S&P500月例レポート(2019年2月配信)

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

THE S&P 500 MARKET: 2019年1月
●株式市場は政府機関の閉鎖に無関心

 12月としては1931年(-17.48%)に次ぐ下落率を記録した2018年12月(-9.18%)に続き、年明けの2019年1月のS&P 500指数は7.87%上昇となり、1月としては1987年(13.18%上昇、ただし同年10月は-21.76%)以降で最も高い上昇率を記録し、「1月の相場動向はその年の相場の方向性と一致する」との期待感が高まりました。過去の実績によると、この格言の実現確率は71.1%です。また、ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は1月に7.17%上昇し、1981年に付けた8.01%以来の高水準となりました。

 株式市場と米国政府は互いに競い合うように、「数量化できるが、非科学的な」機能不全状態に陥っています。すなわち、市場の機能不全は経済や企業業績の方向性に確信が持てないことに起因し、政府の機能不全は党利党略を最優先にしている(あるいは、そうしなくてはならない)ことが原因のようです。

 1月の株式市場は7.87%と大きく値上がりし、2018年12月24日の底値からの上昇率は15.01%となり、弱気相場とは一線を画すと同時に、調整局面からも抜け出しました。この結果、9月の最高値からの下落率が7.73%のところまで戻って来ました。空売り筋だけが7%も上昇したことに大いに不満を感じているようですが、1月の相場に関しては「1月の動向がその年の方向性を左右する」という1929年以来脈々と受け継がれる格言があり、その実現確率は71%であることが1月の大幅上昇をなお一層喜ばしいものにしています。

 とはいえ、ここ数年を見ると格言通りの展開にならない年が多くなっています。記憶に新しいところでは、2018年は1月に5.62%上昇しましたが、通年では6.24%下落しました。2016年は1月に5.07%値下がりしたものの、年間では9.54%の上昇でした。さらに、2014年も1月は3.24%下落でしたが、終わってみればその年は11.39%上昇しました。このように見ていくと、おそらく奇数年は格言通りになるのでしょう。そして今年はすでに、奇数年にみられるような相場展開になると思われます。

 1月は2つの大きなイベントが注目されました。もちろん、他のイベントが重要でないというわけではありませんが、1つは相場に影響を与え、もう1つは材料視されませんでした。

 メディアを賑わせたものの材料視されなかったイベントは政府関連の問題で、現在「ハーフタイム」中ですが、今後は材料視される可能性があります。後方では煙が立ち上り、政治家(ローマの皇帝ネロのごとき)が時間を浪費する中、政府機関の閉鎖が続きました。ようやくトランプ大統領と議会は35日間続いた政府機関の一部閉鎖を解除することで合意しました。ただし、2018年12月22日から始まった閉鎖が完全に解除されたわけではなく、あくまで2月15日までの3週間の限定措置です。ちなみに、政府機関が2日以上閉鎖するのは今回で16回目となりますが、過去15回の平均閉鎖期間は8.2日でした。この応急措置により政府機能が再開し、連邦職員の給与が支払われ、経済指標の公表も行われることになります(新たな公表スケジュールはまもなく発表される予定)。また、大統領の一般教書演説も2月5日に実施される模様です。

 しかし、最も重要なことは、トランプ大統領が言うように、3週間後に再び政府機関が閉鎖されるか、もしくはメキシコ国境の壁の建設着手に必要な予算確保のために大統領が非常事態宣言を発令する、というような展開を回避するための政治的駆け引きの時間が確保されたことです。政府機関の再開に対するウォール街の反応はと言えば、35日間閉鎖されていた時と同様に薄いもので、話題にはなりましたが、材料視されることはありませんでした。一時的とはいえ政府機関が再開されたことで、政府は事態の打開に向けた時間的余裕を手にすることができましたが、これまでと同様に、国民に対して見せ掛けのアピールを繰り返しながら期限ぎりぎりまで交渉が続くことになるでしょう。それまでは、実体経済や党の支持基盤に向けて時折、市場の反応をうかがう行動に出ると思われます。市場関係者にとっては、公表が遅れていた経済指標が揃い始めることになり、情報の新鮮さは薄れていますが、依然として重要な意味を持っています。

