■中長期の成長戦略
4. 通信事業の成長戦略
通信事業はマーケットエンタープライズ<3135>の子会社であるMEモバイルが「カシモ(賢いモバイルの意味)」というブランドのもと、1)リユース端末と組み合わせた格安SIMサービスの提供と、2)高速通信サービスであるWiMAX回線の販売の、2つのサービスを展開している。
1)のサービスは、同社ネット型リユース事業で価格競争力のある中古端末を安定的に調達できる強みを生かしたものだ。また、2)についてはUQ WiMAXの回線を仕入れて販売しているが、ルーターを持ち運べるモビリティと大手キャリアの回線よりも大量の通信量を安価に利用できる点を差別化要因として、「賢い消費者」の支持を獲得することに成功している。
日本は世界的に見ても通信費の絶対額が高く、また家計に占める割合が年々高くなってきていることが国民経済的に大きな問題となってきている。その結果、SIMロック解除義務化や2年契約の違約金の引き下げといった携帯キャリアの顧客囲い込み抑制のほか、政府が通信料金の値下げを求める法改正が今秋から相次いで開始された。こうした動きは、同社が通信事業で実現を目指す「賢い消費」の実現と同じ方向性にあると言え、追い風となるものと期待される。
さらには、中期的に同社の通信事業に追い風になると期待されるイベントも控えている。それは2023年以降に予定されるADSLサービスの廃止だ。ADSLは固定回線でモバイルとは直接関係がないように思われるが、ADSLの根底には大容量高速通信へのニーズがある。このサービスが廃止された場合、利用者は新たな大容量高速通信のネットワークを構築する必要があり、実際には何らかのサービスに加入する必要に迫られる。その際に、配線工事等が不要で、モビリティ(ルーターを戸外に持ち出せる)を兼ね備えたWiMAXは有力な選択肢になると考えられる。こうした点を考慮すると、同社の通信事業の成長シナリオは息の長いものとなりそうだ。
通信事業のみならずネット型リユース事業、メディア事業も通信分野のルール改正の恩恵を受ける
5. 通信分野の新ルールが3事業すべてに好影響
通信分野では今秋から2つの大きなルール改正が実施される。1つはSIMロック解除の義務化であり、もう1つは大手キャリアを利用するほとんどの消費者が契約していた2年契約(いわゆる「2年縛り」)の中途解約に伴う違約金の引下げ(上限1,000円の導入)だ。
これら2つの動きから生ずる追い風を着実につかまえることは、同社のメディア事業と通信事業にとって成長戦略の重要な1つになると考えられる。また、中核のネット型リユース事業にとっても、少なからぬポジティブインパクトをもたらす可能性があると弊社では考えている。すなわち同社の3事業すべてが恩恵を受けるということだ。そのロジックは以下のようなものだ。
SIMロック解除の義務化は2019年9月1日からスタートした。従来大手キャリアは、自社で販売した端末にロックをかけ、他のキャリア等のSIMカードでは当該端末を利用できないようにして顧客囲い込みをしていた。今回の措置では中古端末も含めてSIMロック解除が義務化された。
SIMロック解除が義務化されると、家庭内で眠っていた端末や、数は多くないものの事故物件の端末(いわゆる“赤ロム”端末)が、中古端末としての価値を持つことになる。また、今後機種変更する際には手持ちの端末は売却・換金することが一般化すると考えられる。この結果、リユース市場での中古端末流通量が増大すると考えられ、同社のネット型リユース事業はその恩恵を受けると期待される。
これらの実際の動きとしては、どこで中古端末を売却できるか、どこが最も高く買い取ってくれるか、といった情報需要が発生する。それに対しては同社のメディア事業が恩恵を受けると期待される。具体的には「iPhone格安SIM通信」内で提供している中古スマートフォン相場検索サービスが利用される(すなわちPV数が増加する)可能性がある。
さらには、積極的に中古端末と格安SIMを利用する機運の高まりにより、格安SIM選定の情報需要も生じるとみられ、その際には同じメディア事業の「SIMCHANGE」が「格安SIMスピードチェッカー」や「格安SIM比較診断」などのサービスを通じてPV数を伸ばすと期待される。
また、解約違約金については、2019年10月から現行の9,500円から上限1,000円へと大きく引き下げられた。2年縛りとその違約金の高値設定は、SIMロック同様、顧客囲い込みが主眼だった。今回の措置もまた囲い込みの壁を崩すものと言える。
違約金の上限1,000円の導入は、前述のSIMロック解除義務化(とそれに伴う中古端末の流通量増大)とあいまって、大手キャリアの契約者を格安SIMと中古端末に誘導する大きなエネルギーになると期待される。同社の通信事業においては、ネット型リユース事業を通じて中古端末を安定的に調達できる強みを生かして“リユース端末+格安SIMサービス”を従来事業の核として位置付け、注力してきている。まさに、ここに向けて追い風が吹く状況にあるということだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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4. 通信事業の成長戦略
