■中期経営計画
ファーストコーポレーション<1430>が事業エリアとしている1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の分譲マンション建設市場は、全国的に人口が減少するなかにあって、増加傾向をたどっているほか、同社のこの地域でのシェアは直近で2%程度であり、なお市場開拓の余地が広いと言えそうだ。
当面の事業環境について展望すると、大手ゼネコンは、大型都市再開発事業や2020年の東京オリンピック関連工事などで手持ち工事が豊富となっており、マンション建設請負に消極的な状況だ。
一般的に建設業界においては、全体的に工事量が減少すると、大手といえども中小規模の案件に手を伸ばすほか、採算を度外視するような形で受注を獲得する業者も出現するなど収益環境は一気に悪化する。そうした意味で、工事量が多い現在は、そうした厳しい状況を心配する必要がない。
今後のポイントになるのは、より収益力を高めるための大型案件の受注となる。そのためにも、用地確保に全力を注ぐ考えだ。
福岡支店を開設し九州に展開
他方、リスク要因もある。一時期、建設業界を苦しめた資材費の高騰は、このところ落ち着きを見せているものの、開発ラッシュや復興需要からくる慢性的な人手不足は一向に解消する気配がなく、状況によっては、営業費用の増加につながる要因として、人件費の高騰が収益を圧迫する可能性もある。
同社は、その解消策として、ゼネコン、デベロッパーなどとのM&Aを念頭に置く。人材育成には時間を要するため、現状では規模に応じた受注を心掛けているものの、必要に応じM&Aによる陣容増強に踏み切る。M&Aについてはコストパフォーマンスに留意し、慎重に行っていくとしている。
他方、将来の成長性を考えた上で、重要なポイントとなるのがエリアの拡大だ。その中で注目できるのが福岡支店の立ち上げ。同支店については、2018年4月にオープンした。当面は、許認可の関係で、当面は建築を外部に委託する不動産会社のような業務となるが、将来的には福岡周辺でも造注方式で案件を開拓する。施工の部分を除いた造注システムといったイメージだ。ここでも用地確保に力を注ぐ。
福岡のマンション市況は、アジアへの玄関口であるこの地域の人口が2038年まで増加が見込まれていることから、将来的なビジネスの展開を踏まえても、ここに支店を開設する意味は大きい。
リノベーション事業にも展開
エリアの拡大とともに取り組んでいるのが新規分野への進出。具体的にはリノベーション事業への取り組みだ。
リノベーション事業は、新耐震基準のマンションを1棟買いしてリノベーションを実施し、それを売却する。直近では、実際に1棟、契約を結んだ。当面は、不動産売上の一部としての位置付けとなるが、3年後には2,000百万~3,000百万円規模のビジネスに育てていく。
さらに、リノベーション事業では、高齢社員を生かす場とする。現在、同社の定年は70歳だが、60歳代半ばの社員を現場に配置するのは無理が生じるため、この新事業での戦力にする考えだ。まだ、取扱規模としては小さいながらも、徐々に収益源として寄与しており、今後の期待分野として注目できる。
2022年5月期を最終年度とする中期経営計画を策定
同社は、2022年5月期を最終年度とする中期経営計画を策定し、このほど公表した。それによると、2022年5月期に売上高24,784百万円、経常利益1,710百万円を目標に掲げている。
そのほか、収益面においては、完成工事総利益率12%超、売上高営業利益率7%超、財務面は、自己資本比率50%超維持、ROA(総資産経常利益率)15%超、ROE(自己資本純利益率)20%回復──をそれぞれ目標として掲げている。
今回の計画の大きなポイントとして、1)造注比率の回復、2)東京圏でのシェア拡大に注力、3)業容の拡大を支える体制の構築、4)高収益体質の追求──の4点を挙げている。この中で、造注システムは同社にとって成長の原動力となるため、コンスタントな用地確保が今後のカギとなりそうだ。
社歴は浅いものの、着実に実績を上げ、認知度も高まってきたことで、さらなる新規顧客の推進に努めていく。また、業容拡大のためには人材の育成が急務。そこで、積極的な採用による人員の拡充や、継続的な教育による全体のレベルアップを図る。さらに、設計及び工程の段階で効率化を追求する一方、施工品質を保つことによるコスト低減を実現し、規模と同時に収益性を高めていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
