■要約
キャンバス<4575>は、独自の創薬アプローチで、現在適切ながん治療薬が見つかっていないがん領域やがん患者に向け、積極果敢にチャレンジする創薬バイオベンチャーである。
1. 「オプジーボ®」に注目が集まるなか、現行がん治療が効かない患者を救うという大きな使命を担う
京都大学特別教授の本庶佑(ほんじょたすく)氏が2018年ノーベル医学・生理学賞を受賞された。本庶氏の研究は画期的ながん免疫治療薬「オプジーボ®」(小野薬品工業<4528>)の開発に大きく貢献するものであった。
オプジーボ®は免疫細胞にかけられている“ブレーキ”を外し、がんを攻撃できる働きを有する。従来のがん治療法では5年の生存は5%ほどしか期待できなかったステージIV(切除不能な進行・再発性)の非小細胞肺がんでは、オプジーボ®は5年以上の生存率が16%に跳ね上がった。オプジーボ®は現在国内では肺がんや胃がんなど7がん腫に保険適用(高額療養費制度で月8万円程度)されているが、「手術ができない」、「再発または転移した」など厳しい条件が付帯され、一部の患者のみの利用にとどまっているうえ、現時点では保険適用のがん腫であっても効果があるのは2割程度と言われている。
さらに現在、オプジーボ®には、保険適用のがん腫以外のがんについても、病院やがん患者団体からの問い合わせが殺到している。7がん種以外のがん腫におけるオプジーボ単独の奏効率はゼロから2割未満と低い。
キャンバスは自社開発品の抗がん剤候補化合物(CBP501)とオプジーボ®など免疫チェックポイント阻害剤との併用療法に活路を見出し、具体的には、オプジーボ®と化学療法(プラチナ)とCBP501の3剤併用の開発に取り組んでいる
本庶氏も日本経済新聞インタビューで「併用療法の狙いは一部の患者にしか効かないというがん免疫薬(オプジーボ®)の欠点を補う」とコメントされている。同社は、オプジーボ®単剤で効かない大多数(保険適用がん腫で8割、その他のがん腫ではそれ以上〜ほぼ全て)の患者を救うために早期の実用化を目指している。
2. 複数の自社開発品を臨床試験まで展開する創薬ベンチャーでは希有な存在
同社には、創薬プロセスにおける基礎研究と臨床開発一体による免疫系抗がん剤の研究開発力を有し、基礎研究から臨床開発に至る創薬プロセスサイクルを俊敏にかつ柔軟な形でマネジメントする力が備わっている。また、特定領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬基盤技術(「創薬エンジン」)をもとに技術とプロダクトの両方を自社で創出できる。創薬プラットフォームのみを持ち非臨床試験前後での導出を主とするバイオベンチャーや、創薬プラットフォームを持たず開発途上の化合物を外部から導入して一定の開発の後に製薬企業へ導出するバイオベンチャーとは一線を画する、本格的な創薬のビジネスモデルを有する。そして、ビジネス分野、基礎研究分野、臨床分野の第一人者であるスーパー・エキスパートチーム(世界のがん治療の有識者、研究者、実務者)が後方支援として控えている。同社はこれらの“3つの強み”をビジネス基盤として、創業以来、複数の自社開発品(CBP501、CBS9106)を臨床試験まで推し進めている。
しかも開発パイプラインにはこれまでドロップアウト(失敗)がないことも特筆すべきことである。現在及び過去の創薬ベンチャーを見渡してもほとんど例を見ない希有な存在と言ってよいだろう。
さらに補足しておくと、同社が開発品(CBS9106)をライセンスアウトした米国ステムライン・セラピューティクス(以下、Stemline)(米国NASDAQ上場、複数の自社品開発、既に1つは臨床試験を終え市場投入を控える、将来は医薬品メーカーを目指す)という創薬ベンチャーのお手本のようなフロンティア企業と緊密な提携関係にある。
3. 米国FDAでの臨床試験(フェーズ1b)拡大相に着手
同社は、抗がん剤候補化合物(CBP501)とオプジーボ®との併用の臨床試験(フェーズ1b)に取り組んでいる。今回良好な感触が得られたため、すい臓がんと直腸大腸がんにターゲットを絞って、次の“拡大相”試験を早ければ2018年内に着手予定である。
CBP501臨床試験が計画どおりに推移すると、大手製薬企業(ブリストル・マイヤーズ スクイブ、メルクなど)の「免疫系抗がん剤と他の抗がん剤」の併用臨床試験結果が発表される2019年~2020年には、同社の臨床結果も得られ、世界の抗がん剤開発に大きなインパクトを与える可能性がある。そのためにも、臨床試験費用の原資調達や臨床試験マネジメントが重要となる。
■Key Points
・オプジーボ®に注目が集まるなか、一部の患者にしか効かないというがん免疫薬(オプジーボ®)の欠点を補う
・複数の開発品(CBP501、CBS9106)を臨床試験へ展開する創薬ベンチャーでは希有な存在
