[資源・新興国通貨2/25-3/1の展望]南アフリカランドへの下落圧力は弱まる可能性も・・・
豪ドル
2月19日のRBA(豪中銀)議事録(2/5開催分)では、「政策を目先、変更する強い根拠はない」としつつ、「(政策)金利が最終的に上昇、あるいは低下するシナリオは、以前よりも均衡している」との見方が示されました。また、RBAが豪住宅市場への懸念を強めていることも議事録で判明しました。
市場では、豪住宅価格の下落や世界経済の減速を背景に、RBAの利下げ観測があります。利下げ観測は今後も豪ドルの上値を抑える要因になりそうです。
21日に、「大連港(中国)の税関当局が豪州産石炭の輸入を禁止した」と報じられたことで、豪ドルが急落しました。石炭は豪州の主力輸出品であり、一般炭と原料炭の2割強が中国向けです。中国が豪主産石炭の輸入を禁止すれば、豪経済に打撃を与えかねないためです。フライデンバーグ豪財務相は22日、その報道を否定しましたが、豪州と中国の関係には引き続き注意は必要です。
豪ドルについては、米中通商協議の行方にも目を向ける必要があります。市場では通商協議について楽観的な見方もあるようです。それだけに、協議で目立った進展がみられなければ失望感も大きくなり、市場ではリスク回避の動きが強まり、豪ドルには下落圧力が加わる可能性があります。
NZドル
NZドルは今週(2/18の週)、対米ドルで約2週間ぶり、対円で約2カ月ぶりの高値を記録しました。RBNZ(NZ中銀)の利下げ観測の後退や、米中通商協議の進展期待がNZドルの支援材料となりました。
来週(2/25の週)のNZドルは、米中通商協議の行方に左右される展開になりそうです。通商協議で目立った進展がみられれば、NZドルに上昇圧力が加わりやすいと見られる一方、進展がなければNZドルには下落圧力が加わる可能性があります。
来週発表されるNZの経済指標は、10-12月期小売売上高(25日)、1月貿易収支(27日)、1月住宅建設許可件数(3/1)がありますが、その結果に対するNZドルの反応は長続きしない可能性もあります。
カナダドル
ポロズBOC(カナダ中銀)総裁は2月21日、「政策金利をいつかは中立水準に引き上げる必要がある」と述べ、追加利上げを示唆しました。その一方で、「中立水準に引き上げるまでの道筋の不確実性は極めて高くなっている」と語り、追加利上げを急がない姿勢も示しました。
ポロズ総裁はBOCが政策金利を据え置き続けている理由について、経済指標がマチマチなためとし、「将来のいかなる政策変更もデータ次第」と強調しました。
カナダの12月小売売上高が2月22日、1月CPI(消費者物価指数)が27日、10-12月期GDPが3月1日に発表されます。それらが堅調な結果になれば、市場ではBOCの利下げ観測が高まる可能性があります。その場合、カナダドルの上昇要因になりそうです。
カナダドルは原油価格の動向も重要です。米WTI先物(原油価格)は約1カ月半にわたり、1バレル=50-60ドルのレンジで上下動を繰り返しており、目先の方向感が乏しい状況です。主要産油国の協調減産による供給減が下支えする一方、世界経済の減速による需要減への懸念が上値を抑えています。原油価格の方向感が乏しい状況は当面続く可能性がありますが、仮に60ドルを上回る、あるいは50ドルを下回れば、抜けた方向に勢いが加速する可能性もあります。カナダドルにとって、原油高はプラス材料、原油安はマイナス材料です。
トルコリラ
TCMB(トルコ中銀)は2月16日、市中銀行のトルコリラ建て預金準備率を1%引き下げました。TCMBによると、この措置によって33億トルコリラと23億米ドル相当の流動性が銀行システムに供給されます。
チェティンカヤTCMB総裁は14日、「市場の変動を和らげるために流動性措置が実施される可能性はある」と述べ、今回の預金準備率の引き下げを示唆したうえで、「流動性措置は金融政策スタンスに関する直接的なシグナルではない」と語っていました。ただ、市場では、預金準備率の引き下げは引き締め的な金融政策スタンスを弱める前兆との見方もあります。
こうした見方に加え、トルコ経済の先行き懸念も市場にはあります。トルコリラは目先、上値が重い展開になりそうです。トルコの12月の鉱工業生産(14日発表)は前年比9.8%減と4カ月連続のマイナスを記録。2月消費者信頼感指数(20日発表)は57.80と1月の58.20から低下し、2018年10月以来の低水準となりました。
トルコでは3月31日に統一地方選が実施されます。統一地方選に向けて、エルドアン大統領がバラマキ的な政策を打ち出す、あるいはTCMBに対する利下げ圧力を一段と強めるとの懸念が市場には根強くあります。エルドアン大統領の言動には引き続き要注意です。
南アフリカランド
南アフリカ政府は2月20日、エスコムに対して3年間で690億ランド(約5520億円)の支援を行うと発表しました。エスコムは国内電力の9割以上を供給する国営電力会社。約4200億ランド(約3.36兆円)もの多額の債務を抱え、経営危機に陥っています。エスコムは政府に対して1000億ランドの債務引き受けを要請していましたが、政府はそれを拒否しました。
市場では、政府がエスコムの債務を引き受ければ、ムーディーズ(米格付け会社)が南アフリカの格付けを引き下げるとの懸念がありましたが、その懸念は後退しました。ムーディーズは3大格付け会社の中で唯一、南アフリカの格付けを投資適格級に位置付けています(ただし、投資適格級最低の「Baa3」)。
エスコムの経営状況をめぐる懸念は今後も残存するとみられ、引き続き注意は必要です。ただ、目先については南アフリカの格下げ懸念が後退したことで、南アフリカランドへの下落圧力は和らぐ可能性もあります。
配信元: