■要約
1. 会社概要
アルプス技研<4641>は、機械、電気・電子、ソフト・IT、化学などの分野において、大手製造業各社に高度技術サービスを提供する総合エンジニアリングアウトソーシング企業である。経営理念である“Heart to Heart”「人と人との心のつながり」を大切にしており、技術者としてのみならず社会人としても一流であるべしとの思いから、創業以来一貫して、技術力の強化に加え、ヒューマン教育にも注力している。これが同社の強みである人材を生み出す源泉となる企業組織文化となっている。同社グループは同社及び子会社5社から構成され、2016年12月期より、アウトソーシングサービス事業とグローバル事業の2つの事業セグメントとなった。2018年7月には創業50周年を迎えるとともに、第2創業期をスタートさせた。新規事業分野への参入を含め、次世代に向けた強みの創出(経営基盤の強化)にも取り組んでいる。
2. 新会社設立(新規事業分野への参入)
同社は、中長期成長ビジョンの実現に向けて、新会社設立※により新規事業分野への参入を図った。高い成長性が見込まれる農業関連分野、及び人手不足が顕著となっている介護関連分野において、新たなモデルの人材派遣市場を創出するところに狙いがある。これらの分野は、AIやIoT、ロボットなどの最先端技術の導入や外国人労働力の活用がカギを握ると言われており、これまで培ってきた高度な技術力と人材育成(外国人の採用を含む)のノウハウが生かせる領域で先行者利益を目指す戦略と考えられる。本格的な業績貢献には長期的な目線が必要と考えられるが、ポテンシャルの大きな事業として今後の動向に注目したい。
※2018年4月2日付けで(株)アグリ&ケアを設立(神奈川県横浜市)。
3. 2018年12月期上期の業績
2018年12月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比8.3%増の15,728百万円、営業利益が同14.2%増の1,638百万円と増収増益となり、計画に対しても順調に進捗している。良好な受注環境を背景として、主力のアウトソーシングサービス事業が稼働人数の増加や契約単価の向上により伸長した。グローバル事業も日系企業からの需要拡大等により順調に伸びている。損益面でも、社員数の増加や社員の処遇向上に伴う労務費(人件費)のほか、積極的な広告宣伝費の投入や創業50周年関連費用などにより費用が増加したものの、増収効果により営業増益を実現した。また、創業者からの創業50周年記念の寄付金(2億円)を特別利益に計上。同社では、新規事業や知名度向上に向けた施策の推進など、次世代に向けた強みの創出(経営基盤の強化)のために寄付金の有効活用を図っていく方針である。
4. 2018年12月期の業績予想
2018年12月期の連結業績予想について同社は、期初予想を据え置き、売上高を前期比7.1%増の32,400百万円、営業利益を同5.9%増の3,430百万円と見込んでおり、過去最高の業績を更新する見通しである。上期業績(利益面)が計画を上回ったにもかかわらず、通期利益予想を据え置いたのは、下期において創業50周年関連費用の計上を予定していることが理由である。弊社でも、上期業績の状況や良好な受注環境等を踏まえ、同社の通期予想の達成は十分に可能であると評価している。ただ、利益面での上振れの可能性については、下期における先行費用(創業50周年関連費用)の増加等を勘案する必要がある。
5. 中長期の成長戦略
同社は、中長期成長ビジョンとして、1)既存事業の強化に加えて、2)最先端技術への対応、3)グローバル展開、4)新規事業への挑戦の4つの戦略軸を打ち出している。特に、創業50周年を迎えるに当たり、次の5ヶ年計画(定性目標)を公表しており、「新産業革命時代に向けた経営資源の再投資」を推進する方針である。また、3ヶ年の中期経営計画(ローリング方式)では、2020年12月期の目標として売上高37,200百万円、営業利益3,840百万円、ROE18%以上を目指している(ただし、新会社による業績寄与を含んでいない)。
弊社でも、同社の事業展開の方向性は、国内人口の減少や経済のグローバル化が進展するなかで、今後の産業構造の変化を見据えた合理的な戦略であると評価している。新規事業(介護・アグリ分野)の進捗を含め、需要が拡大している新たな技術分野への対応を図り、いかに持続的な成長に結び付けていくのかが今後の注目点となるだろう。また、引き続き、強固な財務基盤を生かしたM&Aにも注意する必要がある。
■Key Points
・2018年12月期上期の業績は稼働人員の増加や契約単価の向上により増収増益(順調な進捗)
・新会社設立により成長性のある新規事業分野(農業及び介護関連市場)へ参入
・2018年12月期は創業50周年を迎え、過去最高業績(及び配当)を計画するとともに、経営基盤の強化にも取り組む
・第11次5ヶ年計画(定性目標)では、「新産業革命時代に向けた経営資源の再投資」を推進
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
<MH>
1. 会社概要