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ファーストコーポレーション<1430>が事業エリアとしている1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の分譲マンション建設市場は、全国的に人口が減少するなかにあって、増加傾向をたどっているほか、同社のこの地域でのシェアは直近で2%程度であり、なお市場開拓の余地が広いと言えそうだ。
当面の事業環境について展望すると、大手ゼネコンは、大型都市再開発事業や2020年の東京オリンピック関連工事などで手持ち工事が豊富となっており、マンション建設請負に消極的な状況だ。
一般的に建設業界においては、全体的に工事量が減少すると、大手といえども中小規模の案件に手を伸ばすほか、採算を度外視するような形で受注を獲得する業者も出現するなど収益環境は一気に悪化する。そうした意味で、工事量が多い現在は、そうした厳しい状況を心配する必要がない。
今後のポイントになるのは、より収益力を高めるための大型案件の受注となる。そのためにも、用地確保に全力を注ぐ考えだ。
福岡支店を開設し九州に展開
他方、リスク要因もある。一時期、建設業界を苦しめた資材費の高騰は、このところ落ち着きを見せているものの、開発ラッシュや復興需要からくる慢性的な人手不足は一向に解消する気配がなく、状況によっては、営業費用の増加につながる要因として、人件費の高騰が収益を圧迫する可能性もある。
同社は、その解消策として、ゼネコン、デベロッパーなどとのM&Aを念頭に置く。人材育成には時間を要するため、現状では規模に応じた受注を心掛けているものの、必要に応じM&Aによる陣容増強に踏み切る。M&Aについてはコストパフォーマンスに留意し、慎重に行っていくとしている。
他方、将来の成長性を考えた上で、重要なポイントとなるのがエリアの拡大だ。その中で注目できるのが福岡支店の立ち上げ。同支店については、2018年4月にオープンした。当面は、許認可の関係で、当面は建築を外部に委託する不動産会社のような業務となるが、将来的には福岡周辺でも造注方式で案件を開拓する。施工の部分を除いた造注システムといったイメージだ。ここでも用地確保に力を注ぐ。
福岡のマンション市況は、アジアへの玄関口であるこの地域の人口が2038年まで増加が見込まれていることから、将来的なビジネスの展開を踏まえても、ここに支店を開設する意味は大きい。
リノベーション事業にも展開
エリアの拡大とともに取り組んでいるのが新規分野への進出。具体的にはリノベーション事業への取り組みだ。
リノベーション事業は、新耐震基準のマンションを1棟買いしてリノベーションを実施し、それを売却する。直近では、実際に1棟、契約を結んだ。当面は、不動産売上の一部としての位置付けとなるが、3年後には2,000百万~3,000百万円規模のビジネスに育てていく。
さらに、リノベーション事業では、高齢社員を生かす場とする。現在、同社の定年は70歳だが、60歳代半ばの社員を現場に配置するのは無理が生じるため、この新事業での戦力にする考えだ。まだ、取扱規模としては小さいながらも、徐々に収益源として寄与しており、今後の期待分野として注目できる。
2022年5月期を最終年度とする中期経営計画を策定
同社は、2022年5月期を最終年度とする中期経営計画を策定し、このほど公表した。それによると、2022年5月期に売上高24,784百万円、経常利益1,710百万円を目標に掲げている。
そのほか、収益面においては、完成工事総利益率12%超、売上高営業利益率7%超、財務面は、自己資本比率50%超維持、ROA(総資産経常利益率)15%超、ROE(自己資本純利益率)20%回復──をそれぞれ目標として掲げている。
今回の計画の大きなポイントとして、1)造注比率の回復、2)東京圏でのシェア拡大に注力、3)業容の拡大を支える体制の構築、4)高収益体質の追求──の4点を挙げている。この中で、造注システムは同社にとって成長の原動力となるため、コンスタントな用地確保が今後のカギとなりそうだ。
社歴は浅いものの、着実に実績を上げ、認知度も高まってきたことで、さらなる新規顧客の推進に努めていく。また、業容拡大のためには人材の育成が急務。そこで、積極的な採用による人員の拡充や、継続的な教育による全体のレベルアップを図る。さらに、設計及び工程の段階で効率化を追求する一方、施工品質を保つことによるコスト低減を実現し、規模と同時に収益性を高めていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
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