 もう1つのイベントは、市場関係者が古くから重視している企業の決算発表です。発表された業績やこの時期頻繁に聞かれる言い訳(2月5日は中国の春節、トランプの一般教書演説日、さらに私の誕生日等々)に、市場は必ずしも納得していないかもしれません。そして、業績予想は過去に遡及適用できる場合にのみ利益を生むものだとしても、企業業績は分析や数量化の対象であり、売買の判断材料として欠かせないものです。

 S&P 500指数構成企業のうち、時価総額で半分以上の企業が決算発表を終えた現段階で、2018年第4四半期の業績は71.5%の企業が事前予想を若干上回りました。その理由として、企業が当初から見通しを低めに公表していたことが指摘されていますが、それでもPER信者を動揺させるほど低く見積もってはいませんでした。実際の第4四半期の利益(事前予想は前期比-5.8%)は過去最高となった第3四半期を下回りましたが、問題視されるほどではないようです。

 むしろ懸念されるのは2019年通期の予想で、現時点では前年比7.8%増ですが、2018年末時点では同9.4%増、2018年9月は同12.1%増でした。一方、PERは許容できるレンジに収まっており、株価もPERが大きくブレない水準で推移してきました(2018年第4四半期の相場は軟調でしたが、2019年1月は堅調)。目下の2019年の予想PERは16.1倍ですが、2018年末時点では14.6倍、2018年9月は16.5倍でした(第4四半期は低調、1月は良好)。EPSに市場全体の注目が集まりましたが、足元の売上高は引き続き好調で、増加基調を維持しながら過去最高を更新中です。とはいえ、一部のセグメントでは売上高の伸びの鈍化が始まったようです。

 2月は引き続き、政府の動向と決算発表(実績および予想)に注目が集まるとみられます。しかし、バレンタインデー翌日の2月15日に状況が一変する可能性があります。過去の数字をひも解くと、57.4%の確率でバレンタインデーに株価が下落しています。現時点で、ウォール街は大統領と議会が合意すると考えています。おそらく状況は好転しないものの、とにかく合意だけはすると予想しています(そう考えるのを止めた場合、株価の下落が教えてくれるはずです)。

 その後、決算発表を行う会社が減少し始めると(同時に、業績予想の下方修正も減ることを願います)、市場の関心事は、3月1日の対中貿易協議の期限(トランプ大統領はそれまでに合意できると述べていますが、交渉期限がさらに延期されるとの観測も出ています)、予算(両党とも自らの党利党略を優先する姿勢を強めるでしょう)、税還付による短期的な成長押し上げの可能性(長期的な効果はとうてい期待できないと思われます)に移る可能性があります。

 過去の実績を見ると、1月は63.3%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は4.13%、下落した月の平均下落率は3.96%、全体の平均騰落率は1.17%の上昇となっています。2月は53.3%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は2.88%、下落した月の平均下落率は3.34%で、全体の平均騰落率は0.02%の下落となっています(市場はこれまで52.8%の確率で上昇していますが、バレンタインデーに上昇した確率は42.6%にとどまっています)。今後のFOMCのスケジュールは、3月19日-20日、4月30日-5月1日、6月18日-19日、7月30日-31日、9月17日-18日、10月29日-30日、12月10日-11日、2020年は1月28日-29日となっています。

 1月の相場動向はその年の相場の行方を占う尺度として有効で、71.1%の確率で的中しています。今年1月は7.87%上昇し、1月としては1987年の13.18%上昇以来の高い上昇率となりました。ちなみに2018年は1月の5.62%上昇にもかかわらず、通年では6.24%下落しました。

●主なポイント

 ・1月のS&P 500指数は、12月(9.18%下落、12月としては1931年の17.48%下落以来の最低)から7.87%上昇し、1月としては1987年(13.18%上昇、ただし同年10月は21.76%下落)以来の上昇率を付けたことから、「1月の相場動向はその年の相場の方向性と一致する」との期待感が高まっています(71.1%の確率で的中)。

