■決算動向
1. 2019年9月期第1四半期決算の概要
イグニス<3689>の2019年9月期第1四半期の業績は、売上高が前年同期比4.2%増の1,343百万円、営業損失が340百万円(前年同期は247百万円の損失)、経常損失が361百万円(同250百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失が416百万円(同233百万円の損失)と増収ながら営業損失を計上した。ただ、営業損失の計上は、VR事業への先行費用によるものであり、計画どおりの進捗のようだ。
売上高は、オンライン恋愛・婚活サービス「with」の大幅な拡大(前年同期比でほぼ倍増)が増収に寄与した。市場全体も伸びているが、他社との差別化やプロモーション施策が奏功し、市場を大きく上回る成長を実現している。一方、リリースより4年が経過し、ライフサイクルの成熟期を迎えている「ぼくとドラゴン」は前年同期比で縮小。もっとも、利益重視の運営によりプロモーション費用を抑えていることから、利益面での貢献は依然として大きい。また、2018年12月12日に配信開始したネイティブゲームの新タイトル「でみめん」については、想定どおり着実に立ち上がってきたものの、第1四半期での売上貢献は期間的にわずかにとどまった。「その他」については、「TLUNCH」の非連結化※1や「U-NOTE」の事業譲渡※2による影響、過去の小規模アプリの減少等により減収となった。
※1 「TLUNCH」を運営するmellowが2018年9月期第4四半期より連結子会社から持分法適用関連会社に移行したことに伴うもの。
※2 2018年9月30日付で子会社のU-NOTEが情報メディア「U-NOTE」を株式会社PR TIMESへ事業譲渡したことによるもの。
損益面では、「ぼくとドラゴン」や「with」が利益貢献した一方、VR事業への先行費用のほか、新タイトル「でみめん」の立ち上げ費用(広告宣伝費等)により営業損失を計上。特に、VR事業への先行費用は年間で約10億円を計画(ほぼ均等に費用が計上される見通し)しており、第1四半期においても数億円規模の費用が投入されたようだ。
財務面では、2018年12月12日にVR事業への投資を目的として、新株発行(第三者割当)※により約12億円の資金調達を実施した。その結果、自己資本は前期末比20.4%増の2,716百万円に拡大。一方、総資産も「現金及び預金」や「有形固定資産」の増加により、前期末比14.8%増の5,343百万円となったが、自己資本比率は50.8%(前期末は48.5%)に若干改善した。なお、「有形固定資産」が前期末比51.1%増の447百万円に増加したのは、VR専属スタジオの新設等によるものである。
※第14回新株予約権の行使状況が芳しくないことを踏まえ、同社代表の資産管理会社等が資金提供を行ったものである。VR事業の成功に対する経営陣のコミットメント(自信)と見ることもできる。
2. 事業別の業績及び活動実績
(1) コミュニティ
「コミュニティ」の売上高は、前年同期比93.5%増の649百万円とほぼ倍増した。四半期推移で見ても、前四半期比15.5%増と順調に伸び続けている。注力するオンライン恋愛・婚活サービス「with」が、外部要因(社会的認知の高まり等に伴う市場の拡大)や内部要因(心理学を生かした最適なマッチング機能による差別化やプロモーションの強化等)により好調に推移。特に、テレビ番組での紹介や映画とのコラボイベント実施などが奏功したうえ、2018年7月末から開始したSMS認証によるマルチログイン機能が会員数の拡大に拍車をかけている。会員数は150万人、マッチング数も累計1,000万組を突破し、SNSカテゴリの売上ランキングでも上位を維持している。また、更なる成長加速に向けて大型アップデートも準備中であり、今後の動向が注目される。
損益面でも、積極的な広告宣伝費を投入しながらも、積み上げ型収益モデルであるため、利益率は売上高に連動して拡大してきた。最近では、広告やプロモーションによる流入だけでなく、口コミなどによる流入も増えており、会員獲得コストを下げる方向に働いていると考えられる。
(2) ネイティブゲーム
「ネイティブゲーム」の売上高は、前年同期比18.7%減の650百万円と縮小した。リリースから4年が経過し、成熟期に入ってきた「ぼくとドラゴン」への広告宣伝費を抑え、利益重視の運営を行ったことも影響している。ただ、それでも累計ダウンロード数は380万DLを突破し、プロダクト利益は高い水準を維持しており、利益面での貢献は依然として大きい。また、前四半期比では横ばいで推移しているもようであり、安定運営が続いていると評価することができる。今後も効果的なプロモーション展開や各種キャンペーン等により中長期での安定運営を目指す方針である。一方、2018年12月12日に配信開始した新タイトル「でみめん」については、第1四半期での売上貢献は限定的となったうえ、広告宣伝費の積極投入が利益を圧迫する要因となった。ただ、2019年1月末の月間ダウンロード数(累計)は20万DLを突破するとともに、重要指標である継続率も上々であり、想定どおり着実に立ち上がってきたと言える。
(3) その他
「その他」の売上高は、前年同期比71.7%減の43百万円と大きく縮小したが、四半期推移で見ると、前四半期比でおおむね横ばいで推移している。過去における小規模アプリの減少や「TLUNCH」(モビリティサービス・プラットフォーム)を2018年9月期第4四半期から非連結化したことや情報メディア「U-NOTE」の事業譲渡が影響。また、VR事業においては、「INSPIX」の開発加速とIP創出のプロジェクトに取組み、VRアイドルグループのライブビューイングやグッズ販売などで実績があったものの、本格的な収益貢献の段階には入っていない。その他のVR事業(順天堂大学との「慢性痛み刺激緩和」の研究)や新規事業(AI技術を活用した工場の検査工程自動化、オンライン診療対応医療機関向けSaaSの開発・提供)についても先行投資段階である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 2019年9月期第1四半期決算の概要
