今週のまとめ6月10日から6月14日の週

著者:MINKABU PRESS
投稿:2019/06/15 08:00
 10日からの週は、リスク材料が多く神経質な相場展開。様々なリスク材料が市場のムードを重くした。米中貿易戦争の様相は双方の強硬な姿勢に変化はみられず膠着状態。トランプ大統領はG20での習主席との会談にこぎつけられなければ関税措置を強めると脅している。中国側からも対抗姿勢が示されており、妥協の兆しはみられていない。加えて、香港では「逃亡犯条例」改正案に対するデモが激しくなっており、議会は審議を一時中断。16日にはあたらめて大規模デモ行進を行うとの報道がでている。中東ではホルムズ海峡でタンカーが攻撃を受け、原油価格が急騰する場面があった。地政学リスクが高まっている。また、イタリア財政問題が目下のEUの頭痛の種となっている。イタリア政府とEU側との隔たりは大きいもようで、制裁措置導入の脅威がちらついている。英国ではジョンソン氏の次期保守党党首の可能性が高まっており、強硬路線から合意なき離脱のリスクが警戒されている。一方、来週の米FOMC会合を控えて、市場には7月を中心に利下げ観測が広がっている。世界経済の成長鈍化への警戒感が根強いことが背景。株式市場にとってある程度の下支えとなっていた。ドル円は108円台での上下動。米利下げ観測が株式市場の下支えとなる一方で、リスク材料が上値を抑えている。クロス円はじり安。ドル円以外の通貨に対してドルは買いが優勢だった。ややリスク回避の動きが優勢な展開だった。


(10日)
 東京市場は、ドル円が底堅い動き。先週末は米雇用統計の弱さもあり107.80台まで下落したが、108.20近辺まで戻して週明けの市場を迎えた。週末に米政府が本日から実施予定となっていたメキシコからの全輸入品に対する関税実施を無期限先送りと報じられた。週明け東京市場では108円台半ばまで一段高。その後も午後にかけて108.60台へと水準を上げた。中国貿易収支で輸出は予想外のプラスとなったが、輸入が予想以上の減少し、豪ドル/ドルは0.70台割れに。ユーロドルは1.13割れ目前へと軟化。総じてドル高の動きとなった。その中で、メキシコペソは買われている。

 ロンドン市場は、ドル買いが優勢。欧州株や米株先物が堅調に推移しており、米債利回りも上昇。序盤を中心にリスク選好ムードも広がった。ドル円は108.72レベルまで高値を広げた。クロス円も買いが先行。ユーロ円は123円手前、ポンド円は138円台前半などへと上昇した。ただ、豪ドル円は東京市場からの売りの流れが継続し、上値が重かった。その後はポンド売りが目立つ展開になっている。4月の英月次GDPや同鉱工業生産などが予想を下振れする結果となり、売りを誘った。さらに、ハント英外相など一連の次期首相候補者らがEU離脱に前向きな発言を行っており、合意なき離脱への不透明感が再燃している。ポンドドルは1.26台後半へ、ポンド円は137円台後半へと下落。トランプ米大統領は、メキシコが合意事項をきちんと遂行しなければ、関税の復活もある得ると発言した。ただ、米株先物は時間外取引で底堅く推移しており、目立った反応はなかった。

 NY市場では、値動きが一服。トランプ大統領がメキシコへの関税発動を見送ったことで、市場のムードは更に改善しドル円には買戻しが入っているが、ロンドン序盤の108.70近辺を高値に上昇は一服、108円台半ばに落ち着いた。FRBの年内利下げ期待が非常に高まっており、市場の注目は既に利下げの有無よりも、時期と幅に移っている状況。米中の対立について出口が見えないこともドル円の上値を抑えた。ユーロドルは1.13を挟む振幅。米欧金融当局のハト派見通しが交錯している。ポンドは下げ一服も上値は重い。英月次GDPが2か月連続で縮小、製造業指標の弱さもあり軟調な展開だった。

(11日)
 東京市場は、午前中に円売りもその後は膠着に。ドル円は仲値前後に108.30台から108.60台へと上昇。その後は108.60近辺で膠着した。前日の上昇局面では108.70台までで上値を抑えられており、上値抵抗が意識された。ただ、株高の動きなどリスク警戒感は後退している。ユーロ円は122円台後半で堅調。上海株や香港株などアジア株がしっかり。中国人民元が前日の下落を解消するなどアジア売りの動きは一服している。