・すい臓がんと直腸大腸がんをターゲットにCBP501の臨床試験(フェーズ1b)拡大相に着手
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
<MH>
キャンバス<4575>は、独自の創薬アプローチで、現在適切ながん治療薬が見つかっていないがん領域やがん患者に向け、積極果敢にチャレンジする創薬バイオベンチャーである。
1. 「オプジーボ®」に注目が集まるなか、現行がん治療が効かない患者を救うという大きな使命を担う
京都大学特別教授の本庶佑(ほんじょたすく)氏が2018年ノーベル医学・生理学賞を受賞された。本庶氏の研究は画期的ながん免疫治療薬「オプジーボ®」(小野薬品工業<4528>)の開発に大きく貢献するものであった。
オプジーボ®は免疫細胞にかけられている“ブレーキ”を外し、がんを攻撃できる働きを有する。従来のがん治療法では5年の生存は5%ほどしか期待できなかったステージIV(切除不能な進行・再発性)の非小細胞肺がんでは、オプジーボ®は5年以上の生存率が16%に跳ね上がった。オプジーボ®は現在国内では肺がんや胃がんなど7がん腫に保険適用(高額療養費制度で月8万円程度)されているが、「手術ができない」、「再発または転移した」など厳しい条件が付帯され、一部の患者のみの利用にとどまっているうえ、現時点では保険適用のがん腫であっても効果があるのは2割程度と言われている。
さらに現在、オプジーボ®には、保険適用のがん腫以外のがんについても、病院やがん患者団体からの問い合わせが殺到している。7がん種以外のがん腫におけるオプジーボ単独の奏効率はゼロから2割未満と低い。
キャンバスは自社開発品の抗がん剤候補化合物(CBP501)とオプジーボ®など免疫チェックポイント阻害剤との併用療法に活路を見出し、具体的には、オプジーボ®と化学療法(プラチナ)とCBP501の3剤併用の開発に取り組んでいる
本庶氏も日本経済新聞インタビューで「併用療法の狙いは一部の患者にしか効かないというがん免疫薬(オプジーボ®)の欠点を補う」とコメントされている。同社は、オプジーボ®単剤で効かない大多数(保険適用がん腫で8割、その他のがん腫ではそれ以上〜ほぼ全て)の患者を救うために早期の実用化を目指している。
2. 複数の自社開発品を臨床試験まで展開する創薬ベンチャーでは希有な存在
同社には、創薬プロセスにおける基礎研究と臨床開発一体による免疫系抗がん剤の研究開発力を有し、基礎研究から臨床開発に至る創薬プロセスサイクルを俊敏にかつ柔軟な形でマネジメントする力が備わっている。また、特定領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬基盤技術(「創薬エンジン」)をもとに技術とプロダクトの両方を自社で創出できる。創薬プラットフォームのみを持ち非臨床試験前後での導出を主とするバイオベンチャーや、創薬プラットフォームを持たず開発途上の化合物を外部から導入して一定の開発の後に製薬企業へ導出するバイオベンチャーとは一線を画する、本格的な創薬のビジネスモデルを有する。そして、ビジネス分野、基礎研究分野、臨床分野の第一人者であるスーパー・エキスパートチーム(世界のがん治療の有識者、研究者、実務者)が後方支援として控えている。同社はこれらの“3つの強み”をビジネス基盤として、創業以来、複数の自社開発品(CBP501、CBS9106)を臨床試験まで推し進めている。
しかも開発パイプラインにはこれまでドロップアウト(失敗)がないことも特筆すべきことである。現在及び過去の創薬ベンチャーを見渡してもほとんど例を見ない希有な存在と言ってよいだろう。
さらに補足しておくと、同社が開発品(CBS9106)をライセンスアウトした米国ステムライン・セラピューティクス
3. 米国FDAでの臨床試験(フェーズ1b)拡大相に着手
同社は、抗がん剤候補化合物(CBP501)とオプジーボ®との併用の臨床試験(フェーズ1b)に取り組んでいる。今回良好な感触が得られたため、すい臓がんと直腸大腸がんにターゲットを絞って、次の“拡大相”試験を早ければ2018年内に着手予定である。
CBP501臨床試験が計画どおりに推移すると、大手製薬企業(ブリストル・マイヤーズ スクイブ
■Key Points
・オプジーボ®に注目が集まるなか、一部の患者にしか効かないというがん免疫薬(オプジーボ®)の欠点を補う
・複数の開発品(CBP501、CBS9106)を臨床試験へ展開する創薬ベンチャーでは希有な存在
・すい臓がんと直腸大腸がんをターゲットにCBP501の臨床試験(フェーズ1b)拡大相に着手
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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