イグニス<3689>の2019年9月期第1四半期の業績は、売上高が前年同期比4.2%増の1,343百万円、営業損失が340百万円(前年同期は247百万円の損失)、経常損失が361百万円(同250百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失が416百万円(同233百万円の損失)と増収ながら営業損失を計上した。ただ、営業損失の計上は、VR事業への先行費用によるものであり、計画どおりの進捗のようだ。
売上高は、オンライン恋愛・婚活サービス「with」の大幅な拡大(前年同期比でほぼ倍増)が増収に寄与した。市場全体も伸びているが、他社との差別化やプロモーション施策が奏功し、市場を大きく上回る成長を実現している。一方、リリースより4年が経過し、ライフサイクルの成熟期を迎えている「ぼくとドラゴン」は前年同期比で縮小。もっとも、利益重視の運営によりプロモーション費用を抑えていることから、利益面での貢献は依然として大きい。また、2018年12月12日に配信開始したネイティブゲームの新タイトル「でみめん」については、想定どおり着実に立ち上がってきたものの、第1四半期での売上貢献は期間的にわずかにとどまった。「その他」については、「TLUNCH」の非連結化※1や「U-NOTE」の事業譲渡※2による影響、過去の小規模アプリの減少等により減収となった。
※1 「TLUNCH」を運営するmellowが2018年9月期第4四半期より連結子会社から持分法適用関連会社に移行したことに伴うもの。
※2 2018年9月30日付で子会社のU-NOTEが情報メディア「U-NOTE」を株式会社PR TIMESへ事業譲渡したことによるもの。
損益面では、「ぼくとドラゴン」や「with」が利益貢献した一方、VR事業への先行費用のほか、新タイトル「でみめん」の立ち上げ費用(広告宣伝費等)により営業損失を計上。特に、VR事業への先行費用は年間で約10億円を計画(ほぼ均等に費用が計上される見通し)しており、第1四半期においても数億円規模の費用が投入されたようだ。
財務面では、2018年12月12日にVR事業への投資を目的として、新株発行(第三者割当)※により約12億円の資金調達を実施した。その結果、自己資本は前期末比20.4%増の2,716百万円に拡大。一方、総資産も「現金及び預金」や「有形固定資産」の増加により、前期末比14.8%増の5,343百万円となったが、自己資本比率は50.8%(前期末は48.5%)に若干改善した。なお、「有形固定資産」が前期末比51.1%増の447百万円に増加したのは、VR専属スタジオの新設等によるものである。
※第14回新株予約権の行使状況が芳しくないことを踏まえ、同社代表の資産管理会社等が資金提供を行ったものである。VR事業の成功に対する経営陣のコミットメント(自信)と見ることもできる。
2. 事業別の業績及び活動実績
(1) コミュニティ
「コミュニティ」の売上高は、前年同期比93.5%増の649百万円とほぼ倍増した。四半期推移で見ても、前四半期比15.5%増と順調に伸び続けている。注力するオンライン恋愛・婚活サービス「with」が、外部要因(社会的認知の高まり等に伴う市場の拡大)や内部要因(心理学を生かした最適なマッチング機能による差別化やプロモーションの強化等)により好調に推移。特に、テレビ番組での紹介や映画とのコラボイベント実施などが奏功したうえ、2018年7月末から開始したSMS認証によるマルチログイン機能が会員数の拡大に拍車をかけている。会員数は150万人、マッチング数も累計1,000万組を突破し、SNSカテゴリの売上ランキングでも上位を維持している。また、更なる成長加速に向けて大型アップデートも準備中であり、今後の動向が注目される。
損益面でも、積極的な広告宣伝費を投入しながらも、積み上げ型収益モデルであるため、利益率は売上高に連動して拡大してきた。最近では、広告やプロモーションによる流入だけでなく、口コミなどによる流入も増えており、会員獲得コストを下げる方向に働いていると考えられる。
(2) ネイティブゲーム
「ネイティブゲーム」の売上高は、前年同期比18.7%減の650百万円と縮小した。リリースから4年が経過し、成熟期に入ってきた「ぼくとドラゴン」への広告宣伝費を抑え、利益重視の運営を行ったことも影響している。ただ、それでも累計ダウンロード数は380万DLを突破し、プロダクト利益は高い水準を維持しており、利益面での貢献は依然として大きい。また、前四半期比では横ばいで推移しているもようであり、安定運営が続いていると評価することができる。今後も効果的なプロモーション展開や各種キャンペーン等により中長期での安定運営を目指す方針である。一方、2018年12月12日に配信開始した新タイトル「でみめん」については、第1四半期での売上貢献は限定的となったうえ、広告宣伝費の積極投入が利益を圧迫する要因となった。ただ、2019年1月末の月間ダウンロード数(累計)は20万DLを突破するとともに、重要指標である継続率も上々であり、想定どおり着実に立ち上がってきたと言える。
(3) その他
「その他」の売上高は、前年同期比71.7%減の43百万円と大きく縮小したが、四半期推移で見ると、前四半期比でおおむね横ばいで推移している。過去における小規模アプリの減少や「TLUNCH」(モビリティサービス・プラットフォーム)を2018年9月期第4四半期から非連結化したことや情報メディア「U-NOTE」の事業譲渡が影響。また、VR事業においては、「INSPIX」の開発加速とIP創出のプロジェクトに取組み、VRアイドルグループのライブビューイングやグッズ販売などで実績があったものの、本格的な収益貢献の段階には入っていない。その他のVR事業(順天堂大学との「慢性痛み刺激緩和」の研究)や新規事業(AI技術を活用した工場の検査工程自動化、オンライン診療対応医療機関向けSaaSの開発・提供)についても先行投資段階である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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