投資の魅力 知ってほしい
松本 大(まつもと・おおき)
マネックス証券株式会社 代表取締役社長CEO
1963年埼玉県生まれ。87年東京大学法学部卒業後、ソロモン・ブラザーズを経て、ゴールドマン・サックスに勤務。94年、30歳で同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。99年、マネックス証券株式会社を設立。現在、事業持株会社であり、個人向けを中心とするオンライン証券子会社を日本(マネックス証券)・米国(TradeStation証券)・香港(マネックスBOOM証券)に有するグローバルなオンライン金融グループであるマネックスグループ株式会社およびマネックス証券株式会社両社のCEOを務めるほか、株式会社カカクコム、株式会社ジェイアイエヌの社外取締役を務める。
2014年の株式相場は、日銀による「異次元緩和第2弾」や、それに伴う円安進行、さらにそれらを原動力とした企業業績回復期待を追い風に10月半ば以降上昇加速し、日経平均株価は1万7450円で大納会を終えた。2015年も、さらにスケールを増した上昇相場への期待感が高まっている。そこで、証券界改革のオピニオンリーダーとして知られるマネックス証券の松本大社長CEOに、個人投資家に知ってほしい株式投資の魅力について聞いた。
グローバル投資の仕組み構築
――14年10月に創業15周年を迎えたが、証券会社設立の動機は
「ゴールドマン・サックスなど外資系金融機関で12年間働くなかで、インターネット普及や売買手数料の自由化で世の中が大きく変わるだろうと思った。そこで、ゴールドマンに対して、機関投資家だけでなく最終投資家である個人に直接アクセスすることを提案したが、会社の判断は〝やらない〟ということだったので、そこで自分で始めることにした。マーケットが大好きで、そこでキャリアを育ててきたので、マーケットに恩返ししたいという思いも強かった。また、投資に対するイメージ向上や個人でも分かりやすくアクセスでき、投資本来の効用というものが理解してもらえる仕組みを作りたかった」
――15年間で苦労した点は
「親会社の基盤が既にあるような他のオンライン証券とは異なり、4人でスタートした本当のベンチャーだった。苦労は数えられないくらいあったが、創業当時のトランザクション(売買取引処理)系のITは信じられないほど未発達だった。また、その頃はベンチャー企業に世間の風が冷たく、メディアも応援するというよりも叩くという雰囲気が強かった」
証券界は投資家の声を大切に
マスコミ、財界に投資教育必要
――証券界が抱えている問題点と改善策は
「証券会社の反対が多くて夜間取引の実施が見送られた。個人投資家の約92%の売買はオンライン取引で、オンライン証券のアンケート調査では、多くの個人が時間外取引を強く望んでいる。証券業界は、受益者(お客様)の声をもっと大切にすべきだ。証券業界の発言権はいまだに、最も非資本主義的な〝1社1票〟の古い体質のままだ。最近はマンションの管理組合でさえ、部屋の大きさで投票権の口数が配分されるのが常識だ。私は、既に20年も証券業界の役員を継続して務めており、日本一長いのではないか。20年経っても古い体質はほとんど変わっていない」
――個人投資家を活性化する方法について
「私は、個人投資家の金融リテラシーは高いと思う。リテラシーの低いのはマスコミや財界、政治家だ。大手新聞の報道を見ると資本市場のことを理解しないで書いているケースが多いように思う。最近は少ないが以前は、上場企業の財務担当役員が金商法などのルールを知らずに、悪意なく公募増資についてマスコミにリークするなど、目に余るケースもあった」
地価上昇の実感が起爆剤に
「この25年間、デフレだったことが、個人を株式投資から遠ざけていた。株式投資は日本人の文化に合わないなどと考えない方がいい。実際、バブルのピーク時に、多くの個人(家計)は不動産をピークで売り抜けて、それを買ったのが銀行だ。個人は、不動産を売却した資金で、株や外債を買わずに、当時のワイドなど高利回りの金融商品を買い、結果的に最もパフォーマンスの良いアセットに投資し、日本の個人投資家の賢さが証明された。今後アベノミクスで、デフレから脱却し、インフレになれば、放っておいても株式投資に関心が向くようになる。間もなく、地価が上昇してきたとの実感が広がってくれば、土地を購入する代わりにNISA(少額投資非課税制度)で不動産投資信託(REIT)を買うといった投資行動が個人に一気に広がるのではないかと考える」
子供の就職先を探すつもりで…
――個別銘柄投資の魅力について、個人投資家にひとこと
「単なるマネーゲームではなく、個別銘柄に投資することで、自分の分身に疑似体験させるように色々な会社に関わっていけるのが魅力だ。例えば、自分に子供が10人いると考えて、その子たちを就職させたい会社に投資するという方法がある。日米の上場企業のなかから好きな会社への就職が可能で、いつでも転職させることもできる。これで、難しいことを考えずに分散投資が可能になる。毎年、就職情報会社が学生の就職先の人気ランキングを発表しているが、過去30年間、毎年のランキング上位の銘柄を買った場合、その後のパフォーマンスが非常に悪いという結果が出ている。人生経験の少ない若者が現在の輝きにつられて、高値づかみをしてしまうということだ。子供の就職先ということになれば、親は将来を見据えた、落ち着いた姿勢で判断することになる」
手軽に米国株投資
――米国株式投資の魅力について
「米国は世界一の超大国にもかかわらず、まだ成長を続けている夢のような国だ。年金(401K)や、子供の教育資金なども、株式を中心に運用している。また、上場企業トップのボーナスも大部分が株式で支払われており、社会全体が、株価が上昇しなければ困る仕組みになっている。したがって政府も常に株価が下落しないことを真剣に考えている。加えて、シェールガスの出現などにより、双子の赤字がそろそろ黒字化しようとしている。日本や欧州が金融緩和を継続させているさなかに、金利を上げる方向にあり、景気回復では、2周も3周も先行している。マネックス証券では、米国株式の個別銘柄の情報提供も充実しており、特定口座を利用することで手軽に米国株式投資を始めることができる。既に取引のネットワークが実現している香港・上海などの中国市場をはじめとして、今後はさらに幅広く世界中のお客様が世界中の良い投資対象を知りたい、買いたいというニーズに応えて、売買できるグローバルな仕組みを作りたい」
力強さ増し年度内2万円も
――2015年の株式相場は
「アベノミクスは、効果が浸透するまで、ある程度時間がかかると思う。金融財政政策が日本全国に回り切るように、シャンパンタワーのイメージで上からお金を投入している。最初は、大企業とか株式保有者が恩恵を受けるが、下まで行くのに時間がかる。もう少しすると実感が出てくるのではないか。実質賃金が目減りしているという見方があるが、雇用者数は増加し、賃金総額は拡大している。ただ、現状は人によってムラがある。直近3カ月の地価動向を見ると、下落はゼロで、既に加重平均の地価は上昇に転じており、15年以降地価上昇が顕在化しそうだ。また国策としてROE(株主資本利益率)を高めようとしている。JPX400指数を作り、高ROE銘柄を年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に組み入れる動きもある。日銀も上場投資信託(ETF)を積極的に買う姿勢をみせている。こうして、2015年は株価上昇に結びつくポジティブな条件ばかりが整っている。株価上昇が力強さを増してくれば、今年度末までに日経平均株価が2万円を超える可能性も十分ありそうだ」
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