外部環境を横目にみながら下値模索へ

著者:出島 昇
投稿:2017/08/21 19:27

週前半は、19824円まで反発するものの週末は3ヶ月ぶりの19500円割れ

 先週の予測では、米朝の緊張が続き地政学的リスクが高まっていることで株価の下値は、リスクの程度を見極めるところとしました。7月の中旬以降続いていた19900~20300円のボックスの下限を8月9日の▼257円の19738円で切って売転換となったことで、ボックスの下放れとなり目先は5月18日の19449円を終値で切ると19000円を試す動きも想定されるとしました。

 結果的には、週始めに北朝鮮のグアム島へのミサイル発射計画を懸念して▼192円の19537円と下げるものの翌日の15日(火)は、ミサイル発射を延期するという北朝鮮の発表で△216円の19753円と反発しました。しかし地政学的リスクが解消したわけではないので上値重く、小幅に2日続落のあとアメリカでトランプ政権に対するトラブルが発生したことでNYダウが大幅下落し、為替も一時108円台をつけたことで週末の18日(金)は一時、直近のザラ場安値である5月18日の19449円を下回る19433円まで下落し、終値は▼232円の19470円と19500円を下回って引けました。

 3連休明けの14日(月)は、米朝関係の懸念や円高を嫌気して売り先行で始まり、一時▼243円の19486円と19500円を割り込みました。売り一巡後は円高一服と日銀のETF買い期待で下げ渋るものの戻り弱く▼192円の19537円と4日続落となりました。 15日(火)は、前日のトランプ大統領が習主席と電話会議で北朝鮮の非核化に向けての連携を確認したことや北朝鮮がグアム島周辺へのミサイル発射を延期すると発表したことで欧米株高となり、NYダウは△135ドルの21993ドル、さらに一時110円台への円安となったことで一時△287円の19824円まで上昇し、終値は△216円の19753円と5日ぶりの大幅反発となりました。しかし北朝鮮問題は解決したわけではないので株価の上値重く、16日(水)は▼24円の19729円、17日(木)▼26円の19702円と2日の小幅続落となり、18日(金)には前日のアメリカで経済指標の結果がマチマチ、トランプ政権をサポートする製造業諮問委員会の解散、コーン国家経済会議委員長の辞任の噂、スペインでのテロニュースなどからリスク回避が強まり株価は全面安、ドル売り・円買いとなったことで一時▼269円の19433円と5月18日の19449円を下回り、終値では▼232円の19470円と19500円切って引けました。19500円割れは5月2日以来3ヶ月ぶりとなります。

 18日(金)のアメリカ市場では、新たな材料がない中、前日の終値をはさんだもみあいとなっていましたが、世界各地でテロとみられる事件が続き、決算発表もマチマチだったことで、NYダウは▼76ドルの21674ドルと続落しました。為替は、トランプ大統領の政権能力への疑問や長期金利の低下もあり、ドル売りの流れが強まり一時108.61円までのドル安・円高となりました。シカゴ日経先物も19315円まで下げて引け値は△5円の19445円でした。

外部環境次第では目先19000円水準を試す動きへ

 今週は、北朝鮮情勢をめぐる地政学的リスクとトランプ大統領の政権運営に対する懸念が焦点となります。北朝鮮の地政学的リスクは21~31日まで米韓両軍の合同軍事演習があるため、北朝鮮の出方を伺うことになりますし、先週末のトランプ大統領の白人至上主義に対する発言をめぐる混乱がどうなるのか政権の先行きに対する警戒感があります。

 世界のこれまでの株価は、世界的な金余りと低金利に加え企業業績が堅調に推移してきたことにありますが、ここにきて欧米の中央銀行が金融政策を緩和から正常化へ戻す動きとなってきており、ECBは来年からの資産購入縮小の観測が強まり、FRBも9月には保存資産縮小の開始時期を決める見通しのようです。これにトランプ政権の政治混乱が続くようだと、すでに減税政策や規制緩和を織り込んで上昇していますので、トランプラリーの上昇分が剥げ落ちてくる可能性もあります。

 チャートをみると、2万円をはさんだもみあいが長く続き、9日(水)には▼257円の19738円ともみあいの下放れとなって柴田罫線でも売転換となりました。そのため先週は5月18日の安値19449円を終値で切ると19000円を試す動きを想定しました。ただし、19449円を終値で切って19500円水準で値固めできれば戻りも想定しましたが、週末の18日(金)はザラ場で19433円と5月18日の19449円を切って終値では▼232円の19470円と19500円を回復できませんでした。5月2日以来3ヶ月ぶりの19500円割れであり、25日移動平均が75日移動平均線を上から下にぬけるデットクロスも不可避になっており、トピックスも75日移動平均線を下回ってきましたので、好材料(円安、アメリカ株高)が出ない限り下値模索の展開となりそうです。今回は19000円水準に下値ポイントがありますが、外部環境次第ではさらに一段安の想定も必要となり、その場合はいよいよ年に1回あるかないかの買いチャンスとなってきます。

