月期の旧規則(の遊技台)が全部外れるタイミングで、それ以降に何があるかについてです。各組合で取り組んでいる管理遊技機、メダルレス遊技機に関してですが、内容自体はこの場ではお話しできませんが、よりおもしろい、よりわくわくする機械を提供できるように進めていますので、詳細がわかるまではお待ちいただければと思います。

里見:2つ目の質問についてです。すでにサミーの開発チームが、カジノ機器販売ライセンスを持っているセガサミークリエイションで、アメリカ向けのスロットマシンのソフト開発を行っており、セガサミークリエイションから見ると、サミーを画像の外注会社として使うなどグループ間での協力が行われています。

これがうまく当たれば、このリソースをもっともっと割いていきたいと思います。もともとバカラなど、大きなアーケード用の置物のような筐体を作ってマカオで売っていたのがセガサミークリエイションなのですが、ここに来てラスベガスのライセンスも取れて、実際に市場に並び出しており、ビデオスロットという商品が主力になりつつあります。

それであれば、セガのアーケードのノウハウよりも、サミーの遊技機を作るノウハウのほうが向いているだろうということで、そのような取り組みを進めています。

また先日、名古屋の不動産を売却しましたが、サミーはまだ大阪にもいろいろと不動産を持っていますし、キャッシュも相当数を持っています。新規事業は、我々のビジネスと波長が合うような業界を含めて検討をする余地はあると思っています。

質疑応答:開発体制の優位性や6号機の今後の展望について

質問者2:2点お願いします。1点目は開発体制についてです。先ほど、開発人員数が437名ということでご紹介いただいたのですが、同業他社と比べて、どのくらいの優位性を持っているのでしょうか?

また、業界として保安通信協会の検定通過率があまり上がっていないですが、御社のノウハウが付いてきたということで、機種数的にどのくらいのアドバンテージが取れるでしょうか? このあたりの考え方を教えていただきたいと思います。

2点目が、6号機についてです。市場に投入され始めて1年が経ちました。振り返りとして、6号機のニーズがこれから伸びていくような実績であったり、また台によってはよい 結果が出ているのかを教えてください。あわせて、御社の『北斗の拳』の現状の稼働や今後の見通しについても教えていただけますでしょうか?

星野:まず、開発体制の質問に回答させていただきます。437名は、おそらく多い部類に入ると思います。しかし、1本のタイトルを開発するのに2年から2年半という時間がかかります。パチンコ、パチスロでそれぞれ常時20件から30件くらいのプロジェクトが動いていますので、そのプロジェクトを回すためにはこれくらいの人数が必要です。

他社の例で言うと、液晶の企画などを協力会社に丸投げしているメーカーもあります。しかし当社はノウハウの蓄積というところで、ゲーム性やスペックも含めて、できるだけ社内で作っていきたいと考えていますので、これくらいの体制が必要だと思っています。

また検定の許可に関してですが、弊社には、サミー、ロデオ、タイヨーエレック、銀座の4ブランドがありますので、それらをフル活用しています。型式試験を受ける前の予約抽選があるのですが、4ブランドを活用して、できるだけ多くの申請枠を取るように動いています。

現在は、「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」くらいの感覚ではいるのですが、データが蓄積されていくことによって、だんだん精度が上がっていくと考えています。

德村:6号機の現状については、私から説明させていただきます。まず、ここまでの市場を見ますと、やはり5号機とは違った6号機の特徴である短時間での出玉が出やすいタイプのほうが評判はよかったと思っています。

旧規則でのトレンドは、だいたい純増枚数が3枚から4枚くらいのタイプのもので、新規則では高ベースであっても、純増枚数を上げることによって短時間でも楽しめるようなもので、例えばサラリーマンの方が、会社帰りでも楽しめるようなタイプの台のほうが評判がよかったです。

他社で実績を出した機械が数機種ありますが、それらは高ベースで高純増を狙っています。

そのなかで、今回の『北斗の拳 天昇』に関しては、現状のトレンドに合わせて高ベース、高純増の遊技機を市場に投入したかたちです。

現在の動きとしては、旧基準機(5号機)がなくなりつつあるなかでも、例えば、『バジリスク 絆』であったり、『モンスターハンター』であったりといった機械がユーザーに支持されているのですが、現在主流の機種において、とくにコアなお客さまの遊び方は、設定を読みながら1日遊技するかどうかを決めるというのがトレンドの中心です。今回の『北斗の拳 天昇』でも、そういった要素をかなり取り入れていますので、今後も5号機が撤去されていけば、6号機に需要が回ってくる可能性は非常に高いと思います。

引き続き、おもしろい機械、また今までになかったゲーム性を持った機械を提案していくことで、市場を盛り上げていければと思っています。

質疑応答:入替需要の見通しについて

質問者3:来年の撤去による入替需要がかなり大きく出るということでした。市場の見通しとして、スケジュールでお示しいただいた撤去台数が、需要としてしっかり出てくるという前提で見ておいてよいのでしょうか?

そのうえで、ご説明いただいたような御社のアドバンテージや適合取得に関するノウハウなどを踏まえて、来年の大きな入替があった後に、どれくらいのシェアを取りたいかなど、可能な範囲でコメントをお願いいたします。

里見:いつも出している第2四半期決算資料のAPPENDIXには記載がありますが、過去の歴史的経緯を見ても、パチンコ、パチスロ機種の設置台数は20年くらい、そこまで大きく減っていません。

ホールの店舗数は3分の2まで減りましたが、設置台数も3分の2になったかというと、この15年で、パチンコ、パチスロともに15パーセント程度しか減っていないというトレンドがあります。

一方で、今回の入替を機に、設備投資を止めてお店を閉めようというホールはあると思います。これは、先ほどお話しした小規模店舗です。とくに地方のオペレーターは、パチンコホールだけでなく、いろいろなビジネスを行うなかで、いくつかあるホールのうちどこかを閉店する、もしくはすべてどこかに売るといったところも出ています。

他社に売却した場合には、その店舗が大型店となり1,000台級の大きなお店が開店するというのが今のトレンドですので、設置台数が若干落ちる可能性はゼロではないですが、多くのところで入替は進んでいくだろうと思っています。

また、タイトル数自体、絶対数はあまり増えていかないと思うのですが、バリエーション機を入れれば増えています。パチンコであれば『北斗の拳7』、そして『北斗の拳7』の別のバージョンというかたちでスペック違いを3機種くらい出しています。スロットでも同じタイトルでAタイプのものを出したりもします。

シェアについてですが、パチスロで言えば、20パーセント台、将来的には30パーセントくらいのシェアを取りにいきたいと思っていますし、パチンコも将来的にはトップシェアを目指していますが、中長期的には、まずは10パーセント台後半から20パーセントあたりを狙っていかないといけません。

