CACHD Research Memo(3):国内IT事業、海外IT事業、CRO事業を展開(1)

配信元:フィスコ
投稿:2019/11/22 16:08
■事業内容

CAC Holdings<4725>の時代のニーズに応じて事業ポートフォリオを変化させるなかで、報告セグメントを従来の「システム構築サービス事業、システム運用管理サービス事業、BPO/BTOサービス事業」から改め、2018年以降は「国内IT事業、海外IT事業、CRO事業」としている。2014年以降のM&A戦略もあって、海外IT事業の売上高が全社売上の20%程度を占めるに至ったことが報告セグメント見直しの直接的な理由である。

また、2019年には意思決定を迅速化し機動的な事業遂行を実現するため、既存事業を4つに区分(コアICT領域、中国領域、インド領域、ヘルスケア領域)し、新規事業1つ(未来領域)を加えた合計5つの事業ドメインを設置している。

1. プライム契約比率90%を誇る国内IT事業
国内IT事業は、全社売上の59%(2018年12月期)を占める同社の主力事業であり、国内子会社を通じてシステム構築サービス、システム運用管理サービス、人事BPOサービスなどを展開している。

同社は独立系SIerの中立な立場で、プライムコントラクタとして、ユーザ・ニーズを的確かつ直接くみ取り、顧客に最適なサービスを提供することに強くこだわってきた。実際、国内IT事業の中核を担う、シーエーシー(CAC)は300社程度の顧客数を抱えるなかで、プライム契約比率は約90%の水準をキープしており、受注時粗利率は25%を確保している模様である。

(1) 銀行・信託向けに強みを有するシステム構築サービス
システム構築サービスは、情報システムの企画から、設計・開発・テスト・導入・保守まで、企業情報システムの構築をトータルに実施するものであり、売上高上位の顧客には、複数の金融機関や大手信託銀行が名を連ねている。半世紀超にわたりプライムコントラクタとして専門性の高い業務知識と経験を培ってきた結果、メガバンク向けの市場系や海外系システム、信託銀行向けの年金関連システムに強みを有している。

(2) クラウド対応を進めるシステム運用管理サービス
システム運用管理サービスは、1971年のアウトソーシング・サービス専門会社(SSK)への出資を起源としている。現在は運用プロセス管理、業務運用、ユーザー支援、クライアント機器管理、アプリケーション運用、インフラ運用など、システムの運用に必要な機能をトータルに提供しており、大手製薬企業への総合的サービス提供を通じて蓄積した運用ノウハウやM&Aにより様々な業種(製造業や商社、水産・食品)のニーズをダイレクトに取り込んだことが強みとなっている。

また、AWS(Amazon Web Services)でのシステムインテグレーションやアプリケーション開発などに注力、その実績が非常に豊富であるとして、「APNアドバンストコンサルティングパートナー」に認定されるなど、2012年からクラウド対応についても急ピッチで強化してきた。結果、大手金融機関や製薬企業など30社以上をサポートしている。なお、クラウド化の加速は、ITベンダーにとって既存ビジネスの縮小につながる面も持つが、同社はそのマイナス影響は小さいとしている。

(3) 人事BPOサービス
人事BPOサービスは、ITを活用し、人事業務などのビジネスプロセスを企業の担当者に代わって遂行するものであり、一般的な給与計算などにとどまらず、人事制度の運用や労務管理、福利厚生管理、その他人事業務全般で業務受託を行っていることが特色となっている。2019年7月には長崎市に「長崎BPOセンター」を開設しており、事業拡大を図っている。人事業務全般に限らず、将来的には総務・経理業務なども視野に入れ、バックオフィス業務を包括的に受託していく。

(4) デジタルトランスフォーメーションへの取り組み
同社は、急速に進化するICT技術が社会全般を変革するデジタルフォーメーション(以下、DX)について、既存SIerにとってチャンスでもありピンチでもあると認識している。DXは、新たな事業を創出するだけでなく既存ビジネスのデザインをも変革していく。つまり、「仮想世界と物理的世界が融合された新世界で、ヒト、モノ、カネ、ビジネスが相互作用をもたらすことに対応したデジタルビジネスへの移行が求められるわけだ。

同社は、顧客のDX推進を支援するために、既にAIやブロックチェーン、IoTといった最新のICT技術を活用したサービスメニューを用意しているわけだが、同社自身のデジタルビジネスへの移行と技術動向を常に先読みすることでDXへの対応を差別化要因へと高めることに注力している。

2. 新たな責任体制で立て直しを加速する海外IT事業
海外IT事業は、12社(2019年10月31日現在)の海外グループ会社を通じ、システム構築サービス、システム運用管理サービス、保守サービスなどを展開している。同社は、他社に先駆けて1970年代に海外に進出するなど、早くから海外市場を成長フロンティアとして捉えてきた。そして、M&Aの積極化などもあって、2017年の海外売上高比率は22%(うちアジアが74%を占める)にまで拡大した。

一方、急速な規模拡大を求めるなかで、買収企業において想定外の損失が発生し、2018年については2017年に行った事業再構築の影響での海外売上高比率は19%に低下したものの、2019年9月にシンガポールのMitraisを100%子会社化(実行日は10月18日)し、M&Aを再開している。Mitraisは、インドネシアやオーストラリアで実績を上げているソフトウェア企業であり、DX時代に求められる短期間でのシステム開発に有効なアジャイル開発手法に強みを持つ。このM&Aについては、取締役会等で極めて深い議論がなされたという。過去の教訓が生かされていることを信じたい。

同社の海外IT事業は、顧客である日本企業に対するグローバル・サポートや海外グループ会社のオフショア活用がメインの段階から、インドや中国といった現地の巨大マーケット自体によりフォーカスする段階に進みつつある。実際、2019年からは海外IT事業を日本企業に対するグローバル・サポート等をメインとするコアICT領域(欧米)と中国領域、インド領域の3つの事業ドメインに区分し、各ドメインを担当する執行役員が責任を持って各領域の事業成長を追求する体制に移行している。このうち、中国領域担当とインド領域担当の2名が外国人となっているほか、グループの外国人従業員比率は59%と高く、組織・人事面でのグローバル化対応は整っている。

こうしたなかで、とりわけ注目されるのが、2014年に子会社化したInspirisys Solutions Limited (インドの証券取引所に上場、旧AFL)である。Inspirisys Solutions Limitedは本拠地インドの製造業や金融機関を始め、米国、英国、中東などの各拠点でも優良な顧客を抱えており、まさに海外現地市場開拓の橋頭堡役として評価できるためだ。また、Inspirisys Solutions Limitedは成長分野であるADAS(高度運転支援:Advanced driver-assistance system)関連で数億円の売上実績を日本などで上げており、巨大産業でありながらこれまで実績が乏しかった自動車向けビジネスへの足掛かりをグループ内に取り込めた意味は大きい。加えて、ADAS分野は、同社が出資し代理店契約を締結している米Affectivaの感情認識AI技術の活用範囲も広く、今後の展開に期待したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)

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