■12月3日(月)■上昇の為の時間稼ぎ

著者:堀篤
投稿:2018/12/03 10:32

年末高に向けた最低限の環境は整ったか

■年末高に向けた最低限の環境は整ったか

G20が終わり、東京市場は、まずは年末高に向けた最低条件を二つ、クリアした。
一つはFRBが米国景気への危機感を持っていないのではないか、という懸念の解消だ。28日、29日の両日、パウエルFRB議長の発言などから、株式市場は、米国の金融引締めペースが緩むだろう、というコンセンサスを形成することに成功した。
二つ目は貿易摩擦問題。今回のG20で、米中貿易摩擦に関連し、両国がとりあえず歩み寄る姿勢を見せたことは、ひとまず最低限の成果であったと言えるだろう。
米中首脳会談の内容は市場にとっては不十分であり、大きく上値を追える状況ではないが、それでも日経平均が23500円程度を目指すための条件はクリアしたと言えるだろう。米国は対中関税の引き上げを90日間猶予し、とりあえず、年末を越えて、この問題は棚上げされた形となる。株式市場を上げておきたい投資家にとって、時間的猶予が提供されたことは、非常に大きい材料であるはずだ。この時間があれば、原油価格がこれ以上下落さえしなければ、日本での株式市場のテーマを取り上げ、FRBの来年の政策変更を好材料として、日経平均を上昇にもっていくことは十分にできるはずだ。
 残された時間と需給関係、テクニカルな要素を考えると、上値は23500円から24000円程度と考えるのが、まずは妥当だろう。

■米中貿易問題は、まだしばらくは困難な状況が続く

株式市場にとっても最大の注目点とされたG20と、各国の首脳会談は、一通りの成果を出し、週明けの市場の評価を待つ。
最大の成果は、米中の貿易摩擦が決定的な破たん局面を迎えなかったことだろう。米国は、対中関税の引上げ(10%を25%へ)を90日間猶予する、と発表した。
しかし、欧米のメディアでは、これを「先送り」とさえ言わず、更なる問題の複雑化として警戒感を強めている。米国が90日間様子を観察するといった5項目の中には、知的財産の関する事項など、中国が妥協するとは思えないものが複数あるためだ。
もっとも、米中両国は、それぞれ今回の会談を「成功」と評価している。声明では「保護主義との闘い」という、近時の米国批判を意味する語句は回避された上、中国は、ひとまず輸入拡大に向けて積極姿勢は見せており、中国の歩み寄りの姿勢は明確になっている。
米国も、対中強硬姿勢か、米中摩擦による経済環境の悪化か、どちらが自らの支持率の為に重要かをトランプ氏が判断するかは、周囲の助言に依存することになる。しかし、対中強硬姿勢は、いつでも取り得る、ということを考えれば、FRBの態度が慎重になった今、トランプ氏は経済を優先するだろう。
堀篤
日本マネジコ、東京スコットマネジメント代表取締役
配信元: 達人の予想