すでに4ブランドを持っていますので、「弱いパチンコメーカーやスロットメーカーを買ったほうがいいのではないですか?」というアドバイスもいただきます。しかし、今はそのつもりはなく、メインのサミーブランドでシェアを取っていくことを進めたいと思っています。

エンタテインメントコンテンツ事業の今後(里見治紀氏)

里見:私から先にお話をして、その後、名越から開発に関してお話しします。

今後の方向性

まず今後の方針ですが、一番重要なのはクオリティアップで、私がセガの社長になってから、ここをかなり重視しています。

Metacriticのスコアで、毎年パブリッシャーランキングも出ますが、セガがトップ3を切ったことは、ここ4年から5年はないと思います。

そして、いかに海外のマーケットに進出していくかですが、海外展開についても2種類の見方がありますので、後ほどご説明します。

また、開発リソースの再配分です。APPENDIXに載っていますが、我々はソフトウェア開発だけで2,750名くらいがいますので、アーケード部隊も含めて、これを最適なリソースプラットフォームにどう再配分していくかが、今後の大きな肝になると思っています。

成⻑するグローバルマーケット

グローバルでのゲーム市場は、伸び続けています。問題は、この10年でマーケットの大きさが倍近くになっているのに、当社の売上は倍になっていないことです。

NEWZOOのデータによると、(グローバルの市場規模は)去年13兆円くらいでしたが、21兆円くらいまで伸びていくだろうというなかで、このマーケットトレンドに追いつく、もしくはそれ以上に成長していくためにはどうしたらいいのかが、次の中期の肝になると思っています。

新技術・新ビジネルモデル・新プラットフォームの時代

これがキーワードです。テクノロジーのところでは、5G、GaaS、Cloud、Subscriptionといった新しい技術やビジネスモデルが出てきています。それに伴って、プラットフォームについても、新たなサービスとしてEpic GamesやStadia、WeGameなどが既に登場しています。また、来年にはコンソールの次世代機PlayStation 5、Project Scarlettが発売されます。

将来的には、NetflixやAmazonが「今のサービスに5ドル足したら、セガのゲームも遊び放題になる」ということを始める可能性もゼロではないと思っています。これは、我々パブリッシャー、デベロッパーにとっては、チャンスになると考えています。

チャンスとは単純に2つの理由で、1つは販売チャネルが増えて、お客さまのゲームに対する認知度が上がるということです。もう1つは、我々の選択肢が広がるということです。我々コンテンツメーカーに対して、プラットフォームの立ち上げのためにエクスクルーシブでタイトルを供給してほしいというオファーも、すでにいくつもいただいています。我々はコンテンツをお客さまに届けるために、なにが最善かを冷静に判断していきます。

新たなプラットフォームだけに供給するということは、既存ファンに遊んでいただくには新たなプラットフォームに移っていただく必要が生じます。このIPであれば既存ファンも新規ファンもみんな遊んでくれるという自信があれば、新たなプラットフォームへの提供にも挑戦します。また、そのプラットフォームならではの機能や仕組みによって、コンテンツの遊び方や特徴をより広げられるかどうかも重要です。

今までのやり方にとらわれず に、このコンテンツを一番お客さまの手に取ってもらえる形、このコンテンツの面白さを一番引き出せる形はなにかということをいつも考えるようにと現場に対して言っています。このようなことを踏まえて、コンテンツの特性を捉えながら、エクスクルーシブ、あるいは最初からマルチプラットフォームで出していくという選択肢も含めて、戦略を練っているところです。

コンテンツ展開の鍵

そして、コンテンツ展開の肝はIP強化と開発リソースの配分です。

IP強化

IPに関してはご案内のとおりです。スライドの4つのIP戦略で、とくにセガが一番弱かったライセンスもののIPを活用していきます。いくつかの成功例が、アーケードでも家庭用でもモバイルでも出てきています。

アメリカ、ヨーロッパでは『Total War』が、『warhammer』というブランドを使って新しいファンタジーのジャンルも立ち上がりました。来年60周年というセガの長い歴史のなかで、多くのファンを抱えるIPをリバイバルしていくというところにも、引き続きチャレンジしていきたいと思っています。

セガグループのグローバル開発スタジオ群

そして、我々の最大の強みはグローバルの開発体制です。日系のパブリッシャーでは群を抜く海外の開発リソースで、中国のオフショアのスタジオを抜いて、本当にピュアな開発だけで1,000名以上が海外にいるのが我々にとっては強みで、これからさらに伸びていくだろうと思っています。

セガグループ⼊りの歴史と主要IP

買収してきたスタジオの歴史ですが、2005年、2006年に買収した2社は大きな成功を収めています。とくにCreative Assemblyは、買収当初は30名から40名でしたが、今や500名を超え、イギリスで一番大きなスタジオにまで成長しています。

アトラスは日本企業間での買収ですが、Amplitudeはフランスの会社です。セガは、スタジオのIP、スタジオのブランドを大切にしており、オートノミーを尊重する会社であるため、セガなら一緒にやりたいという案件も出てきています。

またTWO POINTのように、サーチライトというプロジェクトでベンチャーを支援して、そのなかで当社がパブリッシングするということも行っていますが、これで非常にうまくいったため、スタジオごとセガファミリーに入ろうということで、設立して間もない会社ですが、セガに仲間に入ってもらうということも起きています。

引き続き、積極的に仲間作りを行っていきたいと思っています。

開発スタジオの成⻑①

Creative Assemblyは、ずっと右肩上がりのトレンドで進んでいます。スライドの表がわかりやすいと思いますが、グループ入りした当初はスタンドアローンのPC のSteamに、もしくはパッケージのPCゲームに出しているだけだったものが、さまざまな方法で展開をはじめています。

今回は、敢えて中国の三国志をテーマに歴史ものを作るというチャレンジを実施したのですが、見事に大成功して今までで一番速いペースで売れており、約半分が中華圏のマーケットで売れました。

開発スタジオの成⻑②

そういった方たちが、今後『Total War』のカタログ、もしくは新作も買ってくれるだろうということで、新しい顧客を開拓できましたし、外部のライセンスを取ってファンタジー版の『warhammer』も出してヒットさせることができました。

オンラインゲームに関しては、一番遅れていたところですが、最初はWargamingと組んでいたものを、座組を変えて中国のNetEaseとやり直すというところで、彼らと一緒にまたオンラインにチャレンジしていきます。

また、ライセンスアウトという形で他社が新作を作っていくということにも取り組んでいます。エンジンを活用して『Halo Wars 2』のように、外部の配給会社のタイトルを作らせていただいていますし、まだまだ発表していない大型タイトルも作っています。

