PGMホールディングス 神田有宏代表取締役社長インタビュー

投稿:2012/05/10 19:07

櫻井英明のトップ放談 第14回

ゴルフ運営で培ったおもてなしの心は
世界にも通用する!

PGMホールディングス株式会社
代表取締役社長
神田有宏(かんだ・ありひろ)

1963年、東京都生まれ。86年、東海銀行入行。メリルリンチ証券、ゴールドマン・サックス証券、アコーディア・ゴルフ取締役などを経て、2011年にPGMホールディングス顧問に就任。12年1月より現職。
 
 

2005年にゴルフ業界で初めて東証1部上場を果たしたPGMホールディングス。12年1月、この日本最大級のゴルフ場運営会社に熱血漢の新社長が誕生した。神田社長が描く、ゴルフ産業の将来ビジョンとは。

──御社の業態についてご説明ください

 PGMグループは全国120以上のゴルフ場を運営する日本最大級のゴルフ場運営会社です。2001年にゴルフ場の取得・運営事業を開始して以来、ゴルフ場の個性と地域性を活かした再生ビジネスで事業を拡大し、現在ではゴルフ場運営のエキスパートとしてマーケットを牽引しています。
 プレーを楽しむゴルファーの心を満たすもの、それは優れたコースコンディションだけではありません。レストランでの美味しい食事、楽しいショッピング、アフターゴルフにおける快適性などさまざまなサービスがあってこそ、お客様からの満足と信頼が得られると考えています。

──御社の現状と経営の方針をお話しください

 私が同業他社の立場だった頃の正直な印象として、PGMはゆっくりとしたスピード感で歩いているように見えました。その意味では、スピード感を持って経営にあたりたいと考えています。
 まずは「顧客目線、あるいはプレイヤー目線でゴルフ場を考えよう」と言っています。逆に言うと、私自身もゴルファーですが、ゴルファー目線でもう一度経営を見直したいと思います。
 そもそもゴルフ場経営はホスピタリティ産業、つまりおもてなし産業であるはずです。まずは従業員が楽しくなければお客様は楽しくありません。PGMのゴルフ場に行くと、何かワクワク、ドキドキ感があるという印象を発信することでリピーターは増えると思います。あるいはゴルフのスコアが悪くてお帰りになる場合でも、レストランの料理が美味しかった、従業員の笑顔が良かったなどのことで悪いスコアのつらい思い出を打ち消せるようなおもてなしを目指しています。
 要はCS(顧客満足度)重視の経営ということです。それぞれのコースはまだまだブラッシュアップが可能だと思いますので、さらにコースに磨きをかけて参ります。

──大株主が移動した影響はいかがですか?

 大株主の平和さんからは当社株を長期に渡り保有し続けると言っていただいています。従来のような四半期ベースのキャッシュフローを重視するようなファンド的株主ではありません。
 その意味では、目先のキャッシュフローに一喜一憂しないで、中長期的視点に立ち、地に足をつけた本来のゴルフ場経営にいそしむことが可能になったのではないかと考えています。

──現在、ゴルフ場は第3フェーズにあるとおっしゃっていますね

 日本のゴルフ場はまずは会員権で信用創造をすることからスタートしました。これが第1フェーズ。次に外資系ファンドが再生ビジネス的に参入し、キャッシュフロー重視の経営を導入しました。これが第2フェーズ。今はたぶん、メンバーさんとビジターさんの融和の時代。そういう意味で、私は第3フェーズと考えています。
 加えてゴルフ場自体もかなり大きく変化の時代を迎えているような気がします。例えば当社がスタートさせた「ひとり予約」。まだ定着するのはこれからの段階ですが、必要なのは「快く受け入れる体制・安心感・プレイヤー同士のコミュニケーション」でしょう。
 例えばSNSなどを使うことで、プレー前のチャットなどで知らないプレイヤー同士が自分たちのコミュニケーションを取る、ということも今後は拡大するかも知れません。ゴルフ場は余暇消費型産業と言われますが、有意義な時間を過ごす場という意味でのキーワードはコミュニティの場の提供でしょうし、そこに付加価値が付くと思います。
 また、「Wi-Fi」など無線通信をゴルフ場で使えるようにすることも考えています。2月にはヤフーさんと包括的業務提携をしました。PGMのWebサイトから予約・プレーしていただくと「Yahoo!ポイント」を貯めたり使ったり出来るようになったのです。
 また個人的にはゴルフ場といろいろなアプリは相性が良いと思っています。スマホや「iPad」がゴルフ場で使えれば、ゴルフの楽しみは無限に拡大するような気がします。