アルプス技研<4641>は、機械、電気・電子、ソフト・IT、化学などの分野において、大手製造業各社に高度技術サービスを提供する総合エンジニアリングアウトソーシング企業である。経営理念である“Heart to Heart”「人と人との心のつながり」を大切にしており、技術者としてのみならず社会人としても一流であるべしとの思いから、創業以来一貫して、技術力の強化に加え、ヒューマン教育にも注力している。これが同社の強みである人材を生み出す源泉となる企業組織文化となっている。同社グループは同社及び子会社5社から構成され、2016年12月期より、アウトソーシングサービス事業とグローバル事業の2つの事業セグメントとなった。2018年7月には創業50周年を迎えるとともに、第2創業期をスタートさせた。新規事業分野への参入を含め、次世代に向けた強みの創出(経営基盤の強化)にも取り組んでいる。
2. 新会社設立(新規事業分野への参入)
同社は、中長期成長ビジョンの実現に向けて、新会社設立※により新規事業分野への参入を図った。高い成長性が見込まれる農業関連分野、及び人手不足が顕著となっている介護関連分野において、新たなモデルの人材派遣市場を創出するところに狙いがある。これらの分野は、AIやIoT、ロボットなどの最先端技術の導入や外国人労働力の活用がカギを握ると言われており、これまで培ってきた高度な技術力と人材育成(外国人の採用を含む)のノウハウが生かせる領域で先行者利益を目指す戦略と考えられる。本格的な業績貢献には長期的な目線が必要と考えられるが、ポテンシャルの大きな事業として今後の動向に注目したい。
※2018年4月2日付けで(株)アグリ&ケアを設立(神奈川県横浜市)。
3. 2018年12月期上期の業績
2018年12月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比8.3%増の15,728百万円、営業利益が同14.2%増の1,638百万円と増収増益となり、計画に対しても順調に進捗している。良好な受注環境を背景として、主力のアウトソーシングサービス事業が稼働人数の増加や契約単価の向上により伸長した。グローバル事業も日系企業からの需要拡大等により順調に伸びている。損益面でも、社員数の増加や社員の処遇向上に伴う労務費(人件費)のほか、積極的な広告宣伝費の投入や創業50周年関連費用などにより費用が増加したものの、増収効果により営業増益を実現した。また、創業者からの創業50周年記念の寄付金(2億円)を特別利益に計上。同社では、新規事業や知名度向上に向けた施策の推進など、次世代に向けた強みの創出(経営基盤の強化)のために寄付金の有効活用を図っていく方針である。
4. 2018年12月期の業績予想
2018年12月期の連結業績予想について同社は、期初予想を据え置き、売上高を前期比7.1%増の32,400百万円、営業利益を同5.9%増の3,430百万円と見込んでおり、過去最高の業績を更新する見通しである。上期業績(利益面)が計画を上回ったにもかかわらず、通期利益予想を据え置いたのは、下期において創業50周年関連費用の計上を予定していることが理由である。弊社でも、上期業績の状況や良好な受注環境等を踏まえ、同社の通期予想の達成は十分に可能であると評価している。ただ、利益面での上振れの可能性については、下期における先行費用(創業50周年関連費用)の増加等を勘案する必要がある。
5. 中長期の成長戦略
同社は、中長期成長ビジョンとして、1)既存事業の強化に加えて、2)最先端技術への対応、3)グローバル展開、4)新規事業への挑戦の4つの戦略軸を打ち出している。特に、創業50周年を迎えるに当たり、次の5ヶ年計画(定性目標)を公表しており、「新産業革命時代に向けた経営資源の再投資」を推進する方針である。また、3ヶ年の中期経営計画(ローリング方式)では、2020年12月期の目標として売上高37,200百万円、営業利益3,840百万円、ROE18%以上を目指している(ただし、新会社による業績寄与を含んでいない)。
弊社でも、同社の事業展開の方向性は、国内人口の減少や経済のグローバル化が進展するなかで、今後の産業構造の変化を見据えた合理的な戦略であると評価している。新規事業(介護・アグリ分野)の進捗を含め、需要が拡大している新たな技術分野への対応を図り、いかに持続的な成長に結び付けていくのかが今後の注目点となるだろう。また、引き続き、強固な財務基盤を生かしたM&Aにも注意する必要がある。
■Key Points
・2018年12月期上期の業績は稼働人員の増加や契約単価の向上により増収増益(順調な進捗)
・新会社設立により成長性のある新規事業分野(農業及び介護関連市場)へ参入
・2018年12月期は創業50周年を迎え、過去最高業績(及び配当)を計画するとともに、経営基盤の強化にも取り組む
・第11次5ヶ年計画(定性目標)では、「新産業革命時代に向けた経営資源の再投資」を推進
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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