マルチプラットフォーム展開

そして、今まであったタイトルをタイムリーに、新しいプラットフォームにどんどん出していきます。Apple Arcadも、2つのタイトルをローンチしました。今のところ、『Sonic Racing』が絶好調で、ほとんど運営コストもかからないため、収益貢献してくれるだろうと思っています。また、今までPSプラットフォームにしか出していなかった『龍が如く』ブランドが、今後はXboxにも出ていきます。

Google Stadiaに関しては、ローンチパートナーとして『Football Manager 2020』を配信いたします。また、PCでヒットした『Two Point Hospital』は、中国で非常に人気があるのですが、こちらをコンソールに持っていこうということで進めています。

マルチリージョン展開

このスライドが、先ほどお伝えしたマルチリージョンで、日本のスタジオが世界へ届けていく、北米のスタジオが世界へ届けていく、そして欧州のスタジオも世界へ届けていくということで、それぞれがエマージング・マーケット……アジアを含めたアフリカ、ミドルイースト、サウスアメリカのように、10年前のゲーム業界は先進国でしか成り立たないビジネスモデルだったものが、PCダウンロードのマーケットとスマートフォンによって、新興国のマーケットも非常に伸びています。

インドなどでも、Tencentが配信している『PUBG』が人気を博しているというお話も聞いています。

サーバーコストが非常に大変ですが、今までマーケットとして我々が見ていなかったところが、ものすごく大きな市場になってきています。伸びる余地があるというところは、我々にとってはチャンスだと思っていますので、このリソース配分も肝になってきます。

ここも含めて、これから名越に、日本の開発スタジオの展開を話してもらおうと思っています。

デジタルパッケージの今後(名越稔洋氏)

名越稔洋氏(以下、名越):名越です、よろしくお願いします。普段はものづくりをしているため、あまりこのような場には慣れていませんが、お許しください。

⽇本スタジオ発グローバル展開

まず最初に、日本スタジオ発のグローバル展開にあらためてチャレンジしましょうということです。伸長し続けるグローバル市場は、日本にいると、我々は日本のスタジオですから、市場の伸びが鈍化してきた部分ばかりが目につくのですが、欧米やアジアに目を向けると、ゲームコンソールもまだまだ売れていますし、そこに対してきちんとやるべきことをやらなければいけません。

なぜ、今あらためてこの話なのかについてです。若干話の時間軸がずれるのですが、セガゲームス、そしてセガ・インタラクティブというかたちで、旧セガグループが2つに分かれて、何年かの時間が経ちました。

当時は、事業に対して個別最適をきちんと行い、それぞれが持っている課題、そしてチャレンジしていかなければいけないところを分析、改善して、利益につなげてきました。

その結果が、この5年間ぐらいで出たのではないかと思います。それぞれがきちんと課題感を持ち、解決に臨んだからこそ、セガグループ全体で100億円という利益を当たり前のように目指せる会社にはなれました。その戦略があったからこその結果だと思います。

市況は市況として、スライドに書かれている状況がトレンドである以上、そこの足場を固められた今だからこそ、もう一度グローバル戦略のなかで、我々だからこそできるかたちでトライしていきたいと考えています。

1. フラグシップIP戦略

先ほどもお話がありましたが、これは具体例で、すでに発表済みのものです。『龍が如く』は、ずっとソニーでエクスクルーシブで展開してきたタイトルですが、Xbox Game Passで、2020年に配信予定になっています。

『PSO』も、日本で生まれたオンラインゲームです。これもアバタービジネスですから、日本やアジアに向いているのは事実ですが、アメリカにも広大なマーケットはありますし、英語版をきちんとカルチャライズも含めて対応していくことで、アメリカで商売ができる可能性を、もう一度深掘りしてみようと思っています。

運営については、ずいぶん長い間行っていますので、そこはパートナーを組んだ会社と一緒に、ここから利益を上げていくチャレンジをしていこうと思います。

『ソニック』も、Apple Arcadeで配信しています。またスライドには3つしか書かれていませんが、実はこの数倍のディールがすでに組まれており、順次発表できる段取りになっていますので、先ほど申し上げましたグローバル展開の具体例は、月を追うごとに発表できる体制になっていくと思います。

2. グローバル向け新規IPタイトルの開発

グローバル向けのIPタイトルの開発です。スライドにはハイエンド、カジュアルと箱書きしてあります。ここには当然プラットフォームであったり、別の軸がクロスオーバーするのですが、あえてマーケットで囲んでいます。

Games as a Service対応ということで、GaaSにもいろいろな解釈があります。基本的には、売り切りモデルでないものを指す場合が多く、オンラインゲームや板売りのものでも、後々ダウンロードコンテンツを配信して、それを買っていただくモデルもGaaSモデルにはなります。

もう一段広げて考えると、私自身の解釈としては、パッケージにおいては、世界的に見てもできていないことは意外とあります。それは何かと言うと、日本で作ろうが海外で作ろうが、すべてのマルチプラットフォームでまず出すことです。そして、オールリージョンで出すことです。そして、同発することです。

これにはいろいろな問題があって、ビジネス上では難しいものがあるのですが、基本的にはこれから先はそれを理想にして、すべてのタイトルで取り組みを進めていきたいと考えています。

もちろん、それがベストだとしても、パートナーさまと関係を組めば、「発売日に関しては、少し考えましょう」「プラットフォームに関しては、ここに絞りましょう」といったようなことが戦略上は出てくるかもしれません。

しかしセガブランドでは、基本的にはすべてのプラットフォーム、すべてのリージョン、そして同時発売が当たり前のように為されていくと捉えていきたいと思います。

私自身も、何年か前に『龍が如く』などをアジアで同発したこともありました。発表会でゲームの内容を説明すると「おお」と歓声がわくのですが、「同時発売します」と言ったら悲鳴が起きました。前列の方が泣いている姿を見て、「そんなにうれしいのか」と肌で感じたときに、同時に遊べる、即時性があることは、サービスとして非常に価値があるということを感じています。

これから先は、機会損失がないようにと考えています。またプロモーションにしても、実はリージョンごとに分けていくと山の数ほどお金を使わなければならず、それも非効率だということで、これから先は「山は1つ」で、その分を利益に還元したいとも思っています。バックボーンのお話ばかりしても仕方がないですが、ここはきちんと進めていきたいです。

もちろんオンラインタイトル、そしてアクションゲーム(も注力します)。我々の3Dアクションゲームで最初にメジャーになったものは、『バーチャファイター』だと思っていますので、どの会社よりもノウハウはあります。

