■エルテス<3967>の決算動向
1. 過去の業績推移
2014年2月期からの業績を振り返ると、顧客数の拡大等により、年平均30%を超える成長率で順調に業績を伸ばしてきた。経常利益も株式上場を見据えた2015年2月期に一時的な損失を計上したものの、その後は順調に回復し、経常利益率は先行投資や上場関連費用等をこなしながら13%前後の水準にまで上昇。連結決算に移行した2018年2月期以降は、今後の事業拡大に向けた先行投資の影響により利益水準は2期連続で低調に推移してきたが、2020年2月期は事業拡大と新サービスの一部収益化により回復の兆しがみられる。
財務面でも、自己資本比率は2015年10月の産業革新機構(現産業革新投資機構)等からの出資(534百万円)や2016年11月の株式上場に伴う新株発行(調達資金299百万円)により80%を超える水準で推移するとともに、現金及び預金も1,311百万円と高い水準にある(2019年8月末現在)。同社は、強固な財務基盤と潤沢な手元流動性を活かした戦略投資やM&Aも視野に入れているもようであり、今後の動向に注意が必要である。
2. 2020年2月期上期決算の概要
2020年2月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比14.1%増の942百万円、営業利益が同437.7%増の140百万円、経常利益が同417.0%増の131百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が86百万円(前年同期は21百万円の損失)と計画を上回る増収増益となった。特に、利益が大きく伸びている。
顧客数及び契約数の拡大により「デジタルリスク事業」が好調に推移。従業員による不適切投稿が大きな注目を集めたことや、積極的な広告宣伝活動等を通じて企業認知度が向上したことが事業拡大につながった。特に、契約継続率の高い「リスクモニタリングサービス」※が順調に積み上がったことに加え、期間の短い高単価契約の受注が上振れ要因となった。「内部脅威検知サービス」もスポット案件の剥落による影響を受けたものの、実態としては着実に契約数を積み上げているようだ。また、「その他事業」についても、「AIセキュリティ事業」の伸びや新サービスの一部収益化により大きく伸長した。したがって、外部環境を追い風として全般的に好調であったことが業績の底上げにつながったものと総括することができる。
※注力する「リスクモニタリングサービス」の売上構成比は「デジタルリスク事業」の57.1%(前期は51.7%)に高まっており、安定的な収益基盤の積み上げが図られている。
損益面では、販管費の一部を原価へ振り替えた影響により原価率が上昇(販管費は減少)しているが、実質的には増収効果や業務効率化の推進により原価率は改善傾向にあり、人件費や広告宣伝費の増加をこなしながら大幅な営業増益を実現した。営業利益率も14.9%(前年同期は3.2%)に大きく改善している。また、「AIセキュリティ事業」を担う連結子会社エルテスセキュリティインテリジェンスの営業利益が10百万円に黒字転換(前年同期は40百万円の営業赤字)したところも特筆すべき点である。
財務面では、総資産が現金及び預金の増加により前期末比6.9%増の1,957百万円に拡大した。自己資本も内部留保の積み増しにより同5.5%増の1,661百万円に拡大したことから、自己資本比率は84.9%(前期末は86.0%)と高い水準を維持している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 過去の業績推移
2014年2月期からの業績を振り返ると、顧客数の拡大等により、年平均30%を超える成長率で順調に業績を伸ばしてきた。経常利益も株式上場を見据えた2015年2月期に一時的な損失を計上したものの、その後は順調に回復し、経常利益率は先行投資や上場関連費用等をこなしながら13%前後の水準にまで上昇。連結決算に移行した2018年2月期以降は、今後の事業拡大に向けた先行投資の影響により利益水準は2期連続で低調に推移してきたが、2020年2月期は事業拡大と新サービスの一部収益化により回復の兆しがみられる。
財務面でも、自己資本比率は2015年10月の産業革新機構(現産業革新投資機構)等からの出資(534百万円)や2016年11月の株式上場に伴う新株発行(調達資金299百万円)により80%を超える水準で推移するとともに、現金及び預金も1,311百万円と高い水準にある(2019年8月末現在)。同社は、強固な財務基盤と潤沢な手元流動性を活かした戦略投資やM&Aも視野に入れているもようであり、今後の動向に注意が必要である。
2. 2020年2月期上期決算の概要
2020年2月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比14.1%増の942百万円、営業利益が同437.7%増の140百万円、経常利益が同417.0%増の131百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が86百万円(前年同期は21百万円の損失)と計画を上回る増収増益となった。特に、利益が大きく伸びている。
顧客数及び契約数の拡大により「デジタルリスク事業」が好調に推移。従業員による不適切投稿が大きな注目を集めたことや、積極的な広告宣伝活動等を通じて企業認知度が向上したことが事業拡大につながった。特に、契約継続率の高い「リスクモニタリングサービス」※が順調に積み上がったことに加え、期間の短い高単価契約の受注が上振れ要因となった。「内部脅威検知サービス」もスポット案件の剥落による影響を受けたものの、実態としては着実に契約数を積み上げているようだ。また、「その他事業」についても、「AIセキュリティ事業」の伸びや新サービスの一部収益化により大きく伸長した。したがって、外部環境を追い風として全般的に好調であったことが業績の底上げにつながったものと総括することができる。
※注力する「リスクモニタリングサービス」の売上構成比は「デジタルリスク事業」の57.1%(前期は51.7%)に高まっており、安定的な収益基盤の積み上げが図られている。
損益面では、販管費の一部を原価へ振り替えた影響により原価率が上昇(販管費は減少)しているが、実質的には増収効果や業務効率化の推進により原価率は改善傾向にあり、人件費や広告宣伝費の増加をこなしながら大幅な営業増益を実現した。営業利益率も14.9%(前年同期は3.2%)に大きく改善している。また、「AIセキュリティ事業」を担う連結子会社エルテスセキュリティインテリジェンスの営業利益が10百万円に黒字転換(前年同期は40百万円の営業赤字)したところも特筆すべき点である。
財務面では、総資産が現金及び預金の増加により前期末比6.9%増の1,957百万円に拡大した。自己資本も内部留保の積み増しにより同5.5%増の1,661百万円に拡大したことから、自己資本比率は84.9%(前期末は86.0%)と高い水準を維持している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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