 もし中期波動の調整となると、アメリカ株式がトランプラリーの巻き戻しで大幅下落する場合ですので、日経平均も昨年の11月9日の16111円からのスタートで今年の6月20日の20318円までの上昇幅の1/2押し(18215円)とか2/3押し(17513円)を想定することになります。

 本日は、朝方は円高一服で買い戻し先行となり△39円の19509円で寄り付くものの、ここがピークとなって下げに転換し、本日21日からの米韓合同軍事演習を受けた北朝鮮リスクへの警戒感から一時▼104円の19365円まで下げました。売り一巡後は、日銀のETF買い観測を支えに下げ渋るものの戻りは限定的で▼77円の19393円で引けました。

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(指標)日経平均

 先週の予測では、引き続き北朝鮮問題がくすぶり上値は重たい展開になるとし、チャート上では5月18日の安値19449円を下回るようだと19000円を試す可能性があるとしました。

 結果的には、週始め8月14日(月)は北朝鮮のミサイル発射懸念から▼192円の19537円と4日続落しましたが、8月15日(火)には北朝鮮がミサイル発射を延期するという報道で地政学的リスクが後退し、△216円の19753円と反発しました。しかし北朝鮮リスクは解消したわけではないので買い上がる向きはなく2日連続の小幅安のあと、週末の8月18日(金)は昨日のNYダウが大幅下落と円高を受け一時19433円と5月18日の19449円を下回り▼232円の19470円で引けました。

 今週は、先週末の白人至上主義に対するトランプ大統領の発言を巡る混乱の行方や北朝鮮を巡る地政学的リスクの行方が注目となります。一方でジャクソンホールでのECB幹部やFRB幹部の金融緩和の出口発言に注目が集まります。内容によっては行き過ぎた金融緩和に終止符が打たれることになり、株価はいったん調整入りの可能性があります。日経平均は、自律的に動けないので外部の環境次第では一段安となり、チャートでは5月18日の19449円を先週末の8月18日に19433円で切っているため下値模索となり、まずは19000円水準を試す可能性があります。目先の下値は200日移動平均線が19200円水準(18日時点19246円)にあります。
 
<a href='/stock/100000018'>日経平均</a>08-21
 

(指標)NYダウ

 先週の予測では、北朝鮮リスクが引き続き懸念材料となり、株式市場は軟調な動きとなりそうだとしました。週明けの8月14日(月)は北朝鮮がミサイル発射を延期したことで当面の地政学的リスクが後退し、世界的株高となりNYダウは△135ドルの21993ドルと大幅上昇しました。しかし、その後はマチマチの経済指標やトランプ政権への懸念が強く、8月17日(木)はスペインのバルセロナでのテロのニュースも重荷となり、▼274ドルの21750ドルの大幅反落となりました。週末の8月18日(金)は▼76ドルの21674ドルと続落して引けました。

 今週は、とりあえず北朝鮮情勢が落ち着いていることで、トランプ大統領のバージニア州で発生した白人至上主義者と反対派との衝突に対する問題発言から政治的混乱が生じており、投資家心理が悪化して株価に影響を与えているため政治動向が注目となります。又、先週のFOMC議事録では利上げの時期が不透明のままであり、25日のイエレン議長の講演で利上げの時期が示唆されるのかどうかも株価に影響を与えることになります。上値重く政治混乱が続けばトランプラリーで上げた分が剥げ落ちることになりそうです。
 
NYダウ08-21
 

(指標)ドル/円

 先週の予測では、北朝鮮とアメリカの対立が激化していることでドルの上値は重い展開となり、4月14日の108.55円をまず試す動きを想定しました。108~111円のレンジを想定。

 結果的には、北朝鮮がミサイル発射を見合わせたことでいったん地政学的リスクは後退し、ドルは一時110.92円まで買い戻されました。しかし、公開されたFOMC議事録から追加の利上げが不透明なままであり、又、トランプ大統領の発言による政治混乱からドルが一時108.60円まで売られ、週末は少し戻して109.20円で引けました。想定したレンジ内の上限から下限近くを動いたことになります。

 今週は、トランプ政権の政治的混乱が落ち着くのかということと、24日のイエレン議長の講演で追加利上げが示唆されるのかが注目となります。何らかの示唆があるようだとドルは買い戻されることになります。一方で21~31日の予定で米韓の軍事演習があるため、その間に北朝鮮が何らかの行動にでるとドルは買いにくいことになります。チャートからは、108円前半ごろが目先の下値ラインとなっていますので、ドルはこの水準では下げ渋る可能性があります。108~111円のレンジを想定。
 
為替08-21
 

配信元: みんかぶ株式コラム