ただし、それをIPとしてもっと広げるという意味で言うと、きちんと整理された考え方ができていなかった反省も大いにあります。リソース、そして人もまだ残っていますので、きちんと活用しながら、ハイエンドのマーケット、世界に向けて受け入れられる商品を考えていきたいです。

海外、とくに欧州でM&Aが成功した会社もありますが、今は彼らとも組んで、我々の商品が海外でヒットするためのアドバイスであったり、その逆で、彼らのIPが日本で売れるためのアドバイスをしています。

スマホのゲームで、キングなどはわりと「バタくさい」絵柄で、日本人はあまり好みではないと思うタイトルでも、日本でよい数字を出しているケースもあります。今のユーザーの目線は昔とだいぶ変わっていますし、多角的な売り方ができる大チャンスが来ているため、そこは積極的に取り組みたいと考えています。

カジュアルのマーケットにしても、日・米・欧・アジアという判で押した考え方ではなく、新興国に関してもインストールがどんどん増える、販売のルートが増えているという話も聞きますので、ユーザーがいる限りは、我々がサービスできる機会がきっとあるということで、貪欲に求めていきます。

カジュアルユーザーであれば、いきなりお金を取り上げられるのではないかと構えてしまうサービスばかりを用意しても仕方がないです。サブスクリプションもそうですが、比較的柔軟なお金の取り方で、まずはゲームとのタッチポイントを増やして、接触に値するハードルのうまい合わせ方……それは地域によってですが、そこも分析して対応していきたいと考えています。

3.グローバルでの情報発信力の強化

これは私の思いでもあるのですが、ゲーム作りも同様で、基本的にはマーケティングや宣伝に関して、これから先はもっと変わっていかなければいけません。

これだけプラットフォームのチャネルが増えているなかで、以前はプラットフォーマーと言われるものは、基本的にハードウェアを所有しているという前提があったと思います。今、プラットフォーマーと呼ばれるものは、ファンコミュニティを囲い込みできている人は、会社であれ個人であれ……個人で言えば、YouTuberもプラットフォーマーだと思うのですが、メーカー自体も、ハードウェアを所有していなくても、インフラとサービスとファンを囲い込み、利益につなげられるルートを持っていれば、プラットフォーマーと呼ばれるようになるのではないかと思っています。

そして、それをきちんと恒常的にキープできるのが、利益を安定させることにつながっていくと思います。我々は非常にインテリジェンスで、そして広いオフィスを持っていますから、今でもいろいろな番組を放映したいですし、もっとグループが使える番組を流したいです。

ゲームの紹介だけで終わるわけではなく、将来に向けてはもっとオープンにと考えています。例えば、今はインターンなどで学生を採用するのも当たり前の時代になっていますが、職場にもどんどんカメラを回して、「セガはこのような職場で、このような人たちがこんな感じで仕事をしているんだ」「こんなものを作っているんだ」みたいなところを紹介する番組で、それをリクルーティングに使うのも構わないと思います。

グループで言えば、映画の公開前に座談会を行う番組でもいいですが、セガグループの魅力を(広めるために)、どんどん発信力を高めていくことで、セガというプラットフォームに興味を持ってもらえるようになると考えています。それが1つのきっかけになり、我々のサービス、商品を末永く遊んでいただける仕組みにあらためてトライしていきたいです。

そこでまた返ってくる反応が、開発者にとっても一番生々しい、リアルな、価値のある声だと思いますので、そのようなマーケティング、そしてプロモーションにも、今後トライしていきたいと考えています。

質疑応答(デジタル・パッケージ)

質疑応答:マルチリージョン展開やIP戦略について

質問者1:スライド49ページのマルチリージョン展開に関して質問です。現状、全世界同時発売に関して御社は課題を抱えていると認識しています。その結果として、版権集約、決裁権限と言いますか、決裁のハンコを減らすなどいろいろな取り組みをされてきたと思います。現状に関して、抱えていらっしゃる課題、解決したい課題に関して、整理をお願いします。

名越:基本的には、まずその地域でその商品が売れるかという論点から、すべてが始まります。日本で作るものは、地産地消ではないですが、日本人が作る以上、日本のマーケット、近くで言えばアジアでは売れるという判断で作り始めます。それは欧米にとっても同じですが、欧米とひと括りで言っても、アメリカと欧州とでは意見が若干違います。

そのすり合わせによって、最終的な開発費も含めて、どのぐらいの投資が適正なのかが合議されていくプロセスは避けられないとは思うのですが、基本的に「腹を括る」というのは博打という意味ではなく、どのタイミングから議論を行うのかの時間軸が、昔に比べてどんどん早くなってきています。

ゲームですし、お互いプロですから、リージョンが違っていても、企画書の段階で「だいたい、このスケール感で、この人が作れば、このようなものが作れるはずだ」ということで、周りのトレンドから考えても、収益的にはこれぐらいの期待が見込めるだろうと判断します。

最近は開発費も高いですから、とくに経営のレベルになればなるほど、その判断で二の足を踏むところがあった部分は否めなかったと思います。

ただし、きちんと分析したものに対して、それを達成する意思を大事にしていくことが一番大切だと思いますので、それを通じてスピードアップが図れて、同時に作れる(ことが重要です)。また、開発において、例えば言語ごとにローカライズもしなければいけないですから、『龍が如く』は、日本で作っている以上、日本語のワード数がとても多いです。

そこまでワード数を設けなくても、ゲームの魅力をキープできればいいわけです。極端な話、ワード数を半分にすればローカライズのスピードも2倍になるわけで、「作る側もマルチ展開するうえで、努力はもっとできるはずだよね」といったところで、お互いが少しずつ歩み寄って、お互いが強い意思を持つという部分がもう少し詰められていけば、どんどん達成に近づけられますし、またそれが十分に解決に向かう(ために意味がある)と判断しています。

里見:さらに、意識改革です。皮肉なことに、欧米のスタジオのタイトルは日本以外でも出ています。日本のタイトルは、今まで日本に集中して出ているということで、我々は『ペルソナ5』で大きな成功を収めました。日本では70万本以上売れて、世界で合わせて320万本以上売れました。つまり、海外で200万本以上売れたということで、日本よりも海外の方がマーケットが大きいため、もっと海外に寄せた動きができないのかと思っています。

アトラスのローカライズが丁寧だったこともありますが、それを使って『龍が如く』をしっかりローカライズしたら、PS3に比べて欧米で倍ぐらい多く売れ出していることも見えてきています。

それであれば、最初から海外のお客さま向けにもきちんと作ろうということで、視座が高まってきています。もちろん言語の問題はあるのですが、そのような意識改革は進んでいます。