 ・1月のS&P 500指数は2,704.10で取引を終え、12月末の2,506.85から7.87%上昇しました(配当込みのトータルリターンはプラス8.01%)。12月は9.18%の下落でした(同マイナス9.03%)。1月の上昇により、S&P 500指数は調整モードから抜け出し(弱気局面は小休止)、終値ベースの直近高値(2018年9月20日の2,930.75)から7.73%下回る水準まで戻りました。過去3カ月間では0.28%下落(同プラス0.26%)、過去1年間では4.24%下落(同マイナス2.31%)、2017年末からは1.14%上昇(同プラス3.28%)、2016年11月8日の大統領選当日(終値2,139.56)以降では26.39%上昇となっています(同プラス32.09%、年率換算でそれぞれプラス11.08%、13.30%)。ダウ平均は24,999.67で1月の取引を終え、12月末の23,327.46から7.17%上昇しました(配当込みのトータルリターンはプラス7.29%)。1月としては8.01%上昇した1989年以来の上昇率を付けました。ダウ平均は、12月には8.66%下落しました(同マイナス8.59%)。過去3カ月間では0.46%下落(同プラス0.14%)、過去1年間では4.40%下落しました(同マイナス2.19%)。

 ・米国10年国債の利回りは12月末の2.69%から低下して2.64%で月を終えました(2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。

 ・英ポンドは12月末の1ポンド=1.2754ドルから1.3110ドルに上昇し(同1.3498ドル、同1.2345ドル)、ユーロは12月末の1ユーロ=1.1461ドルから1.1448ドルに下落しました(同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は12月末の1ドル=109.58円から108.89円に上昇し(同112.68円、同117.00円)、人民元は12月末の1ドル=6.8785元から6.7004元に上昇しました(同6.5030元、同6.9448元)。

 ・原油価格は12月末の1バレル=45.81ドルから上昇して54.13ドルで月を終えました(同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は12月末の1ガロン=2.358ドルから下落して2.343ドルで月末を迎えました(同2.589ドル、同2.364ドル)。

 ・金価格は12月末の1トロイオンス=1,284.70ドルから1,324.80ドルに上昇して月を終えました(同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。

 ・VIX恐怖指数は12月末の25.42から低下して16.57で月末を迎えました。月中の最高は28.53、最低は17.17でした(同11.05、同14.04)。

 ・2018年第4四半期決算は59%の企業が発表を終えており、営業利益は前四半期比5.8%減(12月時点の2.3%減から低下)、前年同期比15.2%増と推測され、2018年通年では前年比24.8%の増益が見込まれます。

 ・世界最大の時価総額をめぐるAmazon、Microsoft、Appleの戦いは続いており、1月はAmazonが8,400億ドル(浮動株調整前時価総額、12月は7,340億ドル)で首位となり、第2位はMicrosoftで時価総額は8,020億ドル(同7,800億ドル)、Appleは第3位で7,870億ドル(同7,490億ドル)でした。指数ベースではMicrosoft、Apple、Amazonの順となります。

 ・ビットコインは12月末の3,741ドルから下落して3,442ドルで月を終えました。月中の最高は4,156ドル、最低は3,411ドル でした(2017年末は13,850ドル、2016年末は968ドル)。

 ・1年後の目標値は、S&P 500指数が3,055(現在値から12.98%上昇、12月末時点の目標値は3,153)、ダウ平均は27,884ドルとなっています(同11.54%上昇、28,865ドル)。

◇トランプ大統領と政府高官

 ・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩最高指導者は、 2018年6月にシンガポールで行われました第1回首脳会談に続き、2月に2度目の会談を行う予定です。

 ・米国と中国は徐々にではあるものの貿易問題についての協議を続けました。より上級ランクの官僚が会議に携わるようになり、トランプ大統領は中国の劉鶴副首相と(ワシントンで)貿易問題について会見しました。両国は3月1日の追加関税の期限まで交渉を続けます。合意を予想する声はほとんど聞かれませんが、交渉が継続中であることから、ウォール街の多くは両国が2月に、中国製品に新たに課される500億ドルの関税の発動を延期することで合意するとみています(免責事項:これは政治問題であり、ウォール街は専門外です)。トランプ大統領が金正恩最高指導者との会談後に、習近平国家主席と2月に会談する可能性があり、交渉が進行中です。

◇各国中央銀行の動き

 ・国際通貨基金(IMF)は2019年の世界経済の成長率予測を2018年10月発表の3.7%から3.5%に下方修正し、同時に2019年の欧州の経済成長率を従来の1.9%から1.6%に引き下げました(ドイツについては1.9%から1.3%に下方修正)。中国と米国はそれぞれ6.2%と2.5%に据え置きました。