 ロンドン市場は、円売りが優勢。欧州株や米株先物が堅調に推移、米債利回りも上昇。リスク警戒感が後退した。ドル円は108円台半ばでサポートされると108.74レベルと前日高値を上回った。クロス円も総じて堅調。ユーロ円は123円台乗せ、ポンド円は138円台乗せとなった。英ILO雇用統計で賃金の伸びが予想ほど鈍化せずポンド買いの動きが広がった。ポンドドルは1.26台後半から一時1.2728レベルまで上昇。その後はNY市場での米生産者物価指数の発表を控えてドル買いに押し戻されたが、ロンドン序盤の上昇は維持。一連の英金融当局者らの議会証言では、EU離脱に焦点が当てられている。秩序立った離脱では想定より早く利上げが行われる可能性が指摘される一方で、合意なき離脱で明確な景気落ち込みがみられた場合には緩和の可能性があるとした。ただ、現時点では5月のインフレ報告の見通しにおおむね同意するとしていた。

 NY市場では、ドル円は108円台半ばでの揉み合い。トランプ大統領のメキシコ関税見送りをきっかけにリスク回避の雰囲気が後退したことが下支え。米中対立は継続も特段の悪材料も報じられずひと安心に。しかし、米株式市場が利益確定売りに押され、米10年債利回りも下げに転じたことからドル円も伸び悩んだ。ユーロドルは1.13台前半での推移。NY早朝にトランプ大統領の「対ドルでのユーロ安が米国を不利な状況に置いている」との発言が伝わり、ユーロ買いが強まる場面が見られたものの、一時的な反応に留まった。ポンドドルは朝方に一時1.26台に伸び悩む場面も見られたものの大きく下押しせず、1.27台に上昇した。EU離脱に関連した英政局の不透明感は続いている。ジョンソン前外相はEU離脱強硬派の急先鋒で、市場が最も警戒している合意無き離脱の準備もすべきと主張した。
 
(12日)
 東京市場は、総じて小動き。ドル円は108円台半ばで10銭程度の狭いレンジ。ユーロ円は122円台後半、ポンド円は137円台後半で弱保ち合い。ユーロドルやポンドドルにも目立った値動きはみられなかった。資源国通貨は軟調。豪ドル/ドルは0.69台半ば、豪ドル円は75円台前半へと軟化。NZドルやカナダドルも主要通貨に対して軟調だった。米利下げ観測が広がるなか、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を見極めたいとの気分が強い。市場では今回は利下げを見送り、7月会合で利下げに踏み切るとの観測が優勢。

 ロンドン市場は、円買いが優勢。欧州株や米株先物が売られ、米債利回りが低下、原油安など全般的に根強いリスク回避圧力がみられた。そのなかでポンドは一時上昇。ジョンソン前英外相が「合意なしのEU離脱を目指してはいない」と発言したことが好感され、ポンドドルは1.27台半ば、ポンド円は138円台前半に上昇する動きをみせた。一方、ユーロドルは序盤に買いが先行したものの、次第に売り圧力に押されて軟化。1.13台前半での取引。ユーロ円は123円が重く、122円台後半で下押し。市場での長期インフレ期待が最低水準となったことが話題になっていた。ビルロワデガロー仏中銀総裁は「現状の景気減速が悪化すれば、ECBは追加措置を講じる可能性」と述べた。ドル円は序盤に108.22レベルまで安値を広げ、その後は下げ一服。

 NY市場では、欧州通貨売りが目立った。ユーロドルは1.12台へと下落。トランプ大統領がドイツがロシア産原油をバルト海経由のパイプラインで調達するノルドストリーム2計画について、制裁措置を検討と報じられたことが背景。ポンドドルは1.26台へと下落。保守党党首選をにらむ中で高値圏での買いには慎重姿勢が見られた。ロンドン市場でのジョンソン前外相の合意なき離脱を目指しているわけではないとの発言の影響も薄れ、合意なき離脱懸念が広がる格好。欧州通貨売りドル買いの動きが中心で、クロス円の動きは限定的。ドル円は108円台半ばへと下げ渋り。序盤の米消費者物価指数が予想を下回ったことでややドル売りが入ったが、108.27レベルまでと限定的。原油相場の下落を受けてカナダドルが軟調。ドルカナダは1.33台に乗せた。
 
(13日)
 東京市場では、豪ドルの下落が円高に波及した。5月の豪雇用統計で失業率が5.2%と前回から横ばいだったことが事前に改善を予想していた市場での豪ドル売り圧力となった。豪ドル/ドルは0.69ちょうど付近に下落。豪ドル円は74円台後半まで下落し、1月以来の安値水準となった。ドル円は108.17付近、NZドル円は71円台前半、ユーロ円は122円台前半、ポンド円は137円前半まで軟化した。米中貿易戦争の激化が警戒されることや、香港で混乱が広がっていることも重石となった。ユーロドル1.12台後半、ポンドドル1.26台後半と前日の安値圏でもみ合った。

 ロンドン市場は、ドルが堅調。取引終盤に香港株がほとんどの下げを解消したことで、売り先行で取引されていた欧州株がプラスに転じた。リスク選好的な円売りとともに米債利回りの低下一服のドル買いも加わった。ドル円は108.50近辺へと反発した。小幅ではあるがその他通貨でもドル買いが優勢で、ポンドドルは1.2662レベル、豪ドル/ドルは0.6902レベルなどへ本日安値を広げた。ユーロドルは1.13近辺が重く、1.1284レベルに安値を広げた。トリア伊財務相は、EU財政目標を尊重することをユーロ圏の閣僚らに説明すると述べた。一方、EU副委員長は、イタリアはEU財政目標に届くために相当な改革措置が必要、と釘を刺している。英保守党党首選で、下院議員による第1回投票が実施されている。カナダドルが堅調。ホルムズ海峡でタンカーが攻撃を受けたとの報道に原油相場が急伸したことに反応した。スイス中銀は金融政策を予想通り据え置いた。3カ月LIBORに代わるを新たな政策金利を導入と発表している。

 NY市場で、ドル円は108円台前半を中心としたレンジ取引。序盤に108.54レベルまで買われたが、午後には売りが優勢になった。ホルムズ海峡沖の日本向けタンカーへの攻撃について、米国務長官がイランの責任と発言したこともあり、リスク警戒の動きが広がった。米株が反発したにもかかわらず、米債利回りは低下、NY原油相場の上昇などがドル円の上値を抑えた。ユーロドル、ユーロ円も上値が重かった。イタリア20年債発行などの報道に財政問題に対する警戒感が広がった。ポンドは動きにくかった。保守党党首選第1回投票が行われ、ジョンソン前外相が差をつけて一位となった。二位に穏健派のハント現外相が入った。原油高とともに買われたカナダドルは、NY市場では調整に押され、上昇一服。

(14日)
 東京市場は、小動き。ドル円は108円台前半に膠着した。来週の米FOMCを控えて模様眺めムードが強い。先週末の5月の米雇用統計で米利下げ観測が高まり、来週のFOMCに対する注目度が一気に増した。今晩は5月の米小売売上高が発表される。ユーロ円は122円台前半、ポンド円は137円台前半で小動き。ユーロドルは1.12台後半、ポンドドルは1.26台後半と、対ドルでも欧州通貨は動意薄。一方、オセアニア通貨は軟調。豪州やNZには他の主要国と比較して利下げする余地が多いことから、利下げ観測が強い現在のような局面では売られやすいとの見方があった。豪ドル円は74円台後半と、1月以来の安値を更新。NZドル円は70円台後半に下落。

 ロンドン市場は、円買いが優勢。欧州株が下落するなかで米債利回りが低下しており、リスク回避ムードが広がっている。16日に再び香港で大規模デモの計画があり、香港株が続落したことが影響したもよう。また、5月の中国鉱工業生産が予想を下回ったことも警戒感を広げた。ドル円は108円台前半で安値を広げている。クロス円も総じて軟調。ポンドは対ユーロでも売られている。昨日の英保守党党首選でジョンソン氏の圧倒的優位が示されたことで、合意なき離脱のリスクが再認識された面もあるようだ。ポンド円は一時137円割れ、ユーロも一時122円割れと連れ安。豪ドル円は74円台後半での弱い動き。

 NY市場は、朝方にドル買いが入る展開に。米小売売上高が強めに出たことで、来週の利下げは流石になりという雰囲気が強まり、ドル買いにつながった格好。債券利回りの上昇(債券価格の低下)なども見られ、影響の大きなものとなった。ドル円は108円台半ばで頭をいったん抑えられたが、対欧州通貨などでドル買いが続き、ドル円も午後に入って再びドル買いで108円台半ばを超えて週の取引を終えている。

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