質問者1:2点目ですが、先ほど名越さまがおっしゃっていたファンコミュニティの囲い込みは、まさにそのとおりだと思うわけですが、それであれば、デジタル・パッケージからはずれてしまうかもしれないのですが、スライド10ページにあったようにIPへの投資や、このセグメントには多数のビジネスチャネルがあるため、そのようなところでのM&A等もいろいろあるとは思います。

そのような中長期的なビジョンと、可能であれば、セグメント全体としてどう収益が伸びていくのか、また利益率の上昇をどのように進めていこうと考えていらっしゃるのか、ビジョンの共有をお願いいたします。

里見:43ページで、4つのIP戦略と記載していますが、まさにこのバランスだと思っています。オリジナルIPが一番儲かりますので、それに越したことないですが、新規のオリジナルIPは知名度ゼロで、世の中の人は誰も知りません。そこで、マーケティング費用がものすごくかかります。

一方で、例えば『スター・ウォーズ』であれば誰もが知っていますので、マーケティングとしては「スター・ウォーズのゲームが出るよ」と知らせるだけでいいわけです。つまり、ロイヤリティを売上の数パーセント払うのは、我々から見ればマーケティングコストなのです。よって、どちらがビジネスとしてメイクセンスなのかを徹底的に追求しています。

最初からアニメだけではなく、ゲーム化もする場合、ゲームと言っても、アーケードも家庭用もコンソールも作り、海外にも届けられて、必要があれば遊技機にもできるという総合力で、最初からライセンスを「お願いします」という(かたちでいただく)案件が増えてきています。

まだまだ発表できていないところもありますが、最初からアニメ、ゲーム、遊技機で同じモデルを使いましょうということです。一個一個を作るよりも画像の開発コストが劇的に下がるということで、すでに取り組みも行っていますので、こうしたところでIPを太らせていきます。

もしくは、「それなら、セガサミーにお願いしよう」というかたちで他社IPの案件も増やしていきます。「立ち上げのときに、セガサミーに入ってほしい」という案件も増えていますので、こうしたかたちで4つのIP軸をそれぞれ太らせていきます。

『ソニック』に関しても、これから映画が公開になりますが非常に評判もいいです。2月に世界で、3月に日本で公開になりますが、実際にトレーラーは第2弾を出しており、1日から2日で1億ビューを超えています。ゲームとの相乗効果も狙っていきたいと思っています。

質疑応答:グローバル化に際しての世界観について

質問者5:グローバル展開のところで、『龍が如く』について具体的に教えていただければと思います。今では欧米でも発売されていると思うのですが、当初はおそらく日本で、しかも大人の男性向けということで、ある程度ターゲティングを絞って、相当とがったゲームを作ったというお話だったと思います。

それが、欧米でも出すという流れが出てきて、グローバルにということで、どんどん流れが変わっているかと思います。実際に何が起きて、どんな理由があってそうなったのかを教えていただければと思います。

また、ゲーム開発のグローバル化というところで、先ほど「言葉の問題」というお話をいただいたのですが、『龍が如く』についてはベースの世界観として、やはり日本人が主人公で、日本の社会がベースになっているかと思います。例えば、海外の人から見たときにそのベースはどうなのかという議論もあるかと思います。

言葉の問題は置いておいて、例えば海外の人を主人公に置いたり、世界観をもう少しグローバルなかたちにするといったように、ものづくりの根幹、ゲームの根幹もグローバルにしていくべきなのでしょうか? そこはあえて、日本としてのこだわりを持ったほうがいいのかについて、教えていただければと思います。

名越:お詳しくてうれしいです。ありがとうございます。おっしゃるとおりですが、日本やアジアで売れるという前提で作られていることは、これからも変わりませんし、基本的にはニッチだと思いますので、それは間違いないタイトルです。

ただし、『龍が如く』で言いますと、ニッチではありますが、ニッチな部分をきれいに刈り取っても、そこそこ以上のボリュームの利益があると思っています。

しかし、例えばロサンゼルスが舞台になって、主人公がトムになったりということは、100パーセント考えていません。それは『龍が如く』に限らないと思っています。このIPの魅力は誰を掴んでいて、離してはいけない人は誰なのか。そのうえで、膨らむ限界は絶対にあると思いますが、その限界を超えていくと、本末転倒になると思っています。

プロデュースをするときに、その限界はある程度は頭に入っているつもりです。ただ一方で、チャネルが広がって売上が増えていくにあたり、開発費を相当抑える技術にも長けています。もう10年以上のチームですので、利益率のよりよいプロジェクトとして、このIPをまた育てていきたいです。

今、スマホで『龍が如く ONLINE』というサービスも継続させていただいていますが、また違う横展開での太らせ方も考えています。そこは、IP固有の持ち味を変にいじりすぎないことも、作り手として、そしてメーカーとして、ファンを大事にするという意味では大切な部分かなと思っています。そのような解釈です。

質疑応答:プラットフォームが増えるなかでの戦い方について

質問者6:2点、お願いします。1点目が、新しく出てきているさまざまなプラットフォームへの対応というところです。直近の四半期でも、比較的大きめなロイヤリティが入っていたと理解しているのですが、現状はまだ初期の段階で、プラットフォームではかなりコンテンツの獲得競争のような状況で、しばらくは特需のようなものが起きると捉えるべきでしょうか?

現状では『ソニック』がすごく遊ばれているかもしれないですが、どんどんコンテンツが増えていくと、だんだん埋もれていくこともあるかと思います。

中長期的に、サブスクリプション系のプラットフォームが増えてくると思っているのですが、そのなかで、単純に数を増やしてタイムシェアを取るかたちになるのでしょうか? また、サブスクリプションみたいなものが徐々に増えてきているなかで、結局、全体的に運用型というかたちに流れていくのでしょうか?

新しく出てきたレベニューソースのなかで、どう見ていて、どう戦っていこうとされているのか、少しヒントいただきたいと思います。

里見:プラットフォームごとの特性だと思います。Apple Arcadeは、サブスクリプション以外の課金をしないということで、逆に言うと、我々としても運営コストはほぼかかりません。OSが新しくなったり、画面サイズが変わったときに対応を求められるとは思うのですが、それ以外のコストはかかりません。

もちろん、タイトルが増えてくれば我々の配分が減る可能性はあるのですが、そのなかで「新しいタイトルは、どういうものを出していきましょうか」というところは、すでに議論しています。

また、同じようにGoogle Stadiaのサービスも立ち上がったことでチャンスは増えていると考えています。

Xboxに関しても、カタログに関しては「どんどんゲームパスのサブスクリプションを入れていきましょう」という状況です。古いタイトルですが、『龍が如く』はまだ一度もXboxで出ていないということで、彼らからも大きな期待を持たれており、我々としてもユーザーにより多くのコンテンツを提供できるよう準備をしています。