──ゴルフ産業の未来についてお話しください

 団塊世代が定年を迎える2015年問題というのがありますが、ゴルフ場にとってはむしろウエルカムです。おそら、団塊世代がアクティブな活動をされると予測される2020年頃までは良い状況が続くのではないかと見ています。
 ただ問題はそれ以降です。ゴルフ人口の減少は避けられないでしょう。人口ピラミッドは変えられませんから、女性ゴルファーの増加やジュニアの育成が重要になってきます。
 従来からもこの分野は手掛けてきましたが、さらに厚くする必要は感じています。
 ゴルフは決して華美なスポーツではありません。自分で自分を律するゲームでレフェリーが自分という稀有のスポーツなのです。その意味では教育効果も大。業界をあげて生涯スポーツ・国民的スポーツになる方向を目指していくべきではないでしょうか。

──ゴルフ場経営に対するこだわりは?

 コースのクオリティを上げることについてはさまざまな方法があると考えています。ゴルフにはそれぞれの楽しみ方がありますから
 例えば顧客ニーズとゴルフ場の受け入れニーズのマッチングに力を入れるべきでしょう。予約枠を絞ってゆったり回れるコースがあってもいいでしょうし、回り放題のコースがあってもいい。あるいは、ビギナーとジュニア向けの廉価コースもありではないでしょうか。
 ゴルフ場を磨く方策の多くは現場にあると思います。また日本のホスピタリティ=おもてなしの心は、世界に比べてもトップクラスです。この運営ノウハウを海外に伝えることも可能でしょう。世界のリーダーとなるようなゴルフ場をPGMが提供していくことも、いずれは可能だと考えているのです。
 また一般論としてゴルフ場のポートフォリオを考えてみると、例えば稼働率の低いゴルフ場ではコースに思い切って太陽光パネルを敷き詰めて電力を売る、という作業もアリだという気がします。たぶん採算は十分にあってくるのではないでしょうか。そうすると今後は、エコ・アミューズメント・エネルギーなんていう発想も可能かも知れません。

【取材メモ】

 神田社長のコメント「ゴルフ場は本来楽しい場所。従業員が楽しくなければお客さんが楽しい筈がありません」。これにはとても納得。そして「ゴルフ場は第3フェーズの段階。これからはゴルフ場でWiーFiを使えるようなことも考えています」。
 筆者の個人的夢想だが、例えばソフトバンクと組んだりすると、地方で繋がらないソフトバンクの携帯が山奥ほど繋がることになって意外と面白い。これからのゴルフ場には「芝生と空間とコミュニティ」という印象でした。
 そして、取材して感じたのは「人が企業を変える」ということ。就任したばかりの神田社長から同社の未来展望についてのビジョンが次々に登場してあっという間に1時間。今後のゴルフ事業の行方、あるいは新事業など実現しそうなアイディアばかりでした。ゴルフ代の安さばかりが魅力ではなく、ゆったりとプレーできることも必要。一般論として、稼働率の低いゴルフ場に太陽光発電パネルを敷き詰めるという「エコ・アミューズメント・エネルギー」は魅力的な発想です。ゴルフプレー単価も下げ止まり感が出てきているというし、同社の変化の大きさに注目したいと思います。

[ 会社概要 ]
社名:PGMホールディングス株式会社
証券コード:2466
公開市場:東証1部
上場年月日:2005年12月15日
設立:2004年12月
決算月:12月 連結業績(2011年12月期) 営業収益707億5800万円(前年同期比11%減) 営業利益72億2400万円(前年同期比37.5%減) 経常利益49億3200万円(前年同期比37.1%減) 通期純利益22億7300万円(前年同期比85.1%減)

●トピックス
全国120以上のゴルフ場を保有・運営する日本最大級のゴルフ場運営会社。他に霊園、ホテル、レストラン等の運営も。2011年11月に株式会社平和の連結子会社化。12年4月よりヤフーとの提携により、インターネット予約時に「Yahoo!ポイント」を獲得できるサービスを開始。

是非、アンケートにお答えください。アンケートにお答えいただいた方々から抽選でプレゼントが当たります。(5月号の応募期限:2012年5月31日)
※アンケートは終了しました。

◆本記事はリッチな電子ブック版でもご覧になれます。

PC版はこちら→https://minkabu.jp/magazine/mmm1205/index.html
iphone版はこちら→https://minkabu.jp/magazine/mmm1205/iphone.html
ipad版はこちら→https://minkabu.jp/magazine/mmm1205/ipad.html
Android版はこちら→https://minkabu.jp/magazine/mmm1205/android.html

配信元: みんかぶ株式コラム