 ・日銀は予想通り、金利(短期金利はマイナス0.1%)と景気刺激策を据え置く一方、原油価格の下落を理由として、2019年度(2019年4月~)のインフレ率予想を従来の1.4%から0.9%に引き下げました。

 ・欧州中央銀行(ECB)は予想通り金利を据え置きましたが、ドラギ総裁は景気が今や下降していると警告し、2019年中は金利を据え置く考えを示しました。

 ・米連邦公開市場委員会(FOMC)は1月の会合で金利を据え置き(全会一致)、今後の利上げを棚上げして「忍耐強くなれるだろう」と表明し、米国経済に対する見方を「力強い」から「底堅い」に下方修正しました。また、米連邦準備制度理事会(FRB)は4兆ドルの保有資産の縮小に関して最新のガイダンスを発表し(これまでは、満期を迎える証券の再投資を毎月500億ドル減らしています)、「バランスシートの正常化終了に向けて、詳細を修正する用意がある」ことを示しました。

◇企業業績

 ・時価総額で全体の57.7%が決算発表を終えた時点で、利益は最近になって下方修正された予想を上回り、売上高は予想より好調で四半期としての過去最高を更新する見込みです。これまでのところ、216銘柄が決算を発表し、事前予想を上回ったのが154銘柄(71.3%)、予想を下回ったのが51銘柄、予想通りだったのが11銘柄となっています。売上高では215銘柄中135銘柄が予想を上回っています(62.8%)。

 ・現在、2018年第4四半期の営業利益は過去最高となった2018年第3四半期と比べて5.8%減(先週時点は2.6%減)、前年同期比では15.2%増(2018年第1~第3四半期累計は前年同期比28.6%増)になると予想されています。2018年通年の営業利益は前年比24.9%増(大半は減税効果による)、2019年は同7.8%の増益が予想されています(市場参加者には納得いかないことですが)。2018年第4四半期の売上高は過去最高を更新する見込みで、前期比2.5%増、前年同期比6.2%増と予想されています。

◇個別銘柄

 ・iPhoneメーカーのApple(AAPL)が中国の需要と取引高の減少を理由として、2019年第1四半期(2018年9-12月)の売上高予想を過去15年間で初めて下方修正し、その後、自動運転車部門(プロジェクト・タイタン)に携わる従業員200人の削減を発表したことを受けて、株価は2018年10月3日に付けた終値での最高値232.07ドルから28.3%安で1月の取引を終えました。1月末に発表された決算は会社予想を小幅上回ったものの 、今後の業績見通しは市場予想を下回りました。ただ、同社の成長に対する投資家の懸念がかなり高まっていたため、Appleの業績発表と米中の貿易情勢は改善しているというコメントは投資家にとって安心材料となりました。

 ・百貨店大手のMacy’s(M)はホリデー商戦の売上高が予想を下回ったため(出足は好調でした)、業績見通しを下方修正しました。

 ・S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは地方銀行のFirst Republic Bank(FRC)と医療機器メーカーのTeleflex(TFX)をS&P 500指数に追加し、Dominion Energy(D)に買収されるSCANA(SCG)と破産法申請を検討している電力・天然ガス大手のPG&E(PCG)を除外しました。

◇利回り、金利、コモディティ

 ・米国10年国債の利回りは12月末の2.69%から低下して2.64%で月を終えました(2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。

 ・英ポンドは12月末の1ポンド=1.2754ドルから1.3110ドルに上昇し(同1.3498ドル、同1.2345ドル)、ユーロは12月末の1ユーロ=1.1461ドルから1.1448ドルに下落しました(同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は12月末の1ドル=109.58円から108.89円に上昇し(同112.68円、同117.00円)、人民元は12月末の1ドル=6.8785元から6.7004元に上昇しました(同6.5030元、同6.9448元)。

 ・原油価格は12月末の1バレル=45.81ドルから上昇して54.13ドルで月を終えました(同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は12月末の1ガロン=2.358ドルから2.343ドルに下落して月末を迎えました(同2.589ドル、同2.364ドル)。

 ・金価格は12月末の1トロイオンス=1,284.70ドルから1,324.80ドルに上昇して月を終えました(同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。