また、PS4でもFree to Playのゲームで『BORDER BREAK』を提供していますし、それぞれのプラットフォームで、いろいろな課金スタイルのゲームが出てくると思っています。

運営コストが見合えば、それを新しいプラットフォームに追加していきます。すでに『PSO2』の北米展開も準備していますが、こちらはMicrosoftとも協力しており、それぞれのプラットフォームで、それぞれのパートナーと進めていきます。

しかも、先ほどお伝えしたとおり、パートナーと組まず、自分たちでフルリスクを取っていくものもあるということです。ですので、特需と言うほどのことはないかなと思います。「MG(Minimum Guarantee)=開発費」みたいなものですから、我々としてはノーリスクでそこに提供しているかたちです。それ以上の売上があれば、収益配分がさらに入ってくるという可能性もあります。

また、3年後、プラットフォームの競争がある程度落ち着いたときには、逆に言うと、市場が広がっているだろうと思っていますので、一番いいプラットフォームに我々のタイトルを寄せていくということが起きるかもしれないと捉えています。

名越:同感です。基本的には「Contents by Contents」で、どちらのバリューチェーンも保有していますので、サブスクリプションであれ、Free to Playであれ、売り切りであれ、そこはいかようにも対応しなければいけません。「特需」と言うべきなのかはわからないですが、確かに今はチャネルが増えています。

そのような面での景気のよさは若干あるとは思いますが、基本的にはチャネルが増えて、5年くらいして淘汰されて、またエクスクルーシブの大事さが再認識されるといったことで、どの業界でもそれを繰り返すのが普通です。

今は広がるフェーズにおいて、しっかり利益を取りたいですし、また次のステップの投資のためのキャッシュを確保したいという思いもあります。

里見:そして、まだセガというブランド価値があるということです。Apple Arcadeにせよ、Google Stadiaにせよ、発表文やローンチサイトにセガのロゴが載っています。「セガも来た!」ということで、「本当にゲーム会社が来たのか」「こんなゲームが出るんだ」というパブリシティになっているため、彼らとしては当社を優遇してくれていると思います。

中国の会社と組むにしても、「セガと組んだ」ということで彼らのバリュエーションが上がるため、まだ我々としては(セガというブランドの)恩恵は受けています。この状態が続いているうちに、我々のブランド価値もどんどん上げていかなければいけません。タイトルベースで言えば、正直に言いますと、『龍が如く』よりも『モンスターハンター』や『ファイナルファンタジー』が売れているわけです。

ただし、企業のブランドとしては、我々のほうが世界的に認知度が高いため、「セガさん、来てください」という状況です。それに追いつくように、世界で売れるタイトルを、セガのブランドで出していきます。

電通との合弁企業であるクロシードデジタルという会社があります。とくに誰も聞いたことのない会社が、「ゲーミフィケーションをやってください」と言っているのではありません。ゲーム会社のセガが手掛けるゲーミフィケーションだからこそおもしろそうということで、いろいろな引き合いをいただいているところです。我々としては、ここはレバレッジをかけていこうと思っているところです。

質問者6:2点目が、個別タイトルのお話になります。『マリオ&ソニック AT 東京2020オリンピック』に関してですが、このセッションの冒頭で最近の発売タイトルは「Metacriticのスコアがかなりよい」というお話もありましたが、そのような意味では、久しぶりになかなか評価も厳しく、少し販売も苦戦されているのかなと認識しています。

ゲームですので、たまにはそのようなこともあるということなのか、もしくは、今の時点で反省と言っていいのかもわからないのですが、このようなパートナーシップの難しさが今後もあるのかなど、どういうことが起きたのかを可能な範囲で教えてください。

里見:『マリオ&ソニック AT 東京2020オリンピック』はMetacritic のスコアで69点くらいだと思います。今後のクリスマス商戦を含めて、お子さまやファミリー層などのライトユーザー向けに売っていこうと思っていますので、69点であれば充分楽しんでもらえる内容です。コアなゲームユーザーの視点ではトリプルAのタイトルに比べたらゲームとしての価値は落ちるということで厳しく評価されていますが、ライトユーザー向けのゲームとしては十分なクオリティは出せていると考えています。

名越:十分におもしろいです。機運が上がるのは来年だと思いますので、チャンスがあるのは来年だと思っています。そうは言っても、ニーズが高いものであれば事前の段階でもう少し反応があってしかるべきではないか、とおっしゃっているのでしたら、それはそのとおりだと思います。

また、実際のオリンピックも、なるべく若い世代に見てもらえるようにということで、新種目を公認として認めたりといった変化があるように、ゲームとしてももう少し変化を求められていますが、オリンピックというキーワードを使ったうえでの遊びは、ある程度のギャップがあります。現場も毎回、苦しみながら作っています。

しかし、結局はオリンピックの機運が上がり、それに準じた遊びがきちんとあって、IPが乗っているというところからすれば、蓋を開けてみれば、それなりの数字がきちんと追いついて来ると信じています。ですので、反省はもう少し先送りでもいいと思っています。

里見:実際に、初速は悪いのですが、逆に言うと、週販がまったく落ちていません。最初から山はなく、ずっと落ちずに推移しています。

このオリンピックタイトルに関しても、また年末で少し上がるでしょう。この前のラグビーワールドカップを思い浮かべていただければと思いますが、ラグビーファンしか注目していなかったものが、ワールドカップが始まった瞬間に、日本中で「僕も、実はラグビーが大好きでした」といったファンがたくさん出てきました。

オリンピックもそうなるだろうという期待を持って仕込んでいます。我々は、長く売れていくと思っています。

質疑応答:海外のスタジオについて

質問者7:海外のスタジオについて、大きなものでけっこうですので、それぞれの収益の状況がどのようになっているか、過去数年のトレンドを含めてご説明いただけますでしょうか?

