クオールHD Research Memo(11):アウトソーシングニーズの高まりでCMR派遣は順調な成長が続く見通し

配信元:フィスコ
投稿:2019/12/13 16:14
■中長期の成長戦略と進捗状況

3. BPO事業の成長戦略と進捗状況
クオールホールディングス<3034>のBPO事業は子会社のアポプラスステーションとメディカルクオールの2社が事業主体となっている。会社概要の項で述べたように、中核のアポプラスステーションはCSO事業、紹介派遣事業、CRO事業の3つを展開しており、メディカルクオールの出版関連事業と合わせて4つのサブセグメントに分けられる。BPO事業の成長戦略はCSO事業と医療系人材の紹介派遣事業が中心となっている。

(1) CSO事業の進捗状況
会社概要の項で述べたように、CSO事業は、CMRを製薬メーカーに派遣する事業だ。製薬業界では正社員MRを削減し、外部にアウトソースする流れにある。同社にとってはこれが成長シナリオのベースとなる。

製薬業界のMRの数はピークの2013年に65,752人を数えたが、2014年以降は減少基調が続いている。こうした中で同社は業界トップの取引企業(製薬会社)数を生かしてCMRシェア(CMR総数に占める自社のCMR数の割合)を引き上げることで、収益の成長を実現する戦略で臨んでいる。具体的には2022年3月期において20%というのがターゲットとなっている。これは、その時点でのCMR総数を4,500人~5,000人と想定し、その20%に相当する900人~1,000人体制を構築するというのが計算根拠となっている。2019年3月期における同社のCMR数は530人でCMRシェアは15.2%となった。

業績の動向の項で述べたように、2020年3月期第2四半期はCMR数が570名と過去最高に達した。これは従来から続く、MRのアウトソーシング化の流れの延長線上にあるが、それに加えて、CMRへの専門性ニーズの高まりが、同社にとって追い風となると期待されている。

製薬会社側においては、事業(領域)の選択と集中の動きが強まり、その営業の現場においても従来以上に踏み込んだ製品説明が求められるようになってきている。上記のように、製薬会社は一方では正社員MRを削減してCMRに切り替えを進めているため、専門性を有するCMRのニーズが急速に高まってきている状況にある。

これに応えてCMRに専門領域の研修を実施できる組織は限られている。同社グループのアポプラスステーションは、能力開発部においてそうした専門領域研修を実施し、市場に送り出している。CMRシェア20%獲得に向けて、こうした専門ニーズの高まりは同社にとって大きな追い風になると期待される。

(2) 医療系人材の紹介派遣事業の進捗状況
同社の紹介派遣事業は医療従事者を対象としている。特長としては幅広い職種を対象としている点にあるが、収益構造としては、売上高の約3分の2を薬剤師が占めており、看護師と登録販売者が残りを2分しているイメージとみられる。これら3職種のほかにも助産師、保健師、管理栄養士、医療事務などの紹介・派遣を行っている。

主力の薬剤師の紹介・派遣については、調剤薬局事業者が営むなかでは第2位の規模(第1位は日本調剤系のファルマスタッフ)にあり、薬剤師紹介・派遣事業者全体でもトップ10に入る規模とみられる。

薬剤師の派遣者数は、2020年3月期第2四半期において前年同期比55%増と高い伸びを示し、これがけん引役となって紹介派遣事業として増収増益を達成した。薬剤師の派遣者数が増加した理由としては、エントリー数が好調だったことが大きいと弊社ではみている。薬剤師の派遣ニーズはもともと強かったが、そうしたニーズに対応しきれず機会ロスが相当数あったと考えられる。第2四半期においては、集客施策に注力した結果エントリー数が増加し、派遣者数の増大につなげることができたとみられる。

薬剤師の紹介派遣事業の今後については、需要が今後も増加することは疑いないと弊社では考えている。一方で、事業の性質は変わる可能性もあるとみている。すなわち、派遣から紹介へのシフトだ。調剤薬局は認定薬局と非認定薬局に色分けされる方向にある。認定薬局の要件として所属する薬剤師の資格要件が加わる可能性があり、その規定の内容次第では、正社員薬剤師の強化が求められるようなケースも想定できる。その場合には同社の紹介派遣事業の中身が、派遣から紹介へとシフトが起きる可能性がある。これらはあくまで仮定の話であるが、そうした状況変化に柔軟に対応できるよう、事業の根幹である人材獲得能力を着実に高めておくことが重要と言えるだろう。

薬剤師以外の職種では看護師、保険師、登録販売者などの強化を図っている。同業他社の多くは、年収が高くて事業の収益性も高くなる医師の紹介事業に注力するところも多いが、同社はそこには進出しない方針だ。先発企業が強く、また参入企業の増加で競争が激化することを懸念したためと考えられる。この選択は極めて合理的で妥当な判断だと弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)


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