 ・VIX恐怖指数は12月末の25.42から低下して16.57で月末を迎えました。月中の最高は28.53、最低は17.17でした(同11.05、同14.04)。

◇世界の株式市場

 ・1月の世界の株式市場は12月の7.36%の急落から一転して7.97%と大幅に上昇し、新たな局面に入りました。世界の48の市場のうち47市場が上昇しました。

 ・1月の上昇はそれ以前の下落(2018年第4四半期は13.55%下落)からの反動という見方が大半で、潮目が変わったと見る向きは少数でした。ただし、いずれの見方をするにせよ、市場参加者は景気に対する眼前の懸念や問題を認識しています。中国の経済指標が減速のシグナルを発し、世界の貿易問題が解決に向けて前進しているとはいえ依然として未解決である中、投資家の不安は高止まりの状態にあり、今や信頼感が低下しているようです。

 ・世界の株式市場は12月に7.36%下落した後で1月は7.97%と大幅に上昇しました(11月は1.38%上昇と、10月の7.95%下落から反発)。米国の株式相場はさらに好調で(1カ月で7.95%の下落と比べると議論の余地はありません)8.47%上昇し、米国を除くグローバル市場は7.41%上昇しました。過去3カ月間では、グローバル市場は1.41%上昇とプラス圏に入り、米国市場の0.06%の下落を除外すると、グローバル市場は3.13%の上昇でした。過去1年間では、グローバル市場は9.63%下落しましたが、米国の(より小幅な)4.14%の下落を除けば、15.18%の下落でした。より長期的な指標は米国がアウトパフォームしていることを引き続き示しており、過去2年間のグローバル市場のリターンは米国(17.74%)を含めれば12.93%、米国を除くと7.89%、過去3年間のリターンは31.44%、米国(40.38%)を除くと22.41%でした。

 ・S&Pグローバル総合指数の時価総額は1月に3兆7,680億ドル増加しました(12月は3兆9,770億ドル減少、2018年通年では6兆7,870億ドル減少)。米国以外の市場は1月に1兆6,390億ドル増加(同1兆990億ドル減少、同4兆3,270億ドル減少)、米国市場は2兆1,290億ドル増加しました(同2兆8,780億ドル減少、同2兆4,600億ドル減少)。

 ・1月のまとめ

  ⇒世界の株式市場は1月に7.97%上昇しました。米国市場は8.47%上昇、米国を除く世界市場は7.41%上昇でした。過去3カ月では、世界市場は1.41%上昇、米国の0.06%下落を除くと3.13%上昇でした。過去1年では、世界市場は9.63%下落、米国の4.14%下落を除くと15.18%下落しました。

  ⇒新興国市場は1月に7.72%上昇、過去3カ月では9.44%上昇、過去1年では16.54%下落しました。

  ⇒先進国市場は1月に8.00%上昇、過去3カ月では0.56%上昇、過去1年では8.80%下落しました。米国を除くと、1月は7.33%上昇、過去3カ月は1.49%上昇、過去1年は14.82%下落となっています。

 ・11セクター全てが上昇する中で(12月は全11セクターが下落、11月は9セクターが上昇)、セクター間のリターンのばらつきは小さくなりました。パフォーマンスが最高のセクター(資本財・サービス、11.36%上昇)と最低のセクター(公益事業、3.37%上昇)の騰落率の差は7.99%で、12月の8.51%から縮小しました。2018年通年では11セクター全てが下落し、パフォーマンスが最高のセクターと最低のセクターの騰落率の差は25.19%でした。

 ・新興国市場は1月に7.72%上昇し(12月は2.80%下落)、過去3カ月のパフォーマンスは9.44%上昇、過去1年では16.54%下落、過去2年では13.95%上昇、過去3年では40.18%上昇となりました。

  ⇒1月は23市場のうち22市場が上昇し、上昇した市場の数は12月の8市場から増加しました(11月は11市場が上昇)。上昇率が最も高かったのはブラジルで1月に17.58%上昇しましたが、過去1年のパフォーマンスは依然として2.99%下落となっています。第2位は僅差でトルコの17.48%上昇(過去1年では36.84%下落)、第3位はコロンビアの14.35%上昇(同15.41%下落)でした。パフォーマンスが最も悪かったのはインドの3.11%下落で、新興国市場の中で唯一、1月に下落しました(同16.36%下落)。次いでマレーシアの2.22%上昇(同16.70%下落)、台湾の2.75%上昇(同16.14%下落)となりました。

