■成長戦略と進捗状況
3. パレットプラザ事業の成長戦略
(1) 直営店のFC化戦略と進捗状況
プラザクリエイト本社<7502>は2017年3月期第4四半期から直営店による営業体制を見直し、直営店からFC店への切り替えを進めている。同社は3年ほど前から直営店にフォト&モアという新コンセプトを導入し、店舗の改装やディスプレイの変更、商材の充実などを図ってきた。このフォト&モアという店舗コンセプトとそれに基づく店舗のリニューアルは明確な成功を収め、フォト&モア店舗の多くは店舗PL(損益計算書)が黒字を維持して独り立ちできるめどがついた。これが直営店のFC化という決断を後押ししたと言える。一方、立地や契約条件などでフォト&モア化できない店舗については閉鎖する方針を固めており、2018年3月期においては72店舗を閉鎖した。
2018年3月期はFC化して初めての決算期であり、最も初期(2017年3月スタート)の店舗は1年間をフルに、遅い時期の開始の店舗でも約半年を、FC店として営業した。その効果は極めて順調だった模様だ。直営店時代と比較して明確に増収となった店舗が数多くでたとみられる。それ以上に顕著な変化は、FCオーナーの収入だ。店長時代と比べて格段に収入が増加したFCオーナーが多数輩出されたもようだ。一国一城の主という意識面での違いや、自分の店舗の立地・顧客層にマッチした商材・サービスを自由選択できることなどがプラスに働いた結果と考えられる。こうしたFC化店舗の順調な経営状況を踏まえて、同社は今後も粛々と直営店のFC化を進める方針だ。
店舗のFC化により同社のプリント事業の収益構造も大きく変わる。全店が直営店の場合は、各店舗の売上高を総計したものがプリント事業の売上高になる。売上原価には商材と店舗人件費、店舗の賃料や光熱費などが計上される。それに対して全店がFC化されるとFC店に対する商材卸売の売上高と、FC店からのロイヤリティ収入が同社の売上高になる。結果的に、売上高は大きく縮小するが、販管費など原価面も削減されるため、利益額は直営の時と変わらないと想定される。また、商材の卸売が1年を通じて安定的に出るため、収益の季節性も大きく緩和される(年賀状プリントの影響は残るが、上期の大幅損失を下期の利益で消すという構図はかなり薄まる)とみられる。
(2) 新コンセプトの導入
同社は2019年3月期を、再成長のための収益力向上期の初年度と位置付けている。ステージが1段上がったことに合わせて、新たな店舗コンセプトやスローガンの導入を行った。
これまでの「フォト&モア」を発展解消し、新たな店舗コンセプトとして「Happiness from hand to hand.(「幸せを手から手へ。」)」を導入した。意図は明確だろう。直接手渡しをするというのはリアル店舗ならではの良さであり、その点を強調する気持ちと、顧客にとってHappinessとは何かを常に自問し、顧客がHappinessを感じられる商品・サービスを提供していこうという意思が込められている。
同社はまた、企業コンセプトとして「MOTION & EMOTION」を導入した。MOTION(動き)には、アナログ領域でのノウハウとデジタル領域のテクノロジーをかけ合わせて新たなサービス・ラインアップを拡充・進化させ、オンラインでもオフラインでも更なる出店を目指すという意思が込められている。EMOTION(想い・願い)には、顧客一人ひとりの想い・願いを大切にして、時代にあった幸せの形を提案していくことが同社の使命であるということを表している。
店舗拡大が成長戦略の中核である点は従来から不変。今後は個別店舗の収益力強化にも注力
4. モバイル事業の成長戦略
モバイル事業では、店舗数増加を成長戦略の柱とする構図は従来から変更はない。店舗数拡大のペースについては、一時期、ペースアップが図られる可能性を弊社では想定したが、現状では、従来同様、年5~10店舗のペースが維持される見通しだ。
こうした同社の慎重なスタンスは、現状に照らせば好ましいものと評価できるだろう。店舗数の拡大によって増収ペースは続いているが、1店舗当たりの販売台数が減少してきているのは同社自身も認めるところだ。スマートフォン市場の成熟化が背景にある。
新規店舗の属性については、ソフトバンクグループ<9984>傘下のソフトバンク(株)が同社株式を10.74%保有していることから考えて、“ソフトバンク”及び“ワイモバイル”両ブランドのキャリアショップが中心となると弊社ではみている。エントリーブランドとしてのワイモバイルと、大手キャリアとしてのソフトバンクの2つをラインアップすることで、幅広い顧客ニーズに対応できる点を強みとした店舗展開が期待される。
今後同社が、店舗数拡大と並んで注力することは、各店舗の収益力の強化だと思われる。損失を計上している店舗は減損の対象となり、企業業績に直接的なダメージを与えるためだ。この点については、パレットプラザ事業を通じて培ったカメラとその付帯サービスである写真プリントについてのノウハウを生かしてシナジーを追求する、などの施策で対応していくとみられる。
通信業界においては、トラフィックの飛躍的増大を受けて通信インフラが現在主流の4Gから、2020年には5Gへと移行する計画が進んでいる。4Gと比較して、高速・大容量、低遅延、多接続などの特徴があるとされている。5Gならではの新たなサービスや既存サービスの高度化がいろいろ想定されているが、スマートフォンなど携帯端末もまた、5G時代が本格化すれば買い替え需要が大きく刺激されると期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<MH>
3. パレットプラザ事業の成長戦略