通信事業はマーケットエンタープライズ<3135>の子会社であるMEモバイルが「カシモ(賢いモバイルの意味)」というブランドのもと、1)リユース端末と組み合わせた格安SIMサービスの提供と、2)高速通信サービスであるWiMAX回線の販売の、2つのサービスを展開している。
1)のサービスは、同社ネット型リユース事業で価格競争力のある中古端末を安定的に調達できる強みを生かしたものだ。また、2)についてはUQ WiMAXの回線を仕入れて販売しているが、ルーターを持ち運べるモビリティと大手キャリアの回線よりも大量の通信量を安価に利用できる点を差別化要因として、「賢い消費者」の支持を獲得することに成功している。
日本は世界的に見ても通信費の絶対額が高く、また家計に占める割合が年々高くなってきていることが国民経済的に大きな問題となってきている。その結果、SIMロック解除義務化や2年契約の違約金の引き下げといった携帯キャリアの顧客囲い込み抑制のほか、政府が通信料金の値下げを求める法改正が今秋から相次いで開始された。こうした動きは、同社が通信事業で実現を目指す「賢い消費」の実現と同じ方向性にあると言え、追い風となるものと期待される。
さらには、中期的に同社の通信事業に追い風になると期待されるイベントも控えている。それは2023年以降に予定されるADSLサービスの廃止だ。ADSLは固定回線でモバイルとは直接関係がないように思われるが、ADSLの根底には大容量高速通信へのニーズがある。このサービスが廃止された場合、利用者は新たな大容量高速通信のネットワークを構築する必要があり、実際には何らかのサービスに加入する必要に迫られる。その際に、配線工事等が不要で、モビリティ(ルーターを戸外に持ち出せる)を兼ね備えたWiMAXは有力な選択肢になると考えられる。こうした点を考慮すると、同社の通信事業の成長シナリオは息の長いものとなりそうだ。
通信事業のみならずネット型リユース事業、メディア事業も通信分野のルール改正の恩恵を受ける
5. 通信分野の新ルールが3事業すべてに好影響
通信分野では今秋から2つの大きなルール改正が実施される。1つはSIMロック解除の義務化であり、もう1つは大手キャリアを利用するほとんどの消費者が契約していた2年契約(いわゆる「2年縛り」)の中途解約に伴う違約金の引下げ(上限1,000円の導入)だ。
これら2つの動きから生ずる追い風を着実につかまえることは、同社のメディア事業と通信事業にとって成長戦略の重要な1つになると考えられる。また、中核のネット型リユース事業にとっても、少なからぬポジティブインパクトをもたらす可能性があると弊社では考えている。すなわち同社の3事業すべてが恩恵を受けるということだ。そのロジックは以下のようなものだ。
SIMロック解除の義務化は2019年9月1日からスタートした。従来大手キャリアは、自社で販売した端末にロックをかけ、他のキャリア等のSIMカードでは当該端末を利用できないようにして顧客囲い込みをしていた。今回の措置では中古端末も含めてSIMロック解除が義務化された。
SIMロック解除が義務化されると、家庭内で眠っていた端末や、数は多くないものの事故物件の端末(いわゆる“赤ロム”端末)が、中古端末としての価値を持つことになる。また、今後機種変更する際には手持ちの端末は売却・換金することが一般化すると考えられる。この結果、リユース市場での中古端末流通量が増大すると考えられ、同社のネット型リユース事業はその恩恵を受けると期待される。
これらの実際の動きとしては、どこで中古端末を売却できるか、どこが最も高く買い取ってくれるか、といった情報需要が発生する。それに対しては同社のメディア事業が恩恵を受けると期待される。具体的には「iPhone格安SIM通信」内で提供している中古スマートフォン相場検索サービスが利用される(すなわちPV数が増加する)可能性がある。
さらには、積極的に中古端末と格安SIMを利用する機運の高まりにより、格安SIM選定の情報需要も生じるとみられ、その際には同じメディア事業の「SIMCHANGE」が「格安SIMスピードチェッカー」や「格安SIM比較診断」などのサービスを通じてPV数を伸ばすと期待される。
また、解約違約金については、2019年10月から現行の9,500円から上限1,000円へと大きく引き下げられた。2年縛りとその違約金の高値設定は、SIMロック同様、顧客囲い込みが主眼だった。今回の措置もまた囲い込みの壁を崩すものと言える。
違約金の上限1,000円の導入は、前述のSIMロック解除義務化(とそれに伴う中古端末の流通量増大)とあいまって、大手キャリアの契約者を格安SIMと中古端末に誘導する大きなエネルギーになると期待される。同社の通信事業においては、ネット型リユース事業を通じて中古端末を安定的に調達できる強みを生かして“リユース端末+格安SIMサービス”を従来事業の核として位置付け、注力してきている。まさに、ここに向けて追い風が吹く状況にあるということだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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