 ・先進国市場は1月に全体で8.00%上昇し、米国を除く先進国市場のパフォーマンスは7.33%上昇でした。1月は25市場全てが上昇しました(12月は25市場全てが下落、11月は13市場が上昇)。

  ⇒先進国市場は1月に8.00%上昇し(12月は7.85%下落、11月は1.05%上昇)、米国を除くと7.33%上昇しました(12月は5.42%下落)。過去3カ月のパフォーマンスは0.56%上昇(米国を除くと1.49%上昇)、過去1年では8.80%下落(米国を除くと14.82%下落)となりました。上昇率が最も高かったのはカナダで1月に13.02%上昇しましたが、過去1年のパフォーマンスは依然として9.41%下落となっています。第2位はイスラエルの10.89%上昇(過去1年では2.33%上昇)、第3位はオーストリアの9.84%上昇(同25.18%下落)でした。パフォーマンスが最も悪かったのはデンマークの4.38%上昇(同15.00%下落)、次いでニュージーランドの5.51%上昇(同3.48%下落)、日本の5.81%上昇(同13.94%下落)となりました。注目すべき点として、英国は1月に7.70%上昇(同14.16%下落)、ドイツは6.79%上昇(同23.58%下落)でした。

●S&P 500指数

 S&P 500指数は12月の9.18%下落(12月としては、14.53%下落した1931年以来の低水準)から180度方向転換し、7.87%(配当込みのトータルリターンはプラス8.01%)と力強く上昇しました。この上昇で調整モードから抜け出し、終値での最高値から7.73%下回る水準まで戻し、弱気局面は小休止となりました。今回の反落は「最近の上昇相場の反動」との見方が多く、「終わりが始まる前の上昇」との意見は少数派で(悲観論者は常にいます)、下落基調に歯止めがかかりました。市場は引き続き不安定とはいえ以前より変動が小さくなる中、市場を一変させた要因について議論が重ねられています。

 その一方で、市場は政治家の動向には注意を払わず、政府機関の閉鎖を注視して話題にしたものの材料視しなかったことは一つの共通した見方だったようです。市場、あるいは少なくとも取引で注目されたのは決算発表で、市場予想を上回れるように予想数字をかなり引き下げていたと思われます。決算や業績見通しは好調とは言えないものの、予想ほど「悪くはなく」、中国を言い訳に頻繁に引用していますが、市場では全般的な景気減速を主として懸念しています。これまでのところ、決算の明るいポイントは、売上高の緩やかな増加が続いていることで(やっとのことで)、売上高は四半期の過去最高を更新する状況にあります。

 S&P 500指数の時価総額の57.7%の企業が決算発表を終えた段階で、利益は引き下げられていた予想を上回り、売上高も予想より好調で、四半期の過去最高を更新すると予想されます。216銘柄が発表済みで、利益が予想を上回ったのは154銘柄(71.3%)、下回ったのは51銘柄、予想通りは11銘柄です。売上高では、215銘柄中135銘柄(62.8%)が予想を上回りました。

 現時点の予想では、第4四半期の利益は過去最高だった第3四半期から5.8%減(先週時点では2.6%減)、前年同期比では15.2%増(2018年第1~第3四半期累計は前年同期比28.6%増)が見込まれます。2018年通年の営業利益は前年比24.9%増(大半が減税効果による)、2019年は同7.8%増と予想されます(市場は納得していないかもしれません)。売上高は前期比2.5%増、前年同期比6.2%増で、過去最高の更新が予想されます。

 S&P 500指数は9.18%下落(配当込みのトータルリターンはマイナス9.03%)となった12月の終値2.506.85から7.87%上昇し(同プラス8.01%)、2,704.10で1月の取引を終えました。この上昇により調整モードから抜け出し(弱気局面は小休止)、終値での高値(2018年9月20日の2,930.75)を7.73%下回る水準まで戻りました。同指数は3カ月間では0.28%下落(配当込みのトータルリターンはプラス0.26%)、1年間では4.24%下落(同マイナス2.31%)、2017年末以降では1.14%上昇(同プラス3.28%)、2016年11月8日の米大統領選当日の終値2,139.56以降では26.39%上昇しています(同32.09%、年率ではそれぞれ11.08%上昇とプラス13.30%)。