(1) 直営店のFC化戦略と進捗状況
プラザクリエイト本社<7502>は2017年3月期第4四半期から直営店による営業体制を見直し、直営店からFC店への切り替えを進めている。同社は3年ほど前から直営店にフォト&モアという新コンセプトを導入し、店舗の改装やディスプレイの変更、商材の充実などを図ってきた。このフォト&モアという店舗コンセプトとそれに基づく店舗のリニューアルは明確な成功を収め、フォト&モア店舗の多くは店舗PL(損益計算書)が黒字を維持して独り立ちできるめどがついた。これが直営店のFC化という決断を後押ししたと言える。一方、立地や契約条件などでフォト&モア化できない店舗については閉鎖する方針を固めており、2018年3月期においては72店舗を閉鎖した。
2018年3月期はFC化して初めての決算期であり、最も初期(2017年3月スタート)の店舗は1年間をフルに、遅い時期の開始の店舗でも約半年を、FC店として営業した。その効果は極めて順調だった模様だ。直営店時代と比較して明確に増収となった店舗が数多くでたとみられる。それ以上に顕著な変化は、FCオーナーの収入だ。店長時代と比べて格段に収入が増加したFCオーナーが多数輩出されたもようだ。一国一城の主という意識面での違いや、自分の店舗の立地・顧客層にマッチした商材・サービスを自由選択できることなどがプラスに働いた結果と考えられる。こうしたFC化店舗の順調な経営状況を踏まえて、同社は今後も粛々と直営店のFC化を進める方針だ。
店舗のFC化により同社のプリント事業の収益構造も大きく変わる。全店が直営店の場合は、各店舗の売上高を総計したものがプリント事業の売上高になる。売上原価には商材と店舗人件費、店舗の賃料や光熱費などが計上される。それに対して全店がFC化されるとFC店に対する商材卸売の売上高と、FC店からのロイヤリティ収入が同社の売上高になる。結果的に、売上高は大きく縮小するが、販管費など原価面も削減されるため、利益額は直営の時と変わらないと想定される。また、商材の卸売が1年を通じて安定的に出るため、収益の季節性も大きく緩和される(年賀状プリントの影響は残るが、上期の大幅損失を下期の利益で消すという構図はかなり薄まる)とみられる。
(2) 新コンセプトの導入
同社は2019年3月期を、再成長のための収益力向上期の初年度と位置付けている。ステージが1段上がったことに合わせて、新たな店舗コンセプトやスローガンの導入を行った。
これまでの「フォト&モア」を発展解消し、新たな店舗コンセプトとして「Happiness from hand to hand.(「幸せを手から手へ。」)」を導入した。意図は明確だろう。直接手渡しをするというのはリアル店舗ならではの良さであり、その点を強調する気持ちと、顧客にとってHappinessとは何かを常に自問し、顧客がHappinessを感じられる商品・サービスを提供していこうという意思が込められている。
同社はまた、企業コンセプトとして「MOTION & EMOTION」を導入した。MOTION(動き)には、アナログ領域でのノウハウとデジタル領域のテクノロジーをかけ合わせて新たなサービス・ラインアップを拡充・進化させ、オンラインでもオフラインでも更なる出店を目指すという意思が込められている。EMOTION(想い・願い)には、顧客一人ひとりの想い・願いを大切にして、時代にあった幸せの形を提案していくことが同社の使命であるということを表している。
店舗拡大が成長戦略の中核である点は従来から不変。今後は個別店舗の収益力強化にも注力
4. モバイル事業の成長戦略
モバイル事業では、店舗数増加を成長戦略の柱とする構図は従来から変更はない。店舗数拡大のペースについては、一時期、ペースアップが図られる可能性を弊社では想定したが、現状では、従来同様、年5~10店舗のペースが維持される見通しだ。
こうした同社の慎重なスタンスは、現状に照らせば好ましいものと評価できるだろう。店舗数の拡大によって増収ペースは続いているが、1店舗当たりの販売台数が減少してきているのは同社自身も認めるところだ。スマートフォン市場の成熟化が背景にある。
新規店舗の属性については、ソフトバンクグループ<9984>傘下のソフトバンク(株)が同社株式を10.74%保有していることから考えて、“ソフトバンク”及び“ワイモバイル”両ブランドのキャリアショップが中心となると弊社ではみている。エントリーブランドとしてのワイモバイルと、大手キャリアとしてのソフトバンクの2つをラインアップすることで、幅広い顧客ニーズに対応できる点を強みとした店舗展開が期待される。
今後同社が、店舗数拡大と並んで注力することは、各店舗の収益力の強化だと思われる。損失を計上している店舗は減損の対象となり、企業業績に直接的なダメージを与えるためだ。この点については、パレットプラザ事業を通じて培ったカメラとその付帯サービスである写真プリントについてのノウハウを生かしてシナジーを追求する、などの施策で対応していくとみられる。
通信業界においては、トラフィックの飛躍的増大を受けて通信インフラが現在主流の4Gから、2020年には5Gへと移行する計画が進んでいる。4Gと比較して、高速・大容量、低遅延、多接続などの特徴があるとされている。5Gならではの新たなサービスや既存サービスの高度化がいろいろ想定されているが、スマートフォンなど携帯端末もまた、5G時代が本格化すれば買い替え需要が大きく刺激されると期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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