里見:Creative Assembly とSports Interactiveに関しては伸びてきています。15年償却のため、来年か再来年でそれぞれ償却も終わってきますので、連結としても収益がさらに上がってくる予定となっています。

スライドにも載せましたが、Creative AssemblyはIP自体をどんどん太らせていますので、収益を上げていますし、Sports Interactiveは、『Football Manager』を毎年出しているだけだと思われているかもしれませんが、実は収益がどんどん伸びています。

今まで、EAが独占していたライセンスについて、『Football Manager』にドイツリーグも入るということも起きています。

それによって、我々はドイツでも販売できたことで伸びていますし、スマートフォンのタイトルも伸びています。また、簡易版も販売するなど、ノウハウを使って、違うスポーツでも展開していこうと思っています。Sports Interactiveという社名ですから、フットボール以外もやろうというかたちで伸びています。

『Two Point Hospital』も、次のプラットフォームへの展開を開始していますが、『Two Point◯◯』のように、『Two Point』ユニバースを伸ばしていこうというかたちで、IPを太らせていきます。

Relic Entertainmentも新しいオフィスに引っ越しましたし、みんな成長して、すべてのスタジオが順調に伸びています。

Demiurge Studiosはスマホに特化しており、stableなかたちで、そこまで増えていないですが、それ以外のスタジオは社員もどんどん増えています。

Amplitude Studiosも『Humankind』が、「『Civilization』を超えるゲームがついに出るのではないか」ということで、業界で発表以降に言われていますので、『Civilization』の市場を食っていけるように仕込んでいるゲームです。

ESG/SDGsの取り組み(里見治紀氏)

里見:それでは、ESG/SDGsの取り組みについてのお話をさせていただきます。

感動体験を創造し続ける

こちらは、私が社長になってから掲げているグループのミッションです。

感動体験創造サイクルを回し続けるために

このSDGsのなかで、我々はとくに5項目に力を入れてきました。

1︓働きがい・多様性の向上と不平等の排除

1つは働きがいです。もちろん、長時間残業削減をはじめとする働き方改革を進めていましたが、昨年からは「もう改革は終わりだ」と言っています。改革というのは何年も取り組むものではなく、もう改革は終わって、これからは「働き方改善」ということで、日々の改善のステージに移っています。

のちほど、性的マイノリティについてもお話をしますが、そうした環境作りが進んできました。本社移転に伴って、働く環境を整えてきましたし、企業内保育所「セガサミーそらもり保育園」も開園しています。

性的マイノリティが活躍できる環境づくり

性的マイノリティに関してですが、まずはステップバイステップだと思っています。私はサンフランシスコという特異な街にいたからなのかもしれませんが、サンフランシスコのオフィスでは、いろいろな人種の方、いろいろな性別の方、いろいろなセクシャルオリエンテーションの方が普通に働いていました。

それを「多様性がある」とは言いません。それが普通なのです。そのような社会を日本でも目指しましょうという話をしており、当社では「多様性を目指しましょう」という言い方をしています。これが当たり前という社会、組織にしていこうとしています。

ただし、いきなり押し付けてもいけないということで、我々としてはステップ・バイ・ステップで制度を整えました、同性パートナーとの配偶者制度や、従業員の理解促進のための e-ラーニングもスタートしました。また、「東京レインボープライド2019」のスポンサーをして、社員がパレードに参加しました。さらに、外部の相談窓口も設置して、これによってLGBTへの取り組みを評価する「PRIDE指標」でゴールド認定をいただきました。これから、まだまだ進めていこうと思っているところです。

APPENDIX:⾮財務データ(⼈財)①

これはのちほど見ていただければと思いますが、女性の管理職比率もじりじり上がっていますが、実数では非常に伸びています。

APPENDIX:⾮財務データ(⼈財)②

こちらも、のちほど見ていただければと思います。

2:依存症問題への対応

依存症についてです。パチンコに関しては、以前から「のめり込み」の問題について、業界を挙げて取り組んできています。またゲームに関しても、WHOが「ゲーム依存症」を病気の一つに位置付けたということで、報道で多く取り上げられました。

これに対しては、ゲーム4団体を挙げて共同研究をしています。どういったかたちで防いでいくのかについては、まさに我々がギャンブル依存症への対応や、パチンコのめり込み対策などのノウハウがありますので、スライドのように取り組む必要があると考えています。

ギャンブル依存症についての京都⼤学との産学共同研究

京都大学との産学連携の研究に関しては、9月に学会で発表していただきましたが、ここで、本当に我々が一番進めたかったのが、ギャンブル依存症の予防です。実は、予防は海外カジノオペレーターはどこも取り組んでいません。なぜかと言うと、売上が減るからです。「ビッグデータ解析をしたところ、あなたは依存症になる傾向がありますよ」というデータが出た際に、VIPのマーケティング担当者が肩を叩いて、「ちょっと冷静になりましょう」といったことは、カジノのオペレーターではできないですし、今も行っていません。

ここをどういう仕組みで、もしくはどういうシステムを使ってできるかというところは、地震予知と同じく、どこまでできるのかはわかりません。しかし、ここに取り組んで研究している会社は、カジノのオペレーターとしてはほとんどないため、踏み込んでいこうとしています。

3:環境負荷軽減・環境保全活動への対応

環境保全に関しても、CO2の情報開示を実現して、TCFD対応やガバナンス強化等を唱えています。

事業における環境負荷低減と収益性向上の両⽴

いつもお話ししているとおり、遊技事業に関しては設計から見直してリユース率を上げているところです。リサイクル、リユース、環境に配慮した対応、それに伴う数値も発表しています。

APPENDIX:⾮財務データ(環境)

のちほど見ていただければと思いますが、すべてのデータについてダウントレンドとなっています。

4︓超少⼦⾼齢化社会への対応

超少子高齢化社会への対応についてです。先日も発表させていただきましたが、損保ジャパン日本興亜と組んで、長い間、ドライブシミュレーターの開発に取り組んでいます。高齢者の交通事故が社会問題になっていますので、そのようなところに対応したドライブシミュレーターの提供も行っていますし、子ども向けのダーツ、プログラミング教室等も各社で取り組んでいます。

そして、大人向けの趣味発見サイト「シュミカツ!」を提供して、大人の新しい趣味、もしくはリタイア後の充実した生活を提供する手助けをしています。また、子どもの夢をかなえるプロジェクトの一環として、「SAMMY SOCCER PROJECT」も実施しています。

5︓コーポレートガバナンス①

コーポレートガバナンスに関しては、現在、ガバナンス・コード、スチュワードシップ・コード等、いろいろと求められることが多くなっていますが、我々は後追いではなく、どちらかというと先手を打って進めてきました。

5︓コーポレートガバナンス②

セガサミー設立当初から社外取締役も入れており、現在は取締役10名中、4名が社外取締役です。将来的には半々ぐらい、もしくは過半数が社外取締役になっていくようなかたちで、欧米型のように経営と執行を分けるところまで、徐々に進めているところです。また、各種委員会や会議等も、すでに何年も前から取り組んでいます。

5︓コーポレートガバナンス(社外取締役)

こちらが社外取締役のメンバーですが、メラニー・ブロック氏だけは独立ではありません。彼女は、オーストラリア・ニュージーランド商工会議所の名誉会頭で、オージー・ビーフを日本に持ってきた豪腕女性です。

もともとクラウンリゾートのアドバイザーをしていた関係で知り合っているのですが、クラウンリゾートが日本から撤退したこともあり、我々のアドバイザーに入っていただきました。