 ダウ平均は8.66%下落(同8.59%)した12月終値の23,327.46ドルから7.17%上昇し(1月としては1989年の8.01%上昇以来最高、同7.29%)、24,999.67ドルで1月の取引を終えました。同指数は3月間では0.46%下落(同プラス0.14%)、1年間では4.40%下落(同マイナス2.19%)しています。

 ボラティリティは低下し、1%以上変動した日数は12月の19営業日中10日(上昇が8日、下落が2日)に対し、21営業日中6日(上昇が4日、下落が2日。2018年は251営業日中上昇、下落とも32日)となりました。日中ボラティリティ(日中の高値と安値の差)は12月の2.56%から1.26%に低下しました。同指標は、2018年は1.21%と2017年の0.51%(筆者がデータを入手している1962年以降の最低。平均は1.43%)から上昇しました。

 1月の月間の値幅(高値と安値の差)は12月に19.33%(2011年10月の20.27%以来の高水準、11月は7.00%)に急騰したのち、10.84%と「正常な」水準に戻りましたが、なお1年平均の8.23%、10年平均の6.61%を上回りました。出来高は12月の前月比4%減ののち、1月も4%減少しましたが、前年同月比では6%増で、1年平均を6%上回りました。

 セクター間のリターンのばらつきは、12月に全11セクターが下落したのに対して12月は全11セクターが上昇したことから、変化はありませんでした。パフォーマンスが最高のセクター(資本財・サービス、11.36%上昇)と最低のセクター(公益事業、3.37%上昇)の騰落率の差は7.99%と、12月の9.51%から低下しました。2018年のこの騰落率の差は18.99%でした。

 1月は、テクニカル面の反発と好調な企業業績(予想よりも良いと言う意味で)に加え、強い売りがなかったこと(売りの出番は12月でした)が相場の上昇につながる中、11セクター全てが上昇しました。1月は資本財・サービスが12月の10.81%下落ののち(2018年通年は15.00%下落)、11.36%上昇して騰落率トップとなりました。公益事業がリスクオン・ムードの中、3.37%上昇(12月はリスクオフ・ムードの中、「わずか」4.31%の下落にとどまり、騰落率トップ。2018年通年は0.62%上昇)で騰落率最下位となりました。エネルギーは原油価格が回復する中(ただし、2018年10月の直近高値をなお大幅に下回る)、12月の12.82%下落(2018年通年は20.50%下落)ののち、11.02%反発しました。金融は12月の11.45%下落(同14.67%下落)ののち、8.59%上昇しました。

 FRBは利上げペースを緩める意向を示しています。12月に8.72%下落し、2018年通年では4.67%上昇で騰落率トップとなったヘルスケアは4.66%上昇で、市場平均を下回りました。消費関連セクターは引き続きまちまちとなり、一般消費財は10.23%上昇(同0.49%下落)、生活必需品は4.99%上昇(同11.15%下落)となりました。情報技術は2018年通年の1.82%下落ののち、6.88%上昇しました。同セクターは2016年11月の米大統領選以降では45.47%上昇しています。

 12月に圧倒的多数の銘柄が下落したのち、1月は再び値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を大きく上回りました。1月の値上がり銘柄数は12月の14銘柄、11月の358銘柄に対して472銘柄(平均上昇率は10.99%)で、10%以上上昇した銘柄数は12月のゼロ(11月は50銘柄)に対して250銘柄となり(平均上昇率は15.69%)、14銘柄が25%以上上昇しました。一方、値下がり銘柄数は33銘柄(平均下落率は4.11%)と12月の491銘柄(11月は145銘柄)から減少し、10%以上値下がりした銘柄数も5銘柄(平均下落率は13.04%)と12月の237銘柄(11月は35銘柄)から減少しました。2018年9月20日の市場の終値での最高値以降では(S&P 500指数はそれ以降7.73%下落)、136銘柄が上昇して、そのうち41銘柄が10%以上上昇する一方、369銘柄が下落して、そのうち210銘柄が10%以上、69銘柄が20%以上下落しました。
 

 

 

 

 

 

 
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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配信元: みんかぶ株式コラム