彼女の個人会社に顧問料を払っていたのですが、個人会社で、我々からの収入比率が大きくなっていました。我々の社内ルールで、5年間は独立性を認めないということで独立にはなっていないのですが、実際は、ほぼ独立の社外取締役と同じ役割を担っていただいています。

大⻄氏は、ご存知のとおり三越伊勢丹の社長を務められていました。我々としても上場企業の社長の意見がほしいということでご就任いただいています。パラダイスシティでも商業施設を展開していますし、将来的なIRについての商業施設に関してもアドバイスをいただいています。

勝川氏は、銀行での金融の経験があり、ベンチャーキャピタルで社長だったという経験を含めて我々にアドバイスをいただいています。

夏野氏はもう長い間いらっしゃるため詳細は割愛しますが、このようなダイバーシティに富んだ社外役員体制になっています。

5︓コーポレートガバナンス(取締役報酬額改訂)①

役職に応じた報酬体系を発表させていただきました。これは非常に先進的ということで、有価証券報告書の好事例として金融庁からも使わせてほしいという声をいただいていますが、取締役の基本給、職責給、役割給、固定給の変動制となります。

5︓コーポレートガバナンス(取締役報酬額改訂)②

これは新報酬体系に当てはめて、昨年実績により算出したサンプルですが、このようなかたちで、代表権であれば手当はいくら、社長、会長、常務、CEO、COO、CFOであれば手当はいくらで、月給が決まるというかたちです。

賞与は、スケールが売上、経常利益で、達成と未達の場合とで、計数で評価判定して、それによって掛け数が決まるというものを発表しました。これらの制度を2020年3月期から 導入しております。

APPENDIX:取締役報酬額改訂①

こちらのスライドが、固定報酬です。

APPENDIX:取締役報酬額改訂②

こちらのスライドが、先ほどお話したスケールです。

APPENDIX:取締役報酬額改訂③

客観的に成績が出て給料が決まるというもので発表させていただきましたが、これが非常に先進的だということで、いろいろなところで注目されています。

社外評価

外部評価としても、MSCIジャパンの指数、また今年は日経からIRの表彰をいただけなかったのですが、昨年はIRのところで賞をいただきました。アナリストの方々が、あまりこの業界や当社を評価しておらず、投票していないと聞いていますので、ぜひアナリストの方々に来年またIR開示指標が評価されるようにがんばりたいと思っています。ぜひ評価シートを出していただければと思います。

外資系の方はあまり協力していないと聞いていますので、よろしくお願いします。

APPENDIX:SDGs におけるこれまでの取り組み

SDGsですが、これはまさに経営の根幹です。言われているから取り組んでいるというものではありませんが、まずは名前からということで、この4月にCSR推進室からCSR・SDGs推進室に名前を変えています。

どんどん社内に啓蒙を図っていこうということで、まずは我々がすでに取り組んでいることで、これに当てはまることがたくさんあるのではないかというところを整理しており、社内で共有しています。

APPENDIX:ESG各重要課題とSDGs項⽬の相関性

我々の存在意義である「感動体験を創造し続ける~社会をもっと元気に、カラフルに。~」というところにまさにマッチしていますので、これを指標としてどんどん使っていこうということで、現在取り組んでいるところです。

統合型リゾートに関しては今回プレゼンに入れていないため、そこも含めてご質問があれば、この場で答えたいと思います。

質疑応答(その他)

質疑応答:IR(統合型リゾート)について

質問者1:IRについてうかがいます。横浜市のRFCの提出期限まであと2週間ぐらいですので、あらためてセガサミーらしい提案をするにあたって、概念的でもかまいませんので、どのようなものを盛り込まれたのか教えてください。競合と比べたときのセガサミーの強みを整理していただけますでしょうか?

里見:我々はTier1ですでに申し込みを終えているのですが、そのなかで、どう差別化していくかについてです。1月に横浜で産業展があるため、そこで我々が出したRFCの内容を、ある程度発表する準備をしていますので、そこを楽しみにしていただければと思います。我々としては、外資系企業と組むことも検討しております。

ただし、一番の問題は、ほかの日系企業は、もう外資に丸投げしようと思っている方ばかりなのです。そうすると、いいとこどりをされてしまいます。ホテルのオーナーとオペレーターということで、世界的に知名度のあるホテルを連れてこようと思っているデベロッパーの方が多く、カジノオペレーターもそうして、テナントではないですが、マネジメント契約で進めればいいと思われている方が多いのです。

それ自体も、ノウハウがないと、オペレーターにいいとこどりをされてしまいます。例えば、普通は売上の何パーセント、オペレーティングプロフィットの何パーセントをレベニューシェアでオペレーターが取っていく契約ですが、そのまさにオペレーターのプロフィットの概念、つまりこの経費はオーナーが持つのか、オペレーターが持つのかといったところは、ノウハウがなければどんどんいいとこどりをされてしまいます。

我々は日本の企業として限りなくカジノの運営経験があるというところで、そのような交渉も海外のオペレーターと一緒にできるというところがあります。

いいとこどりだけさせないという部分もありますが、一番のメリットは、例えばどこがライセンスを取っても、日本で雇う一般社員は全員同じということです。異なるのは、おそらくカジノの運営ノウハウを持っている管理職を海外から100人単位で連れてくると思いますし、そこの運営スタイルやノウハウ、もしくはVIPの顧客リストなどが差別化になってくると思いますが、我々は運営のノウハウを持っている日本人を何十人も連れて来られますというところが、一番の差別化だと思っています。

外国人を100名連れてきても、日本の現場で働いている人たちは全員、英語は一言もしゃべれない人たちばかりであれば、本当に運営ができるのか、間に全員通訳が入れるかというところで、我々は日本人でノウハウを持っている人たちをどんどん持って来ることができます。

VIPリストに関しても、パラダイスシティに日本人のお客さまが想定の倍以上いらっしゃるなかでVIPリストもできています。日本のカジノで大きなウエイトを占めると考えているのは、韓国人のお客さまです。

海外のオペレーターには、海外にいらっしゃっている人のリストしかないのですが、パラダイスシティというファイブスターホテルに泊まりに来ている韓国人のお客さまのリスト……宿泊している方のうち、65パーセントぐらいが韓国人のお客さまですので、そのリスト、ノウハウを我々は持っています。

そのような人たちは、プレミアムでマスマーケット以上の人たちで、今度は日本に呼べるというところも、他のオペレーターとの差別化になるだろうと考えています。

どんな建物を建てるかももちろん差別化要因ですが、それではそこまで差がつかないと思っています。それ以外のソフト面で、日系の会社だからこそ、日本の情緒がわかる提案ができるということで、これから我々としても「このようなパートナーと組んでいる」というところは発表させていただきたいと思っています。

配信元: ログミーファイナンス

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